ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

オールインミックスの利点と欠点

こちらのカテゴリをご覧のパン屋さんから、たくさんの問い合わせがありました。

ミキシング時の油脂の投入タイミングについて


皆さん、意外と油脂を初めから投入する製法を取り入れておられるようで、驚きました。

しかしもっと驚いたのは、その効果をあまり実感できていない事と、そうする事の意味を理解せずに実行している事でした。

そんな事では困りますよ(ー_ー)!!

・・・・・・と言う事はここでは良いとして、今回はオールインミックスの良い点と悪い点があるとするならば、どのような点なのかを、これからの未来あるベーカー達の為に説明しておきたいと思います。

基本的には、油脂以外をミキサーに入れて生地を作り、途中で油脂を入れるのが通常のミキシングなのですが、オールインミックスの場合は、書いて字のごとく全てをインしてしまう訳ですね。

大雑把には上記のカテゴリにて説明している通りですが、ここでは少し細かく見て行きたいと思います。

まずはミキシング時の利点として、ギヤーを頻繁に変える手間が省ける為に、別の仕事がしやすいと言う事が言えると思います。

ミキサーに付きっきりでは、なかなか別の仕事がはかどらないものですが、オールインミックスなら、通常よりもミキシング時間も長く、しかもある程度放っておけますので、効率が良いと言えますね。

また、完成した生地は全体的に油脂が前面に出ていますので、ベタベタしない、扱いやすい生地になっていると思われます。

とても滑らかな生地が完成すると言えるでしょう。

この製法の場合、小麦粉が最強力粉であっても、薄力粉などをブレンドしてあったとしても、どちらも滑らかな仕上がりになると思われます。

何故かと言うと、油脂が潤滑油の役割を果たし、過度の摩擦を防いでくれるからですね。

時間はやや長くなりますが、ミキシングにおいては好感触の製法だと言えるかもしれません。

ただし、油脂量が20%を超えるような生地の場合は、やはりあらかじめ生地をつなげておいてからでないと、すべりまくって、しっかりとした生地にはならないと思います。

また、別の考え方として、パンのようにフワフワとさせたくないような場合、つまり成形時の形を崩したくない場合や、平べったく焼きたい場合や、トッピングが多く菓子のようなパンにしたいと言うような場合は、わざとグルテンをつなげない為に大量の油脂を初めに投入する事も技の一つと言えますね。

次に成形時ですが、油脂量が多ければ多いほど、生地どうしがくっつかなくなりますので、成形には配慮が必要になるでしょう。

生地の表面に油脂が出ている為に仕方のない事ですが、向いていない成形も出て来ると思います。

しかも、油脂が表面に出ていると言う事は、気温が暑ければベタつきますし、寒ければすぐに乾燥してしまいます。

すると、尚更生地どうしがはがれやすくなりますので、注意が必要でしょう。

最後に焼成時ですが、最終発酵温度と湿度には十分気を付けなければなりません。

何故だかはお解りですね(^0_0^)

油脂が表に出ていると言う事は、それがバターであったなら尚更の事、けして溶けるような温度帯に入れてはいけません。

また、オーブンの中ではどうしても色付きが早くなりますので注意が必要です。

色付きは早いのですが、色そのものはまだらになる事があります。

トッピングがあれば良いのですが、どうしても油脂が前面に出ると焼き色は不安定になります。

生地重量が多いものは、中心に火が通る頃にはクラストが非常に厚くなりますので、あまり大きなパンにはお勧めできない製法と言えるでしょう。

ではここで、同じ配合でオールインミックスをした時としなかった時の違いについて考えてみたいと思います。

配合は菓子パン系の生地と言う事で、砂糖が20%、油脂が20%、小麦粉は強力粉80%で薄力粉を20%ブレンドしたとします。

まずは通常のミキシングの場合・・・・・

薄力粉がブレンドしてある為に、ミキシング時間は短かくなり、早めにグルテンがつながります。

しかし、油脂の投入後は低速にてしっかりと油脂をまぜなければなりません。

油脂量が多い時ほど、生地は十分につなげておいてから油脂を投入してください。

油脂が馴染んだら、その後はあまりミキシングしてはいけません。

完成した生地は油脂が多い為に滑らかで、扱いやすい生地になっているはずです。

砂糖や油脂が多い生地ほど、捏ね上げ温度は高めにしてください。

成形時も、適度なコシと手にまとわり着かない扱いやすい生地となります。

焼成時には窯伸びも良く、色付きが早い為に薄いクラストのしっとりとしたパンになります。

クラムもしなやかで、ソフト感が持続するパンになるでしょう。

そのままプチパンとしても美味しいでしょうし、様々な具材(甘い具材)と相性が良いと思います。


では、この配合でオールインミックスの場合はどうなるでしょうか?・・・・

ミキシング時は、低速で3分程回した後、残りはほぼ中速と中高速にて生地をつなげていきます。

時間はかかるものの、滑らかなスベスベした生地になるでしょう。

通常のミキシングをした生地と比べると、第一発酵後の膨らみが少ないでしょう。

プリプリとした感じではなく、おとなしい生地になりますので、成形は行いやすく、ベンチタイムでの回復も早いと思われます。

ただし、特に冬季はベンチタイム中に生地が冷えやすくなりますので、細心の注意を払って下さい。

ここで生地が冷え込んでしまうと、そう簡単には戻らなくなります。

逆に暑過ぎる環境でも、生地がダレてきますので、分割から成形にかけての配慮が必要になると思われます。

最終発酵のホイロの温湿度には、特に気を配って下さい。

通常ミキシングの生地に比べ、最終発酵は時間がかかると思います。

更に焼成時には色付きに注意し、特に下火に加減が必要だと思われます。

成形がきちんと行われていないと、成形によってはここで形がバラバラになったりします。

完成品は、ボリューム感としてはやや劣り、比較的クラストは暑くなり、ソフト感は得られないでしょう。

その代わり、香ばしいクラストになり、口溶けの良いパンになります。

ふんわりと言うのではなく、歯切れの良い、しっかりとした食べ口のパンになるでしょう。


と言う事で、両者の違いを見てきましたがいかがでしたか?

やはりフワフワソフトな菓子パンが良い・・・・と言うなら、油脂は後から入れた方が良いでしょう。

しかし、例えば成形時に長方形のスティックにしたり、ブッタークーヘンのように天板いっぱいに生地を乗せて、トッピングして焼成したパンをカットして売りたいと言う場合などは、膨らみ過ぎないオールインミックスの方が良いと言う事になりますよね。

クラストが厚くなると言う事は、ソフト感は失われますが、香りが際立つパンになると言う事ですし、全般的に油脂の層に覆われている為に、ひきが無くもろい食べ口になります。

味・・・・と言う点では、オールインミックスの方が香りが強い分美味しく感じるかもしれません。

ただし、この美味しさは長持ちしません。

やはり長持ちと言う点では、通常ミキシングの方が圧倒的に有利でしょう。

さあ、いったいどちらが良いパンなのですかね?

4 Comments

4代目 says...""
オールインミックスといっても、油脂を含めた全材料の中に水を入れてミキシングするのと、油脂を除いてのミキシング開始後に投入するのとでは、かなり違いがあると思いますがいかがなものでしょうか。

たとえば、ミキシングを開始して水加減を調整後(つまりは、生地のつかみどり、つながりのない段階)に油脂を投入するとか、中種投入後にするとかです。

ほかにも、生イーストを水に溶いて入れるのと、溶かないで、油脂と一緒にオールインするのとでも違うと思います。

ドライイーストは使ったことがないのでわかりませんが、生イーストに限っていえば、油脂と同時にミキシングすると、イーストの表面に油脂がコーティングされるはずなので、イーストの活性が阻害されて発酵に影響がでると思われます。経験上はこのように思っております。
2011.12.04 16:49 | URL | #nZQDCzGs [edit]
しずかな朝 says..."4代目さん、コメントありがとうございます。"
説明が足りなかったようで、申し訳ございません。

問い合わせの多いオールインミックスと言うのは、基本的には粉類と油脂を初めにミキシングしておき、そこに生イーストを水で溶いたものを入れた後ミキシングに入るというものでした。

油脂と砂糖をややホイップされてからスタートしている方もいましたね。

油脂と生イースト、またはドライイーストもそうですが、直接触れるような状況は当然避けるべきだと思います。

その辺りは皆さんご存知のようでしたので、特に注意事項としては書きませんでした。

解釈には注意を払いたいと思います。

ご指摘ありがとうございました。
2011.12.04 17:23 | URL | #- [edit]
4代目 says...""
いえいえ、条件、状況が様々にありますので、その上で解説をなされていることに、いつも勉強させていただいております。

私のコメントは、ミキシング時の手間を軽減するという所に着目しました。確かに、通常ミキシング時には回転数を切り替えなければいけませんので、キッチンタイマー等で管理を行います。これは場合によっては、そうとうな負担がともないます。パンの製造は、すべてが時間なので、タイミングを間違うと、とんでもない状況に、簡単におちいります。設備、作業台、優秀な人員等が整う場合には問題にはなりにくいですが、そのようにめぐまれることは、まずないと思います。状況によっては、焼成、成形、店番、従業員のヘルプ(レジ以外に注文やパンの特殊な説明や電話等応対がいるとき)、ミキシング等を同時に、場合によっては一人でこなさなければなりません。(たのむから、この3分間は手間を取らせないでくれ、と、思うこと、思ったことは、相応な方であれば誰しも経験があると思います)

このような状況においては、ミキシングを簡略化したいと思われるのは当然です。このような目的な場合と、生地のあがり(製造方法の違い)を目的とするのでは、目指すところがまったく異なります。これを受け入れた上でのオールインミックスは、どんな投入方法でもよろしいと思いますが、そうでない場合が多いようですね。でなければ、これに関しての問い合わせが多い理由がないと思います。

今の製法がよいのであろうか、という、建設的な理由もあると思いますが、製造方法を決定できるのは店主オーナーであったり、店長であったりするわけで、通常解決には至らないのではと判断しています。当方は店主ですが、物理的に無理な製法がありますので(寝なければできることもありますが、なんにせよ安定供給できません)、それが最適とわかっていても、できないことが多々あります。

クッキーのように油脂と砂糖を混ぜクリーミーにしてとか、練りパイのように粉と油脂を混合して粉チーズ状にしてと、それをもとにパン生地を練り上げるのは、述べられているように目的と結果あってこそです。目的がミキシングの簡略化であれば、この作業の分、手間がふえますので(ただし、この作業はオーバーミキシングということがないと思われますので誰でもできますが)、本末転倒と思います。

長文、失礼いたしました。

2011.12.04 20:59 | URL | #nZQDCzGs [edit]
しずかな朝 says..."4代目さん、お疲れ様です。"
最適と解っていても、出来ない事が多々ある・・・・

解ります解りますその気持ち・・・・・

私は思うのです。

結局はすべて精神が強くなければ出来ないと。

根性があるかないか・・・それに尽きると思います。

そして私には根性はありませんでした。

良いと解っていても出来ない事だらけで、出来ていたら業績はもっと上がっていたのかも、な~んて常に考えてしまいます。

先日ラジオで偶然聞いた言葉で、たしか、やらない慈善よりやる偽善??という言葉がありました。

私はいつもやらない慈善の方でしたね・・・・胸が痛いです。

またご意見聞かせて下さいね。

2011.12.05 02:50 | URL | #- [edit]

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