FC2ブログ

ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

Top Page » Next
2019-12-10 (Tue)

成形って形を作ること??・・・それだけ??

成形って形を作ること??・・・それだけ??

パン作りを仕事にしていますと言う人の中には、大きく分けて手作りと機械生産とがあると思います。その中道みたいな人もいるかと思いますが、手作りの人でも中道の人でも、手を使って生地に接したり、あるいはクープを入れる部分だけは手であると言うような人の場合でも、手による生地から伝わってくる感触によって良し悪しを判断すると言うことに変わりはないと思うのです。この「生地から伝わってくる感触」というものを感じ取る...

… 続きを読む

パン作りを仕事にしていますと言う人の中には、大きく分けて手作りと機械生産とがあると思います。

その中道みたいな人もいるかと思いますが、手作りの人でも中道の人でも、手を使って生地に接したり、あるいはクープを入れる部分だけは手であると言うような人の場合でも、手による生地から伝わってくる感触によって良し悪しを判断すると言うことに変わりはないと思うのです。

この「生地から伝わってくる感触」というものを感じ取ることが出来、かつそれをその後の工程に結び付けることが出来る、あるいは修正などを行いながら最適なレベルにもっていくことが出来るという技術が、すなわち成形であると言えるのではないでしょうか。

手作りパンの世界で成形と言うと、読んで字のごとく形を成すことであると捉えがちですが、実際の作業の中においての手の役割を考えると、唯一生地と接する部分であり、他の様々な情報をも兼ね備えたうえでそのパン生地の状態を即座に捉え、修正や改善、そして時には治療を施し、見事に最良の状態に導くことが出来る唯一の武器だとも言えるのではないでしょうか。

パンの美味しさとか、パンの良し悪しを決めるのはいったい何か??

それはズバリ ”レシピ” でしょうか・・・

それとも十分な修行に裏打ちされた技術でしょうか・・・

それともあくなき探求心による創意工夫でしょうか・・・

いやいや、最後はやっぱり情熱でしょう・・・と言うように、何をもって自分のパンに自信を持てるかを考えていくと、恐らく尽きない話になってしまいますよね。

恐らくですが、ほとんどの方がなんとなくは自信をもって毎日パンを作られていることと察しますがいかがですか?

たとえ数万円であったとしても、売り上げがあると言うことはそのパンにお金を払っても欲しいと思ってくださる方がいると言うことですから、それは自信をもっていいと言うことになりますよね。

しかし現実には、自分のパンに自信がないという方が意外と多いのに驚きます。

その中身には大きく分けて3通りある訳ですが、一つは今の売り上げでは少ないので、これが自分の精一杯なのだと解釈してしまい自信喪失してしまう場合。

この場合は、自分が設定した売り上げ、あるいはライバル店だと感じているお店との売り上げ対比に右往左往している状態。

もう一つは、他のお店、あるいは他のパン職人が作るパンを食べて自分よりも美味しいと感じて自信喪失してしまう場合。

この場合は、自分にはあんなパンは作れないし作り方も解らない。やはり経験不足なのかなといって落ち込んでしまう状態。

そしてもう一つは、自分で作ったパンを自分で食べて満足できない、あるいはその完成度が気に入らない場合。

この場合は、若干ネガティブ傾向の方に多いパターンで、常に誰かや何かと自分を比べてしまう情報収集過多の人が、他人の指摘ではなく自己自滅してしまう状態。

いかがですか、ご自分に当てはまる部分はありませんか?

私にはあります。 しかもほぼ全部に当てはまります(笑)

常に他人が気になるし、自分に自信がないし、他のパン屋さんのパンがとても素敵に見えるし、他のシェフはカッコよく見えるし、繁盛店はうらやましいし、かといって今以上の努力は嫌だし・・・

どうしようもないでしょこんな性格じゃ・・・

しかし、こんな私でもなんとか・・・ほんとうに何とかかんとかパン作りに携わっていけているのは、この手の平があるからだと思っているのです。

誰がどうということでもない、何が本当なのかということでもない、自分だけが感じる、自分だけが知ることが出来るパン生地の状態、そして最良への道。

本来はどうなのか、科学的にはどうなのかというようなことはどうでもよく、自分だけが感じ取った感触と向き合いながら作業をしていくことで、フロアータイムとかベンチタイムとか言われている、いわゆる発酵時間などではなく、あくまで状態として把握していくことでパン生地を最終発酵まで最適な状態で導くことができるという ”根拠のない自信” 、それだけが私を支えているような気がしてなりません。

私は、ミキシングや分割のタイミング、そして焼成に至るまでのすべての工程に対して、あまり時間という概念で捉えることがありません。

こういう言い方は適当ではないかもしれませんが、いわゆる ”いい加減” であり適当であり、その場その場に応じて違うのです。

これは、私と一緒に作業をしたことがある人なら皆さんご存知だと思うのですが、そもそもタイマーなどもあまり使いません。

すべて感覚に任せるみたいなところがあり、たとえタイマーをセットしたとしても、実際にはその通りには行いません。

ですので、ほぼすべてを時間で管理しているような工房にお邪魔した場合には、すべてのパンが過発酵や未発酵であっても、何事もなかったかのように作業が進んでいくことを見るたびに悲しくなりました。

例え毎日完璧に同じ数量のパンしか作らない工房だったとしても、なぜか生地状態だけは毎日違うのがパンなのだと私は思っています。

それをただ時間通りに行ってしまうと、手の平がそのことをスルーするようなクセが付いてしまうのではないかとさえ感じているのです。

手を使ってパンを作ることができるのが、まさに手作りパンの特権です。

厳しくとらえれば、より繊細さが要求される仕事なのであり、機械で管理された安定中心のパンに比べて劣ることもあり得る反面、機械ではできないことは無限にあると考えられ、それを実現できる可能性はすべてその手に託されている訳です。

そう考えると、なんと壮大な可能性を秘めたものを我々は武器といて備えているのか、そんな実感が湧いてきませんか。

発酵のコントロールというのは、科学的に見ても管理の難しい分野のはずです。

その見極めを手の感触のみで行うのが我々手作りパン屋なのですから、大いに自信をもって取り組んでいきたいものですよね。

そうは言っても自分の手に自信がない人は多いと思います。

そこに自信をつけるために必要なことは一体何なのか、それは人によって違うと思うのです。

しかしまずは、もっと自分の手に期待すること、可能性を秘めていることを認めてあげることです。

”さすがは私” とか ”カンペキーッ” と声に出して自分を称賛しましょう。

そして手に向かって叫びましょう、”おまえは最高だーっ” と。

少なくとも私はそのようにして自分を奮い立たせてきましたよ。

手作りパンを仕事にされている方々が、成形というパン生地との触れ合いを通して、もっともっと自分のパン作りに自信を持たれることを切に願うものです・・・