ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

食パンの大きな穴開きに、困っている人が多いようです。

質問件数圧倒的第一位の食パンの穴開き・・・・

なぜこの質問が多く寄せられるのか???

他にはもっと難しい問題があるはずなのに・・・・・

それは何を隠そう、目立つ からですね~

例えばこんな感じのものを発見したら・・・・・


食パン穴あき


そりゃもうびっくりですよね~

普段からあまり気にしてはいない・・・・と言う方もおられるでしょうが、特にパン作りを商売として行っていらっしゃる方にとっては、なんじゃこりゃ!!! そのものでしょう。

このような大きな穴は、そう簡単には開かないだろう・・・・・な~んて考えていたら、大間違いですよ。

どのようなパン作りの場面においても、確実に起こりうる現象なのがこの穴開き問題なのです。

と言う事で、今回は今まで以上に細かく、もしもこのような穴が開いてしまった時には、どうすればよいのかという事を考えていきたいと思います。

ではまず、こちらの画像をご覧ください。


食パン断面低温障害 (2)


キメはわりと細かいように見えますが、上部に空洞らしきものが目立ちます。

このような場合は、生地全体の状態や温度などは比較的良好であったのに、分割時やベンチタイムなどで、生地が冷えてしまった場合に起こる現象となります。


次にこちら・・・・


食パン断面低温障害 (1)


全体的に気泡が粗く、内層がかなり不均一であることがわかります。
こちらの場合は、残念ながら生地の捏ね上げから、最終発酵に至るまでの間、慢性的に生地温、室温共に低かった場合に起こる現象となります。

初めに見てもらった画像のような大きな穴と言うのは、上記の2枚の画像とは全く原因が違ってきます。

どちらもある意味欠陥であることに変わりはありませんが、見た目のインパクトと言い、実際に商品にはなりえないであろうこの大穴は、なんとしても避けたい問題である事は間違いないでしょう。

と言う事で、食パンの穴開き全般をターゲットにすろと、テーマが多過ぎてまとまらない為に、今回は初めにお見せした ”大穴” の解決策を中心に考えていきたいと思います。

ではまず、どうしてこのような大きな穴が出来てしまうのか???と言う事なのですが、このような大きな穴が出来るのは、ほぼ夏場である事、そしてそれは、外観にもなんとなく表れてしまうということなのです。

さらに、皆様もすでにそのあたりは御存じの事と思いますが、蓋をして焼成する角食パンでは穴が開きにくく、蓋をしないで焼成する山形食パンの方が、穴が開きやすいと言う事です。

何度も書いてきたので充分お解りでしょうが、蓋をして焼成する角食パンの場合は、全方位から圧力がかかる為に、生地が伸びようとすればするほど、気泡はむしろ細かくなり安定に向かっていくのに対して、山型の食パンとい言うのは、上部がフリーである為にいくらでも伸びる事が出来てしまい、結果、上部の伸びと内層の伸びがアンバランスになることで穴が開いてしまう訳です。

そのなかでも、今回特にキーワードとなる上部と内層の伸びのアンバランスについて、もう少し詳しく考えてみることにしましょう。

パン生地は、適度に捏ねられる事によって、実に細かい風船を体内に蓄える事になります。

そこに、イースト菌のガスが入り込む事によって膨らんでいく訳ですが、キメの細かい本来の食パンの内層を考えてみると、全体的に同じような大きさの気泡で出来ている事が解ります。

これは、生地の内部での風船の膨らまし方が、実にスムースな状態だとそうなる訳です。

ところが、大きな穴が開いてしまうような場合には、風船が割れてしまうほど勢いよく膨らましたのではないか・・・・そう思いたくなるような現象として表れてしまうのです。

イースト菌のガス発生の最大ピークは、焼成時にやってきます。

オーブンの中で生地の温度が上昇するにしたがって、イーストはどんどん勢いを増して風船を膨らましていく訳ですが、この時に生地は外に向かって膨らんでいこうとします。

蓋つきの食パンであれば、外に膨らもうとしても限界があり、蓋まで到達してしまえば今度は内部に向かってしか膨らむ事が出来ないのに対して、蓋が無い場合には生地は一方方向、つまり上部にのみ膨らんでいこうとする訳です。

しかも、火力は外側からパン生地に伝わってくる訳ですから、パン生地は外側から風船の膨らましが終了し、徐々に焼けて固まってくることになります。

全体的に外側が固まってきた状態でも、生地の内部はまだ生の状態ですから、それでもさらに最後の力を振り絞って風船を膨らまそうとするのです。

蓋の無い型の中のパン生地は、上部はオーブンの中では裸ですから、本来ならばすぐに直火により固まってきそうなものですが、一つにはスチームなどの蒸気により表面がドロドロになり、なかなか固まる事が出来ないでいます。

二つには、油脂などが配合されている場合も同様で、溶けた油脂が潤滑油の効果を発揮し、生地はなかなか固まる事が出来ません。

そして三つには、パン生地の内部が膨らもうとしている限りは、上部の生地も常に動いている事になり、結果なかなか固まる事が出来ないのです。

このような原因から、すでに食パンの外側であるクラスト付近は風船の膨らみは停止しているにもかかわらず、中心部から上部にかけては、外側と一緒に膨らます事を止めると言う訳にはいかずに、ここにパン生地内部での膨らみ方に、場所によるタイムラグが発生してしまう事になるのです。

しかし、だからといって全ての山形食パンが穴だらけになると言う訳ではもちろんありませんよね。

ではなぜ、タイムラグが発生していても、全体的に綺麗な気泡になることができるのでしょう。

それは、例えるならば、風船を割るほどの勢いで膨らまさなければ良い訳で、肺活量のあまり多くないイースト達が膨らませてくれれば、穏やかに、全てが同じように膨らんでくれるのではないかと思うのです。

では、大穴が開く場合のイースト菌達はどうなのかといいますと、恐らく全員体育会系の肺活量で、猛烈な勢いで膨らましているのではないかと推測できるのです。

大きな穴が開いてしまうような山形食パンというのは、見た目にも解ると書きました。

それが次の画像になります。


食パン伸びすぎ


お解りいただけますね。

三つの山の内、中央部分だけが突起して伸びてしまっています。

その分、パンの底は浮き上がってしまっています。

このように過剰に伸び過ぎた食パンの場合、大きな穴が開いてしまう事があるのです。

ではなぜ、体育会系とそうでない普通の膨らまし方をしてくれるイーストとがあるのでしょう。

それは、生地の捏ね上げ温度には皆様注意をされているとは思うのですが、意外とないがしろにされているのが、作業場の気温や室温が生地に与える影響によって、時に体育会系のイーストを作り上げてしまうことがあるという部分なのです。

夏場と言うのは、部分的には冷房の風で涼しい場所もあるのですが、とかく小麦粉や原材料が保管されている場所というのは、30℃を楽に越えている事が多いと思うのです。

そしてさらに、どうしてもミキシングにおいては生地の温度が上昇しやすくなります。

そうなりますと、キメ細かい風船の形成が行われずに、いわゆるミキシング不足の状態でありながら、温度だけは高くなってしまうということが起こりうるのです。

この場合のパン生地と言うのは、風船の質が弱くなっており、さらにその数もあまり多くは望めません。

つまり、ただでさえも割れやすい風船が、初めからいつもよりも少ない状態であると言う事になる訳です。

がしかし、イーストはと言いますと、まったくの逆で、恐らくは計量されている時点からすでに、やる気満々でいつでもOKみたいな状態にあるといえるのです。

と言う事は、一つにはミキシング時の摩擦上昇を抑える為に、部屋の温度を適温に保つ、あるいは材料倉庫の温度にも気を配る、あるいは小麦粉も使用する分だけは前日から冷蔵しておく、といった具合に、全般的に材料全体のミキシング前の温度にも気を配ることは、とても重要だと思うのです。

また、ミキサーボールを少し冷やしながら捏ねるというようなことも、作業室温によっては必要かもしれません。

もう一つの原因である体育会系のイーストですが、やはり夏場はやや配合量を減らす事をお勧めしたいと思います。

イーストフードや改良剤をお使いの方は、半分にする、あるいはもっと減らしても良いかもしれません。

このようにして、しっかりといつも通りのキメ細かい風船を蓄えた生地をまずは作ってあげる事。

そして、どうしても夏場は張り切り過ぎてしまうイースト達は、減らして様子を見てみるということが大切だと思います。

また、コツという意味では二つほど提案があります。

一つは、とにかく生地は柔らかくする事です。

柔らかい生地の内層と言うのは、とても整いやすくなりますし、水和が良くなり、モチモチキラキラとしたパンになります。

送って頂いた素晴らしい内層の食パンをお見せしておきましょう。


山食断面


このパンは家庭で作られたものですが、気泡は細かいというよりは、むしろキラキラとしていて、とてもソフトな感じが伝わってくると思います。

吸水の多いパンの成功例だといえるでしょう。

そしてもう一つのコツは、イースト菌を減らして、通年よりもやや生地の温度を下げる事、そしてその分発酵時間を長めにとる事です。

時間に制約のある現場では難しい事かも知れませんが、このようなやり方もあると言う事だけは知っておいた方が良いと思います。

もっと言うと、パンチも入れた方が気泡はさらに安定するでしょ。

つまり、出来る事ならイーストを減らし、イーストフードも減らし、吸水を増やし、捏ね上げ温度をやや下げ、発酵時間を20~30分増やし、途中でパンチを入れる・・・・・

これで穴開きが治らなかったら、まったく別の問題があると思います。

今回は、夏場に多く発生する大穴についてのみ、考えて参りました。

生地の取り扱いや、オーブンの設定など、もちろん様々な要因が重なって大きな穴が開く事があるのだとは思いますが、いつもは穴など開かないのに、夏場になると開いてしまう気がする・・・・

その様なご質問が多かったことから、今回はこのような内容となりました。

角食パンでも開いてしまうんだよ・・・・・・

もちろんそのような場合もあることでしょう。

今回のこのコツが、そのあたりの解決の一助になれば幸いです。


頂いた画像を解説


今回は珍しく画像をいくつか見ていただきましょう。



さくら成形


こちらは、ピンク色が鮮やかなさくら餡を包んだあんパンの成形ですね。

なかなか綺麗に成形されていて、切り口の断面を見ても、しっかりと肉厚の生地に餡が包まれている事が確認できます。


さくら成功


すると、このようにとても綺麗に焼き上がりますね。

ところが実際には、こうなってしまうことが多いと言う人もいるのではないでしょうか?


さくら失敗


艶出しが塗られていないので、艶が無いのは仕方が無いとしても、中身のさくら餡が外に飛び出しそうになっていますよね。
その結果、生地が餡に押されて薄くなり、まるで裂けるように悲鳴を上げているのが解ります。

結果、色付きも悪くなり、菓子パンの生地で作ったとは思えないような色合いになってしまっています。

ではなぜこうなってしまうのでしょう。

さくら餡に限らず、すべての包みもの、包餡ものでの成形にありがちなことなのですが、餡を包む際に、餡が生地の中央に綺麗に包まれていない場合にこうなってしまうのです。

つまり、餡を取り巻く生地の厚さが、片寄っているとこうなってしまうのですね。

この画像では特に、上部の生地が薄くなっているので、肉厚の下生地に餡が上部へと押されて、尚更上部の生地が薄くなってしまい、餡が切り口からはみ出してしまうのです。

とはいえ、包餡の際に中央へ上手く餡を包むというのは、意外と難しい技術ではあります。

特に、餡が柔らかいと包む時に上部が薄くなりがちです。

餡が硬くても、柔らかい時とは違う意味で生地を突き破ってしまう事がある為、どちらかと言えば柔らかい餡の方が生地には優しく、突き破りにくいとは思います。

ただ、このあたりの技術は文面ではお伝えできませんので、イメージとして掴んでいただくしかありません。

全般的にソフトに包むイメージで行ってみてください。

また、今回のようにこれだけ切り口を開けてしまうと、さらに中身がはみ出しやすくなりますので、できれば切り口は付けない成形で包み方に馴れ、このように切り込みを入れたい場合は、硬めの餡を使用するとはみ出しづらくなります。

最初のうちは、餡の重量よりも生地の重量の方を多くしておいた方が、包みものは上手くいくでしょう。


では次です。


しわっとなった食


焼き上がってしばらくすると、このようにシワシワな感じになるのはどうしてかとのご質問でした。

ごく一般的な配合の食パンですので、確かに見てくれ的には今一かもしれませんが、ソフト感という意味で言えば、耳まで柔らかい食パンと言う感じで、これはこれで捨てがたい気もしてしまいますが・・・(笑)

このパンは、家庭で作られたパンなのですが、焼成中オーブンの中に水を入れたココットが置かれたままの状態でした。

つまり、たくさんの蒸気により長時間蒸し焼きされた状態であった・・・・という事になるのです。

そうなると、パンは焼けながらも常に水分を吸収してしまいますので、焼き上がって時間が経過するごとに、クラムから外に向かって水分が蒸発しはじめ、その水分によってクラスト、つまり耳がしんなりしてくるのです。

このように完成されたパンと言うのは、通常よりも日持ちがしますし、しっとり感も長持ちします。

質問者様の意図とは違うかもしれませんが、別な意味では特殊な技法によるソフト焼成とでも言えるのではないでしょうか。

リーンな配合のハードな食パンでは、耳が硬過ぎて口内を切ってしまう・・・・というようなお年寄りの方などの場合は、このようにしてたくさんの蒸気を出しながら焼く事で、耳の柔らかい食パンを作る事が出来るということも、憶えておいていただきたいと思います。


では次です。


メロンしぼみ


紅茶の葉を配合したメロンパンの中に、クリームを包んで焼き上げた商品です。

残念ながら、見事に潰れてしまっていますね。

これもパン屋さんでは良く見かける光景ですが、中身が入らないメロンパンであれば、なかなか潰れる事は実際には少ないと思います。

中身が入ると、どうしても生地の踏ん張りがきかずに、メロン生地の重さに耐えられずに沈んでしまうという傾向があるようです。

これも、餡パンの時と同様に、中身の具を綺麗に中央に包めれば良いのですが、どうしても上部の生地が薄くなりがちになります。

そうでなくても、メロンパンと言うのは、生地が伸びようとする力と、メロン生地が伸びようとする力に若干のズレが生じてしまうものなのです。

どう言う事かと言いますと、水分の多いパン生地と、油脂が多いメロンのクッキー生地とでは、火の通り方も焼け方も違うということなのです。

その二つの焼け方の違う生地に、さらに水分の多いクリームが入る事で、尚更お互いが焼けていくプロセスが複雑になり、結果としてはクリームの水分が焼成後に蒸発することで、上部の生地が湿っていき、メロン生地の重さにより徐々に潰れてしまうということになる訳です。

このように、メロンパンに具材を包む場合は、全般的にわかめの生地のまま焼成することで、生地の骨格がしっかりとしますので、潰れにくくはなります。

つまり、ホイロを早めに切り上げて、あまり膨らんでいない状態で焼くと言う事ですね。

ホイロで大きくなりすぎた生地では、まず頑丈な骨格の形成は難しいので、クリームの水分には耐えられないと言う事はありますが、クリームの水分の少ないものを選ぶ、あるいは硬めのものを選ぶ、あるいは量を減らす、あるいは生地量を増やしてみる、あるいはメロン生地量を減らしてみる・・・・などの対策が必要でしょう。


では次です。


マフィン焼成不足


イングリッシュマフィンですが、美味しそうに焼かれているように見えますが、上部が潰れてきてしまうというのがおなやみのようなのです。

画像では少し判断しずらいのですが、恐らく時間が経過するともう少し潰れて来るかもしれません。

家庭でのマフィン作りでは、セルクルという枠を使用して、そこに蓋をして焼く場合と、この画像のように膨らんだ生地に直接もう一枚天板を乗せて焼く場合とがあると思います。

あまり経験が無い方からすれば、生地の上に天板を直接乗せれば、潰れるのは当然だろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではないのです。

もちろん、一つの生地に対して大き過ぎる天板を乗せれば潰れてしまいますが、そうではなくて、いつくかの生地を間隔を均等にして並べて、その上に天板を置く事により、適度に平たくなった状態で、しかも綺麗に丸く焼き色が付いてくれるのです。

この焼き方は、パン屋さんでは良く見る光景なのですが、家庭ではあまり一般的ではないかもしれません。

今回の画像でパンの上部が潰れてしまいがちなのは、単純に焼成不足が原因であろうと思われます。

もし、この生地が発酵オーバーで焼かれた物であるならば、画像に見られるようなサイドの裂け目はできません。

この裂け目は、むしろ発酵が不十分な状態、まだホイロの若い状態で焼いた事を意味していますので、焼く前の生地状態は良かったと推測できます。

あとは、焼成時間が短すぎたか、あるいは温度が高過ぎて早く焼くのを止めてしまったか、またはこれが意外と重要なのですが、途中で一度オーブンの蓋を開けて、天板を動かして焼き加減を確認するなどの行為を行ったか、それらが考えられます。

パンの焼成全般に言える事ですが、焼成途中に外気をオーブンの中に入れると言う行為は、オーブンの性能が特別に良いか、あるいは大型の業務用オーブンである場合を除いては、パンに対するダメージは計り知れないということです。

特に家庭用の小型オーブンでは、いかに焼成中に開けないかがとても重要となります。

もちろん、専門的にはある場面においては開けた方が良いというようなこともない訳ではありませんが、ごく一般的なパン作りの場面においては、けしてオーブンの蓋は焼成中は開けないということが、成功のカギであるということを憶えておいていただきたいと思います。

該当の記事は見つかりませんでした。