ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

冷凍生地で作る菓子パンは美味しくないのか?

冷凍生地は、あまりホームベーキングには登場しないと思われますので、ここはパン屋さん限定で説明していきたいと思います。

そもそも普通に作った、例えばあんぱんと、冷凍生地で作ったあんパンの違いは、いったいどこに表れてくるのでしょうか?

あくまで一般論ですが、普通に作ったあんパンの内層は、気泡がやや粗く不揃いで、しかし光沢があり濡れた感じになっています。

全体的によく窯伸びした、ふっくらとした、そして皮のとても薄いあんぱんだと言えると思います。

他方冷凍生地のあんぱんはと言うと、内層は詰まっていてしっかりと揃っており、白く濁ったスポンジのようになっています。

全体的に締った感じのパンで、皮がやや厚く、特にパンの底の部分が肉厚になっています。

では、これらのパンは、どちらが美味しく、またはどちらかは美味しくないパンだと言えるのでしょうか?

本来ならば、発酵時間を短縮して熟成という工程を行わない冷凍生地で作ったパンは、普通の工程で作ったパンに比べれば、様々な面で劣る事は間違いないと言えます。

しかしそれは正直申し上げて、具材の入らないパン、または食パンやブレッドなどの大型のパンに言える事であって、小物のパン・あるいは具材の入ったパンに関しては、すべてが冷凍生地はまずいのだと言う事にはならないと思われます。

なぜならそれは、パン生地と具材が例えば同量で合った場合など、具材が占める味の割合が多くなるからです。

つまり、あんぱんの美味しさは、生地だけの美味しさではなく、餡が美味しいのかどうかにもかかっているのだと言う事です。

そう考えると、もちろん餡が美味しいにこした事はないのですが、例えば餡のしっとり感や風味などを最大限に生かす為のパン生地を作る事が、総合的にあんぱんを美味しくするのだとも考えられますよね。

通常の作り方で作ったパン生地と言うのは、オーブンで良く伸びますし、ふかふかのとてもおいしいパンになります。

そのふかふかの生地に餡が入っていたら、それはそれでとても美味しい事は誰もが知る所でしょう。

では冷凍生地で作ったあんぱんはどうかと言いますと、冷凍生地というのは冷凍保存中にグルテンが損傷を受けて、とても食べ口のモロイパンになりやすいのです。

モロイというのは、別な表現だとサクイ感じになり、要するにひきのない(弾力が無い)パンになります。

と言う事は、解り易く言うと最中のように、簡単に口でちぎれるパンになると言う事です。

これはつまり、お年寄りの方などはその方が食べやすいとも言えますし、例えばこれがクリームパンなどの場合は、ひきのある生地だと噛んだ瞬間にクリームがはみ出してしまう事がありますが、サクイ生地だとクリームを押し出してしまうような事はありません。

そう考えると、菓子パンを中心とした小物のパン、あるいは具材を入れるパンに関しては、冷凍生地も大いに有効性はあると言えるかもしれませんよね。

冷凍生地と言うのは、生地だけを発酵焼成させた場合、正直申し上げて美味しいとは言えないと思います。

それは、熟成と言う大切な工程を省略せざるを得ないからですが、その熟成の旨味の無さを補う為に、様々な旨味調味料的な材料が開発されています。

それは酵素剤であったり、旨味エキスであったり、はたまた発酵バターであったりと、様々な工夫がなされており、パン生地だけで焼いても、けして遜色のないパンが焼けるように研究されているようです。

普通に工程を踏めば、そのままで充分美味しいパンのはずが、どうしても時間に制限があり、止むを得ず冷凍生地を使用しているパン屋さんがほとんどだと思います。

ですが、冷凍生地を美味しくする為には、どうしても上記のような旨味調味料的な物や、、はたまた副材料をたくさん使用しなければならず、原価は上がる一方です。

また、冷凍期間を長くしようとすればするほど生地改良剤やイーストも多く配合しなければなりませんから、その分味が悪くなり、またそれを補う為に副材料を多く入れると言う結果になります。

極論すれば、パンの価格が現在の3倍で販売出来れば、どのパン屋さんも人をたくさん雇用し、じっくりと手間暇かけて作る事が出来ますので、食べる側も安心して美味しいく食べる事が出来、作る側もやりがいのある毎日だと思うのです。

しかし現実には、とにかく少しでも安いものに・・・・・

そのくせ安心・安全だけはゆずれない・・・・・

パンと言う食品は、今ではどこでも安易に手に入る、そしていつでもどこでも安売りをしている食べ物になってしまいました。

元をたどれば、そもそも冷凍生地などというものは使う必要は無かった訳です。

それが、より便利な世の中になり、24時間営業があたりまえの現在、必然的に製造者に様々な面で負担をかける事になった訳です。

そしてその負担分の原価は、あるいは価格に乗り、あるいは労働条件の劣悪につながり、あるいは熟成と薬剤を計りにかけなければならないような状況に追い込む事となってしまった・・・・・

そんな冷凍生地ですが、パン屋さんにおいては出来れば自家製で作る事をお勧めしたいと思います。

冷凍生地の作り方そのものは非常に簡単ですし、通常の作業時間以外の時間を使って作る事が出来ますので、様々な自家製の冷凍生地を揃えておく事によって、商品の幅も大いに広がるものと思われます。

自家製の場合は、恐らく冷凍期間は短くて済むと思いますので、改良剤も少ない配合で済むでしょうし、レシピを工夫する事でオリジナリティーを出す事が出来ます。

特に砂糖を多く配合するパンや、油脂を多く含むパンは冷凍に向いています。

冷凍そのものはけして悪ではありませんし、先に述べたように、食感をコントロールできる所も冷凍生地の利点なのです。

冷凍生地をひとくくりで考えずに、オリジナルなら様々な冷凍生地が作れて、しかも武器になると言う事を今一度再認識していただきたいものです。

生地を発酵させることの大切さとは

発酵というプロセスは、私達の生活の中において、様々な影響をもたらしてくれています。

お漬物やパンが美味しく食べられるのは、発酵というプロセスから生まれる様々な旨味成分のおかげです。

逆に、生ゴミなどが発酵して、とんでもない香りを部屋中にまき散らしたりもしますよね(~_~;)

発酵というプロセスを使って、それをいかに味方につけて旨味成分だけを残し、味を阻害するような成分の繁殖をコントロールして行くかが重要だと言えますよね。

パンという私達が作る食品も、発酵と言うプロセスがとても重要なのですが、パンの中にはあまり発酵と言う工程をとらないパンが存在したりします。

簡便法でイースト菌の量を増やし、発酵時間を出来るだけ短時間で済まそうとする製法のパンや、冷凍生地全般がその代表だと言えますが、そもそも発酵させたパンと、発酵させないパン、あるいは発酵時間を短縮したパンなどは、それぞれどのような違いが生じてくるものなのでしょうか?

そもそもパン作りを商売にされている方と、趣味で作られている方とでは、大きく考え方は違うと思います。

それは、ご商売の方々は、経験的に発酵時間の長さがそのまま美味しさに比例すると言う事を知っているからです。

他方ご趣味の方々には、膨らむ喜びや焼き立ての感動が優先される為に、そこまで発酵と言うものに興味は無いと言えると思うのです。

発酵時間の長さが美味しさに比例するとは言え、それはあくまで総発酵時間が3時間から5時間位までの事であり、数日間も発酵させるパンと言うものは通常はありませんよね。

数日かけて発酵させるものがあるとすれば、それは天然酵母そのものであったり、発酵種のようなものであったり、つまりパン生地そのものではなく、プラスアルファーで添加する旨味調味料的な素材だと思われます。

そんな、ほとんどが約3時間程度でパンとして完成してしまう食べ物に、発酵させる・させないと言う事がそんなに製品に優劣をもたらすものなのでしょうか?

今回はそのあたりを考えていきたいと思います。

イースト菌の量を通常よりもやや増やしたとします。

すると、いつもよりも早い時間で、しかもどんどん大きくなっていきます。

菌の量が多いと言う事は、ご飯を食べている人数が多いと言う事ですから、ご飯である砂糖がどんどんなくなっていってしまいます。

いつまでも食べさせていると、そのうちに全てを食べられてしまいますので、いつもよりも早い時間に食事を中止させて、次の工程に移らなければなりません。

そうでないと、全員が超デブになってしまい、パンはスカスカのお化けになってしまうからです。

と言う事で、イースト菌を増やすと言う事は、全ての工程において、いつもよりも早い時間で作業を行って行かないと、へんてこりんなパンが出来上がってしまうと言う事になる訳です。

ではこの時には、発酵というプロセスは行われている事になるのでしょうか?

短時間であれパンが膨らんでいるのですから、それは発酵しているのは当然ですよね。

ならば、膨らんでさえいれば発酵と言えるのなら、もっとイースト菌を増やして、より短時間で膨らましても、それはやはり発酵していると言える訳ですから、短時間であれ長時間であれ、美味しさに違いが出てくるのはおかしいのではないでしょうか?

そう考えると、膨らむと言う事と発酵すると言う事の違いが解らなくなってきます。

冷凍生地で作った食パンを想像してみてください。

イースト菌とたくさんの改良剤を入れて捏ねた生地を、すぐさま分割して冷凍します。

その生地を数日後に常温で解凍します。

解凍するのには数時間かかりますが、その間に少しずつですがイーストが活動を開始し、発酵が始まっていきます。

充分に解凍した生地を成形し、型に入れて最終発酵させ、オーブンで焼きます。

通常の工程で作った食パンは、生地を捏ねる所から焼成完了まで約4時間位だと思いますが、冷凍生地の場合も、その日に解凍を行うと、結局同じ位かそれい以上の時間がかかってしまいます。

だとすると、仮に冷凍生地の方が通常の製法の食パンよりも長い時間かかったとしたら、それは冷凍生地の方が発酵時間が長かった訳ですから、冷凍生地の食パンの方が美味しいと言うことになるのでしょうか???

う~ん、ややこしいですね(~_~;)

同じ発酵というプロセスにも、イースト菌の量によるものや、時間による考え方や、冷凍などの温度の違いによる考え方など、実に様々なとらえ方があるのだということが解りますね。

では少し整理して行きましょう。

他のカテゴリでも紹介していますが、ベーキングパウダーというのを皆様はご存知ですよね。

パウンドケーキを作ろうと考えたら、それを膨らます為のふくらし粉として必ずと言っていいほど使われていると思います。

パウンドケーキを作る際に、ベーキングパウダーの量を倍にしたらどうなると思いますか?

恐らくは、オーブンの中で型から具が飛び出してしまうと思います。

要するに膨らみ過ぎてしまう訳ですね(@_@;)

逆にベーキングパウダーを半分にしたらどうなるでしょう?

普通に作ったとしたら、あまり膨らまないケーキが完成する事になりますね。

膨らみ過ぎた方は、中の気泡が大き過ぎてスカスカでしょうし、膨らみの悪い方は目が詰まっていて重い感じの食感になると思います。

ここで解る事は、膨らます為に使用した膨らし粉は、適量入れる以外には、むしろ製品に悪影響を及ぼす事があると言う点です。

パンに入れるイースト菌も同じで、副材料の配合量と総発酵時間から割り出された適正配合量というものがあり、それを超えたり足りない場合は、それなりの現象が表れてしまいます。

ただし、ここで考えなければならないのは、”膨らます”と言う事のみだということなのです。

どう言う事かと言いますと、パウンドケーキもパンも、それぞれ適度に膨らむ事によって、理想的な食感や火通りが得られるものなのですが、決定的に違うのは、パウンドケーキは材料の美味しさを楽しむ為の食べ物であり、パンは膨らむと言う事だけではけして美味しい食べ物にはならないという部分なのです。

パウンドケーキと言うのは、膨らんでいる事であの独特なしっとり感が味わえる訳ですが、仮にそれを膨らまさなかった場合でも、薄く焼けばクッキーとして美味しく食べる事が出来ます。

つまり、膨らんでいるいないは、直接味とは関係が無いと言う事です。

しかしパンの場合はそうはいきません。

膨らんでいなければ火が通らずに、最悪の味と食感になりますし、膨らんでさえいれば全て美味しいと言う訳にもいきません。

なぜなら、パンの場合はパウンドケーキとは違って、バターや卵や砂糖の美味しさを味わう食べ物ではないからです。

小麦粉を中心として構成されるパンの配合には、原材料単体の美味しさはほとんど発見する事が出来ません。

イースト菌に脱脂粉乳にショートニング・・・・・

オェ~ですよね(ー_ー)!!

しかしそれらを捏ねて焼く事で、こんなにも多くの人に愛される食べ物に変身してしまうのですから、実に不思議だと言わざるを得ません。

そんなパンを膨らます為に必要なイースト菌ですが、実はイースト菌と言うのは、ベーキングパウダーのようにパンを膨らませる力があるのと同時に、膨らましながらも旨味成分をもせっせと生成してくれているという優れた働きを持っているのです。

パンを発酵させると言うプロセスにおいて最も大切な事は、膨らませるという外的要因と、熟成という旨味成分の生成を行う内的要因のバランスを取る事にあります。

パンは、熟成が進み過ぎても美味しいものにはなりません。

むしろアルコール臭が強くなってしまったり、酸味が出てきたりしてしまうからです。

かと言って、冷凍生地のように熟成が行われていない生地では、旨味とか味わいという部分ではかなり劣る事になります。

見た目には美味しそうなのに、食べたらそうでもなかった・・・・・

また、見た目は普通なのに、食べたら何とも言えない美味しさだった・・・・・

誰でも経験した事のある事だと思いますが、パンの場合はこの何とも言えない美味しさを出す為の発酵と熟成のバランスと言うものは、経験的に掴むしかありません。

しかも、この場合はこうするべきだと言うような定義も恐らく存在しません。

やってみなければ解らない・・・・そんな世界なのです。

いずれにしても、作り始めから完成に至るまでにはかなりの時間を要するパン。

常に時間と人件費との狭間で、それでも美味しさを追求することを止めないベーカー。

簡便・合理化では出せない ”忘れ得ぬ味” を求めて、ごまかしのない美味しさを追求したいものです。

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