ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

パンのコシ・生地切れについて

こんな質問をいただきました。

『生地切れ』についてお伺いします。

その現象は、どのようなときに起こるのでしょうか?

一例ですが、ブログに、発酵種の割合が多すぎると、コシが強すぎて生地切れを起こすとありました。

生地の中で、どのようなことが起こっているのでしょうか?

また、それは文字通り、グルテン膜のテストで生地がちぎれる、あの状態を指すとの理解してよろしいでしょうか?



パン生地は、多くの水分を含み、弾力があるがべたべたとした物体です。

しかし、手粉を使う事で表面がやや乾燥し、薄い皮に包まれたような状態になります。

そうなることで、生地は取り扱いが容易になる訳ですが、扱う段階でこの表面を削ってしまうと、中のべたべたが表面に出てきますので、手にも作業台にもくっついて作業しづらくなりますよね。

なので、ベタベタと手にくっつかない状態のまま成形をする事が望ましいのですが、どうしてもその一皮が薄い為に、ビリっと破けてしまう事があります。

これが生地が切れた状態と言えるのではないでしょうか。

生地は、捏ねる段階では生地切れを気にしていては捏ねられません。

あくまで、捏ね上がったら、後は常に表面の皮一枚で内層を守りながら作業をしなければなりませんし、そこが技術の必要なところとなるのです。

更に、生地の皮一枚の厚さや弾力は、捏ね方や粉の強さによって違いますし、水の多さでも変わってきますね。 

硬い生地を伸ばそうとすると切れやすい、柔らかい生地は伸びやすい。

それはなんとなく理解できるのですが、パン生地のいわゆる ”コシ ”は生地の硬さだけが影響している訳ではないのです。

パン生地は時間の経過と共に膨らんでいくものですね。

それはイースト菌が増殖を始めて炭酸ガスを発生させることで、パン生地の中に小さな風船が無数に生まれ、その風船が膨らんでいく事によってパン生地全体も膨らんでいくのです。

そして、その炭酸ガスの発生は、イースト菌の好む適度な温度帯によってスムースなガス発生が行われて行くのですが、これがもし捏ね上げ温度が32℃とかになると、イースト菌は大慌てでガスを発生させてしまうのです。

すると、パン生地内部では風船の膨らまし競争のような状態になり、内部にかなりの摩擦熱が発生してしまいます。

こうなると、本来なら焼成の際に最大限のガスが発生する事でパン生地がふんわりと膨らむはずなのですが、捏ね上げ温度が高いと、工程の途中でガスが尽きてしまいます。

結果、オーブンでふんわりと伸びるだけのガスが残っていない為に、伸びの悪い硬いパンが完成してしまうのです。

さらに、風船膨らませ競争の間に、いつもよりもたくさんの糖分を必要とする為に、生地の糖分が予想以上に失われ、甘みさえも奪われてしまうのです。

これで、焼き色のぼけた、クラストの硬い、甘みを奪われたへんてこりんなパンの完成となるのです。

そんなパンに見覚えはありませんか????

捏ね上げ温度がいかに大切かは、様々なカテゴリで触れていますが、イースト菌が好む温度環境にする事が、まずは絶対条件となるのです。

そして、それが生地切れを起こしやすい生地になるか、はたまた強く切れにくいコシをもった生地になるかの分かれ道になるのです。

団子や餅などと違ってパン生地の場合は、この無数の風船を如何に割ることなく、出来る事なら増やすような成形が望ましいと言えます。

風船は、成形時に割れさえしなければ、叩いたり伸ばしたりされる事で更に分裂して数が増えていきます。

そうなる事で、キメの細かいふんわりとしたパンになるのですが、実際には壊されてしまう事の方が多いと思います。

ほんのちょっとの生地の温度の違いや、時間が経過してしまった場合、あるいは室温の乾燥状態などによって、パン生地の表皮の状態は常に変化しています。

そのあたりを手が察知して、表皮の状態に合わせた取り扱いが出来るかどうかが製パン技術の要であると私は思っています。

ですから、生地のコシの状態を掴むのは、最後は理屈ではなく技術力なのだと考えます。

それから、質問の中に発酵種の割合が多いと生地切れが起こり易いかという内容がありましたね。

これについて少し説明しておきましょう。

発酵種とは、冷蔵庫にて低温長時間発酵させた生地の事を指します。

発酵種そのもののミキシングは低速5分程度なのですが、これが冷蔵庫にて長時間発酵する間に、ゆ~っくりと風船が膨らんでいきます。

すると、ゆ~っくりと摩擦が発生して、ゆ~っくりと生地が捏ねられていくのです。

そうなのです、

発酵はゆるやかなミキシング なのです。

こうしてじっくりと捏ねられた発酵種は、すっかりイースト菌も活動をしています。

そんな発酵種を添加すると、本来ならミキシングを終えた後に発酵が始まって行くはずの生地が、

おい、早く起きろよ・・・・・・だ、誰????

こっちはとっくに起きてんだから、さっさと起きろよ・・・・・

みたいな感じでとっとと起こされ、いつもよりも発酵が進んでいきます。

さらに、十分じっくりとミキシングされた発酵種の表皮は非常にもろいので、生地切れが起こり易いと言う事になる訳です。

熟成の旨味や、発酵風味をプラスさせることのできる発酵種ですが、取り扱いに関しては、添加する量が多いほど難しくなるのだと言う事は憶えておいて下さい。

そうそう、誤解のないように加えておきますが、イースト菌は実はミキシングの最中にはもうすでに活動が始まっているのです。

作業は常に急がなければならない理由がそこにある様な気がします。






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