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ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

イースト・油脂・卵等の入れ忘れは・・・・

イーストを入れ忘れた経験を皆様はお持ちですか?


恥ずかしながら私は何度もあります。

さあ分割の時間だ・・・と思って生地を見るとまったく膨らんでおらずに ”あちゃ~っ”

インスタントイーストの場合は、そのままゆっくりと混ぜていけばほぼ混ざりますし、生イーストの場合も、生地がベタベタとしますが、ほぼそのまま混ぜることでその後は通常のパン作りに戻ることができます。

硬めの生地か柔らかい生地か、よく捏ねる生地かあまり捏ねない生地かによって完成度は全く同じと言う訳には当然ながらいかないまでも、ごまかすことはできるでしょう。

少し気が引けるという方なら、その生地は焼かずに冷蔵保存して、翌日以降の生地に混ぜて使うという方もいらっしゃるでしょう。

また、どうせ翌日以降に混ぜて使うのならば、あえてイーストを入れなおすよりもそのまま冷蔵保存して使う方が良いのではと考える方もいることでしょう。

発酵をともなう冷蔵生地と、イーストが入らない冷蔵生地では、その風味や発酵力や生地の伸展性が異なりますので、完成度を観察しながら自分なりのパンを作ってほしいものです。

いずれにしても、分割時間に、あるいはパンチの時間に気が付いて対処したとしても、その分焼き上がりの時間が遅れるわけですから、焼成時刻を掲示しているお店などの場合は一大事ですよね。

でも侵してしまう・・・それが計量ミスというものでしょう。

砂糖とか塩の場合は、捏ねあがりに必ず生地をなめてみて味を確認することが重要だと書きましたが、イーストの場合は香りで確認することができます。

捏ねあがった生地の香りをかいでみるとイースト臭があることを確認することができます。

入れ忘れた生地の場合には、うどんのような香りというか、少し生臭い小麦臭がするはずです。

イーストを入れたかどうか迷ったときには、香りを確認するようにしましょう。

ただし、マーガリンなどの配合が多い生地の場合には判断が難しくなることがありますが・・・

いずれにしても、捏ねあがった生地の味と香り、そして状態を確認するということだけは習慣にしておいてほしいと思います。

さて、次は油脂ですが、これはあまり忘れられることは少ないのではないでしょうか。

なぜかと言うと、油脂を入れる際にはミキサーなら回転数を変えなければならないですし、手捏ねの場合も一度混ざりにくいものを混ぜなければならないという、いわゆる記憶に残る工程を踏むために忘れようがないのではないかと考えます。

ただし、計量ミスは起こりえますよね。

計算を間違えてしまって少ししか入っていない、あるいは多く入れすぎてしまったなどですね。

この場合は、その分量によって内容は大きく変わるわけですが、味と言う観点と潤滑油としての観点で見定めていくしかありません。

いつもよりも少ない量しか入っていない場合、そのパン本来の味になっているか、食感は大丈夫かで判断するしかないでしょう。

いつもよりも多く配合してしまった場合は、味と言うよりも食感とかソフト感に大きく影響するでしょうから、味と言う面ではいつもよりも良い出来栄えになることもあるかもしれませんが、いつもとは明らかに違うような場合には、販売を断念する、あるいは限定品として別商品として販売する方が賢明でしょう。

少ないとはいえ、もし入れ忘れてしまったというような場合には、分割する時点で恐らく気が付くはずです。

気が付いたのが捏ね上げてすぐの場合には、低速でゆっくり混ぜていけばほぼ問題なく生地は完成すると思いますが、少し時間が経過してしまったような場合には発酵が進んでしまっていますので、やはり冷蔵生地として翌日以降に再生するか、別商品として販売するしかないでしょう。

発酵が進んでしまった生地を再び捏ねるという行為は、グルテン破壊につながり、パン生地としては伸びの悪い最悪の状態を引き起こしてしまうでしょう。

問題なのは、気が付かない場合、そして配合量が少ない場合で、気が付かずに焼成段階までいってしまう、あるいはそのまま売ってしまうということも無いわけではないでしょう。

配合ミスも計量ミスも当然ミキサー担当者のミスです。

しかし、結局のところ店舗の信頼感をそこないかねない状況を生み出すことになる重要な問題点なのですから、製造にかかわるすべてのスタッフが日頃から生地状態の変化を見逃さないように報連相する仕組みを作っておくことがとても大切です。

製造中に生地を落としてしまうとか、オーブンで焦がしてしまうというようなことは日々起こりえる単純なミスです。

誰の目にもはっきりとそのミスは見分けることができますのですぐに対処できますが、生地そのものにいつもとの違いを感じるには、それなりの観察眼と経験が必要でしょう。

「毎日同じ製品が出来て当たり前という条件の中で私たちは仕事をしている」

「一回だけなら許してあげる・・・そんな客はいない」

ある意味過酷な条件ですよね。

しかし私たちはその道を選び、そして収入を得ている以上プロとして自らを律する以外にないのです。

ホームベーキングとの大きな違いは、その一点につきると言えますね。

さて、最後に卵とか生クリームとかの液体を入れ忘れた場合ですが、この場合に怖いのは、生地が固いからと言ってすぐに水を足してしまうという行為です。

硬い、あるいは柔らかいなどのいつもと違う状態を確認した時点で、すぐに小麦粉や水を足してしまうのではなく、まずは冷静に配合量と入れ忘れてはいないかを確認しましょう。

生地の味と香りも確認しましょう。

生地の硬い、柔らかいは、捏ね始めて5分もすれば必ず確認できるはずです。

その段階で卵などを入れ忘れていることに気が付いたのであれば、すぐ投入すれば何の問題もないでしょう。

もしもその量があまりにも多い場合には、水分量を間違えた時の対処法の時と同じ考え方で対処してほしいと思います。

水の量を間違えたら・・・

また、卵に関してはS/M/Lなどの様々なサイズがあり、それぞれ重さが違うことは誰でもお解りだと思うのですが、これを割りほぐしてしっかりと計量して、すこしあまってしまった・・・と言うようなお話をホームベーキングの方からよく聞くのですが、そもそも卵には黄身と白身があり、その割合は卵の大きさによってある意味様々です。

当然ながら美味しさ優先で行けば黄身だけを使った方が美味しくはなるでしょうし、白身も味にはあまり貢献しないかもしれませんが、生地のボリューム感とかオーブンでの伸びには貢献してくれます。

ですので、しっかり計量するあまりあまらせてしまうというような時には、全部入れてしまってその分の水分を減らせばよいとお考えいただきたいのです。

つまり、卵に関しては何グラムと言う計り方をするのではなく、Mサイズ1個とか2個とかの個単位でお使いいただいた方が無理がないと思います。

イーストの量と砂糖や塩の量にはバランスというものがありますが、卵は入れただけ美味しくなるという単純な考え方で良いと思います。

さて、水や砂糖や塩、そして発酵そのものを左右するパン作りにはなくてはならないイースト、そしてその物性や食感、そして何よりも味と風味を劇的に変化させてくれる油脂・・・

それらを日々計量しながら、しかも本来ならば一度のミスも許されない条件付きの仕事・・・

製パンと言う仕事に長年たずさわってきて、今更ながら思うことがあります。

それは、「自分に甘い人間には安全なパンは作れない」ということです。

これは今までの自分の考え方がいかに甘かったか、いかに安心できないパンを提供し続けてきてしまったかという反省につながっています。

美味しいと言っていただけるパンを作り続けてきた・・・それだけが私の自信でした。

しかし、私は何度も計量ミスを起こし、そしてそれを見逃してごまかしてきました。

お陰様で身についたごまかすための製パン理論が習得できたことも事実です。

しかし本来であれば、ミスを起こさないためにどうするべきか、二度と私のパンを美味しいと言ってくださる方々をごまかさないためにはどうするべきなのかを考え抜くべきでした。

しかし、長きにわたって私は自分の愚かさに気が付けずにいました。

最終的に美味しければごまかしではないとさえ考えていました。

しかし、そんな自らの非を正当化しようとする発想から生まれた思考は、己一人は守れたとしても、大きな組織、大勢のチーム全体を守ることなど出来はしないのでした。

つい先日、マクドナルドでまたしても異物混入が起こりました。

自分が作ったパンの中に髪の毛一本が入っていた・・・そんなレベルの話ではなく、またしてもあの大企業が窮地に落とされるかもしれないという、同じ食品製造者としての動揺は私に限ったことではないと思うのです。

しかし、その根本は同じです。

どこかの時点で異物混入を許してしまったという事実・・・

そして適切な対処までの報連相の甘さ・・・

今までの自分にも何度も何度もこのようなハラハラとさせられる事件がありました。

しかし、何度それを解決してきたとしても、「ある程度は仕方がない・・・」という甘さが確実にありました。

計量ミスも配合ミスも、そして異物混入もわざとやる人は誰一人いないでしょう。

しかし、たった一回でも許さないという姿勢で臨まない限り、安心して買いに来てくださるお客様は必ず減ってしまいます。

手作りという安心感だけで商売ができる時代はもう終わります。

「ごまかしのない人が作る衛生的な工房」

今までの自分の甘さを律して、自らが先頭に立ち、手作り工房の現場を本当に安心して来店できる工房になるようアドバイスしていきたいと考える今日この頃であります。