ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

最良な生地の捏ね上がり状態とは・・・・

こんな質問をいただきました。

特に食パン(強力粉100%)の時に感じるのですが、捏ね上がりの最終段階になっても生地が滑らかになってこない時があるのですが、何が原因だと思われますか?

生地の完成時に、薄い膜が出来るほど滑らかな時もあれば、なんとなく生地が切れていてベタベタとした状態の時もあります。

いつがそうというサイクルがある訳ではないと思うのですが、どうしてもその違いが気になっています。

毎日ほとんど同じキロ数で仕込んでいますが、いつでも同じような生地状態にならないと言うのは、いったい何が原因なのですか?

ちなみにミキサーの速度は常に同じで、タイマー設定されています。

量も同じで時間も同じなのに、状態が違うと言う事は、やはり小麦粉に安定や不安定があるのでしょうか?

講習会の時に講師の人に質問した時は、小麦の収穫時期によってべたつく時があると言われました。

だとしたら、現場ではそれをどう見分けたらよいのでしょうか?・・・・・・・・



これは実に良い質問です(^0_0^)

実は私自信、この事が解らなくて解らなくて、色々な偉い人に聞きまくったのですが、皆答えが違っていましたし、具体性に欠けている事が非常に多かった事を憶えています。

しかもそれは、今現在になっても科学的にどうかと言う事は正直解りません。

ただ、その様になる理屈や傾向などは、何となく理解した気がしています(~_~;)

それでは、なんとも頼りないかもしれませんが、私なりの解釈でご説明させていただきたいと思います。

まず、収穫時期によって小麦粉の品質が変化すると言うのは本当だと思われます。

ただし、そんな事は製粉会社が見逃すはずがありませんので、我々の手に渡るまでには、しっかりと調整されていると思われます。

と言う事は、粉のせいではない???・・・・と言う事でしょうか。

では、いったい何が原因で、生地状態が良い時と悪い時に分かれてしまうのでしょうか?

その一番の原因は、ま・さ・つ、そうです摩擦による現象なのです。

そもそも、摩擦が無ければ生地はつながって行きませんし、グルテンも強化されていきません。

ですから、低速回転で材料をしっかりと混ぜ、その後に中速から高速回転で生地に摩擦を与えて行く訳ですね。

生地は、ミキサーの中で周りにくっついたり、はがされたり、叩かれたり、押されたり、引っ張られたりと、色々な機械の運動によって捏ねられていきます。

その時に、どうしても摩擦が発生していきます。

これは、例えば狭い部屋の中で、お相撲さんが稽古をしているようなもので、運動によってそれぞれ個人が熱を発生しながらも、他の人にぶつかりながら更に熱が発生し、部屋全体がどんどん暑くなっていく事で更にお相撲さん自身も発熱が激しさを増していくと言うような状態を差します。

しかしこの場合、同じ狭さの部屋に更に2倍の人数が入ったらどうなるでしょうか?

当然部屋の温度は急上昇し、それどころか怪我人も出てくるかもしれません。

ミキサーでどれ位の量の生地を回すのかによって、この時と同じような状態が起きているのです。

と言う事は、どう考えても仕込む量が多い時に、摩擦が多くなってしまうと言う事が言えますよね。

ですから実際には、少量仕込みの時にはこのような不安定はあまりないと思われますがいかがですか?

また、生地が非常に柔らかい場合もそうで、柔らかい生地は、非常に柔軟なお相撲さんの集団だと考えると、よけるのも上手なので、ぶつかりあったりせずに怪我人が少なく済むと考えられます。

仕込み量が多く、しかも適度に硬めの生地、更にはしっかりと100%生地を捏ねなければならないようなパン・・・・

と言えば、食パンと言う事になりますね。

食パンはキメが細かくないといけませんから、しっかりと捏ねなければなりません。

しかも、極度に生地を柔らかくしてしまうと、成形時機械に絡んだりしますので、そんなに柔らかくと言う訳にはいきません。

更に食パンは、他の具が入ったパンとは違って生地のみのパンですので、おのずと仕込み量は増えて行きますね。

そして更に、食パン生地と言うのは一般的には砂糖も油脂も他の小物のパンに比べて少なくなっています。

と言う事はつまり、摩擦を防ぐ為の潤滑油の役目をする副材料が少ない訳ですから、ミキシングによる摩擦熱をモロに受けてしまうのです。

適度な摩擦、つまり少人数のおしくらまんじゅうなら、身体が暖まってホカホカしてきますね。

しかし、これが大人数だとなるとそうはいきません。

擦り傷切り傷は当たり前、倒れて踏みつぶされる人も出て来るでしょう。

と言う事は、過度の摩擦は生地を傷つけ、さらには急激な温度上昇の原因にもなるのです。

急激な温度上昇がおきた生地は、小麦の風味が飛んでしまって、味気ないパンが完成します。

この時のパンの焼き上がりは、肌のキメが粗いと思います。

そして艶がありませんし、伸びも悪いと思います。

でもですよ・・・・質問者様の場合、仕込みキロ数はいつも同じだと言う事ですから、これには当てはまらないのではないでしょうか?

いえいえ、ところがそうではないのです。

実はここからが肝心なところなのですが、摩擦は適度が良く過度の摩擦や急激な摩擦はいけません。

しかしながら、何が適度で何が過度なのかはどうしたら解るのでしょうか?

それは、このように判断していただきたいのです。

まず、低速で材料を回しますね。

しっかりと混ざった事を確認したら、次に中速に入る訳ですが、その前に一度生地の温度を計って下さい。

そしていつも通りに生地が完成したら、当然捏ね上げ温度を計りますよね。

さて、何度上昇していましたか?

この、全ての材料が混ざった状態、つまり全材料の温度が揃った時点で何度だった生地が、何度に捏ね上がったかを毎回記録するのです。

そして、今日の出来は非常に良いと感じた時には、いったい何度生地温度が上昇した時だったか・・・・

そこを掴むのです。

そうなのです、生地を捏ねる時に肝心なのは、

それぞれの生地の摩擦上昇温度を見極める

と言う事なのです。

いつも同じにやっているようでも、水温や材料の温度は意外と違うものです。

何度温度が上昇した時が、最適な生地状態だったかを、各生地別に知っておく事。

こうすることで、例えば仕込み量が少ない時でも、意外といつもの時間しかミキサーを回さずにいたりした生地が、ボリュームに欠け、なんか変だなと思う時が合っても、上昇温度を知っておくことで、ミキシングが足りないことに気がついたり出来るのです。

仮にですが、いつも23℃位の生地を、その後約13分回すと28℃になるとしましょう。

その生地を、水温を非常に低くして20℃位からスタートしたとすると、残り13分では生地は28℃には届きません。

つまり、もっとミキシングしなければ28℃にはなりませんので、余計に回す事になる訳ですね。

そう考えると、生地を捏ねると言う意味は、

何分捏ねると言う事が大切なのではなく、どう捏ねるかが大切なのであり、

その時の摩擦のかけ方によって完成品に違いが出ると言う事が解ると思います。

また、生地の摩擦は温度が高ければ高いほど上昇しやすくなります。

ですので、スタート温度が高い場合は、いつもよりも早く生地が出来てしまうと言う事になります。

逆に、スタート温度が低過ぎた場合は、いつまで回してもなかなか生地が完成してきません。

少し難しい部分ですが、どちらが良いのかは自分で判断するしかありません。

最終的に生地が良いか悪いかを見極められるのは、生地を捏ねた本人だけだからです。

どのような摩擦のかけ方、つまりミキシングの速度であったり、上昇温度であったりするのが、パンにとって最適なのか?

そこだけが、パン屋さんのプロとしての腕前となるのだと思います。





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