ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

発酵過多のパンはまずい?

発酵過多、つまり発酵させすぎてしまった生地のことですが、規定の発酵時間を過ぎてしまったパン生地は、はたして美味しいのでしょうか? まずいのでしょうか?

ここでは、パン生地を捏ね上げてから分割するまでの時間が大幅に経過してしまった場合を考えてみましょう。

まずこの場合パン生地は、非常に大きく膨らんでいますよね。

そのまま更に膨らませていくと、やがてはしぼんでしまいます。

そうなるともう完全に美味しいパンにはなりません。

では、なぜ美味しくなくなってしまうのでしょうか?

パン生地が膨らんでいく時、イースト菌はアルコール発酵を行い、パンを膨らませるための
”炭酸ガス”を出しています。 

この炭酸ガスは、イースト菌の量により、出る量が変わるのですが、いずれにしても捏ね上がった生地を分割して成形して、最終発酵を取ってオーブンに入れた時に、最後のもてる力を出し切って終了するという仕組みになっています。

それが、分割する前に余計にガスを使ってしまうということは、全体量が決まっているのですから、終盤に使うガスが不足してしまい、膨らみの悪いパンになるわけです。

お解かりでしょうか??

膨らみが悪くたって、別に味には影響ないようにも思えるのですが、パンが膨らんでいるのといないのとでは、火の通りが違うのです。

極端に言えば、膨らんでいる方はパンと言えますが、膨らんでいない方はお好み焼きの具の入っていない状態のようなもので、おおよそパンとは言えない物体になるのです。

勿論そのようなパンも無いわけではありませんが、そのようなパンは最初からイースト菌が少ないか、入れないパンの場合です。

通常のパンは、細かい気泡が無数につまっていて、ふわふわとスポンジのような内層になっていますよね!

パンが美味しいのは、あの無数の気泡のお陰なのです。

イースト菌が炭酸ガスを出してパンを膨らませると言いましたが、実は膨らませているだけではないのです。

私達が仮に風船を膨らませたとしましょう。

この時に風船に入った空気は、あなたが昨日食べ過ぎた餃子の香りがするかもしれません・・・(笑)

しかしイースト菌はと言うと、パン生地を膨らませていく過程で、とても良い香りをガスと一緒に入れてくれるのです。

その良い香りが入った無数の風船を焼く事によって、香ばしさもプラスされて、あの香ばしいパンが出来上がるのです。

この事を ”熟成” と表現しますが、お酒や漬け物などと同じように、パンは発酵食品であり、菌の力を借りて熟成させることで、はじめて美味しいパンとなるわけです。

パンを作る場合、イースト菌の量に応じて発酵時間が決まりますが、多くのレシピは、それらを考慮して考えられています。

ですから、発酵時間をきちんと守ってパンを作ると言う事は、美味しいパン作りにはとても重要な事なのです。

美味しいパンを作るのには技術が必要だと言われています。

勿論そうなのですが、どんなに技術やテクニックがあっても、発酵させ過ぎてしまったらお終いです。

逆に言えば、テクニックが無くても、時間をきちっと守ってパンを作る事が出来れば、美味しいパンが出来るということになるのです。

この事を発酵管理といいます。

美味しいパンを作るにはどうしたらいいのですか?・・・・と質問されたら、迷わずに

”発酵管理をきちんとすることです” と答えて下さい。

きっと尊敬の眼差しで見られる・・・・かも??(笑)




カリスマ販売員の実話

世の中には、素晴らしい販売員さんがたくさんおられます。

私の経験の中で、カリスマ販売員と言ったらあの人、と言える方の話を少ししたいと思います。

その前に、一つだけ断っておきたいことがあります。

それは、世の中には多くのサービス業が存在します。 それぞれのサービス業には、それに合った接客の手法があり、決してホテルとベーカリーの接客は同じではないと言う事です。

これからお話しするのは、あくまでベーカリーのお話ですので、お間違えの無いように!

そのカリスマ販売員さんは、年齢は50歳後半位で、決して美人ではありません。

どちらかというと、何処にでもいるような農家のおばちゃんといった感じの、気取らない人です。

その方の周りには、常に人だかりが出来ます。 そして、彼女が奨める商品は、瞬く間に売れていくのです。

彼女は岐阜県の人なので、若干のなまりがあり、それがまた親近感があるのです。

彼女は様々なお店から、常にひっぱりだこです。今日はあっちのお店、明日はこっちのお店・・・・と。

彼女が一人お店にいるだけで、BGMは必要ありません。 店長もいりません。

ただ、レジで会計する人がいれば、あとは彼女が全てをこなしてくれます。

一度彼女から商品を買ったお客様は、そのほとんどが彼女のファンになります。

そして必ずまた来店するので、客数はどんどん増えていきます。

そんな嘘のような本当の話が実際にあるのです。

では、彼女の何がそんなにすごいのか分析してみましょう。

カリスマ性 その1

彼女は誰彼かまわずに話しかけます。 
どこからお越しですか? 今日は良いお天気ですね! こんなの食べた事ありますか?
私はこれ毎日食べてますけど、おいしいですよー!  ここの職人は腕が良いもんで、ちょっと
試しに食べてみてください! それからこれなんですけどねー、ちょっと他には売ってませんよ。
ここの職人は顔の方はどうでもないんですけどね、なにやら研究熱心で、色々と身体に良い物
考えるんですよ・・・・・・・

てな具合に、解かりやすく言えば世間話です。

彼女にとってお客様は、皆友達なのだそうです。

最後には、相手の家族構成やら悩み事まで聞いてしまう有様。

いらっしゃいませなどと言っている暇はありません。 すぐに本題に入ってしまうのです。

彼女に接客用語は必要ないと思いました。


カリスマ性 その2

彼女はお客様との会話の中で、少しでも商品に関しての提案があったら、必ず責任者に伝えてきます。そして、答えを聞いてから、お客様に返答するのです。

提案だけではありません。

このパンは、もう少し小さく出来ないか? 少し多いのでとか、このパンは具は美味しいのだけど、パン生地と合っていないような気がするらしいですとか、もう少し安いパンもおいて欲しいそうですとか
このパンは、もう少し甘さを抑えられないか・・・・・などなど、

お客様との会話の中で、お客様がふと口にする細かい要望や好みなどをすべて憶えていて、時間があればその場で聞きに来ますし、忙しい場合は、仕事が終わってからお客様に電話しています。

彼女は一人で、クレーム処理・お客様の声の収集・商品アンケート・顧客リストなど、店舗にとって宝とも言える膨大な作業を、会話の中で全てこなしてしまうのです。

携帯のアドレス帳には、お客様の名前だらけです。


カリスマ性 その3

彼女はお客様とだけ会話をするのではありません。

全スタッフとも常に会話をしています。

彼女にとっては、お客様は友達でスタッフは家族みたいなものなのだそうです。

顔色の悪い販売員には、野菜ジュースを作ってきてくれる。 朝早いスタッフには、豚汁の差し入れをして帰っていきます。 制服のボタン付けやら女性スタッフの私服のボタン付けなども彼女がしてしまいます。 しわになっていれば、アイロンをかけてくれます。 お昼は必ず重箱を何段にも積み上げてきて、皆にふるまいます。
退社した後も、遅番の子が若い女性の場合など、懐中電灯をもって迎えに来ます。
どこまでかって? 店から駐車場までです。

そう、彼女は全スタッフのお母さんなのです。

私はいつもそれを見ていて、この人に自分の時間はあるのだろうか? と思っていました。

しかし、私がそんな質問を彼女にしようものなら、”そんなに気ばっかり使っておると疲れるよ。”
”まあ、これでも飲んで、早く寝ることですよ。” と、栄養ドリンクを渡されて励まされてしまう始末でした。


何が素晴らしい接客で、どう教育すれば立派な販売員になれるのか?

そんな事を考えるより、まず自分がスタッフの為に、はたまたお客様の為に、今何をしてあげたら喜んでくれるのだろう、彼女と出会ってからはそう考えるようになりました。

とても彼女の足元にも及びませんが、今日も私はお客様との会話を楽しんでいます。






人気のあるパン屋さんの証とは?

人気のあるパン屋さんか、そうでないかは、どこで判断するのでしょう?

売上?  客数?  客単価?  営業年数?  認知度?

どれも大事そうですねー!

凄く多くのお客さんでにぎわっている店があります。 

その店は、まぎれもなく人気があると言えますよね!

しかしそこは場所がとても良く、家賃が高い為売上のほとんどが家賃で持っていかれてしまう・・・・・というのでは、経営としては将来厳しくなるでしょうね。

一人のお客さんが沢山のパンを購入するパン屋さんもあります。

統計的には、立地が悪い人気店の場合は、なかなか行けないので、せっかく立ち寄ったからには少しでも沢山買っておきたい・・・・という衝動にかられるらしく、好立地のパン屋さんより客単価が良かったりします。

その部分だけを見ると、立地が悪いのですから当然家賃は安いでしょうし、客単価が高いと言う事は、経営的にはとても理想的だと言えるでしょう。

さて、もしもあなたがオーナーとなって新しいお店を作るとしたら、家賃が高いけど沢山のお客さんが来店するお店と、商品力に自信があるので立地は悪くても、必ずお客さんは来てくれる筈だと言って悪い立地で勝負するのと、どちらを選びますか?

売上・客数・認知度で言うなら前者でしょうし・・・・・・

客単価・営業年数を長くやりたいなら、お金のかからない後者でしょうし・・・・・・・

悩みますよね!

出店状況は決してこの二通りだけではないので、深く考える必要はないのですが、実は深く考えてほしい大事な要素があるのです。

それは、商品力に絶対の自信があるかどうかです。

立地が良ければ、どのような商品でもある程度は経営として成り立ちます。

しかしそれは、近隣に競合店が出店するまでの間だけです。

周りを見てください。

今では10年以上繁盛し続けているベーカリーは、ほとんど見受けられません。

それは、10年も経てば立地が変化してゆき、競合店が出来てしまうからです。

他方、家賃の安い立地の場合は、近隣に競合店が出来にくい為、商品力さえあれば長く営業していく事が出来るのです。

この場合の判断基準は、売上に重きを置くか、費用を抑える事に重きを置くかということです。

そして、現況では好立地と呼ばれるような場所は、有名企業によって皆取られてしまっています。

となると、おのずと売上を優先するのではなく、いかに少ない経費で出店して、商品力で勝負しなければならないかが見えてくると思います。

そこで、自分の商品力がどうなのかを考えた時、具体的になにをもって判断すればよいのでしょう。

それは、現在あなたが作っているパンを、あなたの店の従業員やあなたの家族が、誰よりもたくさん購入してくれているかどうかで解かります。

パンの好みは人によって千差万別、多種多様であり、品質も技量もこだわりも、相手に伝わらなければ絵に描いた餅です。

家族や従業員というのは、作り手を常に観察しています。

清潔か? 技術は? 安全か?  こだわっているか?  口先だけではないか? 
一生懸命か? 手抜きは無いか? いい加減ではないか? 信用できるか?

毎日一緒にいるからこそ解かる、作り手の性格や物の考え方。

それらをトータル的に信用していればこそ、そして何より思いが味となって表れていればこそ、安心して自店のパンを買うのです。

相反して、従業員が自店のパンを買わない店は、必ず潰れますよ!

あなたの作り手としての思いは、相手に伝わっていますか・・・・・・・?








接客5大用語は必要?

接客5大用語なるものをご存知でしょうか?

会社によって多少表現の違いはありますが、だいたい以下のような感じです。

1、いらっしゃいませ
2、はい、かしこまりました
3、少々お待ちくださいませ
4、誠に申し訳ございません
5、ありがとうございました、又お越しくださいませ

とまあ、こんな感じで、朝な夕なに唱和しているお店や会社も多いと思います。

どれも、当たり前と言えば当たり前の接客用語ですが、常に唱和することで、さりげなく言うことが出来たりしますし、何よりこの言葉は、接客業にとっては最低限必要な用語でもありますよね!

さて、皆様のお店ではどうでしょうか?

規模やオーナーの性格やら方針によって、また違った言葉を唱和したりしていますか?

ベーカリーを例にとって考える時、売れているお店とそうでないお店があります。

これは、商品の違いでしょうか? 接客の違いでしょうか? はたまたそれ以外の何かでしょうか?

味は良いけど、接客する気などまったくない頑固おやじがいるラーメン屋などの話は良く聞きますが、ベーカリーも味が良ければ接客など無愛想でも繁盛すると思いますか?

これらに具体的なデータは存在しません。 と言う事は、味だけで売れているお店も無いわけではないが、味が良くても売れないお店もあり、はたまた接客が素晴らしくて繁盛しているお店もあれば、接客が素晴らしいのに繁盛していないお店もある、ということです。

もっと言うなら、何が良いのかまったく理解できないのに、異常なほど繁盛しているお店もあります。

いったい繁盛するための要因は、どこにあるのでしょう?

それは、要約するとケースバイケースというのが現実でしょう。

つまり、接客用語も大切、味も大切、それ以外の要素も大切であり、決してどれかではないということで、トータル的な何か?と言えるのではないでしょうか。

そう、相性のような・・・・・・   あのお店、な~んかいいんだよねーみたいな!

私は思います。 美味しいパンとはどんなパンか?  誰が決めるのか?

それは勿論お客様です・・・・・・・と、良識のある方は言うでしょう。

しかし、私は違うと思います。

すべて作り手が決めるのです。

作り手が美味しいと思った物を作らないお店は、やがて落ちていきます。

お客様のニーズに応えなければなどと良く言いますよね。

それは違いますよ! 作り手のこだわりに、お客様が付くのです。

世の中の流行や、お客様の声と言うのは勿論大切ですが、お客様の要望と言うのは自分の好みを言っているに過ぎません。  それは、あくまで個人の好みなのです。

接客をしていて、三人のお客様に ”ドラえもんのパンが欲しいわ” と言われれば、たいがいそれがお客様の声として伝えられ、新商品として登場する事になったりしますよね。

しかし良く考えてください。 小さいお子さんがいる家庭なら、誰だってドラえもんパンを欲しがると思いますよ。 だからといって、そのお店のウリはキャラクターパンの品揃えをすることでしたか。

キャラクターパン専門店として特化するなら、そこそこの人気店になると思います。

しかし、実際にはほんの数種類置いているだけで、そのようにお客様の声を大切にするあまり、何を得意とした、何を売らんとするベーカリーなのかがお客様にも作り手にも解からなくなり、あげくにはどこにでもあるベーカリーの一員となり、落ちていくのです。

お客様の声をないがしろにしろと言っているのではありません。

作り手のこだわりがぶれてはならないと言う事なのです。

どこにでもある商品を置く事によって、ここでしか買えない商品を失っていく事になるのです。

接客もそうです。 

自信のある商品を、自信を持って販売していれば、やがてその自信がお客様を呼びます。

用語ではなく、伝える思いのある言葉が大切なのです。

この食パンは本当に美味しいですよ、私は毎日食べています。 トーストすると、と~っても香ばしくて、今まで味わった事のない食感が楽しめるんです。 口解けがいいので、いくらでも食べれちゃうんですよ。  お陰様で見てください、この体形・・・・・・

なんて感じで、お客様に作り手の本当の商品に込めた気持ちを伝えれば良いのです。

”・・・ませ” だの ”誠に” だのと、かしこまった言葉を言う事が接客ではありません。

心で接するのです。 思いを伝えるのです。

作り手の皆さん、”ぶれ”ては駄目ですよ(笑)








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