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ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

発酵種のメリット・デメリット

Q 私の場合パン屋勤めの経験は今のお店で三件目になるのですが、三件ともほぼパートフェルメンテを使った製法でした。


私個人の意見としては、別に入れても入れなくてもそう大差はないのではないかと感じていまして、それをチーフに伝えても、チーフも大して入れる意味を感じてはいない様子です。

どのお店でもそうだったと思うのですが、パートフェルメンテを入れることによって発酵時間が短縮できるということを目的にしていました。

だとすると、もしかりに入れるのをやめた場合、イーストを若干増やす、改良剤を若干増やす、フロアータイムを長くする、パンチを打つということで補うことは可能でしょうか?


A 確かにパートフェルメンテや発酵種、そしてルバンリキッドや発酵風味液などのいわゆる種物を入れているパン屋さんは多くあると思われますが、本当にその効果を気に入って、そしてメリットを最大限に生かしているかと言うと意外にそうでもなく、そう教わったからやっているとか、上司の命令だから、決められた配合だからということで意味を理解せずに使用していることも多いような気がします。

入れたパンには入れたなり、入れないパンには入れないなりの結果が表れることになり、それが目指しているものなのであればどちらでもよいとしか言いようがありませんが、あまり効果を感じられないで使用しているようでしたら、そもそも行うだけ無駄な製法だと言えるのではないでしょうか。

何か種物を入れないと不安であるというようなニュアンスの質問を良くいただくのですが、それは少し間違っていると私は思います。

いわゆる単純なストレート法の方が、美味しさを表現しやすいパンは実際にありますし、特に近年では保存は冷凍という方も多いと思いますので、何が何でもすべてのパンが常温での日持ち効果を期待して種物を入れなければならないということになはらないでしょう。

またおっしゃるように、発酵時間の短縮のための使用でしたら、確かに配合を調整すれば済むことではありますよね。

何となく面倒だな・・・とか、特に効果を感じたことがないというような場合は、無理に行う必要は全くない、と言うよりもむしろあえて辞めてみて、違いを見出してほしいと思います。


Q 発酵種はいつも三日間くらいは冷蔵保存で使用しているのですが、どうしても三日目のものを入れると生地がダレ気味になる気がするのですが、その場合吸水を少し減らしていますがその考え方でよろしいものでしょうか?
また、なぜ日にちが経過すると発酵種はベタベタとしてくるのでしょうか?


A 冷蔵庫で生地を保管されていると思うのですが、冷蔵庫内の平均温度である5℃付近というのは、生地中の水分が最も不安定になる温度帯だと言われているのです。

凍りはしないけど発酵も過度には進まないという冷蔵温度帯は、生地を熟成させながら発酵をコントロールできる唯一の温度帯ではあるのですが、同時に生地の中の結合水という生地内部に浸透しているはずの水分が外側へと逃げていく遊離水現象が起きてしまい、そのことによって水っぽくベタベタになってしまうのです。

ですので、冷蔵保存する限りはどうしてもこの現象から逃れることは難しく、三日以内に使い切っていただくのが一番の方法になります。

またもう一方では、アルコール発酵がじっくりと進むことによってパン生地はより酸性へと変化していきます。

この酸性になった生地を入れることによって、パン全体のペーハーが弱酸性になり、のど通りのよいパンになるのです。

イメージとしては、飲み物がないと飲み込めないようなパンではなく、スッと口の中で溶けるようなパンになるのです。

ですので、ベタベタ感はあるものの、多少吸水を減らしたとしても、特に副材料を多く含むリッチな配合のパンには、三日目くらい経過したものを使われた方がより効果的だと言えるのです。


Q 今回は発酵種のミキシング時間について質問させていただきます。

こちらのブログでは発酵種のミキシングは低速で5分ほどですが、フランスパン生地の残りを種として使用する場合には約10分ほどミキシングされているものもあると思います。

また、食パンなどの生地を冷蔵保存しておいて種として使用する方もいると聞き、そうなると15分くらいはミキシングされているのではないかと推測できますが、しずかな朝さんがおっしゃる発酵はゆるやかなミキシングであると言うことを考えますと、食パン生地などの十分に捏ねられてミキシングを終えた生地の場合は、冷蔵庫内においてオーバーミキシングになってしまい種としては向いていないということになるのでしょうか?

また、食パン生地などのように砂糖・油脂・卵などが入った生地を発酵種として使うというのは正しいことなのでしょうか?

何か特別な狙いがあってのことなのでしょうか?


A そうですね、本当にややこしいですね~

発酵種として紹介されている生地と言うのは、一般的にはほぼリーンな配合のものであることが多数だと思いますが、それはなぜかと申しますと、パンの配合そのものはメイン配合、そしてそこに香りとか風味付けの目的でちょい足しするための種の配合はメインを邪魔しない、どんな配合にでも添加できるようにシンプルにしたいという考え方なのです。

ですので、例えば食パン生地を種としてフランスパンに入れたとすると、そのフランスパンの本来の配合にはない材料も加わってしまうことになり、無糖でもなく無油脂でもなくなってしまうのです。

だから美味しくなくなる・・・かどうかは分かりませんが、もしそのフランスパンに油脂や卵を配合したくないのであれば、食パン生地を入れることは出来ないということになりますよね。

リーンな配合の発酵種なら、どんなパンに入れてもそもそもが小麦粉と塩とイーストと水分だけのようなものですから、メイン配合の邪魔はしないということになる訳です。

それが分かったうえで、食パンを捏ねるときに前日の食パン生地の残りを冷蔵保存しておいたものを添加するというような方法をとった場合、配合に変化はありませんし、冷蔵保存しておいた生地は若干ペーハーが下がってしっとりとしたパンが出来上がることになるでしょう。

また、ミキシングの状態を考えてみますと、しっかりと捏ねられた発酵種というのは、ダレるのが早くなることは確かだと思いますが、その分本生地の捏ね上りが若干早くなると考えられます。

ですので、いつも通り捏ねていたら捏ねすぎになる可能性が高いことになります。

その点だけ注意しておけば、特に気にするようなことはないでしょう。

私が思うに、発酵種というのはミキシング状態とか冷蔵保存時間よりも、小麦の選定にポイントがあると考えています。

簡単に言いますと、より力の強い強力粉で種を作っておくことで、その種を入れた生地はとても弾力があり、とてもきめ細かくなり、ふんわりとしたパンを作りたいときには大いに役に立ちます。

他方、中力粉や味の強い小麦粉で種を作っておくことで、特に香りや味が良くなったり、のど通りの良いパンになりますので、使い分けをすることがベストだと考えています。

私個人の話で恐縮ですが、ここ数週間の間に手捏ねで数十種類のパンを作りました。

一度に捏ねるのは小麦粉3キロ以上ですので、手でこねるのは大変ですし、ポリ袋も使えません。

使用するのは大きなボールのみで、5分ほど混ぜたら後はパンチをくり返して生地を作っていくのですが、そんなときに役に立つのが強い粉で作った発酵種になります。

フランスパンからリッチな配合のパンまで、オールマイティーで手捏ねの後押しをしてくれます。

パンチを数回行うことで生地はどんどんプリンプリンしてきますので、一般的なミキサーを使って捏ねる場合よりも10%以上吸水を増やしておかないと生地が締まりすぎてしまいます。

そして、完成したパンはとてもボリュームがあり、しかもクラムがみずみずしいパンになります。

発酵種に何を求めるかによって使い分けることが、種を最大限に生かせるコツになります。

色々な小麦粉を使って自分なりの種を見つけましょうね。