ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

繁盛店になる為の必須条件とは

近年、テレビや雑誌において、パン屋さんに関しての特集や店舗の紹介などが非常に多くなったと思いませんか?

飲食店やスイーツのお店に負けず劣らず、様々なパン屋さんを取材して紹介していますよね。

私個人の感想としては、今は特に個人店の、しかも今までになかったようなお店が非常にクローズアップされていると感じています。

今までのパン屋さんと言うのは、当然のごとく立地が良い事や、お店がある程度広い事、そして何よりプロ級の腕を持った方々が開業するというパターンが当たり前でした。

繁盛すれば、数年のうちには必ずと言って良いほど2件目3件目と出店していき、やがてはチェーン展開を・・・・

そんなパターンが主流であったと思います。

これは、どのような企業でも考える事で、一方では業績と言うものは伸ばし続けなければ存続が難しくなるという論理があるからであり、もう一方では多くのお客様に喜んでいただきたいという、ある意味企業側の勝手な言い分でもあるのですが、より多くのお客様に当店のパンをお届けしたいのだという企業方針が、なぜか出来上がってしまうからです。

つまり、繁盛店になる事イコール、チェーン展開、多店舗展開と言う構図にならざるを得ないのでした。

しかし、今時のパン屋の開業は実に自由な発想で行われていますよね。

経験はさほどない・・・お店は激狭・・・・自宅のガレージが店舗・・・・アパートの一室が工房・・・・主婦だけで運営するお店・・・障害者が作っているお店・・・山奥のお店・・・などなど

けして好立地とは言えない所だったり、とてもお店とは呼べないような小屋だったり、小麦を自家栽培して製粉していたり、何種類もの自家製酵母で作っていたりと、何の垣根も存在していないかのような展開。

これらはまさに、マスコミの格好の標的であり、おのずとパン屋さんを取り上げる番組が増える事につながっているのだと思います。

わずかな経験とわずかな資金でも、考えようによっては、又アイデア次第によっては様々な展開ができるのがパン屋だとも言えると思います。

どのような経営手法であったとしても、売上が上がっていかなければ存続は出来ません。

そんな事は誰でもが知っている事だと思いますが、だからこそ、危険と思えるような出店の仕方は出来ないでいたのが今まででした。

しかし昨今では、とても経営の安定と言うものを目指しているとは思えないような発想の開業が多く見受けられます。

そんなお店のオーナーの話などを総合すると、とにかくパンを作る事が好き、そして食べる事も好きで、パンを食べていないと死んでしまうとまで言う人も多いのです。

どうしても、今までの開業目的と言うものは、要約するとパン作りを通して豊かになりたいのだと言う事にたどり着かざるを得ない感がありました。

しかし昨今の、ある意味異種的なパン屋を開業されている方々の考え方と言うものは、豊かさを求めない訳ではないと思うのですが、それがメインであるとはとても思えないのです。

とにかくパンを作りたい、そしてそれが認められれば嬉しいし、認められなければあきらめる・・・・

そのように受け止められるのです。

つまり、その橋はあぶなくないのか? 無事に渡れる可能性はどれ位なのか???と言うような指標なのではなく、とにかく橋を作りたい、橋を作る事が最大の喜びなのだと言う事なのです。

完成した橋を、誰が渡るのか、どのようにして渡るのかと言う事を事前にリサーチしてから行動を起こすのではなく、誰が渡ろうと関係なく、とにかく橋を作りたいと言う事が優先される。

その考え方は、経営という観点から見たらアウトでしょう。

しかしそもそもこの方達は経営をしたくて開業するのではなく、ただ単にパンが作りたいから作るのであり、それを喜んで買って下さる人を見て、更に幸せな気持ちになるというのです。

これは、視点を変えて考えてみると、ある意味商売に一番必要な事なのかもしれませんよね。

作る喜び、売る喜びに嘘が無いからです。

そんな純粋な喜びから作りだされるパンというものが、もしかしたら技術や理論を超越した完成度を生みだすのかもしれません。

そして、経営も製パン技術も理論も、むしろ経験の中から後追いで習得していく事が出来てしまうのかもしれませんね。

パンを作る事が何よりも好きだ・・・・

パン屋にお勤めの方は、みなさんそう思っていらっしゃるでしょうか?

売上がどんどん上がる方策と言うものは、実に多く存在しています。

しかし、多くのお店ではそれらを実行しようとはしません。

なぜなのか、理由は様々だとは思いますが、要するに気が乗らないのです。

検討した、あるいは考えてはみたものの、実行不可能であったり、現実的には無理であったり、効果が期待できないなどの理由を付けては、とにかく実行しないのです。

売上を上げる為に大切な事は何か?

それは、お客様の視点、つまりどうすれば買う側の人が満足するかを追求する事に尽きる訳ですが、それは言うほど簡単な事ではありません。

なぜなら、製法や品数はどんどん増える事になりますし、どんどん手間も増えてきます。

焼き回数も増えていきますし、営業時間も長くなるはずです。

つまり、お客様の視点に立って満足を提供しようと考えると、すべて労働環境の悪化につながってしまうのです。

仕事として行う事には限界があります。

ただし、破格の残業代でも頂けるなら話は別ですが・・・・

と言うのが本音ではないでしょうか。

と言う事で現実には、業績を上げる為には何をすべきかと言う事は何となく解ってはいるものの、とても時間内には出来ないだろうと言う事で断念してしまう事になる訳です。

すべて実行出来れば、きっと売上は上がるはず・・・

いや、すべてでなくとも、いくつかの手が打てれば少しは好転するはず・・・・

そう思っているだけ??・・・・の人も多いと思いますし、実際にはいくつかチャレンジしてはみたものの、好転しなかったという事であきらめてしまっている人もいる事でしょう。

知っているのとやっているのとでは大きく違う、色々方策を考えたり分析したりする時間があるなら、明日出来る事からすぐに始めよう・・・・

そう思って色々と行ってみたが、特に売上には響かなかった・・・・

皆様の多くは、そして私もそうですが、常にそのようにチャレンジしては打ち砕かれて、そして長くは続かない単発の方策となってしまっている事が多いと思うのです。

このような状況下に置かれると、パンを作る喜びにひたっている場合では無くなります。

会議が増え、他店舗の視察が増え、講習会に参加し、展示会や発表会も欠かさず、結局は労働時間がどんどん長くなっていく。

そして気持ちが解放されることのない、無間地獄のような時間を過ごす事になる訳です。

こうなると、毎日の仕事はとにかく苦痛ですよね。

もはや単なる重労働でしかない・・・・

そんな気持ちで作られて行くパン達・・・・

とても食べたいとは思えませんよね。

・・・とここで、先程の質問をもう一度思い返してみてください。

パンを作る事が何よりも好きだ・・・

皆さんはそう言えますか?

超人気店と言えるようなお店がいくつかありますよね。

通常から言ったら、忙しさも半端ではないはずです。

さぞかしオーナーや店長はご苦労が絶えないのだろうと思うのですが、どうやら取材記事などを読んでいると、そうとばかりは言えないようなのです。

それは、要約すると超人気店の責任者あるいはオーナーと言うのは、ほぼ皆さんパンを作る事が何よりも好きだと言っているからなのです。

そこで私はある事に気がついたのです。

超人気店のオーナーも、私が知る繁盛店のオーナーも、ほぼ例外なく、パンを作る事が何よりも好きな人達であると言う事なのです。

そして問題はその好き加減です。

パンは毎食の様に食べ、休みには他のお店でパンを買い、寝ても起きても頭の中はパンの事でいっぱい。

作業時間は何時から何時までなのかの分岐点が無い。

休みも仕事もすべてがパンづくし。

そしてそれが生きがいだと言う。

その様な人達から出る発想と言うのは、恐らくすべてが最高のパン作りに向かっているでしょうし、それはひいてはお客様の視点に最も近いものであると言えるのではないでしょうか。

こんなパンが食べたい、こんなパンを食べてもらいたい・・・・

その様な発想から来る製パンの工程に、重労働と言う言葉はもしかしたら吹っ飛んでしまうのかもしれませんよね。

どこまでが仕事で、どこまでが自分の時間で・・・・

そんな発想は、きっとこの人達にはないか、考えていないのだと思うのです。

品数がどうだとか、品質がどうだとかというような、売れる条件のようなものは当然あるはずです。

しかし、どんなに理屈では解っていても、実行しなければ何も変わりませんよね。

何か行動を起こそうと考えた時に、それが作業時間の増幅になると思ってしまう時点で、すでに気持ちが負けていると言う事なのかもしれませんね。

片や、そんなに毎日働いていて、良く身が持つね~ ととらえる人もいれば、生きている限りパンを作り続けたいと言う人もいる。

同じ労働でも、同じ仕事でも、考え方やとらえ方によって大きく変わってくるのだと言う事を改めて知った思いでした。

そしてなにより、そんなパン作りを心から愛する人が作るパンには、必ずファンが増え続けると言う事を確信しました。

話が少しそれますが、我々の敵(と言う割には良く利用する)であるセブンイレブンが、全国に1万5千件以上もあり、その売り上げは何と3兆5千億円にもなると言う事で話題になっていますよね。

そのセブンイレブンの凄い所は色々とあるとは思うのですが、私が単純に凄いと感じるのは、全国どこのお店に行っても、ほぼ同じ品質のおにぎり達が買えると言う所なのです。

もちろん1か所で作っている訳ではないはずですから、全ての品質を管理し、しかもそれが全てのお店に1日に何度も配送されるという、その物流システムがすごいと思うのです。

ちなみに、セブンイレブンにある焼き立て直送便なるパンがありますよね。

たいして旨いとは言えない代物ですが、それでも1日に3回は出来立てが配送されるのです。

もちろん一度に焼いたものを3回に分けて配送している訳ではありません。

きちんと3回とも焼き立てを配送しているのです。

あれだけの店舗数で、しかも3回も配送しているという事実。

私達は、全てのパンを1日に3回も焼いているでしょうか?

もしかしたら、焼き立てパンのお店と言っておきながらも、セブンイレブンよりも焼いていないと言う事は無いでしょうか?

セブンイレブンの物流や発注などのシステムも、当然ながら人間が考え出したものであり、その発想は、どれだけお客様の要望に近づけるかということが根本になっていると思うのです。

ならば、我々専門店が考えなくてはならない事はいったい何なのでしょうか?

あきらめずに探していきたいものですね。

責任の所在はどこにあるのか?誰にあるのか??

とある大手企業が展開する冷凍生地専門のベーカリー。

それをグレードアップさせた手作り感とこだわりを出したいとの思いから、新規事業として子会社を作り、ベーカリーとレストラン、そして雑貨屋さんなどを併設して展開している会社からの依頼がありました。

なんでも、ベーカリーの利益率がとてつもなく低くて困っているとの事。

その原因究明の為にお邪魔する事になった訳ですが・・・・

閑静な住宅街にあるそのお店は、実に豪華な作りで、レストラン・雑貨屋さん・ベーカリー・そしてなぜかプチチャペルまである、とても広い、そしてとても贅沢なたたずまいなのでした。

さすがは親会社が大手だけの事はある・・・そんな印象が初めの印象でした。

そして初めに通されたプチチャペルの事務所。

とても事務所とは言えないほどの贅沢な作り。

そして何故か受付と言う場所に制服の女性が二人も座っていました。

なぜプチチャペルなのかと言いますと、座席が10人分程しかないからです。

ここで少人数の式を上げてから、レストランで披露宴を行うのが目的なのだとか・・・・

まあ、専門でもない私がこの部分にどうこう言う訳ではないのですが、何となく意味不明な感は否めませんでした。

そして工房へと案内され、チーフを紹介されたのですが、この方は某有名店でお店を取り仕切っていた方らしく、どことなく偉そう・・・と言うかきっと偉かったのだろうなと思わせるような出立ちでした。

伺った目的は話されてはいない様子で、特に不機嫌な感じではなかったのでひとまずは助かりました。

一通り商品を店舗にて確認した所、驚く事が解りました。

それは何かと申しますと、とにかく価格が安いのです。

手軽に買い求める事が出来るのが手作りの良さである・・・その様なコンセプトなのだと言う事でした。

実は驚いたのはその部分ではありません。

その価格にしては、パンがやけにボリュームがあると言う事なのです。

おまけにすべて具材はたっぷり、溢れんばかりに入っているではありませんか。

このお店の日商は約10万円との事。

特に人気なのがこちらの商品で・・・・と紹介されたのが、何とこぶし2個分もあろうかと言う大きさのパイ生地に、生クリームが溢れんばかりに入ったいわゆるパイシューで、何と価格が100円なのでした。

特に何も考える必要もなく、一目見ただけでこれらの商品はすべてまったく原価無視の価格設定であると言う事が解りました。

原価計算はしていますか?と聞くと、特にはしていないとキッパリ。

更に驚きは続きます。

工房の中には調理室というものがあり、何とその中ではパートさんが4人も働いていました。

伺った時間が御昼時の11時頃だったのですが、すでに全員でお茶をしていました。

ちなみに調理パンの数と売価を計算した所、約9千円でした。

いつもこの程度の数しか売れないとの事で、それでも4人は必ず出勤しているとの事。

そして一人の勤務時間が8時から14時までの6時間である事。

これが平均的な時給で働いているのだとすれば、おおよそ1万9千円の人件費となります。

1万9千円かけて、わずか9千円の調理パンを作る・・・・

これは専門家を呼んで調査を・・・そんなレベルの事なのだろうか????

私を呼んで下さったマネージャーと言う役職の背広姿の色男がいるのですが、そもそもこの人はどんな仕事を任されている人なのだろう???

何ともお邪魔して1時間もしないうちに、私はとてつもない迷宮に迷い込んでしまったかのような思いがよぎるのでした。

そして驚く事に、一般的にはベーカリーの原価率は約3割、粗利が7割という現実を大きく逆転し、原価率が7割を超えていたのでした。

そして先程の調理室の人件費。

それだけではありません。

工房内にもチーフを含め、何と男性社員が3名と言う体制。

いくら親会社が大手だからとはいえ、よくもこんなことが許されているものだ。

しかしそれでも、その原因を究明したいからこそ依頼をされた訳ですから、何とかしたいとは思っているであろう。

そんな、何とも言い難い依頼内容と、まるで見たまんまの、分析などまったく必要のない報告をする事となりました。

そして翌日、工房内に少々お邪魔して、作業工程を見せていただくことになりました。

予想に反して、早朝5時からの真面目な勤務態度でひとまず安心・・・・かと思われましたが、やはりそうはいきませんでした。

一つには、オール手作りだと言っておきながら、親会社ではなく他社の冷凍生地を一部使用していた事。

更には、もっと許せない現実がそこにはあったのです。

それはチーフの作業態度でした。

何がひどいのか・・・・・

彼は仕込みを担当しているのですが、ミキサーが回っている間、レストランエリアへ行って煙草を吸っているのです。

もちろんコーヒーも。

ですから、ミキシングのほとんどはオールインで、しかも全て中速で回していました。

その方が長く一服出来るからですね。

そしてその時の態度・・・・・

テーブルの上に足を乗せ、のけずりかえって座っていたのでした。

私が工房ににいるのにですよ。

後の二人は一生懸命に働いているのですが、このチーフは、生地が捏ね上がると番重の中に生地を放り投げるかのように入れ、捏ね上げ温度すら計りません。

そして次の生地を回し始めると、またしても一服に行ってしまうのです。

私も随分と色々な人に激を飛ばしてきましたが、この時の彼にはとてもそれでは気が済まない・・・・そんな気持ちでいっぱいになりました。

他の二人に、いつもこうなのかと聞くと、しぶしぶうなずいていました。

こうして、何とも気分の悪い1日が過ぎていったのでした。

報告の日には、今回招いて下さったマネージャーさんのほかに、主任、部長、そして子会社の社長と言う方も同席されました。

部長と社長というのは、このお店以外にも仕事がある様で、かけ持ちと言った様子でした。

そしてマネージャーさんと、その下に営業を兼ねた主任と名乗る女性社員がいました。

いずれにしても、この方々の給料は何で補われているのか???そのように感じながらも、とりあえずは今回の依頼の趣旨である利益率がなぜ最悪なのかと言う部分について説明をさせていただきました。

価格が異様に安い事、原材料を使い過ぎている事、他社の冷凍生地を使用している事、完成品冷凍パンまで使っていた事。

これらに加えて、製造経費、つまり人件費をかけ過ぎである事、そして最後に重要な提案をする事となりました。

それは、ただちにチーフを切る事です。

この人が本当に有名店にいたと言う事は履歴書で確認しました。

しかし、私が見た現実は、製造の現場にいてはならない、あってはならない光景だったのです。

この人にも当然のことながら家族があります。

しかし私には、今回の依頼の如何に関わらず、このような人間は許せないのでした。

ですので、条件として今すぐに辞めていただければ、3か月分の給料をお支払いすると言う事を提案しました。

オープンして5年が経過しようとしていたこのお店において、それでもオープニングから一緒に働いてきたスタッフで、しかも責任者を即座にクビにするなど、通常ならとても聞き入れられる提案ではないはずなのですが、それまでの説明と、何となくは感じていたチーフに対する不満もあったようで、以外にもあっさりこの提案は受け入れられたのでした。

そして本人も、次の日には早々に辞めていったのでした。

私も久しぶりに本気になり、最高の怒りの表現方法を今回は取らせてもらった訳ですが、それがあっけなく通ってしまった事には、いささか違和感を感じてはいました。

が、予想通り残りの二人は生き生きとなり、その後調理室の4人中3人には申し訳ないのですが、2ヶ月後には辞めていただく事になりました。

こうしてその後は残りの二人の社員の方と連携を取りながら、色々と商品を変更していく事になった訳ですが、やはり5年もの間超低価格で販売してきた実績は、そう簡単には変える事が出来ませんでした。

特に人気の商品ほど、とてつもない原価がかかっていましたので、すぐにでも変更したい所なのですが、売れ筋を販売中止にするという事は、それが即座に売上の低下を生む事となったのでした。

環境が整い、やる気を出して取り組んでいるスタッフからすれば、それでもやりがいのある毎日がようやく訪れ、私としてもアドバイスのし甲斐があると感じていた矢先の事でした。

親会社からの通達で、閉店と言う報告が入ったのです。

なぜ閉店なのか・・・・

それは、レストラン・雑貨、そしてプチチャペル共に大きく売り上げを落としていたからなのでした。

ならば、何の為の依頼であったのか・・・・

そもそも、専門分野では無いとは言え、ベーカリー以外の問題点は全て指摘してきたはず・・・・

しかし何らそれらには手を付けてはいないと言う事が解り、私は大きな勘違いをしている事に気がついたのです。

それは、私がクビにしたあのチーフは、確かにガンであった。

しかし実は、もっと大きなガンがそこには出来ていたのだと言う事でした。

そもそも、いくらベーカリーだけを適正な原価率や人件費率に持っていったとしても、実際には他の部署では何ら手を打つ事をしていない。

と言うよりも、手を付ける気すらない人間達だからこそ、こんなに解り易い事でわざわざ外部の人間に依頼してきたにすぎなかったのだと言う事に気がついたのでした。

そして驚く事に、現場の人間は全て退職なのですが、主任を初めマネージャー、そして受付にいた女性社員はすべて、他の部署への配置転換で守られているではありませんか。

レストランのコックも、パン屋の社員2名も、守られる事無く廃業による退職を迫られていました。

本来なら、いったい誰の責任でこうなったのか???

責任の所在はどこにあるのか????

どうして責任者が何の責任も負わずに、ただ単に移動で、現場の職人は退職なのか???

いくら怒ってみた所でどうにもならない現実。

企業で働く人には皆、大なり小なりこのような理不尽な扱いを受ける事がありますよね。

美味しいパンを一生懸命に作り、お客様に喜んでいただきたい・・・・

そんな人間的な思いとは裏腹に、経営と言う現実は様々な顔を持って私達に襲いかかってくる。

そんなものと闘いながら、そして時にはかわしながら、それでもあきらめずに今日もパンを作る人達がいる。

そんな、けして負けない人達に幸多かれと祈ります。


ドーナツを綺麗に揚げるには・・・・

こんな質問をいただきました。

質問ですが、ドーナツの気泡についてです。

ドーナツがドーナツフライヤーについている乾ホイロから出すときは、以前働いていたお店では出してすぐに揚げずラックにしばらく置く様に言われました。

そうすることで、ドーナツを揚げてもドーナツが焼いたお餅のようにベコッと膨らんで潰れたような跡ができにくいとのことでした。

実際に、カレーパンが100個注文が入った時に、最初に揚げたものよりも、後半に揚げた物の方が、安定した膨らみ方をしていました。

これらはどういう理由からなのでしょうか?

乾ホイロからだして、しばらく置いた方がいい、と自分はスタッフにいい、スタッフも置いていますが、
正直な所何分位おいたらいいのか、と聞かれても、大体表面が乾燥してから、と言っています。

しかし、あまり乾燥しすぎるとふっくらならずに油っこいドーナツになる時もあります。

ですが、やはり少し置いた方がキレイに膨らむと思います。

ホイロの時間もほとんど感覚でやっていますが、ホイロの温度は33度に設定していますが、夏は30分でも十分膨らみますし、冬場は40分以上入れている事がほとんどです。

(ドーナツ生地は前日冷凍して、夜に冷凍庫から冷蔵庫に移して、朝冷蔵庫から出して、しばらくしてから乾ホイロに入れます。)
 
ドーナツの乾ホイロの適正温度は何度位が良いでしょうか?

また、膨らんで来てから、表に出して、そこから置いておくのはどのような理由で、どのような意味があるでしょうか?


今回の質問は、似たような内容のものが良く送られてきます。

そのほとんどはパン屋さんからなのですが、皆さんドーナツについては”これだ ” と言うものを掴めずにいるようです。

製パン全般として言えば、製法なり種類なりが多い焼成パンの方にどうしても気が行ってしまいがちですが、実は難しさと言う点で言えば、ドーナツの方がはるかに難しいと言えるのです。

それはなぜでしょうか?

それは、焼成するパンと言うのは、オーブンの中である程度焼き上がるまでには数十分という時間がかかるものであり、その間の生地に対する熱の伝わり方が緩やかであるからなのです。

他方ドーナツの場合は、ほんの数分で色が着いてしまうほどに、生地に対して熱の伝わり方が異常に早く、そして強いと言う事になるのです。

するとどうなるのか・・・・?

それは、ピザなどを専用窯で焼いた事がある人ならお解りだと思いますが、ピザ生地というのは専用のオーブンに入ってほんの数分で、見事に風船のように膨らんできますよね。

具材が乗っている中央部分は具材の重さで膨らみはしませんが、淵の部分が程良く膨らむのもピザの魅力だと思います。

このピザ生地がほんの数分で膨らんできてしまうのは何故かと言いますと、それはオーブンの温度が400℃以上もあるからなのです。

では、そんなピザ専用窯でバターロールや菓子パンを焼いたら、いったいどうなると思いますか?

恐らくほんの数分で、実にいびつに、あちこちが膨らんできてしまい、焼き色がとてつもなくまだらになり、見れたものではないようなパンが完成する事になるでしょう。

どうしてそうなってしまうのかと申しますと、オーブンの温度がパン生地にとっては高過ぎるからであり、パン生地のイーストがビックリしてしまう事により起こる現象なのです。

昔懐かしいビニール風船というものを皆様はご存知でしょうか?

歯磨きチューブの小さくなったようなものから、ベタベタとした半固体のセメダイン臭の物体をストローの先端に着けて、ゆっくり膨らますと、しゃぼん玉の大きくなったもののような薄い被膜の風船が出来上がると言うものです。

このビニール風船は、ゆ~くりと膨らますのがコツで、これを急いで膨らまそうと息を荒げると、途端にわれてしまうのです。

高温のオーブンに入れられたイーストは、あまりの高温に驚き、いつもよりも大急ぎでガスを発生させます。

すると、膨らみ方が不安定になり、表皮が破れてしまったり、あちらこちらにいつもよりも大きな気泡が出来上がってしまうのです。

急に勢いよく膨らまそうとしたビニール風船が割れてしまうのと、同じ現象ですね。

パン生地の中には、無数の小さな気泡がたくさん存在し、それがじっくりと膨らんでいく事で、それぞれがバランス良く膨らみ、見事な内層となる訳です。

ところが、その無数の気泡に対して、ビックリするような勢いでガスを発生させてしまうと、それぞれが時には合体し、時にはお互いを割ってしまったりする事になるのです。

200℃前後でパンを焼くと言う事が、実はパン生地にとっての必然であると言う事の証でもあるのですね。

さて、ではドーナツはどうなのかと言いますと、生地温度が30℃以下のパン生地が、温度差が150℃以上もあろうかという灼熱の油の中に、直に放り込まれる事になります。

この時の生地の表面は、いったいどうなっていると思いますか?

皆様がいつも入っているお風呂の温度が約40℃前後ですよね。

これが仮に50℃であったとすると、足を入れた途端に あっつー!!! ですよね。

その時の驚きのいったい何倍あるでしょうか・・・・

そんな灼熱の油の中に、いきなり放り込まれたパン生地の驚きは、先のピザ生地の比ではないでしょう。

イーストは大慌てでガスを発生させ・・・とかなんとか言っている間にも、大やけどになって揚がってしまうほどの短時間でドーナツは完成してしまいます。

だからこそ、ドーナツを綺麗に膨らませながら揚げる事は、焼成するパンよりもはるかに難しいのだと言えますし、そもそも無理がある事にチャレンジしているようなものなのです。

ドーナツを綺麗に揚げようと思ったら、まずはこの事をしっかりと認識しなければなりません。

焼成するパンというのは、じっくりと熱が伝わるのに対して、揚げるパンというのは、直に熱に触れる事になるのだと言う事。

ですから、理屈から言ってもまったく同じ生地では対応できないということになるのです。

つまり、揚げパンとしての専用の生地でないと、うまく綺麗に揚げる事は難しいと言う事をまずは知るべきでしょう。

これらの事を考慮すると、専用の生地というのはいったいどのあたりに注意しながら考えれば良い事になるでしょうか。

それは、色々とあろうかとは思いますが、まずはガス発生は少ない方が良いとは思います。

つまり、イーストは控え気味に配合する事です。

そして、膨らみ過ぎない生地にする事が重要でしょう。

つまり、強力粉だけで作ると膨らみ過ぎてしまいますので、薄力粉などの弱い粉をブレンドする事が望ましいと思います。

また、砂糖の量が多いと表面がすぐに焦げてしまいますので、高糖度の生地は揚げパンには不向きであると思われます。

ミキシングもやや控えめにして、グルテンを強化し過ぎないようにする事もコツのひとつとなるでしょう。

ドーナツと一言で言っても、実に色々な配合や成形があると思います。

この生地はいつも綺麗に出来るのに、この生地はいつも失敗してしまう・・・・

そんな経験は誰でもお持ちのはずです。

この、いつも綺麗に出来る生地と、そうでない生地の違いはいったい何なのか?

その違いこそが、配合のポイントとなるはずですから、自店の配合バランスをよ~く分析してみましょう。

一つの原材料が入っているか入っていないかと言う事よりも、その配合量やバランスに大きなヒントがあるものです。

いつも何気なく作っているドーナツだと思いますが、常に満足のいく完成度で仕上がっているでしょうか?

よ~く観察し、分析し、自分なりの答えを見つけて欲しいと思います。

さて、ご質問の本題に入りたいと思いますが、ホイロから出した生地をすぐに揚げずに、しばらくは室温にて乾燥させてから揚げるのはなぜか?

または、どのような意味があるのかと言うご質問ですが、このしばらく乾燥させてから・・・と言うのが、実はとても大切な、ドーナツを美しく揚げる為のコツになるのだと思うのです。

表面を乾燥させることにより、ある程度強い表皮を作りたい、そして表面の水分を減らしておく事で、油に触れた時の生地の表面温度上昇へのダメージを少しでも軽減させたいという意図があるのです。

この時のイメージとしては、乾燥した表皮がバリヤの様になって、内部に熱が過剰に伝わる事を避ける働きをすると言ったところでしょうか・・・

とは言え、過剰に乾燥させてしまうと、油の中でまったく伸びないままに揚がってしまうことになり、内層が詰まった状態の火通りの悪いドーナツになってしまいます。

ですから、もちろん限度はあるのですが、それは室温に何分放置すれば良いかと言うものではなく、適度にとしか言いようが無いのです。

だからこそ技術が必要なのであり、それがドーナツの難しさでもあるのです。

私の経験からすると、焼成パンに比べて、ドーナツ全般の方がずっと多くのコツを必要とするのだと言えると思います。

この表面の乾燥は、ホイロの中の湿度を低めにしておく事でも可能なはずですから、ホイロから出してから乾燥させなけらばならないと言う事なのではなく、どの段階でも構いませんので、揚げる直前には生地の表皮をやや乾燥気味にしておく事が重要であるという部分をしっかりとご理解いただきたいと思います。

また、ご質問の中の100個の注文が入った時には、後半で揚げた物の方が安定していたというのは、この部分も実は大きな揚げパン全般のポイントとなる部分なのです。

それは、イーストの発酵力がやや低下する頃が揚げ頃 だと言う事です。

そんなことしたら、生地が伸びないのでは・・・・と言うのは焼成パンの理論なのです。

揚げパン、つまりドーナツ全般はすべて油の中への直投入になります。

この時の瞬間的なガス発生を如何に軽減させるか・・・・

それがコツになるのです。

同じ揚げものでも、それとまったく逆の理論なのが天ぷらで、少しでもネタや天ぷら粉を冷やして油との温度差を作り、よりビックリさせることで荒々しい衣を作るのです。

ですから、一般的なパン生地のドーナツでは、低い温度でゆ~っくりとホイロを取る事がとても重要で、かつ適度な乾燥状態が有効であると言う事になるのです。

今日仕込んで今日成形し、今日揚げてしまう場合のドーナツと言うのは、とても安定しています。

それは、イーストやグルテンが温度変化に侵されない穏やかな状態であるからです。

この場合は、たいしたコツがなくても綺麗に作る事が出来るものです。

しかし現状では、質問者様のように一度は冷凍したり、その後に冷蔵したりと、作り貯めておかなくてはならないという事情がある事と思われます。

すると、途端に完成度は低下し、とてつもなく多くのコツを必要とする事になるのです。

そこで私の提案としては、生地は冷凍でも冷蔵でも構いません。

成形だけは当日の朝行うようにすれば、格段に完成度は上がるはずです。

また、全てを当日の朝に成形するのは難しいでしょうから、そんな場合は裸の成形を優先していただきたいのです。

裸の成形と言うのは、パン粉やアーモンドスライスやコーンフレイクなどのトッピングがついていない生地の事を指します。

これらのトッピングがほどこされている生地と言うのは、冷凍や冷蔵から生地を保護してくれますので、比較的安定した完成度が得られるものです。

しかし裸の生地はダイレクトに温度変化にやられてしまう為、これらの成形だけでも当日に行えれば、全般的にドーナツの完成度は向上すると思われます。

工程を優先するあまり、冷凍したり冷蔵したりする訳ですが、そうなるとそれに耐えるだけのイースト量が必要となり、それが逆に完成度を低下させる原因ともなる訳です。

それでなくても、冷凍耐性のある砂糖や油脂を多く配合させる事が難しいのがドーナツ生地ですから、それを冷凍するとその時点で完成度の低下が約束されてしまうようなものなのです。

冷凍生地と言うものが作られるようになってから随分と月日が経過しましたが、日進月歩でより美味しく、より安定的なパンが仕上がるように開発されてきています。

しかしながら、相変わらず冷凍生地の店舗へ行っても、ドーナツだけはなかなか綺麗には揚がっていないのが実情です。

それ程に難しいのです。

パン屋さんはパンを焼く事がメインで、調理パンや揚げパンもやってはいる・・・・

このやってはいると言う所がネックで、この難しい部分を意外とないがしろにしているお店が多いのではないでしょうか。

やるからにはドーナツショップには負けない、美しいドーナツを作りたいものですよね。

と言う事で、いつもながら質問に対してダイレクトに答えられてはいませんが、お店の配合や設備や工程によって、無数のコツがあるのがドーナツであり、基本的にはより低温発酵が望ましく、成形後の温度変化には注意が必要で、適度な表面乾燥がコツになるのだと言う事をご理解いただきたいと思います。

夏と冬で発酵時間が違ってくるのは何故??

こんな質問をいただきました。

パン屋に就職してから丁度2年が経過し、仕込み・成形・オーブンなどの一通りの工程を全て憶える事が出来ました。
お陰様で毎日充実したパン職人生活(まだまだ半人前ですが)を送っております。有り難うございます。

いつも色々と質問させて頂いているお陰で、一つ一つ納得しながらパンを作る事が出来ている事に大変感謝しております。

そこでまたしても疑問が湧きまして質問させて頂きたいのですが、今の時期になるとどうしても発酵が遅いと言いますかホイロに時間がかかると感じているのですが、それはやはり冬は寒いから生地が全般的に冷えてしまうと言う事なのでしょうか?

工房はある程度暖房がきいているとはいえ、当然夏よりは寒いのは解るのですが、ホイロの中の温度は夏でも冬でも同じはずなのにどうして発酵が遅くなるのでしょうか?

はじめは考え過ぎかとも思ったのですが、お店に掲示してある焼き上がり時間に間に合わない時が多々あり、どうしても冬場は少しはやめに出勤しなければならなくなっています。

夏場はイーストを減らしたりすると聞いた事があるのですが、逆に冬場はイーストを増やしたりして時間を調整する必要があるという事になるのでしょうか?

とてもアバウトな質問で、また先生に怒られる事になると思うと正直聞くのはやめようかと考えたのですが、勇気を出してお聞きしたいと決めました。

今現在はオーブンを担当しているのですが、今の自分に出来る事があるとすればどのような対策を行えば良いかアドバイスいただけないでしょうか・・・・


この質問者様は、独立を目指しパン屋で修業に励んでおられる方なのですが、とても細かい所に気が行くタイプの方で、そのお陰でこちらこそいつも基本に立ちかえる事が出来、有難い限りなのです。

そして今回のこの質問・・・・実に鋭い!!

ご本人はアバウトで・・・などと言っておられますが、これはパン屋の全ての工程を知り尽くした上でないと感じる事の出来ない、とても貴重な質問であると言わせていただきます。

私達パン屋は、概ね週一回の休み、あるいはたまには週に二日の休みがある人もいると思いますが、それ以外は盆であろうが正月であろうが、全くおかまいなくパンを作り続けている事と思います。

そして更に、お店のオープン時間に合わせて少しでも多くのパンを品揃えできるように、それこそ戦場にでもいるかのような緊張感とスピーディーな動きで、しかも毎回必ず同じ品質に仕上がるように工夫しながらパンを作っている事と思います。

真夏であろうと真冬であろうとです・・・・・

しかしこれが、実はどれほど技術と理論が必要な事であるかを知っている・・・解っていると言う方がいったいどれ位いるでしょう・・・

真冬と真夏のパンの品質をまったく同じに出来る技術というのは、恐らく製パンにとっては究極の技術であると私は思っています。

冷凍生地を扱うお店が増えてきたここ数十年では、そんな心配をした事が無いと言う人も多いかもしれませんが、全て手作りのお店では、この問題に常に立ち向かわなければなりません。

しかし現状は、立ち向かうと言うよりも、そもそも質問者様のように季節によってなぜ発酵時間に変化が生じてしまうのかを疑問にさえ感じていない人も多いと思います。

夏はバンバン発酵してくる・・・そりゃ暑いからでしょ・・・

冬はなかなか膨らんでこない・・・そりゃこれだけ寒ければね~

こんな認識でパンを作っている人・・・・以外に多いのではないでしょうか。

温度変化というのは、何も真夏と真冬だけの事ではありませんよね。

毎日毎日ある程度の温度や湿度の変化がある事は誰でも知っています。

ですから、その変化に敏感なパン職人は、毎日気が抜けません。

真夏の外気が40℃近く、真冬の外気がマイナス10℃近くと言う環境でパンを作っている方も多いと思うのですが、そうなるとその差は50℃にもなります。

しかし、毎日毎日の変化で言えば、昨日と今日では最小では1℃位であったり、最大でも10℃位ですよね。

日々温度や湿度と敏感に向き合ってさえいれば、極端な温度変化に対応する必要と言うのはないのです。

だんだん寒くなり、だんだん暑くなっていくのが季節と言うものなのですから、日々のコントロールがすなわち季節をコントロールする事につながる訳ですね。

さて、今回のご質問にあるように、冬場はホイロに時間がかかってしまうというのは本当だと思いますか?

ホイロの中の温度設定が常に同じだとすれば、冬であろうと夏であろうと同じように膨らんでくるはずだ、そうは思いませんか?

だって配合を変えていないとすれば、理論上はそうなりますよね。

しかし実際には、冬場は早く出勤しなければ間に合わないと書かれていますし、そうしていると言う方も多いと思います。

またはそうならない為に、イーストを増やしたり改良剤を増やしたり、あるいは捏ね上げ温度を上げたりと工夫をしている方もいらっしゃる事でしょう。

いずれにしても、冬場は理屈抜きで発酵に時間がかかる傾向がある、あるいはなかなか膨らんでこない気がするという事は誰しもが感じているのではないでしょうか?

パン作りの難しさというのは、まさにこの問題に直結していますよね。

ただでさえも成形などの技術の違いにより、膨らみ方や完成度が大きく違うのに、温度や湿度によっても違ってくると言うのですから、とても厄介ですよね。

しかし逆にこの問題をクリヤーすれば、相当安定したパン作りが約束されるような気がしませんか?

アバウトなようで、実は核心を突く今回の質問。

じっくりと細かく分析してみたいと思います。

真夏は生地がどんどん発酵して来て困る・・・・

真冬は生地がなかなか膨らんでこない・・・・

何となく体感的にそう感じながらパンを作っている人がいると思います。

ではそれはなぜだと思われますか?

膨らむとか膨らまないとかに直接関係してくるのは、ズバリイーストなどの酵母の量ですよね。

しかしこれが夏も冬も同じだとするならば、膨らむ膨らまないと感じるのは温度や湿度によるものとしか考えられません。

と言う事は、夏場と冬場の工房内の温度や湿度を同じようにすれば、同じように膨らんで来るのではないかと思うのですが、皆様はどう考えますか?

あれ・・・いきなり極論に到達してしまいましたかこりゃ???

実は、工房内の環境を一定に保つ事が出来れば、年間を通して安定的なパンを作る環境が整うと言うのが真実なのです。

しかしそうはいかない所が難しい所なのですね。

真冬には相当数の加湿器が必要であったり、暖房もかなり必要になります。

逆に真夏は相当パワフルな冷房が必要でしょう。

つまり、相当の経費がかかると言う事になりますよね。

だからこそ小さな個人店では真冬は凍えながらパンを作り、真夏は大汗を流しながらパンを作っているのが実情なのではないでしょうか。

では、そんな工房環境を整えられない場合にはどうしたらいいのかと言われれば、それは酵母を増やしたり捏ね上げ温度を上げたりする以外には無いと言えると思います。

しかしそれは、見た目もそうだと思いますが、季節によって違うパンになると言う事に他なりません。

理屈で考えれば、間違った発想であると言わざるを得ないでしょう。

完璧にとまではいかなくとも、職場環境を整える事、温度と湿度をコントロール出来る環境を整える事以外に、年間を通して安定したパンを作ると言う事は難しくなると思います。

工房全体の温度と湿度を、年間を通して同じにするにはとてもお金がかかります。

ですから、生地を収納する発酵室だけでも用意する事が出来れば、経費は抑えられるはずです。

捏ね上がった生地が・・・・と言うよりも、捏ねている時点から、最終発酵を終えるまでの間で、いかに温度変化を与える時間を短くするかと言う事がとても大切になります。

発酵室はあっても室温はそのままと言うような場合は、ミキシングの最中でも生地に影響を与えますし、分割成形の時間を短くしなければなりません。

そして冬場であるならば、分割成形で生地がやや冷えてしまった分、ホイロの温度と湿度はやや上げておくなどの工夫も必要でしょう。

とは言え、それにも限度と言うものがありますから、例えば寒いからと言って生地温度を35℃位に捏ね上げ、分割成形で生地温度が25℃まで下がってしまい、それを補う為にホイロを40℃以上の高温に設定すると言うような場面によく遭遇しますが、これでは生地温度に変化を与え過ぎてとても美味しいパンにはなりません。

このような、季節によって極端に品質がばらつくお店と言うのは、残念ながら売上もばらついてしまうのです。

ばらつくだけならまだしも、存続すら難しいと言わざるを得ないでしょう。

安定して美味しいパンを作るには、原材料にこだわることももちろん大事な事だと思いますが、環境を整えることも実はとても重要な事なのです。

さて、夏場と冬場のような極端な温度変化をパン生地に与える事が、すなわち品質劣化を招くのだと言う事はご理解いただけたと思いますが、もう少し踏み込んで生地の側から温度と湿度について考えてみましょう。

工房が広い場合などは、真夏に冷房で温度をコントロールしようとすると、それなりの風力が必要になります。

つまり、冷気がとてつもない勢いで生地にも当る事になります。

そうすると、いくら温度としては安定したとしても、冷房の風によって生地が乾燥してくる事になります。

ですから、生地を乾燥させないように充分に配慮する必要があるのです。

また、真冬などの場合も、エアコンにより温度的には安定したとしても、湿度は逆に下がってきたりしますので、相当加湿する必要があるのです。

夏に温度を下げる行為と、冬に温度を上げる行為は、必ずしもパン生地にとって同じ条件ではありません。

何が違うのかと言いますと、それは温度と湿度と風などの質なのです。

これらの条件の相乗効果によって、生地に直接当る湿気というのは大きく違ってきます。

冬場だと、分割の最中でも生地はすぐに乾いてくると思いますが、これが梅雨の時期になると逆にべた付いたりする感じになる事があると思います。

それ程に季節によって湿気の質が違うのです。

ですので、冬場はとにかく外気に生地をさらす時間を極力減らす事、そして梅雨時期などは手粉を上手く利用して、生地表面を適度に乾燥させる必要があるのです。

このようにして、生地の側から考えると、年間を通して随分と環境が違うと言う事が解ります。

そして最終発酵のホイロですが、いくら設定が同じであっても、開け閉めの度に温度と湿度が変化しているのです。

極端な場合、蒸し暑い梅雨の時期には、ホイロの中よりも湿度が多い日もある位ですから、ホイロから出した生地が室温でもなかなか乾かないと言う事もあるでしょう。

逆に、真冬などは一度の開け閉めで完全に中の生地は乾いてしまうでしょう。

今回の質問者様のホイロが遅いと感じられる現象は、恐らくそのほとんどがホイロの開け閉めによるものであると考えられます。

ですので、開け閉めを行わないと言う事は不可能ですので、多少湿度を高めにしておく事と、開ける回数を少なくする工夫が必要だと思います。

また、ホイロ近辺でストーブでお湯を沸かすというような配慮ができれば、改善されると思います。

パン生地と言うのは、温度の変化に敏感なのはもちろんの事、一番の大敵は乾燥することですから、その事だけは充分注意して、冬場のパン作りを行っていただきたいと思います。

それと冬場のパン作りの注意点をもう一つ。

手粉を出来るだけ使わない事です。

冬場と言うのは、少しだけ生地を室温におくだけですぐに表面が乾燥してきます。

つまり、ほんの少し待てば、手粉をふったのと同じ効果が生地表面に現れると言う事になるのです。

それなのに、冬場でも手粉をバンバン使うと、それが乾燥の原因となりますので、ご注意くださいませ。


衛生管理の本当の意味とは・・・

こんな質問をいただきました。

主人と市内のあるパン屋にて、あんパンやクリームパンを購入しました。

家でパンを食べていると、主人が一言、このあんパンの生地、オニオンとマヨネーズの匂いがする、せっかくの菓子パンが台無し・・・とつぶやきました。


私は型に入れて焼く食パンとテーブルロール位しか焼かないのでよく分かりませんが、パン屋さんでは、大量のパンを作るため、同じオーブンの鉄板でいろいろなパンを焼くので、別のパンの香りとかがついてしまうことはよくある事なのでしょうか?

いちいちオーブンシートとかを敷いて焼いたりしないでしょうから、前に焼いたパンの匂いとかがついても仕方ないのでしょうか?

次回、そこのパン屋さんに行ったら、言ってあげた方がいいのでは?と主人に言われたのですが、言ったら、クレーマーみたいに思われてしまうかもと思ってしまいます。

しずかな朝様は、どのように思われますか?


どうやら嫌な気持ちになられたようですね。

お察しします・・・・そして私もその件は良く感じている一人です。

買われたパンに、他の食材の臭いが付いていたと言うのは、まぎれもなくご指摘のような同じ天板で複数のパンを焼くからであり、だからこそ本来は次のパンを焼く前に天板を掃除しないといけない訳なのですが、実際には忙しい???・・・・あるいは気にしていないのか、掃除無しで連続使用しているお店があります。

パン屋では、最終的にはこの ”焼く” という工程のお陰で、いわゆる除菌は行われています。

だからこそ、多少不衛生であったとしても、特にトラブルは発生しないのです。

そしてそして、だからこそ無頓着になってしまうのだとも言えるのです。

売れるパン屋さんと言うのは、オーブンが空く暇がありません。

ず~~~~っと焼きっぱなしです。

そんなお店のオーブンは大抵3段以上ありますから、常にオーブンの前の作業台には次に焼く為のパン生地が待機しています。

ですので、天板を清掃する場所もなければ、そんな暇?すらないのです。

かと言って、相当数の天板を揃えておくと言うのにも限界がありますし、何よりコストがかかりますよね。

ですから、どうしても何度かは連続使用する事になる訳です。

それでも、衛生観念をお持ちの方がオーブン、または天板に生地を乗せる成形担当をしていた場合は、例えばマヨネーズがこぼれていたり、具材が付着していたりすれば、それを取り省く位の事は当たり前に行っていると思います。

サッとひと吹きダスターで拭くだけでも済む場合もあるでしょうから、ひどい汚れの天板だけをよけて、比較的綺麗な天板を選んで連続使用すれば済む話だからです。

しかし問題は、そのあたりをまったく気にしていない職人?・・・なのか、パートさん?なのか、そんな方が担当していると、出来る事なら掃除は最後の一回にしたいでしょうから、特に途中で掃除する事もなく、連続使用している事が実情だと思います。

マヨネーズがこぼれている天板でも、同じマヨネーズを使用するパンであるならば、ごまかしがきくと思うのです。

しかし、そこに甘い菓子パンを成形して乗せるその神経・・・・

それこそが大問題なのだと思うのです。

まさに今、新進気鋭のベーカリーが大人気になっていますよね。

あの街にも、この街にも、こんなに素敵なお店があります・・・・と言う具合に、ベーカリーの特集や紹介記事が非常に多くなり、業界人としては嬉しい限りです。

しかし、その全てのお店が、果たして衛生的なのか???と言う事を考えると、とても不安な気持ちになります。

と言うのは、もちろん初めのうちは何事に対しても真摯に向き合っていますので、品質管理から衛生管理に至るまで、真面目に取り組んでいる事でしょうし、ある程度そのあたりを考える余裕があると思うのです。

それが、マスコミや雑誌に取り上げられ、ひとたび人気が出てしまうと、そんな暇がなくなってきてしまうのです。
誰も初めからおろそかにしようとしている訳ではありません。

ただ、優先順位からすると、とにかくパンを大量に作らなければならない訳ですから、だんだんと工房内も乱雑になってしまうのです。

だとすると、忙しいパン屋さん、つまり人気店は皆不衛生なのか???と言いますと、もちろんそんな事はありません。

掃除に特別時間をかけて、一見無駄なようでも、清掃をする意味合いをしっかりと認識しているオーナーあるいは会社というのは実に多いと思います。

餃子の大将の社長が、毎日誰よりも早く出勤し、本社の玄関を清掃している姿が報道され、それを気に一気に売上を伸ばした事は皆様も記憶に新しいと思います。

オーナー自らが率先して掃除をするという風習を持つお店や会社は、実は非常に多いのです。

特に食品関係の会社にその風習は多く、食べ物を作って提供する職業においては、清掃は欠かす事の出来ないお客様との約束であると言われています。

だからと言って、言うは易く行うは難しですよ。

実際に何年もの長きにわたって実行し続けていける人には、本当に頭が下がりますし、まさに商売の神様のように見えてきます。

では逆に、個人店ならば掃除は行き届いているかと言いますと、そんなに忙しくないであろうお店でも、不衛生なお店はたくさんあります。

掃除と言うのは、暇なら出来るというものではないのですね。

私自身も、けして掃除が好きな方の人間ではありません。

それでも、自分が作ったパンでお金を頂く訳ですから、そこだけは最善を尽くして望まなくてはならないと常々考えています。

しかしながら、衛生管理に対してあまりにも無関心過ぎる人・そしてお店が沢山ある事を私は多く体感してきました。

別のカテゴリ度々紹介してきましたが、私はどうしても個人店よりも大手チェーン店の方が安心して食べられるという印象を持っています。

そんな事を言うと、真面目に取り組まれている個人店の方には大変失礼だとは思うのですが、実体験として多くの不衛生な個人店を目の当たりにしてきた私にとっては、人間性が確認できないオーナーのお店よりも、システムに守られている安全重視の大手チェーン店の方に、どうしても安心感を憶えてしまうのです。

何をそんなに目の当たりにしてきたのか・・・ほんの一部だけ紹介しておきますと、

例えばあんパンを作っている最中に、餡を足元に落としてしまったとします。

誰かがそばにいれば、当然捨てると思うのですが、それを拾って何食わぬ顔で餡パンを完成させて住まう人がいるのです。

そんな人、あるいは職場と言うのは、人がいてもそうなのですから、誰もいなかったら何をしているのか解ったものではありません。

パン屋では、様々なフィリング(餡・クリーム・カレーなど)を使いますので、それをタッパーなどに入れて使用するのですが、少量になって来て、新しい具材を入れる際に、そのタッパーを洗わずに付け足す人がいます。

すると、タッパー上部側面に日にちの経過した具材が、カピカピになって付着しているのですが、それを新しいものと混ぜて使用するのです。

おまけに前回までカレーが入っていたタッパーと言うのは、やや黄色く着色してしまっていますし、臭いも付いています。

なのにそこにクリームを入れたりする職場があります。

また、全てのタッパーに蓋が無い状態で、使用後すぐに冷蔵庫に入れずに、地べたにおくお店がありました。

そのお店では、スタッフがその蓋なしタッパーの上をまたいで移動するのです。

この光景を見た時には、正直吐き気すら憶えました。

落とした材料を拾って使用するというのは、大なり小なり誰でもが経験する事だと思います。

もったいない・・・・少しくらいなら解らないだろう・・・・

それが人間の心理ではないでしょうか?

しかしそれは、大手のシステムでは完全否定です。

もったいないとか、原価に響くとかと言う事なのではなく、安全が第一であり、それが信用につながるからなのです。

そもそも、それをもったいないからと言って拾って使ってしまいたくなるのが人間というものなのではないでしょうか。

そして、例えば工房で一人きりで作業をする様なパン屋さんであるならば、その方がいったいどれ位の衛生観念をお持ちなのかと言う事に、すべてを委ねる事になる訳です。

しかし、パンならまだ焼きますから、例え一度地べたへ落とした具材を食べたとしても、お腹を壊すような事はありませんが、これが焼いた後のパンであったらと考えると、とても気持ちが悪くなりますよね。

職業柄、ケーキ工房やレストランの厨房にお邪魔する機会も多いのですが、そこで多いのは完成品を落としてしまった場合の対処法でした。

ピザを落としてしまった場合は、表面のチーズが汚れていますので、その上に更にチーズをかけて今一度焼けば大丈夫であるとか、同じピザの場合は皿はいちいち洗わずに使うとか、サラミが古くなって少し臭くベタベタしていた時は、洗って使っていたりとか、ピザソースの表面にカビが発生していた時は、表面だけだからと言って大きいものは取り省き、残りは混ぜてしまったりとか、このような厨房の冷蔵庫と言うのは、まったく掃除されていませんのでとにかく臭います。

至る所にカビが発生していますし、様々な食材がこぼれ落ちては乾燥しているのです。

なぜそんなお店が、営業を続けていけるのでしょうか?

保健所の検査はどうなっているのでしょうか?

私の経験から言いますと、保健所の検査というのは多くても年間で2回程度で、保健所の検査員が直接来る事のない場合もあります。

と言うのは、やはり人員には限界があるからだと思うのですが、代わりに来るのが地元の商店会などの業界関係者が代理で来る事が多く、そうなると世間話で終わってしまい、検査は実際には行われないと言う事が多いのです。

また、検査日数日前には関係者との飲み会があり、その会に出席しているお店の検査はゆるいと言う時もありました。

保健所と言っても、悪く言えばお役所仕事ですので、要は問題が起きた時には対処すれば良い、問題が起きていない場合は配布物を配る事と、自主管理表なる清掃チェック表さえ付けていれば、後はそんなに厳しい検査をする必要は無いとお考えなのではないでしょうか。

そもそも、職員の数と店舗数が合っていない訳ですから、すべてをチェックなんてしようがないのが実態でしょう。

安心安全なパンを作る為に、当店では無添加で天然酵母を使用しています・・・・

そんなパン屋さんが非常に増えました。

天然酵母も様々な果実から作り、全部で5種類ある・・・とか、国内産の小麦で安心安全とか、無添加低温発酵だから安心して召し上がってください・・・・というような取り組みは、お客様の側からすると選択肢が増えて非常に有難いと言えますよね。

しかし今回のような衛生面、つまりは製造の実態というのはなかなか表面には出て来る事がありません。

また、購入する側がそれをチェックする事もほぼ不可能でしょう。

そうなると、本当の安全とは何なのか?

何がお客様との本当の約束なのか?

物作りの心構えと姿勢というものを、改めて自らに問いかけ、どこまでも謙虚に、どこまでも基本に忠実にいかねばならないと考えさせられました。

この質問が自分への戒めでもあると強く反省し、心強きパン職人であり続けたたいと思います。

質問、そしてご指摘ありがとうございました。

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