ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

確かにややこしいかも・・・・

こんな感じの質問がたまにきます・・・


私自身もできるだけ捏ねることは控えめにしようと心がけていますので、しずかな朝さんの捏ね過ぎない方が美味しくなる・風味が良くなるという記事を拝見して確信が持てたような気がしています。
とは言うものの、よく捏ねてよく伸びたふわふわとしたパンのクラムを見ていると、とても幸せな気持ちになったり、それはそれで白くてふっくらしたご飯のような旨味と言いますか甘みと言いますか、適切な表現なのかは解りませんが、とてもなめらかそうできめ細かくて、もっともっとしっかり捏ねたらどのくらいまでふんわかした感じになるのだろうなんて思うときもあって、もちろん好みの問題もあるのでしょうけど、いったいどちらが美味しさという意味において正解なのか考えても考えても答えが出ません・・・(パン教室主催者女性)

こちらの記事を拝見してから捏ね方について色々と勉強したり調べたりするようになりました。私なりの結論としてはポリ袋を使ってある程度捏ねてから、その後揉み込むというやり方でいつもパンを作っていますが、特に図書館などでパンに関する書籍を読んでいると、手捏ねでは捏ね方が足りないのでパンが固くなるとか膨らみが悪いという内容のものが多く、しずかな朝さんの記事の中にも家庭でのパン作りでは捏ねが足りていない事が多いと書かれていますよね。これって家庭では捏ねが足りていなくて膨らみは悪いけど、その方が味は良いというような意味なのでしょうか?・・・
(パンをこよなく愛する主婦の方)

・・・有名店の男性シェフが書いている書籍を拝見すると、そのほとんどはしっかり捏ねるべきだと書かれているのに対して、料理研究家や女性シェフの書籍ではあまり捏ねるということに重きをおいていないような気がしています。
これは、パン屋さんのようなレベルのパンにするにはよく捏ねなくては駄目で、家庭のレベルでは捏ね方よりも楽しく作ることとか手軽さを教えたいということでしょうか?
生地の温度やフロアータイムも男性シェフの方が細かく書かれていて、女性シェフの方は人肌くらいとか2倍くらいというような表現が多いような気がしています。
しずかな朝さんも男性なので、生地の温度管理とか発酵時間とか捏ね方などについて細かく書かれているのかなと勝手に解釈しています(笑)
だらだらと書いてしまい申し訳ありません。最後にひとつだけ教えていただきたいことがあります。
しずかな朝さんの記事の中には、生地の取り扱いで生地を切ったりすることで良いパンにならないというような解釈が多い気がするのですが、捏ねるという作業での生地を切ったり引っ張ったり叩きつけたりということは大丈夫で、形を作る段階では駄目だということなのでしょうか?

しっかりと捏ねてしっかりと発酵させることできめ細かなパンになる、ただそれだけのこと。
あなたの解釈はまぎらわしいだけだ・・・


・・・とまあこんな感じですけど、最後のパンチはすごいでしょ (笑)

でも意外とこういう意見も多かったりするのです。

質問をくださる皆さんは、実によく隅から隅までブログの内容を読んでいてくださり、矛盾点や誤字脱字もすぐに教えてくださいます。

色々なご意見、そして色々な考え方があって当然だと思いますし、パンというのは本当にややこしいと私自身いつも感じています。

過去の記事に何を書き、どのように表現してきたかについては私よりもむしろ皆様のほうが詳しいかもしれません。

今更言うのもなんですが、その時の気分やひらめきによって多少の方向転換があったり、そもそもそこにはあまりこだわりはないみたいな内容のときもあったと思いますし、意見がブレブレで理解できないとか、理論とか言いながらなんのデータもないとか、あなたの意見は完全に間違っているというようなご指摘もたまにいただきます。

そのようなご指摘や反対意見などを踏まえた上で、今後はどう改善していくか・・・と言われれば、何も変わらないでしょう恐らく^^;

思うがまま、感じるがままにお伝えしているだけのサイトですので、あとは読んでくださる皆様の感性におまかせしたいと思っています (^^)

私が求める製パンの理論というのはズバリ、 ”イメージ” を作るための導きみたいなものだと考えています。

研究データとか成分分析とか、パンを科学の力で見ていくというようなものではなく、毎日の作業の中にある失敗の原因とか成功のコツとかを、なぜそうなるのか??という観点から徹底的に見つめてきた、経験から言える根拠を示しているだけなのです。

今現在も毎日毎日、来る日も来る日も ”なんでこうなるんだ” ”どうしたらもっと美味しくなるんだ” と悪戦苦闘の連続です。

ですので、たとえ今日うまくいった経験をしたとしても、それが次の日にはまた少し違った形の改善方法が見つかるなんてこともしょっちゅうですので、自分の中でも未だに定まらないことも多いのが実情なのです。

とは言え無責任にもこうして様々な方々に発信してきた以上、自分の信念だけを信じて貫いていくのみです。

ということで、厳しいご意見は若干スルーしながらも、今回頂いている ”捏ねるのややこしさ” について考えてみたいと思います。

しっかりと ”イメージ” として感じ取っていただければ幸いです。

同じ小麦粉を使って、同じような配合と条件のもとで捏ね方だけを変えてみたと仮定します。

それがとても強い粉、つまり蛋白量の多い粉であった場合には、風船の数が最大になる時間の幅は多く長くなりますので、しっかりこねてこねて、多少こねすぎてもそう簡単にはこねすぎにはならないでしょう。

ですので、強い粉ならばしっかりとこねることで得ることができるキメ細かさとか、ふんわりとふくらんだパンにする為のやわらかくて滑らかな風船の数にも期待がもてますので、より柔らかく、よりふわふわとしたパンを作りたいとお考えでしたら、強い粉を選んでしっかりとこねることは理にかなっていると思います。

相反して弱い国内産小麦や中力粉、フランスパン専用粉などであった場合は、こねすぎからくるダレみたいな状態に陥りやすくなりますし、そもそも風船の数自体多く作ることが困難になります。

困難なのに一生懸命こねたところで、結局はもともと少ない風船しか無いのに更に割ってしまう可能性もあるわけですから、これはパンのふくらみという観点からしてもお勧めできませんし、味とか風味という観点からもお勧めできません。

では、そんなに強いわけでもなく、かと言って中力というわけでもない、そう、皆様が一番多く使われているであろう一般的な強力粉ではどう考えればよいのでしょう。

これは、イメージとしてはやはりしっかりこねる側が有利だと私は考えます。

なぜなら、そもそも風船の数の多い強力粉以上の強さを持つ小麦粉というのは、しっかりと水を含ませてしっかりとこねることによって最大の効果を発揮することができるのであり、これをあえて中途半端にこねてやめてしまうと、おかしな気泡ができてしまったり、焼きムラができてしまったりする場合があります。

中途半端に伸びた場所と、火の通りが悪くてしぼんでしまう場所もできるなど、しっかりこねることによって可能になる力を、あえて封印してしまうことで伸びたいのに伸びれない・・・ムムム・・・みたいなことになり、結果中途半端に失敗してしまうこともあるでしょう。

ただしです、実はここがとても重要な鍵なのですが、しっかりとこねるというイメージは、いわゆるグルテンのつながりを100%にするという意味で言っているのではないのです。

100%だとこね過ぎで、80%くらいに抑えてほしいというのが私の見解になります。

わかりにくいと思いますし、イメージも追いついていかないかもしれませんがもう少し続けますね。

家庭で1個とか6個くらいしか作らないのでしたら、それほど気にするようなことではないかもしれませんが、たとえばもっともっと多くの生地を一度に扱う場合などには、特にその考え方が重要となります。

今現在私が毎日捏ねているパン生地の一回の捏ねる量というのは、小麦粉75キロ分になります。

業務用の小麦粉が1袋25キロ入りですから、それを3袋使って一度に作ることになります。

一般的なパン屋さんでも、中堅どころで一回の捏ねる量は小麦粉15キロだったりすると思いますが、要するに家庭でパン6個分を捏ねるのも、私のように一度に2500個分を捏ねるのも、パン屋さんのように500個分を捏ねるのも、機材の違いはあるにしろ、捏ね方とか時間はほぼ同じようなものです。

では何が決定的に違うかと言いますと、こねた生地を処理していく時間、つまり分割とか成形にかかる時間が圧倒的に違うという点ですね。

いくらパン屋さんの腕が凄いと言っても、500個のパンを家庭で作る6個のパンと同じスピードで分割や成形を行うなど不可能ですよね。

私の場合は尚更で、初めに分割したり成形したりしたものと、最後の方に成形する生地の状態を同じように持っていくには、かなりの工夫が必要だということはおわかりいただけると思います。

ではその間に起こる時間差によって、一番何がポイントになるかと言いますと、いわゆる発酵が進んでいく過程において、それはゆるやかにミキシングされているのと同じ状態になるということなのです。

つまりその原則から言いますと、発酵が進んでしまう後半のパンでは、非常によく捏ねられた状態になり、更に後半のパンになると過発酵になる可能性が大なのです。

これはパンのボリューム、つまり膨らみ方に目を向けた考え方なのですが、それとは別に味とか風味という観点から見た場合、家庭で手で捏ねる、あるいはパンこね機で捏ねる場合と、パン屋さんが機械で捏ねる場合と、私のように大量に大きなミキサーで捏ねる場合とでは、捏ねられ方というものにどうしても大差がでてしまいます。

それが、捏ねることによって起こる摩擦なのです。

大量のパン生地が大きな機械で捏ねられていくということは、それはそれは大きな摩擦が発生します。

イメージとしては、家庭で6個分のパン生地をすり鉢の上に乗せて、相撲取りが3人がかりで踏みつける・・・みたいなイメージでしょうか・・・う~んちょっと違うかな(^^)

いずれにしてもかなりの摩擦ですよね。

この摩擦をダメージにしないためにどうしたらよいかを考えながら捏ねないといけない訳です。

パンの捏ね方はどのような方法とどのような状態にもっていくことがベストか・・・を考えるときに最も大切なこと、それは

捏ね方だけがパン作りではない

ということを知ることなのです。

どのくらいの量をどのくらい作るのか、機材はなにか、小麦粉は何か、そして一番必要なのはどんなパンが作りたいのか・・・ですよね。

それれをすべてイメージした後、はじめてではどのくらい捏ねるのがベストかが決まってくるのです。

一点だけを見て、レシピにこう書いてあるからとか、書籍にこう書いてあったからということではなく、自分のパンの完成品イメージにあった原材料の選定と捏ね方をおこなうことによって、はじめて答えが出てくるのではないかと思うのです。

より強い小麦粉を使ってしっかりとこねて小麦粉の最大限の力を引き出せれば、ふんわりとふくらんだ、柔らかさが長持ちする、きめ細かなパンになりますが、別の観点から見ると、気泡が多くよく膨らんだパンには火が通りやすいので、パンの水分が抜けやすくパサつきやすくなります。

また、クラストが薄くなりますので、皮の旨味みたいな点ではやや劣るでしょう。

必要以上に伸びた場合は、味がぼけることもあるでしょう。

こねたときの摩擦がダメージにつながっていた場合、香りは最悪でしょう。

・・・というように、どう捏ねるべきかの答えは、どんなパンになったかを検証してみなければなりません。

つまり、捏ねるも発酵させるも成形するも焼くも、すべてがセットで出来ているのがパンであるということなのですね。

実に当たり前のことのはずなのですが、どうしても点で見てしまうことが多いパン作り・・・

難しく考えるのではなく、こんなパンが作りたいという具体的なイメージを描くことが大切なのではないかと考えますがいかがでしょうか。