ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

よりしっとりとしたパンを作る為の材料はどれ??

こんな質問をいただきました。

家庭でのパン作りも何だかんだで10年以上は作り続けていますよ。 しかもほぼ毎日。

どれだけ暇があるのかと思われるかもしれませんが、これでも実は会社員なのですよ(笑)

今回はどうしてもお聞きしたい事があってメールいたしました・・・・中略

そんな訳で我が家のパンはどんどんリッチになっておりますが、バターをたくさん入れるよりも牛乳を多く入れる方がしっとりとすると言う友人もおりますし、生クリームの方がしっとりすると言う友人もおりまして正直良く解らなくなってしまいました。

パン作りには難しい製法がたくさんある事は何となく知ってはおりますが、さすがに私には難し過ぎる気がしています。

同じ短時間のレシピの場合、よりしっとり感が長持ちする材料というのはバターと牛乳と生クリームではどれが一番だと言えるのでしょうか?

加える量にも関係する事は想像がつきますが、私のようにバターをたくさん入れてしまう事は正しい判断であると言えると思われますか?・・・・・後略



と言う事で、ほぼ毎日パンを作り続けている質問者様のご家庭では、よりしっとりとしたパンを作る為にバターの配合量を通常よりも増やす事で、満足のいくしっとりとしたパンが出来上がっているようです。

ただし相当高級なパンにはなりそうですけど・・・・・

これに似たような質問は当然多くあります。

と言うよりも、考え方によっては一番知っておきたい内容でもあることでしょう。

だって、柔らかくてしっとりとしたパンというのは、誰でも憧れますし、それがさらに翌日、翌々日まで続いたとしたら、それはもう感動的ですよね。

家庭で作るパンはどうしてもすぐに硬くなってしまいます・・・・・・と皆さんそうおっしゃいます。

捏ね方の問題や発酵管理の問題、そして使用する機器や技量によっても家庭でのパン作りは完成度が大きく違ってくる事は皆様も充分お解りでしょう。

しかし今回は、そのあたりは考えずに、製法等にも触れずに、あくまで同じく配合するならどの材料がよりパンをしっとりとさせてくれるのかと言う点でのみ考えてみたいと思います。

質問者様が一番に知りたいのは、バターと生クリームと牛乳では、どれが一番パンをしっとりとさせる力を有しているかと言う事だと思います。

単純に考えてこの場合のしっとり感というのは、柔らかくてフワフワとした状態が長続きする事であると思われますし、同時に口溶けの良い状態であると言う事だと考えます。

そう考えた時に上記の材料で一番それに貢献出来るのはバターであると言えると思います。

バターは手に入りづらくとても高価になってしまいましたので、できることなら他の材料でと言いたいところですが、やはりバターには勝てないかもしれません。

味の違いはあるにせよ、マーガリンも同じくしっとり感には最大の効果を発揮します。

バターが品薄な現在では、様々なバター入りマーガリンと言うものが出回っています。

香りづけにも相当工夫がされていますので、バターほど高価でなくても、充分バターに匹敵する位の品質のものがありますので、色々と試されてみてはいかがでしょうか。

と言う事で単純な結論はそんな所なのですが、せっかくですので生クリームと牛乳の効果にも少し目を向けてみましょう。

まずは牛乳に関してですが、牛乳を買う時に何を気にして買われていますでしょうか。

価格でしょうか? 産地でしょうか? ブランドでしょうか? それとも乳脂肪の量でしょうか?・・・・・・

牛乳と一口に言っても、飲みやすさを追求する人もいれば、やはり味だと言う人もいると思いますが、パンをしっとりとさせてくれる成分というのは乳脂肪になりますよね。

乳脂肪と言う観点だけをとらえると、牛乳も生クリームもバターも、どれも牛の乳から生まれた脂肪である事が解ります。

つまり、上記のバターも生クリームも牛乳も、濃度が違うだけで成分はほぼ同じ物であると言えると思うのです。

だとした場合、どれを使ってもパンのしっとり感にはそれなりの効果はあると言う事は解りますよね。

ではなぜそんな中でもバターをお勧めするのかと言う事について説明していきましょう。

仮に牛乳を全ての水分に変えてパン生地に配合したとしましょう。

すると、解りやすく小麦粉1kgの時で見てみると、牛乳は入れられたとしても750gになります。

牛乳の乳脂肪が平均して3.5位として考えると、750gの3.5%で26g配合したということになります。

つまり、どんなに多く入れようとしても、牛乳だと乳脂肪としては26gしか入れることができないということになるのです。

これをベーカーズパーセントでは2.6%であると考えますので、小麦粉1kgを使ってパン生地を捏ねる場合に、全ての水分を牛乳に置き換えたとしても、配合としては乳脂肪は2.6%しか入れられていないと言う事になります。

では生クリームはどうかと言いますと、生クリームの乳脂肪は高級なものでは50%以上ですから、牛乳の10倍以上になりますよね。

と言う事は、生クリームなら水分の10%程度に置き換えてパン生地に配合しただけで、乳脂肪は5%配合された事になる訳です。

牛乳なら最大でも2.6%しか配合出来なかった乳脂肪が、生クリームなら5%程度の水に置き換えるだけで牛乳と同量の乳脂肪が配合できるという計算になります。

単純に乳脂肪だけを見た場合、パン生地の全ての水を牛乳に置き換えた場合は最大でも750gしか入れられず、その牛乳の価格は1リットルで平均して約200円、他方生クリームは牛乳と同じだけの乳脂肪を配合しようと考えた場合には50gで済み、価格は平均して1リットル1500円位でしょうか。

どちらがお得なのかはそれぞれの判断になると思いますが、単純に乳脂肪だけを考えてみた場合はこのような指標で見てみると良いでしょう。

ではバターはと言いますと、バターと言うのはこの乳脂肪そのものがバターであると考えられますから、感覚的には100%乳脂肪であると言いたいところですが、実際には水分があったりその他の成分が若干あったりしますので、約80%が乳脂肪分であると言えると思います。

そう考えますと、生クリームとほぼ同等の価格であるバターを使った方が、より乳脂肪を多く配合できると言う考え方になると思います。

さらに、水分が少ない分パンの老化を遅らせる効果がバターにはあるのです。

どう言う事かと言いますと、パンが老化していくというのは、パンから水分が蒸発していくということなのですが、そもそもパンの中の水分に蒸発しやすい水分と、蒸発しにくい水分があるのです。

これを少し専門的に言いますと、蒸発しやすい水分の事を自由水、蒸発しにくい水分の事を結合水と呼んだりします。

同じ水分でも、出来る事なら蒸発しにくい結合水の割合が多い方が、パンのしっとり感は長持ちする事になり、その結合水の割合の多いのが、牛乳や生クリームに比べるとバターであると言えるのです。

バターも牛乳も生クリームも、形状や濃度は違うにしてもとにかく乳脂肪なのだと言う事はお解りいただけたでしょう。

そしてこの乳脂肪は、パンにしっとり感を与えてくれる素材である事に加えて、もちろん味を良くする為の素材でもある訳ですが、何よりも天然の老化防止剤と言えるような効果を発揮してくれる優れモノであるとも言える素材なのです。

他のカテゴリでも何度も触れてきましたが、出来る事ならパン生地の水分は多くしてもらった方がパンはよりしっとりしますとお伝えしてきました。

それは、水分が多い事でパン生地全体への摩擦のかかり方を軽減した方が生地に優しいパン作りであるという面と、トータル的に水分量が多い方が、焼成後の水分量も多いはずで、それがよりしっとり感を演出するのだと言う両面からそう判断してきた訳です。

しかし実際には、配合や製法の違いにより、トータル的な水分量の中でもこの自由水と結合水の割合が大きくパンの老化に関係してくると言う事が解っています。

ただ単に水分が多ければしっとりとすると言う事なのではなく、焼成後の時間の経過にともない、本来なら蒸発してしまうはずの水分というのは自由水が中心なのだと言う点から考えると、いかに結合水の割合を増やせるかがパンの老化に大きく影響を及ぼすのであり、その為には何をどの位配合していく事がベストなのかを考える事が、よりしっとりとしたパンを作る為の最終課題であろうと思うのです。

とか何とか少し解りづらくなってしまいましたでしょうか(*^_^*)

出来るだけ解りやすくこの点を次回ご説明していきたいと思います。








思わぬところに落とし穴が・・・・

実に久しぶりでした・・・・・・

あそこまで期待していたものと違う味のパンを食べたのは・・・・・

と言うより、吐き出してしまったのは・・・・

9月に入り、めっきりと秋めいてきた気がします。

7月のあの驚異的な暑さから想像するに、今年はいつまで暑い日が続くのであろうと心配していましたが、何の事はない涼しい日々が続いていますね。

人間温湿度計である私の経験からすると、むしろ非常に寒暖の差が激しい夏であったと思っています。

寒暖差だけではなく、雨も多かったですよね。

お陰でいつまで経っても野菜の価格が安定せず、さぞやサンドイッチを作られているお店にとっては悩みの種であったろうとお察しいたします。

そんな中、とあるこじんまりとしたお店でパンを買う事になったのですが、そのお店の可愛らしいたたずまいと、それに相反したパンの味との差は、この夏の寒暖差を大きく上回るほどの驚きなのでした。

小さな町の小さなパン屋さんで、売上規模としては日商6~8万円位かな・・・・・・といった品揃えなのですが、ちょこちょこと焼き立てや揚げたてを出す為の工夫が見られて、とてもアットホームな雰囲気の素敵なお店なのでした。

小さなお店にありがちだといつも思うのは、パンも全て小さめであると言う事と、食パンなどの大物パンが少ないと言う事です。

この品揃えは、ある意味では手間の割には売上が上がりにくく、その分焼き立てを出しやすいと言うメリットもありますよね。

大きめのパンが多いお店がある一方で、ここのパンは全て手の平にすっぽりと収まるほど小さくて可愛い物が多く、おのずと客層も想像がつく感じなのでした。

とは言え、個人的にはそのあたりにはあまり興味が無い私にとっては、唯一存在しているバゲットとカンパーニュとリュスティックを購入したのでした。

価格としては高めで、品質としては見た目はガッカリでしたが、工房のオーブンを見て仕方が無いかと思いました。

このあたりは職業病的見解でしかないのですが、それでも十分焼きこまれた美味しそうなパンでした。

そもそもこれらのパンで見た目も味も満足出来るお店の方が少ない気がするのは私だけでしょうか・・・・・

最近では、スーパーでも大手のフランスパンやカンパーニュの類が増えたような気がしています。

相変わらず大きくて安いので、つい味見のつもりで買ってしまう事があるのですが、どうしたらこんなに味けないパンになるのだろうと思い知らされることになるのでした。

まあ、だからこそ私達の出番があるわけですが、それにしてもひどいなぁ~・・・・と言うのが正直な気持ちです。

だからこそ、焼き立てパン屋さんのフランスパンだけは裏切って欲しくないと言う思いがあるのです・・・・・・・・が、必ずしもそうであるとは言えないようです。

三品のハード系パンを購入した訳ですが、そのどれもが完全にやられていたのです。

何にやられていたのかと言いますと、恐らくはカビでしょう。

特にライ麦が配合されているリュスティックに関しては、一口で吐き出しました。

実に久しぶりの衝撃ではあったのですが、過去に何度も経験してきた事でもありました。

そして何気にどこのお店でもありがちなのが、この現象なのです。

夏場のハード系パンの場合、何気にありがちなのが種や酵母の腐敗なのですが、実は最も危険なのは意外にも粉なのです。

回転が良く、一日に何十本ものパンを焼くようなお店ではまず心配ないと思うのですが、一日数本しか焼かないようなお店では、どうしても粉の消費量が少なく、その分古くなりがちなのが現実なのです。

夏と言うよりも梅雨の時期から夏にかけてが一番心配な時期なのですが、強烈な湿気と暑さが同時に来るこの季節は、粉の管理が非常に難しいのです。

とは言っても、特に気にしてはいないと言うのが粉の管理の実情かもしれません。

パンによって粉のブレンド方法を変えるというのがある意味トレンドのようになっていますが、その分多くの種類の小麦粉を揃える事になります。

そうなると、使い終えるまでにかなりの期間倉庫に置き去りになります。

そして特にライ麦粉や全粒タイプの小麦粉と言うのは、すぐに虫が湧いてしまうのです。

気持ちの悪い話で恐縮ですが、虫なら全粒粉の粒と見分けがつかずに食べてしまっているというのが現実だと思います。

問題は次のランクです。

暑さと湿気によってカビが出てしまうと、それがそのままパンの味を最悪の物にしてしまうのです。

小麦粉なら計量の時に気がつくと言う事もありますが、ライ麦粉や全粒粉の場合はまずカビは目には入りません。

また、カビと言うのは色が付いてからなら発見しやすくなりますが、問題は色が付く前の ”カビそうな状態” の時にはすでに粉としては最悪の状態にあるということなのです。

この段階で見分けるのは至難の業でしょうから、日頃から気にかけていないようなお店があるとしたら、知らずのうちに今回のように製品として販売してしまっていると言う事があるかもしれないのです。

小麦粉の管理と言うのは、実は仕入れて数日は間違いなく大丈夫であるとは言い難い部分があります。

と言うのは、問屋さんでどのように管理されていたか、あるいは配送されるトラックの管理状態などによっても小麦粉の品質は大きく変わるからです。

実際に、配達されたその日にカビを発見した事も過去に何度かありました。

例えばですが、粉が何段も積まれているような倉庫で、その場所が壁際だったりすると、下段にある粉はすぐにカビが出てしまいます。

また、配送するトラックの際下段にスノコなしで粉が置かれており、その上にも荷物が置かれた状態で一晩置かれていると言うような状況もたまに見かけます。

それが夏場の雨の夜であったらひとたまりもありません。

ですので、粉は何日なら大丈夫なのだということではなく、常にダマガ出来やすくなっていないか、袋が湿っていないか、置き場所の通気は十分かなどの気遣いが必要で、計量の際には香りを確認するようにして頂きたいのです。

また、全粒粉などの混ざり物がある粉の場合は、出来れば冷蔵庫で保存したほうが良いかもしれません。

ただし、臭いが移り易いですから、しっかりと密閉して保存して下さい。

パンの仕事をしている人ならば、少なからず経験しているであろう今回の件ですが、パンを買う立場にある方々からすれば、まさかの出来事でしょう。

私の場合は今回のパンは吐き出しましが、何となく変な味だけどそう言うパンなんだろうと思われて食べている方も実は多いと思うのです。

酸っぱいのは天然酵母だからだろう・・・・みたいのものだと思いますが、もしもそんなものを買わされていたのだとしたら、これほど腹立たしいものはありませんよね。

いったい保健所は何をしているんだと言いたくなりますが、別のカテゴリでも触れていますが、実際にはその辺はノーチェックと言わざるを得ません。

基本的に店舗検査は年2回ほどあるはずですが、それも地域によって違いますし、実際に工房に入り込んできて検査をするというのはほぼありません。

自分たちでチェックすべき項目が書かれている検査表のようなものを取りに来るだけみたいなところもあるのです。

また、実際には保健所の担当者が全てのお店には来ません。

代わりの人、つまり菓子組合の仲間がチェック表を回収しに来るだけで終了となるのが一般的ですので、要するに年間を通してノーチェックといえるパン工房もあるのです。

もちろん非常に厳しい地域もありますので誤解のないように・・・・・・

その様な現実を知ってしまうと、まずくても大手のパンを買いたくなってしまう私の気持ちもお解りいただけますよね。

パン屋さんだけではありませんよ。

実際にはホームベーキングだって起こりえる問題なのです。

ですので、レシピとか裏技とかばかりに気を使うのではなく、一番の基本でありパンの大元である小麦粉の管理には十分気を付けていただきたいと思います。

ちなみに、小麦粉は古くなろうがカビがはえようが、立派に美味しそうなパンに完成します。

だからこそ怖いのです。

計量の際、生地を舐めた際、そして焼成中に注意を払っていれば、いつもとは少し違う ”異臭” に気がつくはずです。

少しでも ”あれっ” と思ったら、小麦粉の香りと状態をチェックして下さい。

チェックするのは計量前の小麦粉だけではありませんよ。

いわゆる手粉として使っている小麦粉がカビている場合もありますし、フランスパンを置いている布に付着している粉、作業台の隅に残されている粉などもすぐにカビがくるものです。

疑わないと解らないほど、知らず知らずのうちにパンの香りを台無しにしてしまっている事が実際にはあるのです。

がしかし、最大の問題はこれらのカビてしまっているかもしれない粉で作ったパンであっても、食中毒になるようなことはないと言う点です。

少しお腹を壊す人がいるくらいかもしれません。

それだけに自己責任において品質管理をしっかり行わないと、それこそ他の食品でいくら安心安全なものを選んでいたとしても、大どんでん返しをくらうはめになってしまうでしょう。

他のカテゴリにも少し紹介しましたが、それをお店の人に指摘しても素直に認められたことはまずありません。

きまず~い雰囲気で終了となるのが関の山です。

ですので、作る人も食べる人も充分気にして欲しいのが ”香り” です。

香りが気になったら、食べるのはちょっと待った・・・・・の方が良さそうですよ。

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