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ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

フランスパンのクープが荒れてしまうのはなぜ・・・??

まずはこちらの画像を見てください。


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色々と突っ込みどころはあるのですが、一番のお悩みは

”クープした部分が避けてしまう、そしてくぼんでしまうのはなぜなのか??”

ということのようです。

何度かのやり取りの中で確認できたのは、良い時もあればこのようになってしまう時もあるのだとか・・・

いわゆる不安定この上ない状況であるということですね。

この画像を見て、「私の店のパンと同じだ・・・!」と感じる人もいるはずですが、たしかにこんな感じのパンはよく見かけることがあります。

全く気にしないで作っているというお店もあると思いますし、何とかしたいとは思いながらも断念してしまったという方もいることでしょう。

クープが奇麗に割れていないからと言って、美味しくないと言い切れるようなものでもありませんしね。

しかし大切なのは、「なぜこのようになってしまうのか??」ということを実感できずにパン作りを続けている人と、自分の理想のパンを作り上げるために常に問題解決にチャレンジする人とでは、明らかに差が出てしまうということなのです。

問題を解決するというのは、とても勇気がいります。

なぜかと言いますと、「人に自分の無能さを知られてしまうのではないか」とか、「自分の製パンレベルが見抜かれてしまうのではないか」というような思いがよぎり、ついつい流されてしまうところを、あえて恥をさらし、自らの無知を公にしなければならないからです。

自分のプライドや経験との戦いであるとも言えますね。

そして、そんなプライドよりも真実を追い求めようとする姿勢が勝った人だけに、問題解決というご褒美が舞い降りることになるのだと私は思います。

今回の質問者様も、問題が完全に解決するまでには多くの時間を要しました。

一般的な製パン理論だけでは、そのお店の設備や技術に適さない場合もあります。

絶対にこれが問題点で、このように改善すれば間違いない・・・と言うことは無いような気がします。

パンもオリジナルなら、そのパンが理想の形・理想の味になるための理屈もまたオリジナルだということです。

この画像のフランスパンをよ~く見てみると、いくつかの問題点が見えてきます。

それは、一本一本がすべてバラバラだということに尽きます。

クープが避けることを改善したいのであれば、まずはなぜそうなるのかの部分的な解決法は当然必要ですが、その前にそもそもバラバラな成形や、バラバラな生地重量を改善しない限り、トカゲの尻尾切りと同じでいつまた出てくるかわかりません。

しかも、クープの深さやバランスも一本一本バラバラです。

今日作ったこの数本を改善したいのと、すべてのパンをいつも理想通りにしたいのとでは、それはそれは重要度が違うというものです。

ですので、毎日安定したパンにしたいのであれば、すべての問題点をきちんと見定めて、改めていく勇気と熱意をスタッフ全員が共有しないことには始まらないのです。

さらにです、夏場と冬場、そして天候によっても生地の感じは違ってくることは皆さんもよくご存知でしょうから、毎日違う取り組みをしなければならない場合もあり、気が抜けないのがパン作りと言うものでしょう。

そんなめんどくさい理屈にも素直に対応してくれて、とことん改善したいというオーナーの強い熱意により、ようやく問題解決に至った画像がこちらです。


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今では95%くらいの確率で良いパンができているという嬉しい報告をいただきましたが、今回の件では私も多くのことを学びました。

それは、「とにかくあきらめないこと」がいかに重要か・・・

そして、「どこまでも謙虚に取り組む姿勢」が生み出す可能性の素晴らしさでした。

正直無理ではないかと私の方が心が折れていました・・・

ところがオーナーは絶対にあきらめない・・・

すごい人がいるもんですね~

もっとすごいところは、今回の改善のポイントを他のパンにも広げて応用したことによって、すべてのパンに自信が持てるようになったという点なのです。

”一時の恥” をものともせず、事実に目をつぶることなく、自らの手で自らの作る商品に輝きを与えたその努力の日々に、最大の敬意を表します。

ということで、全てとまではいきませんが、皆様のパン作りの参考になればとの思いで今回のポイントの一部をご紹介しておきましょう。

問題の画像を見ると、そのフランスパンのクラストは艶々としていて、とても滑らかに見えます。

これは、ミキシングがやや過度に行われていたことを示します。

また、クープのバランスが悪いのはもちろんなのですが、クラムがくぼんでしまっています。

これは、焼成中に温度差が大きくなった場合などに起こる現象になります。

つまり、一つには良く捏ねられすぎてコシが強い生地が、予想以上に窯伸びしてしまっているという点。

もう一つには、焼成前半の温度が低めなのに対して、後半で高温になっている可能性があるという点です。

基準よりも弱い温度で焼成すると、クープと言うのはとても良く開きます。

適度に開いた時点で表皮が焼けて硬くなることで、クープはそこでとどまるのですが、温度が弱いといつまでたっても表皮が固まらずに、過度に開いてしまうのです。

しかも、そのように低温で焼き始めたパンは中心に火が通りにくくなっていますので、クラムがもろいわけです。

そこにきて徐々に温度が上昇していくと、その温度を表皮が中心となって受ける形になり、より伸びようとするパン生地は、外側と内側にアンバランスな力が働いてコシ落ちしてしまうのです。

オーブンにパンを入れると、一時温度がやや下がることはパンを焼いたことのある人なら誰でもが経験していることでしょう。

しかし、それは徐々に設定温度に戻っていくわけですから、入れてすぐに温度が下がったからと言って、設定そのものをすぐに上げてしまうと、最終的には後半とても温度が強くなってしまいます。

つまり、温度差がより多くなってしまうということなのです。

様々なオーブンの機種があり、その能力によっても違いがあることは確かですが、焼成中の温度差というのは限りなく少なくするべきなのです。

また、それはどんなパンなのかによっても全く違う訳ですが、フランスパンに関しては特に温度差を無くすことがとても大切になります。

焼成の後半にダンパーを開いて庫内の蒸気を逃がすべきか・・・については、様々な意見があろうとは思いますが、それが温度をも下げてしまうような行為であるならば、ダンパーは使わない方が無難だと言えます。

また、フランスパンに限って言えば、焼成の初めは高温帯が良く、そこから少しだけ温度が下がっていく焼き方が良いと言えます。

捏ね方から生地の取り扱い方、そして生地の温度や焼成時のスチームの量など、良いフランスパンを作るためのポイントは多々ある訳ですが、クープが荒れるというのは温度変化が一番の原因であり、特に後半に温度を上げるとこのようになるということをご紹介しておきたいと思います。