ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

食の安全がもたらすものは、本当に幸福につながるのだろうか・・・

平成26年7月

またまた中国の食肉加工会社のずさんな管理の状況が、連日報道されている。

するとなぜか、次から次へと他の国々も、似たような報道を繰り広げる。

こうなると、しばらくの間は犯人探しが行われ、誰の責任なのか、会社ぐるみなのか、それとも個人的な恨みなどが原因なのかと、テレビをつける度にその話題がニュースとなる。

暴露本なども出るだろうし、さらなる規制の強化を図るべく、法整備も行われるだろう。

しかし、そんなこんなで数週間が経過すると、また何事もなかったかのように皆マクドナルドへ行くのである。

いつもならそのように、比較的短期間で話題に上らなくなるのだが、今回は特に工場内の映像があまりにリアルで、あれだけカビの生えた肉を、平気で使用していたんだと考えると、誰しもが吐き気すら憶えるだろう。

良くあのような動画を撮影できたものだと感心するが、ではあのような実態は、あの会社だけが行っているのだろうか・・・・

他の会社は本当に大丈夫なのだろうか・・・・

安定した日々の生活の中では、ほとんど考える必要のない、当然の事だと思って信じていたものが、突然このように報道される事によって、やはりあり得る事なんだなと考えさせらてしまう。

今現在でも、すでにたくさんの種類の食材が輸入されている。

これが、TPPが締結されると更に加速することになり、国内の食べ物のほうがむしろ少なくなって行く事は間違いないだろう。

中国産だけ食べなければ済む・・・・という話では済まないような気もするし、かと言ってあまり神経質になり過ぎてもキリがないのも現実だろう。

日本の食品会社では、今回のようなカビの生えた肉を再利用するとか、床に落ちた肉を拾って混ぜると言うようなことは行なわれていないのだろうか???

その点、日本人は日本人を信用しているし、日本の基本真面目で勤勉な気質と風土では、そのようなことはまずないだろうと誰しもが思っているだろう。

中国の、しかも食品工場などの労働環境というのは、極めて劣悪であり、そんな環境下で食べる人の事を考えるとか、衛生管理を守るなどと言うモラルは、そもそも守られるはずはないとも考えられる。

しかし、それらの格差の大小はあるにしても、丸ごと日本の食品だけは安全だとは正直言えないと思う。

なぜなら、法や環境がいかに整っていたとしても、いわゆるおかしな人というのは必ず存在するからである。

つまり、人間が機械のラインに関わっている以上、確実に安全であるとはいうことはあり得ないのである。

加工工場にも大小様々ある。

小さな所ほど、手作業に頼る部分が多くなり、そのような職場の環境と、大手工場の環境とでは、中国ほどではないかもしれないが、待遇などの格差はかなりあるのが現実だ。

これは我々パン業界でも同じ事で、待遇や作業環境だけをクローズアップして考えてみると、安全性には大きな差があることが見えて来る。

例えば、ヤマザキパンの工場では、体育館のような広さの工場の中をラインが張り巡らされていて、人の姿はほとんど見かけない。

原材料の配合や生地の捏ね上げなどは、もちろんコンピューター制御により機械が行い、制御室で人間が管理している。

発酵室での発酵や、その後の分割から成形、そして具載せに焼成までの間、ほとんど人が触れると言う事はない。

焼成後にパンを冷まし、袋に入れるのも自動なので、完全に出来上がったものを、初めて人間が触れる事になるのである。

こうなると、例えば何かの薬品などを、どこかの工程で混入させるというような、意図的な行為を行うのでない限り、虫一匹パンに触れる事もできないような衛生管理が行われているのである。

他方、手作りパン屋ではどうだろうか・・・・

まさに、初めから終わりまで人の手が触れまくっているし、工房の中は良い菌も含めた雑菌だらけである。

どんなに掃除をしっかり行っているとしても、正直相当不衛生であることは否めない。

ただ、最終的に焼成することが消毒となる為、比較的事故は少なくて済んでいるものと言えるだろう。

食堂やレストランなどの厨房はもっと不衛生で、それは生の食材である肉や魚などを扱う工房ほど、雑菌の宝庫であると言えるだろう。

そこで、肉を一切れ足元に落としてしまう、あるいはパン屋なら生地を足元に落としてしまうと言うようなことは日常茶飯事だと思われる。

その肉、あるいはパン生地を、拾って使用する事は間違っても行わない・・・・・果たして皆がそう言えるだろうか?

そう考えると、手作りパン屋の数だけ、レストランや食堂の数だけ、そこで製造にかかわる全ての人の人間性を信じる以外には無いのだというのが実態なのである。

いくら検査項目を決めようが、法的に縛りをきつくしようが、最終的には作る人と食べる人の信頼関係に行き着く事になるのである。

つまり、どんなに中国政府が食の安全を厳しく取り締まったとしても、はたまた日本においても、いかにこれ以上厳格に定期検査などを行ったとしても、それは表面上の気休めなのであり、最後は個人個人の信用でしかないのだということになるのだ。

他のカテゴリでも紹介してきたが、私達が日々食べているものが本当に安全なのかどうかは、正直誰にも解らないと思う。

故意に意図して不衛生なものを作っていると言う人は少ないとは思うが、安全だと自分は信じていても、実はそれがそう安全なものではなかったという事の方が多いかもしれない。

どう言う事かと言うと、例えば注文したラーメンに髪の毛が入っていたとしたら、それは間違いなく不衛生な現象ではあるが、人体に悪影響があると言う事にはならないと思う。

しかし、そのラーメンに使われているホウレンソウやモヤシを店主が洗っていなかったとしたら、ほうれんそうの農薬とモヤシの漂白剤を体内に取り込む事になるのである。

無農薬の野菜ですよと、安心して購入していた野菜が、実は病気にかかっていたり、小さな害虫に気が付かずに食べていたとしたら、それらは体内に蓄積されて行くのである。

私達は、毎日何食もの食べものを口にしているが、そのすべての製造工程を、当然ながら見たり確認したりはしていない。

逆に言えば、だからこそ安心する事が出来るのかもしれないし、必ずしも全ての作られ方を見る事が良い事かと言うと、見ない方が精神衛生上良いということもあるかもしれない。

様々な ”本来なら身体に悪いもの” というものも、間違いなく口にしながら我々は生きてきたはずだ。

しかし現実には、こうやって元気に生きている。

だとするならば、それが人間の生態系なのだろうし、ある程度の良からぬものは排除できる仕組みを持ち合わせているのかもしれない。

ここで話が変わるが、地球温暖化???だけの原因なのかどうかは解らないが、間違いなく地球の温度は上昇しはじめている。

これから長い年月を迎えるほどに、どんどん暑い日が増えていき、日本の四季もあやういと言われている。

大気や海水の汚染も重大な問題だが、海水の水温が上昇することで魚の生態系も変化し、極端な話食べられる魚は減ってくることになるだろう。

地上でも、年間の平均気温が上がると言う事は、疫病が蔓延することにつながると言われている。

今までになかったような菌によって、作物の安全性も脅かされて行くことになるかもしれない。

そんな中、今注目されているのが、野菜の水耕栽培である。

部屋の中で、まったくの無肥料無農薬で野菜ができるキッドが開発されている。

虫一匹付く事が無いこの野菜は、現在ではキッドも高額であり、取り扱い業者も少ないと言う事もあるが、数年先には各家庭でこれらのキッドにより、自家製の無農薬野菜が作られるようになる事は間違いないと思う。

また、もっと驚くのがマグロを森で育てるという計画である。

森に作った水槽のなかで、完全に養殖を行える技術が今現在行われており、こうなると、様々な魚が海水の汚染を受けない形で、私達は食べる事が出来るようになる訳である。

こうなると、どんなに土が汚染されても、また海水が汚染されて、魚が取れなくなったとしても、私達はおいしい、しかも格段に安全な魚や野菜を食べる事が出来るようになる訳で、何と素晴らしい研究なのだと感心してしまう。

が、はたしてもろ手を上げて喜んでばかりいられる事なのだろうか???

なぜならば、海水には様々な栄養素があり、そもそも人間の母でもある存在だ。

汚染は間違いなく危険なことだが、様々な栄養素をもつ自然の中で生きてきた魚達だからこそ、人間に不可欠な栄養分をもたらしてくれたのではないだろうか。

野菜もそうである。

土の中の微生物や様々な栄養素、そして太陽の恵みの中で育てられた野菜だからこそ、人間に活力を与える事が出来たのではないのだろうか。

単なる数値としてのビタミンならば、マツキヨに行けば全てが揃っているだろう。

しかし私達が生きていく上での本当の力と言うものは、もしかしたら母なる大地、そして母なる海がくれたものだったのではないだろうか・・・・

本当の安全というのは、無菌や無害虫や無汚染の事を指すのだろうか????

もしかしたら、適度な害こそが、私達の身体を作り上げているのではないのだろうか・・・・

息子が耕している畑を見ながら、そう思うのであった・・・・

細かいけどあるあるQ&A 3

こんな質問をいただきました。

・・・・とにかく一度凝り始めると、どこまでも行ってしまう悪い癖があるのです。

この塩はとにかく旨味が出るので 
(相当お気に入りの塩らしいです・・・) もちろんパンにも使用しているのですが、旨味と言うよりも苦みのような後味が気になって仕方ないのです。

やはりパン用とその他の食品用とでは使い分けが必要でしょうか?

かなりのお気に入りのようですが、パン生地にとっての塩と言うのは、それなりの役割を持っておりますので、適している物を使わないと、最大限の効果を得られないと言う事はあると思うのです。

具体的に申し上げますと、〇〇さんがお使いの塩は、いわゆるにがりが多過ぎると思われます。

にがりを多く含む塩と言うのは、水分も多くベトベトとしています。

もちろんそれが魅力で、食品に旨味を与える、または旨味を引き出す力があるのだと思いますが、そのにがみが必ずしも全てのパンに旨味を与えるとは言い難いのです。

一般的な並塩と比べると、にがりの多い塩と言うのは水分も多く、その為に通常の配合では塩けを感じにくいことがあるので、今回送って頂いたレシピの塩の配合も、2.4%ととても多くなってしまっているのだと思います。

塩を感じにくいと言う事で、多めに配合してしまうと、旨味のはずのにがり成分が前面に出てきて、苦みが目立ってしまう事があるのです。

このにがりと言うものに関しては、製パン的に効果があると言う事は無く、にがりを多く入れたからと言ってパンが美味しくなるかと言えば、むしろ逆の効果が出てしまう事になりかねないのです。

ですので、あくまでパンに使用する塩というのは、少なくともにがりによってベタベタとしているようなものではなく、サラサラとしている物を選んでいただくのが良いと思います。

塩に様々なミネラルを期待して、さらに水にもミネラルの多いものを選んで、それらで作るパンはミネラルの多い栄養価の高いパンになるかと言えば、それは全くの誤解だと言わざるを得ません。

ミネラルは時に製パンの発酵を阻害し、グルテンにも影響を与えてしまうのです。

試しに、日本の硬度の低いミネラルウォーターである六甲のおいしい水などと、エビアンや、コントレックスなどの超硬度の高い水を使ってパンを作ってみると、良く解ると思いますよ。

製パンにおける水や塩の役割では、ミネラルはむしろ邪魔になってしまいますので、ごくごく一般的なものをお使いいただけば良いと思われます。


・・・・フランスパンをメインに作って10年以上は経つのですが、色々と専用の粉が出るたびに購入してはチャレンジをしています。

そんなとき、ふと目にした専門書にはビタミンCを使うレシピがあり、そう言えばとその他の本を読み返してみるとたしかにビタミンCを入れると書かれているものが多くありました。

いつのころからか入れずにそのまま作ってきていましたが、やはりビタミンCは入れないと本当の美味しさにはならないのでしょうか?


まず初めに申し上げておきますが、本当の美味しさというのは、ご自分で納得するかどうかだと思いますので、今まで美味しいと感じていたのでしたら、何の問題もないのです。

ただ、ビタミンCを入れる事で、更に美味しくなるのでは・・・・・

そのようにお考えなのですよね、きっと。

と言う事でお答えしますが、ビタミンCを例え入れたとしても、美味しさと言う部分には貢献しないと思います。

ビタミンCを入れる、あるいは生地改良剤などを入れるというのは、あくまで量産型の工房でのパン作りなのであって、製パン性の向上とか、品質の安定ということを考えた場合に、必要な場合もあると言うレベルの事なのです。

小麦粉の品質、塩の量、酵母の量、捏ね方と生地の取り扱い、発酵時間、焼き方というものが重要なのであって、それらを向上させる、あるいは安定させるという目的のものは、あれば確かに助かる部分もあるが、無くても何の遜色もないというレベルのものだと言えるのです。

確かに家庭用のレシピにも、ビタミンCを入れるように書いてあるものはあるかもしれません。

しかし実際には、とてつもなく微量しか使用しない為に、管理が大変だと思うのです。

と言う事で、結論としてはまったく気にする事はありませんし、〇〇さんのパン作りのスタイルこそ、ミスターホームベーキングだと言えると思いますよ。


某有名店で働く人からの質問です・・・・

・・・特にどうしても許せないのが、オーブンを頻繁に開けて中を確かめる事です。

その先輩はタイマーをかけるのが嫌いで、タイマーなど必要ないと言う人なのですが、そう言うわりにはオーブンを何度も何度も開けて確認するのです。

極端に聞こえるかもしれませんが、たぶん15秒くらいに一度は開けたりします。

食パンを焼いている時でも、合計10回位は開けていると思います。

あんなに開ける位なら、タイマーを使った方が良いのではと思うのですが、タイマーを頼ってはいけないとかパンの焼き具合は鼻で感じるものだとか日頃から言っているので、あの癖はなおらないと思います。

もちろん開けている時間はわずかですが、多少でも何回も何回も開けると言う行為はどうしても納得ができないでいます。

かと言って、おかしなパンが焼ける訳でもないということは、べつにオーブンを何度も何度も開ける行為は間違っているとは言えないものなのでしょうか。

いつもこんな愚痴のような質問というかただの愚痴ですよね実際・・・・・・


愚痴・・・・大いに結構ですよ(笑)

愚痴はいくら言っても構いませんので、自分なりの答えだけは見つけておいてほしいですね。

私はこのブログ内でも何度も書いてきたと思いますが、焼成中にオーブンを開ける行為は断じて許しません。

ならば、開けずにどうやって取り出すんだよ!!!!

実際に過去にこのようなやり取りを何度行ってきたことか・・・・・

職人と言うのは、プライドのかたまりみたいな人の集まりです。

ああ言えばこう言う・・・という具合に、理屈ではなく最後には感情にうったえて、屁理屈も出てしまうものです。

この先輩の言い分というか指導法も、あながち間違いではないと思うのです。

しかし、パンの焼成の香りはオーブンを開けなくても確認出来るはずですし、それぞれに入れた時間をきちんと覚えていれば、だいたいあとどれ位で焼けるはずだというのが解っているはずですから、その頃を見計らってちらっと開けて確認するということは当然誰でも行っている行為だと思うのです。

ただし、だからと言ってのべつ幕なしに開けまくるというのは、どう考えてもあり得ません。

それはもう確認の域を超えて、せっかくのオーブン内の蒸気が、まったく安定出来ない状態であり、完成品に悪影響を与える事は間違いないと言えるからです。

焼成中にオーブンを開けると言う事は、サウナの扉を何回も開けられる事と同じで、不愉快極まりないと言うような事を他の記事で書いたと思うのですが、家庭用の小さなオーブンであれば、一度開けただけで数十度も温度が下がってしまうと言う、もはやパンにとっては殺人的な行為であると言えるのです。

しかし、業務用のオーブンでは、一度や二度開けたからと言って、下がる温度は2℃程度でしょうから、すぐにまた復活してくるかもしれません。

ただし、問題はそこだけではありません。

肝心なのは、オーブンの中のパン生地と言うのは、熱だけで焼かれている訳ではないということです。

むしろ、パン生地から蒸発してくる水分によって充満している蒸気が、パン全体をしっとりと焼き上げる事に貢献していると言う部分なのです。

少しだけ専門的になりますが、食パンなどの大型のパンと言うのは、オーブンに入れた時点では生地の温度が約30℃くらいが一般的です。

その生地がオーブンに入る事により、毎分ほぼ5℃づつ温度が上昇して行きます。

そして、生地の温度が50℃を超えるあたりから、イーストの活動や酵素の活動などが最大の山場を迎え、生地は最大限膨らんでいきます。

これがいわゆるオーブンスプリングと呼ばれる現象で、ようするに窯伸びが最大限行われる温度帯なのです。

そして更に生地の温度が60℃以上になると、イーストも酵素も完全に死滅し、表面が乾燥していきます。

これがいわゆる、クラストの形成となる訳です。

ある程度表面の骨格が出来てきた時点では、まだ内部はドロドロの生地のままですが、そこから急激に内部にも火が通る事で、いよいよ内部の骨格も出来ていきます。

生地の温度が90℃を越えたあたりから、表面の色付きが始まり、クラストの香りと色付き、そして内部の水分の蒸発が始まります。

そして、生地の内部温度が97℃あたりに到達すると、完全に内部の骨格も完成し、余分な水分が出て消化の良いパンが出来上がるのです。

このように書くと、オーブンの内部では実に激しい変化が起こっているのが解ると思います。

ガスが風船を膨らます時間、骨格を作る時間、内部形成を行う時間、水分を飛ばす時間、色付きを行う時間、香りを付ける時間と、全てが連続して約30分位の時間内で行われいる事が解ります。

その状況の中、何度も開け閉めを繰り返され、オーブン内の蒸気が外へ逃げてしまうと、内部の気流が不安定となり、生地に対しての熱の伝わり方に不具合が出来てしまうのです。

パン生地が焼けていく際に放出される水分も、結局は水蒸気となり、クラストを包みます。

水蒸気に包まれながら焼かれたクラストは、コンディショナーで保護された髪のように、焼成後もパサ付きから守ってくれるのです。

しかしこのコンディショナー役の水蒸気を、何度も開け閉めして外に逃がしてしまうと、とても乾燥したクラストのパンになり、それはパンの日持ちにも大きく影響してしまうのです。

ご飯を炊いた炊飯器を、ほんの数十秒開けておいただけで、薄い膜のようなものが内側に出来ます。

デンプンを含む食品というのは、それほど温度差や空気に敏感なのです。

表面上は問題の無いパンに見えるかもしれませんが、あきらかに老化の早いパンになるはずですし、陳列が裸であれば、硬くなるのも早いパンであると言えると思います。

つまり、何一つ良い事は無いのであり、いかにオーブンを開ける回数と時間を少なくしながらも、いくつもの種類を効率良く焼いていくかがオーブン担当者の技量なのであり、その事が気になっているのであれば、是非悪いものは悪いと言える職人に育って行ってもらいたいと思います。

バターロールとクリームパン

家庭でも多く作られていると思うのが、これからご紹介するバターロールとクリームパン。

このパンの画像については、なぜそうなってしまうのかという質問をけっこういただきました。

パンが理想通りに完成しない理由というのは、お使いになる材料であったり、レシピであったり、機材であったり、それらそれぞれの違いによってもいくつかの原因が存在し、そこにまた技術力などがプラスされてきますので、その都度解決法が変わってくるものです。

ですので、あくまでそのような場合もあるのか・・・・??という程度に、御自分の場合に置き換えてみるようにして頂けたらと思います。

まずはこちらですが・・・

バターロール

皆様御存じのバターロールになります。

このパンの何がいけないの??・・・・と感じる人と、艶があって美味しそうと感じる人がいるようです。

裂け目があって、割れてしまってはいますが、だからと言って美味しくないパンだとは思えない・・・・という意見もありました。
私自身もそう思いますし、お客様もこのようなバターロールなら買わないと言うほどのものではないと思います。

実際この画像のバターロールを良く見ていただくと、実に綺麗に艶が出ています。

この光沢は、クラスト(表皮)が薄く、そして滑らかでないと出ない光沢です。

焼き色もとても良いと思いますし、焼き加減、つまり焼成温度と焼成時間も、バランス良く出来上がっていると言えると思います。

完成度で言えば、とても高い部類に入るのではないでしょうか?

では何がいったいいけないのか・・・・・

それは、いいのかいけないのかという事ではなくて、なぜ裂けてしまったのかという理由は知っておくべきだと言う点なのです。

そこを知っておかないと、他の現象が何か起きた時に、解決の糸口がつかめなくなってしまうからなのです。

このバターロールは、生地の完成度は申し分ない事が、クラストから見て取れます。

と言う事は、それ以外の事が原因で、裂け目ができてしまったと考えられます。

生地が硬い場合、あるいはミキシングが不足している場合でも、このような裂け目が出たりしますが、このパンからはそれは感じ取れません。

恐らくは、成形時の生地の締めすぎ、あるいは成形時の生地の乾燥などが考えられます。

成形前に、一度生地を冷凍なり冷蔵なりさせて、休ませる場合があります。

その際、生地の一部だけが冷え過ぎてしまったりすることで、成形時に生地が荒れてしまう事があります。

常温のままの成形の場合には、手粉の使い過ぎや、生地表面の乾燥も考えられます。

また、成形後に冷凍や冷蔵にて保存しておくと言う人もいると思いますが、その際に一部乾燥してしまうと言う事もあると思います。

いずれにしても、生地の状態としては、引っ張り過ぎや強く巻き過ぎたことで、生地が締まっている状態であると思われます。

画像の左下に裏返しのバターロールがありますが、その両サイドには白い部分が多いのが解ると思います。

これはつまり、接地面積が少ない事を表しており、過度に伸び過ぎたパンである事を物語っています。

こうなってしまうと、いくら焼き加減が良くても、いわゆる引きの強いパンとなり、噛み切りづらい、締まった感じのパンになってしまいます。

ですので、せっかく高配合であったとしても、ソフト感を損なったパンになってしまいますので、その点には注意が必要でしょう。


では次です。

クリームパン焼成

皆様ご存知のクリームパンですが、この画像ではとても艶がありませんよね。

しかし見るべき点は、そこではありません。

艶は、この後から艶出しのオイルやバターなどを塗れば、綺麗に出てきます。

問題なのは、焼き色がまだらだと言う点ですね。

白っぽくなっている部分があるのが解ると思うのですが、どうして全体的に同じ色にならないのか・・・と言う点が問題点となる訳ですね。

この現象は、手作りパン屋さんでは非常に多く見かける光景です。

まさに、手作りならではとも言えるこの現象なのですが、と言う事は、手で成形する場合に起こり易いということになりそうですね。

クリームパンに限らず、いわゆる具材を包んで焼くパンの場合、包み方という技術がとても重要となります。

生地を手で潰して伸ばしている人もいれば、麺棒を使って伸ばしている方もいると思いますが、実はその伸ばし方には、多くのコツが必要となるのです。

それは、具体的に言いますと、包む具材によって伸ばし方を変えなければならないと言う点なのです。

硬い具材の場合・水っぽい具材の場合・柔らかい具材の場合、そしてそれらの量に応じて、生地の伸ばし方や包み方にコツと言うものが存在するのです。

画像のパンはクリームパンなので、クリームは柔らかく、そして水っぽい具材の部類に入ります。

その水っぽい具材を包んだ生地と言うのは、内部で常に生地に対して水分を放出しており、それにより生地とクリームとの間には、必ず隙間が出来てしまいます。

このような状態の生地を焼くと、クリームはオーブンでは膨らみませんが、パン生地だけは内に外にと膨らんでいきます。

内に膨らんだ生地は、クリームの下の生地も上の生地も、クリームを押すようにして膨らんでいく訳ですが、クリームからは焼いている最中も水分がどんどん放出され、いつまでたっても生地とクリームはくっつく事が出来ません。

それどころか、焼成時間が経過するごとにクリームは沸騰し、生地を内部から押し上げようとします。

沸騰した汁物が、お鍋のふたを持ち上げる光景は、食卓では日常的な光景ですよね。

あのような元気の良い水蒸気が、クリームパンの内部では発生していることになり、そのことで生地は伸びながら薄くなってしまうのです。

それが常に全体的に薄くなっていくのなら良いのですが、実際には生地の厚さがまちまちであったり、生地に力が無い場合には、この水蒸気に負けてしまい、部分的に薄い場所が出来てしまったりするのです。

すると、厚い場所や薄い場所、そして水蒸気によっていつまでも焼けない場所などが出来てしまい、色付きにバラツキが出てしまう事になる訳です。

ですので、柔らかくて水っぽい具材の場合には、生地に伸展性を持たせるように、つまりコシの入った成形が必要であり、尚且つ生地が薄くならないように伸ばす必要があるのです。

・・・・・とは書きましたが、ああそうですかといって出来る訳ではないですよね。

ですので、家庭ではこのような水っぽい、あるいは柔らかい具材を包むと言う場合には、生地の重量に対して具材を少なめにする、あるいは具材を中心に考えれば、いつもよりも生地の重量を増やすことで、水蒸気のダメージを軽減することができると思われます。

とか何とか書いては来ましたが、この手の質問を下さるのは、大抵パン屋さんですけどね・・・・・

なぜかホームベーキングの方からは、食パンの質問ばかりなのが気になります。

個人的には、食パンは買った方が品質も良く価格も安く、菓子パン類こそ御自宅で・・・・・と思うのですが、どうやらそうはいかないようですね~

技術は習得すべきだとは思うが、その手法とは?

これからパン屋を開業したいという目的を持った人は、まずはパン作りを目の当たりにして、そんな日々の中から、自分のスタイルを見つけていくのだと思います。

パン屋さんに就職したり、短期でアルバイトをさせてもらったり、パン教室にたくさん通ってみたり、やはり基本が大切だと言う事で、製パン学校に入学される社会人もたくさんいらっしゃいます。

習い方や習う場所、そしてどのような方に教えを請うかによって、成長の度合いは大きく違ってくるであろうと思いますし、皆さんその事を十分考慮した上で、どこでパンの勉強をするのかを決めていらっしゃる事と思います。

そんな、これから開業を目指していらっしゃる様々な方々とやり取りをしていく中で、ご自分が勤めているパン屋の技術力の低さや、きちんとした製パン理論を兼ね備えた人とは言えないような方が、責任者を務めている事への嘆きなどを良く相談されたりします。

このままここにいても、あまり勉強にはならないと感じている・・・・

有名店であるとは聞いていたが、肝心のオーナーはほとんどお店にはいない・・・・

有名チェーン店なので、しっかりと技術の手ほどきを受けられるものだと信じていたが、実際は数年経っても、同じ事ばかりをやらされていて、他の仕事を憶える事が出来ない・・・・・

結局は人間関係が優先しているようで、幹部は幹部同士の結束が強く、下の者になかなかチャンスを回してはくれない。


そのような相談は相当数頂きますし、それぞれ事情は良く解っているつもりです。

しかし、基本的にはどうしようもない現実がそこにある訳で、すぐにどうこうできないとい言う事は、みなさん何となく理解はされているようです。

楽しく有意義に、製パンの勉強が出来ていると言う人の意見は、極めて少ないのが現実です。

むしろ、現実には自分の勤めているパン屋の事を、良く言う人の方が少ないとも言えます。

まあ、だからこそ相談してくるのだとも思われますし、有意義な方はそもそも相談しては来ないかもしれませんけど・・・・・

素晴らしい師匠と呼べるような人に、巡り合えるかどうかは、正直運次第かもしれません。

充分に調べ上げて、つてを使ってその師匠のもとを訪れるというような、熱心な方もいるようですが、意外と思っていた人とは違っていた・・・・・なんていうこともあったりしますので、これはやはり相性の様なものも当然必要なのだと考えさせられます。

また、まったくの無名であっても、尊敬できるオーナーや店長であると言う話も、逆に良く耳にします。

そうなりますと、結局の所、どうやって学ぶべき人を探し、学ぶべき場所を選択すれば良いのかは、非常にその選択肢に悩む事になりますよね。

しかし私は思うのです。

それはどこへいっても、大した問題ではない・・・・と思うからです。

そうです、結局最後は自分の性格や、やる気次第でどうにでもなると思うからです。

有名店のシェフに付いて学んでいても、結局はカバン持ちのような数年を過ごしている方もいらっしゃいます。

有名店のシェフには、横のつながりが多いので、他にもたくさんの有名なシェフの名刺をもらえたりしますから、とにかく一緒に行動したい・・・・そう言って、付き人の様になってしまっている人もたくさんいます。

経験から言うと、それを上手く利用できるかどうかによって、その後は変わってきます。

有名シェフの弟子であるとして、華々しくオープンしても、皆さんが成功しているとは限らないのです。

要は何を学ぶ為に、そのシェフのそばにいるのか・・・・・

名声が欲しいのか、それとも仕事を盗みたいのか・・・・・

そのあたりを明確にしておかないと、世間にチヤホヤされている事が、まるで自分の功績のような錯覚に陥り、一人になって独立したときに、本当の商売の怖さを知る事になってしまうのです。

また、有名と言われるようなパン職人に、弟子入り、または教えを請いたいと考えた場合、そう思っている人が他にもたくさんいて、自分はその中の一人でしかないということを知っておかなければなりません。

自分にだけ誠心誠意教えてくれる・・・・と言うようなことは、間違ってもないのです。

パン屋であれ、他の食べもの屋であれ、やはりある程度有名になった方とのお付き合いというのは、非常に気を使うものです。

そこには、時に政治もからんできたり、とにかく人間関係には気を使う事になります。

もうそれは、パン作りとはかけ離れた世界であるとも言えるかもしれません。

有名チェーン店にお勤めの方から、良く相談を受けるのですが、その会社の技術部門の責任者に合うと言う事は、並大抵の事ではないそうです。

解り易く言うと、現場の一従業員が、やすやすと相談を出来るような環境ではないと言う事です。

チェーン店ではなくても、個人の有名店のシェフともなれば、修行者が順番待ちをしています。

そこで自分をアピールして、並いるつわもの修行者たちと共に、毎日激闘を繰り返すのも、これもまた相当なストレスになると思いますよ。

再三再四、他のカテゴリで紹介してきましたが、この世界の、いわゆる成功者、そして有名シェフとなることは、実力はもとより、運も相当必要であると思いますし、もちろん人格や才覚、そして哲学も必要だと考えています。

誰しもが夢と希望をもって開業すると思いますが、悲しくも成功する人の方が少ないというのが現実問題なのです。

そんな中、成功を遂げた方々の苦労と、その精神力・経営力・技術力を考える時、今からパンの修業を、いよいよ始めようという初心者、あるいは、なかなか成長してこない人材との間には、相当な格差が生まれていると思うのです。

言い方は悪いですが、いちいち末端の相談に乗っている余裕は無い・・・・

そんな状況もあって当然なのではないでしょうか。

もちろん表向きは、そんなおごりは持ち合わせていないと考えているはずですが、だからといって誰かれ構わずに相談に乗る、あるいは指導をすると言う訳には当然いかない訳です。

私自身も、製パン歴が浅い頃には、随分積極的に先輩職人や幹部の方にアポイントを取りましたが、とても面倒がられたという記憶があります。

何でも相談して良いぞ・・・・・

そう言われて鵜呑みにしては、何かと質問をぶつけた時期がありましたが、どう考えても ”そんな事は自分で勉強してから質問しろ・・・・・”

そう言う目をしていらっしゃいました。

”何でもかんでも聞けばいいと言うものではない”

”誰しもが悩んで悩んで、その答えを見つけるのだから・・・・”

随分後になって、自分が聞かれる立場になってから、ようやくその事に気がついた次第です。

誠にお恥ずかしい話ですが、そもそも矛盾しているとも言えますよね。

どんどん質問して来る位で無いとダメだぞ・・・・なんて言っておきながら、それは自分で感じ取れなんて言うのですから・・・・

自分は恵まれた環境で働いているのかどうか・・・・というようなことは、正直感じ方の問題、捉え方の問題であると思うのです。

様々な疑問を、解り易く教えてくれる上司や先輩がいれば、それは有難いかもしれませんし、もしかしたら製パン理論の早期習得に役に立つのかもしれません。

しかし、逆に考えれば、自分しかいないと思うからこそ、必死になって答えを探そうとするのではないかとも考えられますよね。

あらゆるヒントは、意外と身近にあったりします。

知りたい・・・・ここを抜ければ、きっと目の前が明るくなるような気がする・・・・

誰でもその様な気になるのがパンの難しさだと思うのですが、結局一つ解っても、また新たな疑問が出て来るものです。

そして、いつまでたっても疑問がぬぐわれることは恐らくありません。

なぜなら、毎日疑問を持ち続けることこそが、唯一の技術向上への道だからです。

疑問を持たずにパン生地と向き合っている人がいるとすれば、それはすなわち足踏み状態であると言えるでしょう。

製パンの真髄をつかむのに、絶対必要な事と言えば、それは毎日毎日己の疑問と闘う事、ただそれだけであると私は考えます。

その為に、日々のパン作りにおいて大切なことは、パンを作る為の全ての工程に興味を持って取り組むということです。

原材料それぞれの役割や特性とはどういうものなのか・・・??

そして、今まさに捏ねられている生地が、どのようなパンになっていくのか・・・・・??

パン屋さんにお勤めの方に向かって、あえて申し上げます。

自分の仕事をしながらも、全ての工程を盗み見る目を養ってください。

材料の発注や棚卸しなどの、原材料仕入れに関する仕事を進んで行ってください。

原価計算や損益計算などの数字に強くなって下さい。

その数字は、数学が出来なくても、パンが好きなら必ず身に付くようになります。

様々な部署に出しゃばってください。

オーブンをこなしていても、ちょっと成形をやらせてもらう・・・・

ミキサーを回していても、分割に参加して生地の具合をチェックする・・・・

一日に数人のお客様でもいいから、自分がレジに立ってお客様の声を聞く・・・・

オーナーの気持ち、責任者の気持ち、お客様の気持ちになって、客観的に自分の立場を見る習慣を身に付ける・・・・

その様な毎日が、必ずあなたの職場環境を変える事に一役かうと思います。

そして、製パンの全体像をコントロールできるようになると、新たな製パンシーンが展開してくるはずです。

毎日を、単に作業として過ごしてしまうのではなく、疑問を徹底的に求め抜いていくことができれば、良い職場だったと、後々きっと思えるような自分になれると思いますよ。

今いる職場でも、充分学ぶ事はある・・・・・

そうは思いませんか(*^_^*)


30年以上も続いているお店の不思議・・・・

長きにわたってお店を繁盛させ続ける事・・・・

それが、いかに難しい事かということは、一度でも経営をされたことのある方には充分過ぎるほど解ると思います。

市場の変化という、避けがたい現実があります。

近隣にパン屋のチェーン店ができてしまった・・・・

モールが出来て、客足がとぎれてしまった・・・・

駅が出来て、人の流れが変わってしまった・・・・

店の前が大きな道路になり、来店しづらい環境になってしまった・・・・などなど、10年もすれば市場と言うものは、がらっと姿を変えたりするものですよね。

長くお店をやっていると、従業員も入れ替わります。

様々な人間関係のドラマが、生まれては消えていきます。

設備も古くなってきますから、買い替えたり、新しい設備を入れたりする事でしょう。

オーナーも歳をとってきますから、考え方や動きが、当初とは変わってきたりもするでしょう。

それらの外的要因や内的要因と常に戦いながら、無事に長年お店を運営して行くと言う事は、並大抵の事ではありません。
これはもう、一つのギャンブルであるとも考えられます。

それほどに、数年、数10年後が見通せないのが、商売と言うものなのかもしれませんね。

私は休日の朝になると、約3時間ほどウォーキングをするのですが、その道々にも数件のパン屋さんがあるのです。

ここ5年ほどのコースの中には、個人店が3店とチェーン店が1店あり、先日とうとうそれらすべてが閉店してしまいました。
そのうちの一軒の個人店は、1年ほど前に開店したばかりでした。

ウォーキングのコースではありませんが、私の生活圏内では、ここ5年ほどで知っているだけでも5件のお店がオープンしたのですが、残っているのは1件のみとなりました。

統計的にはパン屋の激戦区に入る地域ではあるのですが、それにしてもいったい何が起こったと言うのでしょうか・・・・

今になっては、すべて後付けの論理になってしまう訳ですが、何度か伺った時の感想も含めて、考えてみたいと思います。

とても小さな、女性がオーナーのお店がありました。

プロとは言えないような内容のパンではありましたが、接客はとても良く、小さな子供連れのお母さんが多かったと記憶しています。
初めの数カ月はとても繁盛していて、住宅街にあるそのパン屋さんは、朝の8時からとても賑わっていました。

何度か買いにもいきましたが、そこで感じた違和感がありました。

全てのパンが、とても小さかったのです。

そしてその割には高かった・・・・

さらに、こじんまりとした菓子パンや焼き込み調理パンばかりで、食パンなどのブレッド類があまりなかったのです。

無添加と国内産小麦を大々的にアピールしていましたが、パンの出来栄えはというと、残念ながら素人っぽい印象がぬぐえませんでした。

そしてそのお店は約3年で姿を消してしまいました。


総ガラス張りの、とても大きくておしゃれなお店が開店したのは、約2年前のことでした。

駐車場には約10台の車が駐車でき、店内はイートイン席が約10席もあり、そこで自由にパンを食べられるようになっていました。

店内から工房内が良く見えていて、ミキサーやオーブンなどが活躍していました。

従業員も多く、店内はいつ行ってもかなりにぎわっていました。

が、肝心の商品はとても高く、100円以内のパンはありませんでした。

カレーパンが250円とか、小さなデニッシュが250円とか、とにかく高いなという印象がありました。

あまり種類はないのですが、食パンもとても高額で、なのに皆ケービングをしていました。

ブレッドは上部が黒く、サイドが白い為に、やはりケービングしていました。

買い物の最中にミキサーの生地が気になって仕方がなかったのですが、10分以上人がついていない状態で回り続けていました。

若いシェフが取り仕切る、スタッフも全て若い素敵なお店ではありましたが、とにかく高いと言う事と、購入した調理パンが見事にまずかったという印象でした。

まずいと言うのは言い過ぎかもしれませんが、例えばカツにソースやマヨネーズなどがついていないので、まったく味が無いとか、卵には塩味が無いとか、パンが超甘いとか、これを作っている人は味をみているのだろうかと疑ってしまうほどの味音痴状態なのでした。

しかし見た目は素晴らしいし、包材にもお金がかかっている様子でした。

見た目と味のギャップ、そして高額商品に裏切られる気持ちと言うのは、とにかく最悪なのではないかと感じたのでしたが、しばらくは繁盛していた様子でした。

ただ、1年後には違うお店に変わってしまっていましたが・・・・


以上の2件を思い起こす時、考える事があります。

それは、焼き立てパン屋は高いのだ・・・・・という考え方は危険であると言う点。

そして、やはり最後は、いかにその商品が魅力的で、継続的に買いに行きたいと思えるかが重要なのだと言う点でした。

可愛いとかおしゃれであるというような要素は、新しいお店には重要だとは思います。

しかし、どのようなお店であれ、また行きたくなる動機としての商品力がなければ、継続して来店してもらう事は不可能だと考えざるを得ません。

逆にこの事を裏付けるようなお店があります。

そのお店は、何と開店から30年が経とうとしています。

今でこそ高級住宅街となり、駅がすぐ近くに出来、人口は半端なく増えた地域なのですが、当時は田んぼだらけの中にポツンと出来たお店で、しかも個人店でこじんまりと営業をはじめたのでした。

当初の私は、そのお店を取り囲むようにチェーン展開する会社で取り仕切っていましたので、そのお店にはごくたまに買いに行く程度でした。

何ら飾る事は無く、ごく普通の商品構成ではあったのですが、何とも言えない美味しさがあったのです。

どのパンを買っても、そのしっとり感と言い、焼き加減と言い、こんな個人店でたいした技術だなと、伺う度に感心していたのを思い出します。

とは言えその間には、様々な有名店や新店舗がそのお店を取り囲むように出来ては潰れ、市場は大きく変化して行きました。

しかし、つい先日数十年ぶりにそのお店の前を通りかかり、いまだに営業している事に驚かされたのでした。

お店は早朝6時から営業しており、近隣のお客様が食パンを買いに来ていました。

品揃えはまだなかったのですが、食パンを買ってかじった所、やはり焼き加減の良さや、シンプルな風味を感じる事が出来ました。

いわゆる飽きの来ない味と言えばいいのでしょうか?

とても懐かしい気持ちになったのでした。

何年経っても食べたくなる味、いつまでも思い出として残る味、そんな食の故郷のような気持ちにさせてくれるような商品作りというのが、地域に根差すベーカリーの根本なのではないかと感じるのでした。

新しいものを生み出す開発力・・・・・

お客様を常に飽きさせないようにする創意工夫・・・・

イベントやサービス券、ポイントカードなどのアクション・・・・

どれもとても重要なポイントではありますが、それは私達パン屋がメインに考えなければならない事とは、少し違うような気がします。

もう一軒、すでに40年と言う長きにわたって営業を続けている洋菓子店があります。

大きい・甘い・安いというイメージのお店なので、他の競合が出揃えば、すぐに負けてしまうだろうと言う印象しかないお店だったのですが、今もまったくスタイルを変えることなく、見事に他の競合をすべて抑えて、いまだに現役を続けているのです。

なぜ今だに地域に愛され続けているのか・・・・・

その真意は、同業者に聞いても、原材料をおさめている問屋さんに聞いても、はっきりとは解りません。

ただ言えるのは、今だに価格は低価格で、甘さは控えないで商品はジャンボ。

そして家族経営だということです。

近隣の市場はここ数十年で見事に移り変わり、まさにそのお店の場所だけが奇跡的に存在しているかのような状態です。
私はそのお店のすぐ近くの中学校に通っていたのですが、その中学校も今では無くなり、大手電機メーカーの大型工場と化してしまいました。

私がこの業界に入った当初、よく講習会などではオーナーと出会いましたが、とてもエネルギッシュな方で、まさに小兵と言った感じで、それほどの技量も感じなかったのですが、未だに現役で働いていらっしゃる事と、何と言ってもこの激動の数十年間を、勝ち残ってきたという実績には、ただただ頭が下がる思いでした。

そして更にもう一人、同じ場所で30年以上お店を経営されている友人がいます。

その人は、私が働くお店で3年間修業をし、満足ではなかったのですが、年齢が年齢だけに早く開店したいのだとの思いから、実家を改装してお店をオープンさせました。

この人の場合は少し特殊な事情が様々あるのでした。

それは、製パン技術は”う~ん・・・・”と言う感じであることと、洋菓子とギフトを仕入れていたということです。

彼は、初めから人をうならせるようなパンを作りたいと思っていたのではありませんでした。

とにかく商売がしてみたい・・・・そう言っていた彼は、自分が作るパンだけでは不安だと言う事もあり、当初からパン以外の商品も充実させていたのです。

そしてまさに奇跡のような現実がそこにはあるのですが、その街自体がその30年間、まったく姿を変えていないという事実なのです。

もともと人口が多い地域ではないのですが、見事なまでに新規参入がないことと、道路などが整備される事もなかったのです。

通常、交通網を考えれば、新しくバイパスが出来て、お店の前をまったく車が走らなくなると言うようなケースもあったりするのですが、その地域の前後はそうなってしまいましたが、何故かその地域だけは手つかずの状態なのです。

悲しいかな、けしてパンが売れているのではないのですが、地域がらギフトは良く売れて、毎日非常ににぎわっているのです。

商売に運は必要ですよね。

ただし、それは自分には判断できませんけど・・・・・

当然のことながら、ただ単に長くお店を営業していれば偉いということにはなりませんよね。

自分で満足出来たのであれば、たった数年でも充分やりがいのある人生であったと言えると思います。

しかしなかなか、現実にはそうはいかないものですよね・・・・

ある程度の蓄えは出来ないと、閉店してしばらくが辛いでしょうし、借金だけが残るような商売はしたくありませんよね。

自分としてもある程度納得した結果を得られたし、随分とお客様に愛された実感はある・・・・・

そんな終わり方なら、その後の人生も楽しいものになると言えるでしょう。

では、その為に今の自分は何を考えていかなくてはならないのでしょうか???

とは言え、これらの事象から考えても、それはこれだというようなものがある訳ではないようですね。

しいて上げるとするならば、やはりこれらの事象を謙虚に受け止めて、自分の商売に対する考え方を時に改める勇気を持つと言う事ではないでしょうか。

自分のこだわりは、地域のお客様の為になっているのだろうか???

自分の目指している所は、はたして地域のお客様に喜びを与えるのだろうか???

忙しさにかまけて、ややもするとお客様の視点を忘れて、原価だ利益率だと、儲ける事ばかり考えてはいないだろうか???

お客様の声よりも、原材料の高騰にばかり気が行ってはいないだろうか???

何の為に自分はパンを作り、そして何がしたいのだろう・・・・・

その答えがお客様の要望と噛み合っていなければ、きっと長く愛してもらえるような商品は作れないのではないか・・・・

華々しくオープンするも、数年後には別のお店になってしまっているパン屋さんを見るにつけ、自分を戒めるのでありました・・・・・

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