ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

お店にとって必要不可欠なデータとは

顧客情報の流出が騒がれていますね。

どのような会社やお店にとっても、お客様の情報というのはとても重要ですよね。

お客様の情報というのは、ご本人の年令や性別はもちろんのこと、家族構成や仕事、あるいは趣味などのあらゆる情報のことを指しますが、これがあるのとないのとでは販売戦略に大きな違いが出てしまうことになります。

何かを買う、何かに申し込む、会員になる等の場合には概ね住所や氏名、そして仕事などを記入されていることと思います。

企業はそれらをデータとして、どのような商品を開発販売していくべきかを考えるわけですから、それはとても重要なはずですよね。

しかしながら改めて考えてみますと、企業は別として個人でお店を運営されている人というのは、これらのデータを作成したことがあるものでしょうか・・・・・・・いや~多分ないでしょうね。

企業系のベーカリーを経て開業されている方なら、データの必要性を感じているとは思いますが、特にこのブログに質問をくださる個人経営のパン屋さんでは、なかなかその必要性に気がついていない事が多いのではないかと感じています。

パン屋さんにパンを買いに来て、これに記入してくださいと言われて住所氏名などを書く人というのはまれですよね。

いやむしろドン引きされかねませんね。

ですのでなにもそこまでしなくても良いのです。

ただ、男性か女性か、20代か30代か40代かそれ以上か、学生かOLか作業着(制服)かなどが書かれた表を作っておき、それを時間帯別に分けてチェックを入れられるようにしておいて、レジにて会計が終わった際にチェックを入れるようにするだけなのです。

とても忙しくて、いつもレジに行列ができているので難しい・・・・というようなお店ではそもそも必要ないかもしれませんが、売り上げダウンに頭を悩ませているようなお店の場合は是非一度行っていただきたいと思います。

何日かかけてチェックされた表を元に、どの時間帯にどのようなお客様が来ているのかをデータ化し、まずは今の現状をしっかりと把握することから行ってみて欲しいのです。

”なんとなく大体のことは想像がつくから”・・・・・というオーナーがいますが、そのような方は品質も品揃えも大体想像がつく程度であると言えます。

”8割がた女性で、昼が一番混むかな~” みたいなアバウトな感覚だと思うのです。

しかし、ここがアバウトだとしっかりとした戦略が立てられません。

なぜならお客様がどのような気持ちで、どのようなタイミングでお店に来ているのかということをしっかりと掴む事こそが、これから何を行っていくべきなのかの答えだからなのです。

売上が今ひとつ伸びていかない・・・・とお嘆きのオーナーのお店というのは、どこにでもあるようなパンがどこにでもあるような価格で、そしてどこにでもあるような品揃えと陳列になっているといえます。

一通りの品揃えをしておけば、そこそこやっていけるだろうと言う訳ではないのでしょうが、なぜか際立つものがないという印象をどうしても感じてしまいます。

そしてそのような話を直接するたびに、必ず帰ってくる答えがあります。

それが 「残念ながらそんな技術は持ちあわせていない」 という言葉です。

半分は謙遜でしょうが、半分はやる気とか本気とかチャレンジする気持ちが薄れているのだと思います。

何よりも先にまず出来ない理由を考えてしまうという人に多い傾向でしょう。

私が相談を受ける場合には、必ず店舗の陳列風景や商品の画像、そして製造計画などを送ってもらうようにしているのですが、大抵の場合作る数というのは毎日横並びに同じであると言えます。

そして土日だけ全体的に少し数を増やす。

また、何より主力商品がないか、あっても世間一般で流行っているものと同じでオリジナルではないことが多いと言えます。

なぜ他店と似たような品揃えになってしまうのか、ヒット商品を生み出せずにいるのかといえば、それはお客様の要望に答えられていないからだと思うのです。

自分の技術では大ヒット商品なんて不可能だ・・・・・・と言う気持ちがありながらも、今までやってきたプライドもある。

そんな凝り固まった考え方はキッパリと捨てて、どの時間帯にどのようなお客様が来店してくださっているのかをまずは知ってほしいのです。

それで何が解るのか・・・・・・

どの時間帯に向けて、どのようなパンを焼き上げるべきかが解るのです。

早朝からお店を開けている方というのは少ないと思いますし、夜遅くまでお店を開けている方も少ないでしょう。

すると必然的にお昼時が忙しさのピークであるという答えが一般的となります。

しかし果たして本当にそうでしょうか?

例えば駅前などで通勤通学の為にお店の前を多くの人が通るような場合、お昼に食べる為のパンを買いたい人はいないでしょうか?

焼き立ての香りがしていたら、お昼とは言わずに朝食として会社や学校などについたらすぐに食べるという方もいるのではないでしょうか。

更には会社帰りや学校帰りに焼き立ての香りがしていたら、思わず買い食いをしたくなる、あるいは翌日の朝食用として買い求めるという人はいないものでしょうか。

通常のようにお店をオープンさせて、これまた通常のように閉店していたら、どのお店もピークはお昼時で間違いないかもしれません。

しかし本当にお昼だけなのかは、もしかしたらこちらの都合で決めつけているだけかもしれないのです。

会社の制服や、作業着の男性が多く来店するというお店では、間違いなくその日のお昼を買いに来ているはずですよね。

それなのに、今すぐに食べたくなるような出来立てホヤホヤのパンが無かったり、ボリュームのある惣菜パンが揃っていないと、せっかく焼きたてパン屋に来たのにとガッカリされてしまうでしょう。

制服のOLが多いお店では、小さめのパンやスイーツ系のパン、そして焼き菓子なども人気があります。

一口サイズの焼き菓子を沢山品揃えしておくと、プラスワン効果は必然です。

ポイントは、今すぐに食べる為の来客が多いと判断したら、その時間帯には必ず焼き立て、あるいは出来立てを並べることです。

焼き立ては勿論アツアツのパンが数品は欲しいところですし、出来立てとは例えばすでに焼かれていたパンに揚げたてのコロッケを挟んだものですとか、コッペパンに餡とバターを塗ったものですとか、コロネにクリームを入れたものを、「出来立てのコロネで~す、クリームがたっぷりと入っていますよ~」 と言って並べるだけで良いのです。

そのようにして、工房から次々と出てきたパンが陳列されるのを見ているだけで手が出てしまうものなのです。

そのようなアクションをどの時間帯に向けて行うかがポイントになるのです。

焼き立て、揚げ立て、挟み立て、絞り立て、そして並び立てのパンが出迎えてくれる幸せこそ、焼きたてパン屋の最大の武器だからです。

大繁盛されているお店と言うのは、これが毎時間行われていないとそもそも欠品してしまいます。

ですからおのずと毎時間、いつ行っても焼き立て、揚げたてに出会えることになる訳で、これが好循環を生み瞬く間に評判となっていくのです。

一日の売上が10万円に満たないお店では、どうしても昼前には全てが焼き上がっていて、昼時でもアクションが何もない状態だと思われます。

それが悪循環となって、品質がいくら良くても活気のないお店だと判断されてしまうのです。

そんなお店でも、この時間帯だけはと決めて全従業員総出で焼き立て揚げ立て出来立ての提供ができれば、確実にその時間帯売上は伸びていくはずです。

最高鮮度と焼きたてアクションを体感してもらうことができれば、帰りにまた寄りたくなる、朝食用のパンも買いたくなる、そして何よりも誰かに紹介したくなると思います。

年齢層が高い客層のお店では逆で、あまりせかせかとしていると落ち着いて買い物ができないと敬遠されてしまいます。

自分が食べる分はほんの少しで、あとは家族や友人のために買うという方が多いはずですから、販売員は必ずお声がけして、ご自分用には食パンもスライスしたものを1枚からでも売れることや、どなた用に購入するのかをお聞きした上でお薦めをすると、確実に買っていただけるものです。

年齢層の高い男性が多いお店では、ほぼ間違いなく他店にはないものを求めて来店されているといえます。

フランスパンやライ麦パンなどの具材の入らないパンにこだわりを持っていらっしゃる男性客というのはとても多く、この年齢層が多いお店にはハード系のパンの品揃えは必須です。

以上のように、自分のお店にはどの年代のお客様が多いのか、目的は何なのかを知った上で行う対策に技術などは必要ないのです。

これだけのパン販売店がある中で、何を求めてわざわざ来店してくださったのか、その気持に応えることが出来ていただろうか・・・・・

なんとなく朝から焼き始めて午後には次の日の準備で一日が終わる・・・・・・という作業としてのパン屋になっていたのではないか・・・・・

そう思えたならば、今からでも遅くはありません。

もっともっとお客様と語り、要望を真摯に受け止めましょう。

ダラダラと一日中お店を開けておくことが決まりではないのですから、お昼過ぎでお終いのお店でも良いかもしれませんし、朝と夕方だけ開いているお店でも構わないのです。

自分たちに出来る最高鮮度のパンを、どの時間帯にどの客層に向けてアピールすることが無理のない自分の実力に応じた戦略になるのか、その実行のためにもまずは客層を細かくチェックすることから始めてみて欲しいと思います。

企業系のベーカリーでは、何かとやらされている感が否めません。

コチコチのデータと企画に縛られた、まさに作業であると言えるかもしれません。

しかし自分のお店というのは自分の自由のはずです。

やり方は無限大、如何に自分の視野を狭めることなく、広く謙虚な気持ちで立ち向かえるかによって成功は導き出せるはずなのです。

どうか自由な発想で自由な運営を楽しんでいただきたいと思います。


100円ベーカリーの展望はいかに・・・

100円均一の焼きたてパン屋さんが繁盛しているようですね。

相反するように、どの街にも人気のベーカリーがあり、そこでは100円均一のパンよりも遥かに小さなパンが200円とか300円などという恐るべきプライスであるにもかかわらず売れているという実態がある。

街の個人店に行くといつも感じていることなのですが、このパンがどうしてこんなに高いの???みたいな商品って必ずありますよね。

商品を見ればおおよその原価は解ってしまいますから、これはぼったくりだなといつも思いながら、やはりきちんとした原価計算というのは行われてはいないのだろうなと感じることはしばしばあります。

それでも繁盛しているお店というのは、お客さまにとってプライス以上の何かが提供できているということになるのでしょう。

またそれこそが個人店の強みでもあると思います。

売上が今一つのパン屋さんがあり、更に近所に100円均一のパン屋がオープンしてしまったということで、これはもう対抗するしか手はないということで全て100円というプライスに強引に変更したことによって、売上が3倍に伸びたというお店があります。

こんなに簡単に売上が上がるのなら、もっと早く100円均一にすれば良かった・・・・そう申しておりました。

しかし本当に万々歳なのでしょうか?

ちなみのそのお店では今、人手不足でてんてこ舞いのようです。

個人レベルのお店の100均、中小の100均、そして大手のパン屋さんが仕掛ける100均とにタイプ分けされると思いますが、それぞれの違いについて少し考えてみたいと思います。

買う側にとってはとても魅力的に見えるこの ”100円均一” というプライスは、ダイソーを筆頭としたいわゆる100均が繁盛し続けている事と関係が深いことは言うまでもありませんね。

こんなものまで100円???・・・から、なぜこれが100円??・・・便乗????みたいなものもたまにはある100均ですが、その魅力は圧倒的な品揃えでしょう。

こだわりさえ捨てれば、大抵のものは揃ってしまう・・・・と言うよりも、この商品でこの価格なら十分満足と言えるような魅力的な商品も多いのが最近の100均ですよね。

もう我々の日常には100均という言葉は完全に定着しており、それがパン屋に及んでいると思うのです。

そう考えると、これが100円じゃあたりまえでしょ・・・・みたいなパンや、やっぱり100円じゃこの程度か・・・・では駄目だということになります。

これが100円なの~!!!という感動があるかないかで、同じ100円均一でも相当差が付いてくることは言うまでもないことなのです。

ではそれを実現するためには何が必要でしょう?

それは商品の企画・開発というものがとても重要なのであり、ボリューム感も重要でしょう。

高品質の原材料を使ったとしても、小さなパンではまず売れません。

具が少ないなどもダメですし、クリームがまずいなどというのも勿論駄目ですよね。

ということは、まずは原材料はそこそこのものを使わないといけないということになります。

そしてボリュームという点では、生地重量も大きめに設定する必要が出てきます。

具材よりもパン生地の方が原価が安いということで、フランスパンのように生地だけのパンを全面にだして・・・・なんてことをしているとまず売れません。

むしろ具材をたっぷり入れて、更にボリュームを出していかないと、魅力的な100円均一にはならないからです。

となると・・・・・・どうやら原材料はケチれないばかりか、定価の時よりも気を使わなければならないような事態になってしまいます。

そんな、作る側がこれでどうだ~みたいなパンだからこそ、これが100円なのー!!という感動を与えられるのだとも言えると思います。

さて、そんな感動にお客様が浸っているなか、売上は順調に伸びていくとは思うのですが、ここで幾つかの現実にぶち当たることになります。

原材料の質を下げられたわけでもなく、小さなパンばかりを作っているわけでもないということは、原価率は相当上がってきてしまうということになります。

かつ、売上が上がってきて毎日てんてこ舞いですから、個人店や中小であればサービス残業が増え、大手であれば残業制限が発令され、もっと効率よく動くようにと指摘を受けることになります。

100円均一にすることによって売上が飛躍的に伸びるというのは、昨今の時代背景と大きく関わっていることは間違いありません。

いわゆる100均流行りとも言えるでしょう。

つまり、流行りが終われば淘汰されていくことになるのです。

一度100均を行ってしまったパン屋さんが、いくら品質を上げたからと言っても、もう定価販売にもどすことはまず無理でしょう。

そして100円均一を継続していくためには、圧倒的に原材料の仕入れ値を抑え続けなければなりません。

また、製造にかかるコストと言うのは、100円のパンを1000個作るのも、200円のパンを1000個作るのもほぼ同じですから、簡単にいえば倍のコストが掛かってしまうということになる訳です。

30万円分のパンの製造をしたつもりが、現実には売上は15万円しかないということになりますから、”報われない製造” になる可能性が高く、退職者は後を絶たないでしょう。

先程も言いましたが、個人店や中小レベルであれば、単に作業時間が長くなる、つまりサービス残業として従業員が犠牲になるという構図が出来上がると思うのですが、大手の場合は残業事態に制限がありますから、「終わっていないので帰れないのに帰れと言われる」 なので 「一度退店したことにして再び作業を続けなければならない」というような矛盾が生じて、退職者が続出することになるでしょう。

定時にタイムカードを押して、その後また現場に戻る・・・・・私にも経験がありますし、恐らく経験者は多いはずです。

そのような ”無理” が必ず発生してしまうということを認識した上で、早めにそのことに対して対策を講じておかないと、せっかく売上が上がっているにも関わらず閉店と言うことにもなり兼ねないのです。

同じ原材料であれば、やはり大手の店舗数の多い会社の方が安く仕入れることが出来るのは当たり前でしょう。

更に、冷凍生地を使っての製造の方が効率よく行えることも大手に軍配があがるでしょう。

個人店や中小企業の場合は、どうしても手作りの部分が多いはずですから、仕入れコストが大手よりも高くなることに加えて、社員は作業時間が長くなり、それはほぼサービス残業となるでしょう。

100円均一のパンと、街のパン屋さんとの商品を比較してみると、あることが見えてきます。

それは、100円均一のパン屋さんは色々あっても、そのほとんどで商品構成が似ているということです。

これは、100円では生地重量に限界がありますから、どうしても同じような大きさのパンばかりになると言うこともそうでしょうし、そもそも使える具材に限りが出てしまうということもその理由の一つだと思います。

つまり、高額の原材料はそもそも使用できませんし、比較的安価で人気のある具材というのは決まりきっているからです。

また当然生地そのものには原価はかけられませんから、生地の美味しいパンというのは望めないでしょう。

どこの100円均一でも圧倒的に人気なのが

フランク・ベーコン・コロッケ・明太子・チョコレート・ピザチーズ・サイコロチーズ・焼きそば・ハンバーグ・マヨネーズ・・・・・


と、これらの具材を駆使して様々な形にアレンジしているのが実情でしょう。

しかしこれって、実は大手の袋入りパンと全く同じなのですよね。

具材も同じでボリューム感も同じ、そしてそこに焼き立てをプラスしてお届けしているのですから、売れないはずはない。

こうなるともう、食の提案とか製パンの未来とか言うことなのではなく、よく知られた売れ筋の食材を使って、焼きたてパン屋の武器である焼き立てを駆使し、大手の市場を荒らしているに過ぎない気がしてなりません。

そもそも大手機械生産のパンは、機械だから安く出来る、そして大手だから安く原材料を仕入れることが出来るのですから、それを人の手で実現しようとする、特に個人と中小による行為には、必ずどこかで無理が生ずるであろうと心配してしまいます。

もう一つ心配なことがあります。

それは、ただでさえも衛生的とはいえないパン屋さんがある中で、これほどまでに忙しくなってしまうともう清掃などには全く手が回らないはずなのです。

華やかな繁盛する売り場・・・・・の裏では不衛生極まりない製造実態なんてことにならないことを願ってやみません。

大手各社がみな揃って一斤100円以下の食パンを並べています。

そこまで安くしてくれなくても買いますから~

どうか無理が生じるようなことを大手がこぞって推進するようなことは、して欲しくないと切に願うものです。

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