ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

混ぜ物は、どの段階で入れるのが最良か?

こんな質問をいただきました。

当店では、レーズンブレッド(対粉40%)は生地の捏ね上がり時に最後に低速で入れて混ぜているのですが、それではパンは美味しくならないと講習会で言われました。

せっかく捏ね上がった生地を、また低速に戻して混ぜ物を入れる行為はパンをまずくすると。

確かにレーズンが少し潰れたような感じになりますし、生地もベタベタする時もありますので、そうなのかな????と考えてしまいます。

しかし数十年このやり方でやってきているのに、本当にいけないのでしょうか。

成形の時に巻き込む方法の方が良いのでしょうか????

今更とも思いますが、どうしても気になっておりまして、是非お考えをお聞きしたくて質問させていただきました。


ミキシングに関しては、人それぞれにミキシング理論をお持ちのようで、どれが正しいのか、または間違っているのかと言う判断は、出来にくいと申し上げるほかありません。

数十年の間、貴店のレーズンブレッドを愛して下さっているお客様がいるのだとすれば、それがすべての答えなのではないでしょうか?

本当に間違っていたとすれば、とうの昔にアイテムから抹殺されているはずですから・・・・

これもあくまで一般論ですが、生地の最終段階で混ぜ物を入れるという製法は、当然ながら理にかなっていますし、それ以外に混ぜるすべはないと言えると思います。

ですので、ほとんどの方はそうしていると言えますね。

では今回は、例えばレーズンをミキシングの途中で入れた場合と、最終で入れた場合と、成形時に巻き込むなどして入れた場合とではどのように違いが出て来るのかを考えてみたいと思います。

この場合のレーズンは、水やお湯などで軽く洗って、洋酒を少し混ぜ込んであると言う事を前提に考えて行きますのでご了承ください。

まずはミキシングの途中でレーズンを入れた場合・・・・

この場合は、レーズンはかなりの確率で潰れてしまい、果肉が飛び出す事になります。

ミキシングを続ける間に、果肉が生地に浸透し、色は黒ずんできます。

果肉のほとんどは生地に浸透してしまい、レーズンの皮だけがみじん切り状態で残る事になるでしょう。

しかし、やがてはミキシングも無事に終了し、全体的に黒ずんだ生地が完成します。

ただし、果肉の含む水分と糖分により、生地はいつもよりも柔らかく、ベタベタした生地になるでしょう。

レシピの配合量にもよりますが、イーストの活動はやや妨げられて、発酵状態はいつもより時間がかかるはずです。

分割成形ともに、ややベタベタした感じでやりにくいでしょう。

全ての段階で時間がかかり、最終発酵も遅いでしょう。

焼成時はとても色付きが良いので注意が必要となります。

そして完成品ですが・・・・・・・どうだと思いますか??????

じつはこれが意外と程良い甘さで美味しいのです。

しかもいつもよりも断然やわらかく、日持ちもするはずです。

何故かと言いますと、レーズンの果肉が生地に浸透することで、糖分の多いパンになるからです。

発酵が遅くなるのは、ペーハーがやや酸性になるからですが、だからこそしっとり感が長持ちするパンになるとも言えるのです。

ならば良い事づくめなのか・・・・・

それは好みの問題ですね(^0_0^) あくまで・・・・

普通レーズンブレッドの良さと言うのは、パン生地とレーズンの甘酸っぱさの融合であるのに対して、レーズンの原型を無くしてしまったこのパンの場合は、レーズンを感じる事はなく、単に甘酸っぱくて美味しいパンになると思います。

では次に、成形時にレーズンを巻き込んでいく場合はどうでしょうか・・・・

成形が面倒で、手がベタベタする・・・・・・

それはそうですが、そこは我慢したとしてパンとしてはどうなるでしょうか?

この場合は巻き込んでいくしか方法がありませんから、パンをスライスすると、渦巻き状にレーズンが入っている事になりますね。

なら、見た目的にはこちらの方が喜ばれそうではありませんか????

実際にレーズン以外では渦巻き状に巻き込まれているパンがたくさんありますよね。

生地に練り込んだレーズンの量は、必ずしも全て均等に分割する事が出来ませんが、巻き込んでいく場合は、レーズンの量に差が出る事は少ないと思います。

と言う意味では、パンの安定性やデザインから見て、この製法はお勧め出来るのではないでしょうか???

しかし、それ以外の意味では、生地に練り込んだ場合に比べてやや劣る部分が出て来ると考えられます。

それは、レーズンが練り込まれている場合には、生地の発酵段階でレーズンのうまみ成分が生地に少しずつ浸透していると考えられる点で、例えるなら、豚の生姜焼きをご飯に乗せて食べた場合は、その汁の美味しさもご飯と一緒に味わえますが、生姜焼きが別の皿にあって、ごはんと別々に食べた場合は、肉汁付きのご飯は味わえないと言う事に似ていると思うのです。

つまり、究極の考え方として、食パンの上にレーズンを乗せて食べているのとあまり変わりがないと言う事になりはしないでしょうか・・・・

一緒に発酵して行くと言う事と、後から混ぜたり乗せたりするのとでは、最終製品に大きな違いが出ると思うのです。

レーズンに洋酒やハーブを使っていれば尚更の事ですね。(^0_0^)

吉野家で言えば、牛皿か牛丼かつゆだくか・・・みたいなものです。

ですので、やはりどのようなパンを完成させたいのか・・・と言うイメージによって、混ぜ物を入れるタイミングを考えるべきなのではないでしょうか。

レーズン以外では、ミキシング時に練り込む物として良く使われている材料の一つがクルミだと思いますが、クルミの場合はご存じだとは思いますが、クルミの脂分が発酵中に生地に浸透して生地の色が変わってきますよね。

そうなることで、生地にもクルミの風味や旨味が浸透しながらも、クルミ単体の食感や美味しさも味わえる訳ですね。

この場合も、もし成形時にクルミを巻き込んだ場合は、生地への浸透が少なくなりますから、その分の生地の旨味は少なくなると考えられます。

また、レーズンやクルミなどとは別に、柔らか過ぎてとても一緒に混ぜ込む事が出来ない材料がありますね。

この場合はそもそも考えようがありませんから、巻き込んだりトッピングする以外には無いと思います。

何をどの段階で混ぜる事が最良なのかは、製パン性・材料の特性・完成品のイメージによって変えて行くことで、違った美味しさに出会える事もあると言えるのではないでしょうか?

巻き込むにしても、練り込むにしても、またはそれ以外でも、そのまま入れるのか、細かくして入れるのか、何かと一緒に入れるのか、どの位入れるのか・・・・

以前こんなアンケートを取っていましたよ・・・・

ご飯に焼き海苔、あなたは醤油が着いた方と着いていない方のどちらをご飯に載せますか?

いや~人の好みと言うのは深いですね~~~~

7 Comments

メロンパン says...""
長い間、家庭で作っていますが、いろいろな情報がネット上にはありすぎて悩むこともしばしばです。そんな迷いを吹き飛ばすかのような記事に感服しています。海苔としょうゆの例え話には脱帽です。
2011.12.12 14:16 | URL | #LKyoMkRM [edit]
しずかな朝 says..."メロンパンさん はじめまして"
まさか海苔と醤油の話がうけるとは思いませんでした(^0_0^)

ちなみに私は醤油が下ですが、アンケートでは半々だったそうですよ(*^_^*)

私が小さい頃には、弁当に何層の海苔が入っているかで競ったものです。

三段以上になると、もうご飯が醤油だらけでしたが・・・・でもその醤油が立派なおかずになるのですね。

今でも海苔弁と言うのは定番中の定番ですもんね。

たかが海苔、されど海苔ですね・・・・・なんのこっちゃ???

でも、そんなメロンパンさんのような何気ないほめ言葉が、私にとっての何よりのご褒美と感じております。

ありがとうございます。
2011.12.13 16:37 | URL | #- [edit]
パン助 says..."クルミを煎る時は、、、"
 以前はミキシングの質問にて、ブログで解説までしていただき、ありがとうございました。大変勉強になりました。
 ところで、いつもクルミを煎る時に思うのですが、これを焼く温度と時間にベストな方法はありますか?
 自分が教わったのは、140度位で20分~30分オーブンに入れる所、200度でフタを開けっ放しにして入れる所、パンを焼き終え電源を切った窯に手袋を挟んで30分程入れる所など、様々でした。結局は水分を飛ばして保存するのが目的かと思いますが、焼く前にも、水を弱流水で15分当てる所、30分浸ける所、水洗いすらしない所と様々でした。
 また、煎る段階で香りがよく出てしまうと、実際にクルミを生地に混ぜ焼く時にはすでに香りが抜けてしまうのではとも思ってしまいます。
 なので、オススメの方法がありましたら教えてください。
 ちなみに今自分がやっているのは、水洗いした後に弱流水に15分さらし、その後140度ぐらいの窯に20分~30分入れて、最後はクルミを食べてカリッと歯が通れば良しとしています。
 どうぞよろしくお願いします。
  
2012.01.19 23:41 | URL | #- [edit]
なか says..."お久しぶりです!"
私もナッツ類の煎り具合については前々からあいまいでして。。。この機会に是非ともベストな状態を伺いたいと思います。

私の勉強不足で申し訳ないのですが、
パン助さんの方法の、“窯入れ前に水洗いして弱流水にさらす”のは、どのような効果を期待してなのでしょうか?その辺の解説も合わせてお願いしたいと思います。
2012.01.20 08:11 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."通じ合ってるな~"
なかさん、パン助さん、コメントありがとうございます。

なかさんには今日メールしようと思っていました。(病気にでもなったのかなと思って・・・・)

でもお元気なら本当に良かった(*^_^*)

クルミに関しては、水洗いするなどとは全く知りませんでした。

意味があるのかは逆に教わりたい位ですが・・・・

まあ世の中には想像を超えたようなやり方をする方がたくさんいらっしゃいますので、あくまで自分がそれで良しと思うのならそれで良いのではないでしょうか?

こうするのがベストなどと言うものは、たぶん存在しませんよ。

あくまで自分がどう考えるかです。

水に漬けるのは恐らくあく抜きではないですか??

だとしたら、クルミのあくも一種の苦み成分のようなもので、苦みや渋みもクルミの特徴の一つだと考えれば、どこまでクルミの個性を尊重したいかによって判断が違ってくるとも言えますね。

私の場合は、140℃で30分程度ローストするタイプと、そのまま生で練り込むタイプに分けています。

私の場合ローストするのは香ばしさを出したいからで、水分を抜きたいからではありません。

そのまま練り込むのは、クルミに火が通っていくのと同時にパン生地にも火が通って行きますから、クルミとパン生地が完全に同化して、クルミの香ばしさも渋みも苦みも、また、少しの生っぽい香りまでも丸ごとパン生地に移行するので、これぞクルミのパンだと思っています。

ちなみに前者は甘くてしっとりしたパンの場合、後者はハード系の場合そのようにしています。

とは言え、そんなものは私の単なる言いぐさでしかありませんよ。

本当はどうするのがベストなのかは正直知りませんし、もしそれを教わったからと言って、はいそうですかと言う事を聞くほど素直な性格ではないのが困った所なのですが(~_~;)

私は思うのですが、どんなパンにも必ずファンがつきますし、それが少数であったり時には大勢であったりしますよね。

売上を考えるとつい大勢の意見を尊重したくなるものですが、人間の好みと言うのは見事なまでに様々ではありませんか。

だからどうしても何が美味しくて何が足りないのか判断できなくなってしまう。

意見を聞けば聞くほど、調べれば調べるほど、分析すれば分析するほど、なにが本当なのか解らなくなってしまいます。

そもそも本当?なんてものがあるのだろうか・・・・・

そう考えてしまいます。

なので、あくまで直感やら偶然やらひらめきのようなものを優先しつつ、その理論武装は後付けでいいのではないでしょうかね(@_@;)

すっかり長くなってしまいましたが、まったく答えになっていませんね(>_<)

またお叱りがきそうだなこりゃ(~_~;)
2012.01.20 17:47 | URL | #- [edit]
なか says...""
しずかな朝さん、そして全世界のパン好きの皆様、おはようございます。
冬は大の苦手ではありますが、寒さに立ち向かいつつ元気よく毎日パンの事ばかり考えている私です。。。

ナッツのローストに関しては、『これがベストで他はあり得ない』という話ではないからこそ、パン助さんも経験されたように色々な方法があり、最終的に求めるパンの姿によってローストを変えるのがホントなんですね。つくづくパンの奥深さを思います。

そして、“唯一のベストロースト方法”が無い為、どの方法が良いか色々悩みはしますが、逆に“どんな方法でも自分の求めるパンになるなら有り!”ということは、パンつくりの面白さですね。

ちなみに私は『くるみを水で洗ったり、漬けたりするのは、パン生地の水分を奪わないため』という点もあるのかな。。。と思っていました。ドライフルーツ程ではないにしろ、ナッツ類って乾燥してるから少しでも生地の水分を持っていかれてしまうのではないかと思ってます。

相変わらず“ご飯パンマニア”の私は、今も色々な面白い事を考えています。そのお話、試作あれこれなどを皆様にご報告出来る日はくるのかっ?
2012.01.21 08:27 | URL | #- [edit]
パン助 says..."クルミの焼き方について"
 くるみを水で洗った物のと、浸けた物と、そのまま焼いた物を比べてみましたが、くるみ本来の苦みや渋みを味わうにはそのまま焼くのが一番でした。
 また、自分のお店の場合は子供連れの主婦が多いので子供が食べやすいチョコクルミのパンのクルミには、やはり水に浸けアクを取った物や、少し苦みを取った方が合うので、ある程度用途に分けて使い分けることにしました。
 今回も大変参考になりました。ありがとうございました。

 
2012.02.23 23:25 | URL | #- [edit]

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