ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

インスタントドライイーストと生イーストの使い分け方

こんな質問をいただきました。

フランスパンは必ずインスタントドライイーストで、食パンは必ず生イーストなのは何故ですか?

また、レシピの中には両方を使うというレシピも見た事があります。

どのように使い分けるのが本当なのでしょうか?


いい質問ありがとうございました。

では、イースト菌の使い分けについて解説していきましょう。

その前に、イースト菌の種類と基本的な使い方については、

原材料の理論「イースト菌」を今一度チェックして下さいね。

まずはフランスパンを筆頭としたハード系又はハース系の、いわゆるリーンなパンには、インスタントドライイーストを使わなくてはならないのか?

さらに、食パンは生イーストでなければならないのか?

さあ、どう思いますか?

確かに、ほとんどのレシピではその通りですね!

実際その方が圧倒的に多い手法として用いられているのは確かでしょう。

しかし、残念ながらどちらでも良いのです。

・・・・別に残念じゃないか (~_~;)

では、どうして圧倒的にフランスパンにはインスタントなのでしょうか?

原材料の理論「イースト菌」を見ていただいたものとして、ここではフランスパンに生イーストを使わない理由の方を説明していきたいと思います。

フランスパンと言うのは、ご存知の通り副材料が入っていないシンプルなパンですね。

と言う事は、どこで美味しさを出すかと言えば、小麦の香りと発酵の旨味しかないのです。

この、小麦の香りと発酵の旨味と言うのは、出来るだけ生地の熟成時間を長くしなければ出す事ができません。

しかしながら、あまり長く熟成させると、今度は酒臭くなってしまい、小麦の香りが消されてしまいます。

そんな訳で、基本的にはストレート法を用いる事で、長時間発酵によるアルコール臭を出さないようにし、なおかつミキシングを控えて粗いクラムを作る事によって、小麦本来の風味を出そうと考えられてきたのです。

小麦粉と言うのは、捏ねれば捏ねるほど小麦本来の風味を失ってしまうのです。

食パンなどのキメの細かさを売りにするパンでは、ミキシングは100%行いますが、シンプルな配合のパンほど、または小麦粉本来の風味を出したいパンほど、ミキシングは控える物なのです。

しかし、ミキシングを控えると言う事は、生地としては完成されていないような状態なので、ベタベタとしていて成形もままならず、しかもオーブンで大きく膨らみません。

そんなミキシングを控えた生地でも、成形しやすく、なおかつある程度のボリュームが出るようにする為に行うフランスパン専用の手法が、

パンチ  なのです。

パンチをする事によって、生地に空気を抱き込ませ、生地に適度にハリを持たせる事で、十分に捏ねない生地でも、小麦の旨味を残したままパンになる事が出来るのです。

また、生イーストとインスタントイーストの発酵力と発酵保持時間にも関係があるのです。

例えると、生イーストは短距離ランナーでインスタントイーストは長距離ランナーなのです。

生イーストは、実はミキシングの最中からもう発酵が始まっているのです。

なんともせっかちな (~_~;)

そしてぐんぐんガスを出していき、比較的早く疲れてしまいます。

他方インスタントイーストは、ミキシング後約30分程経ってからようやく目覚めます。

そして、ゆ~くりと活動を始め、後半になって俄然パワーを発揮していくのです。

どういう意味だかお解りですか????

基本的レシピでは、フランスパンが完成するまでの所要時間は5時間です。

ゆ~っくり発酵していきながら熟成し、なおかつあまりボリューム感のない生地を、後半の猛ダッシュでオーブンスプリング(窯伸びの事です)させてくれる。

インスタントイーストの発酵力は、フランスパンにとって実に理にかなっているとは思いませんか?

もしこれを生イーストで行った場合、生地は比較的早い段階で膨らんでしまい、膨らんだ生地をパンチすると言う事は、予想以上に生地にボリューム感が出てしまいます。

ボリューム感とは、別な意味で言うと空気を抱き込み過ぎてしまうと言う事です。

ボリュームの出過ぎた生地は、成形の時に生地にコシがあり過ぎて成形しずらいだけでなく、空気をたくさん含んだフランスパンは、オーブンの中でとても良く伸びます。

大きく膨らんだフランスパン・・・・

これはもはや食パンの棒焼きであって、クラストの香ばしいフランスパンとは言えないものになってしまうのです。

ですから、もし生イーストを使うのであれば、使用量と発酵時間を見直さなければならないと言う事になる訳ですね。

そして何よりも、インスタントイーストがハード系のパンに使われる理由として上げられるのが

インスタントドライイースト特有の ”香り”が、クラストの美味しさを追求するハード系のパンに非常に合っているからなのです。

インスタントドライイーストと生イーストの臭いを嗅いでみて下さい。

全く違うでしょ!!

と言う事でまとめです

どちらのイーストを使っても、それぞれの特徴が完成品のイメージに合うならどちらを使用しても構わない。

ただし、発酵力が違う事を理解した上で、発酵時間と使用量を決める必要がある。

インスタントイーストの方が、クラストの香りを引き立ててくれる。

・・・・・が、それは好みの問題。

そして質問の最後に登場した、両方を使うレシピの考え方ですが、

それは作成者に聞かないと、はっきりとした意図はわかりません。

ちなみに、私が両方のイーストを併用して使用するレシピを作る時の意図は、

あまり捏ねない生地で小麦の風味を出したいが、それでも食パンのようにボリューム感も欲しい。

そんな時に、前半は生イーストの瞬発力で生地にボリュームを出し、後半はインスタントイーストのパワーでしっかり窯伸びしてもらい、クラストに香ばしさを与えてもらう。

どちらも使用量は通常の半分ずつにして、いいとこ取りみたいな (*^_^*)

本当はどうなのかなんて関係ありません。

自分で考えとにかくやってみる!

それが血肉になるのです。



2 Comments

タクト says...""
はじめまして。
とても興味深く読ませていただいており、すごく勉強になっています。
当方障害者とパン工房で働いていて
一般的なベーカリーと比べるとパンの種類などみ10分の1程で、パン職人という技術者もいません。
フランス系の生地作り自体していなかったのですが、やってみようということになり、あまり捏ね過ぎてはいけないという程度の知識で作ってみたのですが、フランス系のパンとは遠い生地になってしまいました、外側は硬くパリッとしたのですが中身が食パンのようなふんわりした感じで…お忙しい中すみません、これから改善していき数をこなしてなるべく美味しいバタールに近づけていきたいです。アドバイスいただけましたら幸いです。
生イーストを使用しました。
フランス粉100%
生イースト2.5%
塩2%
モルト0.2%
水68%
全部を入れ
4速のミキサーで
1速で6分2速で3分
1時間半常温で発酵させて、パンチをして30分置き、分割し、30分置き1本300グラムのバケットを成型、3~40分ホイロに、スチームをし30分程焼きました。
画像なども無いのですが、どこら辺を改善していくと少し改善されていくでしょうか?

2014.11.13 17:03 | URL | #HOB0jwFc [edit]
しずかな朝 says..."タクトさん、こんにちは"
はじめまして、コメントありがとうございます。

記事を読まれていればご存知の事と思いますが、私自身知的障害者施設でのパン作りを長く経験しております。

御役に立てることは多いと思いますゆえ、メールフォームから直接メールを頂ければと思います。

さて今回ご質問のフランスパンですが、たったこれだけの材料でいいんだ・・・・捏ね方も特に難しい事もなく、原価も安く済んでこれはいいや・・・・というのが、フランス生地に対する皆様の率直な意見だと思うのです。

しかし、実際に作ってみると、売られているようなパリッとしてカッコいいパンが焼き上がらない・・・・ですよね。

そうなんです、単純配合だからこそ、その分技術が必要になるのでした。

とはいえ、技術はここでは語れませんので、基本的な考え方だけお伝えしておきましょう。

まず、そもそも生イーストを使用すると、内層がソフトになりがちですし、風味に欠けます。

ですので、サフのインスタントドライイースト赤ラベルというものを使ってみてください。

どこの業者でも必ず扱っています。

使用量はぐっと減って0.7%で構いません。

その他の材料はそのままで、気をつけるべきは捏ね上げ温度になります。

捏ね上げた生地が26℃以上あったら、内層がソフトになってしまうとお考えください。

22℃~24℃で捏ね上げて、時間はそのままで大丈夫です。

ただし、これからは寒いですので、発酵させる場所は25~27℃位の場所で、乾燥しないようにお願いします。

それだけ守って頂ければ、後は多少成形がへたっぴであろうとも、バリッとした表皮と、荒々しい内層になります。

生地をパンチする際、あるいは分割する際には、生イーストの時のようにふっくらとはしておらず、ベタベタするかもしれません。

特に温度をきちんと守っていただけたとしたら、尚更ふくらみの少ない生地で、取り扱いづらい生地になるかもしれません。

しかしそれでいいのです。

バゲットなどをへたに作ろうとするから、かえって上手くいかないのです。

分割した後は丸めたりせずに生地を休ませ、軽~くたたむ程度で生地をなるべくいじらないような形にして焼くのです。

出来る限り高温で、初めのうちは100グラム位の小さいものを作り、それを15分位で焼く感じで行ってみてください。

生地さえ美味しく焼けるようになれば、様々な具材を入れて焼いても、美味しいフランス生地の小物が誕生する事になります。

あえて成形して生地を台無しにするよりも、成形しないで四角いまま、あるいは丸でも三角でもかまいませんから、生地のガスを抜き過ぎないで焼きまで持って行く事が重要なのです。

設備や作業場の画像などがあれば、より具体的にアドバイス出来ますので、どうぞご活用ください。


2014.11.14 04:03 | URL | #- [edit]

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