ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

冷凍生地でのベーカリー開業の展望

ベーカリーの開業事情には様々な理由があります。

技術を習得して、オリジナルで勝負する人もいれば、何がしかの事情で売上を上げなければならない企業なり法人の方もいらっしゃるでしょう。

売上を上げる為の手っ取り早い業態として、ベーカリー経営を選ぶ法人は後をたちません。

これは今に始まった事ではなく、ずっと以前からパンと言う商材はいかなる所でも確実に売上を上げる事が出来る武器になると言う事を、多くの企業や法人の方々は確信していたようです。

一昔前は、企業においても職人を雇うか、または社員研修を行って技術を習得させ、オリジナルで勝負していた時期がありましたが、現在においては、企業として取り組むのは、そのほとんどが冷凍生地を使ったベーカリー経営に移行していると言えます。

なぜなのでしょか・・・・?????

本来なら手作り、自家製の方がお客様を呼びやすいと思いませんか?

どこにでもある冷凍生地のお店で~す・・・なんて看板を出したら、お客様は来る訳がありませんね。

しかしですよ、現実には冷凍生地のお店は増えるばかりです。

しかもそこそこ売れている。

この現実は、私が思うにはまず、お客様は基本的に冷凍生地なのか手作りなのかを私達が思っている以上には気にしていないのではないかと言う事。

また、あくまで食べてみて判断しているのであって、冷凍生地が明らかに美味しくないのであれば、お客様が入るはずがないという事実。

そして、冷凍生地はずっと拡大傾向にあるのに対して、手作りはあくまで個人店の出店にとどまっていると言う現実。

これらが表している事象から判断すると、企業が複数のパン職人を雇用したり、研修させたりと言う従来の方法は、とても不安定であったということではないでしょうか?

つまり、ベーカリー経営において、人の存在が経営に占める割合を如何に抑えるかが健全経営のポイントになっていると考えられるのです。

人は病気をします。 怪我で休む時もあります。 仕事の遅い人もいます。 売上が上がれば忙しい思いをするので、辞めてしまう人もいます。

せっかく長い期間お金を投入して研修を受けさせても、すぐに辞められたら企業にとってのマイナスは計りしれません。

その割には待遇改善だ有休だ保険だと、何かとお金ばかりかかります。

パンは確かに売れる商材です。

しかし、製造部門が抱える問題は企業にとっては実に厄介な問題なのです。

そこで脚光を浴びるのがやはり冷凍生地。

発酵させて焼く・・・・これだけの作業ですむのです。

これなら素人でも簡単に行えます。

想像してみて下さ・・・・

素敵なお店に可愛いユニホーム姿の女性達。

カフェで焼き立てパンが食べられ、ゆったりと本でも読みながら過ごすひととき。

甘い香りと素敵な音楽に包まれた店内には約50種類のパンが所狭しと並んでいる。

次々に焼き立てが運ばれ、どれを買おうか考えるだけでワクワクしてくる。

これがお客様から見た視点ですね。

では内情は手作りと冷凍生地とではどう違うでしょうか???

忙しそうに動き回る職人達。

製造金額は約50万円なので、スタッフはパート含め15人。

生地の温度管理と分割に追われる仕込み担当スタッフ。

数が多いので、トイレに行く暇もない成形スタッフ。

生地状態と成形の状態によって、また成形する人によって形がまちまちになっているパンを発酵させて焼くオーブン担当スタッフの苦労は並大抵ではない。

どうしてもお店に出せないような商品も焼き上がってしまう。

仕込み担当も、毎回毎回生地温度を同じにするのは並大抵ではない。

生地状態が上手くいかないと、作業の順番が狂ってにっちもさっちもいかなくなる。

揚げ句には変な商品が完成してしまう事がある。

スタッフが急病や冠婚葬祭で休んだ場合は尚更の事、すぐに商品に影響が出てしまう。

そんな週は休みが取れなかったり、昼食すら満足に食べられない事もある。

手作りという響きの裏には、これほどの苦労が常に付きまとう覚悟が必要になる。

しかし、冷凍生地なら50万円を製造するのに15人もいらない。

しかも全員パートタイマーでも出来ます。

冷凍庫から出した生地を天板に乗せて解凍し、所定の時間発酵させたらタイマーをかけて焼くだけです。

時には少し途中で手を加えて、別のパンにする事も出来ますし、具を変えるだけでも違うパンが完成します。

冷凍生地の最大のメリットは、技術のいる部分をほぼ完了させていると言う事。

ですから、工房が粉まみれになる事も無い。

衛生的かつ人に頼る部分を大きくカットした高効率事業なのです。

さらに冷凍生地だから美味しくないと言う訳ではなくなってきています。

・・・・・がしかし、冷凍生地を使うと原価がどうしても高くつくし・・・・・

当然ですね。 難しい所をすべてやってくれているのですから。

昔のパン屋経営の基本はこんな割合でした。

原材料費が30%(これには失敗したパンも残ったパンも含まれます)

人件費が35% やはり手作りには人手が必要です。

経費が30% 家賃・設備・光熱費などすべて。

そして残りの5%が利益になる・・・・

これが健全経営でした。

しかし、今では材料費もかなり高騰しましたし、人件費も増えました。

ましてや上記の例のように1日50万円も売れるパン屋はそうはありません。

25万円売れれば十分繁盛店でしょう。

つまり、経費は上がる一方ですが売上は下がる一方なのです。

繁盛する場所なら冷凍生地は大きく効果を発揮すると思いますが、小規模なら原価が相当な重石になると考えられます。

と言う事は、冷凍生地を使うかどうかの判断は、売上目標をどの位に設定するのかによるのです。

また、冷凍生地の仕入れ時の原価よりも気にしなければならないのは、廃棄です。

お店を構えていれば当然すべて完売と言う訳にはいきませんね。

必ず残ってしまうものです。

その時です。 自家製ならあんパン1個を廃棄しても30円の材料費の損失で済みますが、冷凍生地なら50円になったりしますよね。

そのように、売上に対する原材料費率を考える時には、仕入れ値だけではなく必ず廃棄や失敗も考えないといけません。

冷凍生地は儲かりますか・・・・・

沢山売れるなら儲かるでしょう。

冷凍生地ベーカリーは楽しいですか・・・・・・

楽しく簡単にパン屋気分が味わえます。

その魔力は相当なものだと思います。

冷凍生地ベーカリーを推奨しますか・・・・・・

200%しません (--〆)


8 Comments

ヨーコ says...""
はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいています。
本当いろいろ勉強になります。ありがとうございます。リンク貼らせていただきました。これからは友人からの質問の返答は即こちらのサイトに回ってもらおうと思っています(笑)。
2011.09.05 13:02 | URL | #9Cy9atPA [edit]
なか says...""
私はかつて、『店のオーブンで焼き立てを提供しているパン屋=手作りのパン屋』だと思っていました。冷凍生地の存在なんて知らなかったし、そんなやり方があるということも全く知らない一消費者でした。

パン屋で働くようになって、初めて『冷凍生地』の存在を知り、『パン職人でなくてもアルバイトの女の子でも焼き立てパンを提供できる』現実を知りました。

お客さんの中には、『スーパーで売られている大工場で作られたパン』か『パン屋さんで焼き立てで並んでいるパン』の2つしかないと思っている人も多い気がします。(焼き立てパンやさんに2種類あると知らない人も多いのではないかな。。。)

粉の計量からやっているパン屋さんと、冷凍生地のパン屋さんが同じ『焼き立てパン屋さん』と認識されているとしたら、切ないですね。。。
2011.09.06 08:37 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."ヨーコさん、よーこそ!"
ド・ン・ビ・キ・・・・??

素敵なブログ拝見しました。

家庭でパンや菓子を作る人と言うのは、本当にパンが好きなんですね~

皆さん写真も素敵だし・・・・

レシピにはとらわれる事のない自由が感じられるし・・・・

やはりパンは家庭で作る方が楽しそうですね。

私なんかもうすっかり疲れました・・・

売れる売れないとか、儲かる儲からないとか、正直うんざりですね(笑)

ご友人の質問には、私は大変我がままなもので、興味のある質問にしか答えませんので、ご承知置きくださいませ(笑)
2011.09.06 15:12 | URL | #- [edit]
shinon says...""
はじめまして。
私も何かを調べていてこの素敵なブログにたどり着きました。
マニアックで楽しいです。

私も色々教えて頂きたいです^_^;

また伺わせて頂きます!
よろしくお願いします。
2011.09.07 16:59 | URL | #UhVguL7w [edit]
しずかな朝 says..."shinonさん ようこそ"
マニアック・・・・?ですか??

まあ、変わり者である事は確かですが・・・・

これから年末にかけては本業が忙しくなるので、返答は遅れるかもしれませんが、それでもよければいつでもどうぞ!

ただし、shinon さんが綾瀬はるかに似ていたら、返答は5秒後には送ります(^0_0^)

いかん・・・また敵を作ってしまった(ー_ー)!!
2011.09.07 17:52 | URL | #- [edit]
says..."卸す場合。"
どのカテゴリーに書くべきか迷ったのですが、ここに書かせて頂きます。

いつもとても勉強にさせて頂いています。
ありがとうございます。

質問なのですが、レストランなどに卸す場合、
1)成型後に冷凍したものを冷凍車で配達する
2)焼成後冷凍し冷凍車で配達する
3)エージレスを使用して冷凍せずに焼き立てを配達して相手方の冷凍庫にて冷凍してもらう

この3つを考えています。
この考えについて何かアドバイスを頂けたらと思います。
相手方はどの方法でも良いと言ってくれているのですが出来るだけ美味しいパンを供給したいと思っています。
よろしくお願いします。
2012.05.11 08:47 | URL | #avvNOdrU [edit]
しずかな朝 says..."虹さん、コメントありがとうございます。"
申し訳ありませんが、ご商売の相談には応じられないのです。

なぜなら、コメントで軽々しく書けるような内容ではないはずだからです。

営利が発生する質問には、仕事としてしかご返答出来ないのですよ。

スミマセン(~_~;)
2012.05.11 18:09 | URL | #- [edit]
虹 says..."失礼しました。"
商売の相談になったんですね・・・そう言えばそうですよね。
すいません。
日本語での生活が殆どないので時々、失礼な事になってしまう事があるんです。
商売とは気づきませんでした・・・趣味の延長が急に私の焼いたパンがどこにも売っていない特殊なパンだったので、大量にオーダーが入ってしまってあたふたしているのです・・・
すいませんでした。
2012.05.13 03:10 | URL | #avvNOdrU [edit]

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