ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

パンの表面に出来るブツブツの正体とは

こんな質問をいただきました。

前の晩にベーグルを成型まで終わらせておき冷蔵庫に入れておき、朝茹でて焼くというものですが、そうするとベーグルの表面に点々と火ぶくれ程にはなっていませんが、気泡の点が現れます。

それはオーブンから出した直後より、時間経過と共に増えていくようです。

そしてインスタントドライイーストよりいわゆる市販の天然酵母(私は白神酵母を使いました)の方が大きく激しいようです。

冷蔵庫で保存せず普通に発酵させて焼いた場合は、そのような点は現れにくいように思います。

同じような大きさまで膨れているのに、なぜ、冷蔵庫で保存した場合にできるのでしょうか?

あの点々は何なのでしょうか?できればよくネットで見るようなツルツルした肌のきれいなベーグルが出来たら嬉しいのですが。

前の晩からではやっぱり無理でしょうか?


パン屋さんに特に多い質問なのが、このブツブツ現象なのです。

ホームベーキングの方からは、この質問は初めていただきました。

ではなぜ、パン屋さんからの方が圧倒的にこの質問が多いのでしょうか?

それは製法に関係があるのです。

この質問者様の場合もそうですが、生地を冷蔵もしくは冷凍した場合に、このブツブツが発生します。

このブツブツは、業界用語では ”フィッシュアイ”と呼ばれており、その名の通り魚の目に似ている事でそのように呼ばれているようです。

以前は ”なし肌”とも呼ばれていて、果物のなしの表面のブツブツに似ていることからそう呼ばれていたのだと思います。

ではなぜ、このようなブツブツが出来てしまうのでしょうか?

それは、正直な話正確には解らないのです。

と言うのは、時として発生しなかったり、または訳も無く突然現れたりする事があるからです。

しかし、この問題はオーブンフレッシュベーカリーが出来てすぐの頃から、ベーカー共通の問題の一つとして扱われてきているのです。

しかも、意外と難問なのです。

解る範囲で、ごく一般的な推論から、そのブツブツの発生メカニズムを説明して行きますと・・・・

イースト菌は温度に敏感だと言う事は皆様すでにご存じのはずですね。

捏ね上げ温度が28℃位が適正だとして、そのあたりの温度帯で捏ね上げられた生地が、発酵や成形などの段階まではその温度を維持されています。

その間はイースト菌も、すくすくと気持ち良く増殖を続けているでしょう。

しかし、冷蔵では概ね5℃前後、冷凍に至ってはマイナス10~20℃という場所へいきなり入れられた生地は、さぶ~~となって活動を休止して行きます。

その時に、すぐに全てが活動を停止する訳ではありません。

生地は表面から徐々に冷えて行きますから、表面から順番に活動が弱まって行くのです。

と言う事は、冷蔵または冷凍された生地は、数分の間は中心部ほどイーストの活動が進みます。

つまり、中ほどだけが膨らもうとした状態になっていると言う事です。

しかし、膨らみたくても表面が冷えて乾燥してきていますので、膨らめない・・・・

膨らみたいけど膨らめない・・・・

そんな状況の中、やがては全てのイースト菌が活動を休止して行く事になります。

なんかもやもやしませんか???

活動休止までが、同じパン生地の中においてスムースに行われていませんね。

パン生地は本来、全て同じ条件のもとに発酵を続けていますよね。

一部だけを冷やしたり、または一部だけを温めたりと言うような異様な状況にはしようがありませんよね。

しかし、冷凍や冷蔵をしようとすると、このようにイースト菌に対して不安定な温度差を与えてしまいます。

そして、いざ目覚めの時です。

解凍もしくは冷蔵から常温への温度変化が再び行われます。

しかし、この時の各部署でのイースト菌の状態はすでに違っています。

と言うのは、表面は早めに冷えたがゆえに、早くに活動を停止していました。

その為に発酵力が意外と多く残っている。

しかし中心部は逆で、なかなか休止する事が出来ずに活動を続けていた為にかなりの力を使い果たしてしまった。

と言う事で、やはりこの時点でもイースト菌の発酵バランスは著しく不安定になっています。

そんな中でも容赦ないオーブンの熱攻撃・・・・・

いきなり200℃前後へ入れられて、いつもなら全菌軍団総力で膨らむ事が出来るのですが、今回は疲れ果てている菌もあれば変に余力が残っている菌もある。

そんなチームワークが取れない状況の中で、一部の元気な菌だけが一生懸命膨らもうとするので、表面がいびつに膨らんでしまう。

これがブツブツの原因であると、私は解釈しています。

これを理論的に解決するには、チームワークを守る事、つまり生地は一斉に冷やさなければならないと言う事になります。

これが、急速冷凍が必要な訳ですね。

しかし、急速解凍と言うのは無理な話です。

ですから、いずれにしてもチームワークに障害は出てしまいますし、完全解決には至らないのです。

では、完全解決とまではいかないとしても、出来る限り防ぐための方策はいくつもありますので、そのいくつかを紹介して行きたいと思います。

まずは、冷凍又は冷蔵しようと考えたら、イースト菌そのものを増やさなければなりません。

しかしその分味が悪くなる事は覚悟しなければなりません。

また、冷凍障害を防ぐための専用の改良剤があります。

それを取り寄せて使う事で、ほぼ解決すると思います・・・・が、やはり酸味がある為にやや味が悪くなります。

また、イースト菌その物も、冷凍耐性のあるものが存在しますが、ほとんどは生イーストですから一般家庭では使用は困難でしょう。

家庭において最良なのは、インスタントイーストを1,5倍に増やし、出来れば改良剤のたぐいを使われた方が失敗が無いと思います。

また、冷蔵なら大丈夫だと思いますが、冷凍する場合などは、小麦粉のグルテンも冷凍によって損傷を受けますので、強い粉をブレンドする事をお勧めします。

また、冷蔵・冷凍共に、生地はやや硬めに作る事がポイントとなります。

質問者様のように、天然酵母などを使用した場合は、冷凍冷蔵は完全に無理と言わざるを得ません。

なぜなら、そもそも酵母の力が弱いからです。

と言うよりも、ガス発生力が弱いと言った方が良いかもしれませんね。

じっくりと発酵時間をとらなければならない類の天然酵母は、尚更温度に敏感ですので、常温以外の製法を選択する事は不可能だとお考えください。

私がホームベーキングの方にアドバイスしている方法は、やはり冷凍も冷蔵も常温での通常の作り方にはかなわないので、完成したパンを速やかに冷凍する方法をお勧めしています。

焼成後に速やかに冷凍されたパンは、翌日自然解凍を数十分行うだけで、みごとに香りも味も焼き立てそのままのパンになります。

色々とややこしい材料を入れて、あえてまずくして冷凍する位なら、焼いてから冷凍する方をお勧めしている訳です。

もちろんベーグルは特に冷凍に向いています。

私は、一度にたくさんのベーグルを焼いて冷凍し、朝食はもちろんおつまみのサンドイッチまでそれで作っていますが、焼き立てと何も変わらないどころか、むしろ美味しく感じます。

急ぎの時には、オーブントースターで1分ほど焼いたり、電子レンジで20秒ほどチンしても、皮のパリパリしたベーグルが食べられますよ。

パン屋さんの場合は、開店時間までに少しでも多くのパンを店頭へ並べなくてはなりませんよね。

ですから、悲しいかな全てを当日の朝に作ると言うのは、難しい話なのです。

なのであえて冷蔵も冷凍も行われているのです。

しかし、家庭においてはそれは絶対ではないと思います。

味を考えるなら、どうか焼成冷凍をお試しくださいませ(^0_0^)



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