ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

パン教室でどこまで学べるのか?

こんな質問をいただきました。

はじめまして。いつも勉強させて頂いております。

こんな質問をして良いものか迷ったのですが、どうしても納得できない事がありまして、大変失礼とは思いましたがメールさせて頂きました。

私はパン作り1年目の初心者で、現在パン教室に通っているのですが、このブログを見つけてからは色々と納得がいかない事が出てきて、先生に直接聞いてもパンは理屈で覚えちゃ駄目、体で覚えなさいと言われるのでそれ以上細かい事が聴けずに、もやもやとした毎日を送っております。

教わったパンはどうしてもお店で売っているようなソフトなパンにはならずに、皮の厚いパンになってしまいます。

どうしたらお店で売られているようなツヤのある皮の薄いパンになるのかを先生に質問するのですが、売っているパンは薬品が大量に使われているからで、家庭で作るパンは皮が厚いのは出来の良い証拠だと言われました。

先生の言われる事には何となく違和感を感じていたのですが、このブログを見ているとやっぱりそうかと思えるような記事が沢山あり、私はこのままパン教室に通っていて良いのかどうか迷ってしまったのです。

ちょうどこちらで材料の計量について書かれている記事を読んでから教室に行った時の事ですが、先生が砂糖はイーストの栄養なので一緒に量らないと駄目だと言われたのです。

私が質問すると先生は有名な書籍を指して、ここにも書かれているでしょと説明されました。

その本には確かに砂糖一つまみを入れて混ぜると書いてありました。

それで私はまったく解らなくなってしまい、勇気を出してメールしてみようと思った次第です。

こんな初歩的な質問は迷惑なのは十分承知の上でのお願いです。

お手すきの時にでも返答いただければ幸いと存じます。


それはそれは、色々と惑わせてしまったようで、解釈が足りなかった事を反省してここに付け加えさせていただきたいと思います。

砂糖はイーストの栄養なのか??・・・・と言う事でいうと、それは少し違うと思います。

イーストの栄養になるのは、砂糖の糖分であって砂糖そのものではないのです。

これは例えば、捏ね上がったパン生地にイーストを振りかけても、パン生地その物は膨らむ事は無いと言うのと同じです。

イーストその物にいくら砂糖を振りかけても、イーストは活動を開始しません。

それどころか表面から順に餓死して行く事になります。

少しややこしいですが、イーストにも色々な種類があるのをご存知ですか?

今回のご質問にあるイーストとは、インスタントイースト加糖用と言う細かい顆粒状のイーストになります。

厳密に言うと、このインスタントイーストにはほとんど水分がありません。

ですので、上白糖であれグラニュー糖であれ、直接くっつくことがあってもすぐにどうなると言う物ではありません。

なぜなら、お互いが乾燥しているか水分が少ない物の場合、互いが交じり合う為の道案内がいないからです。

ただし、そのまま時間を置くと、イーストは表面から順に餓死していきます。

それは、互いに水分が少ないとは言え、水分量が全く同じでない場合には、やがては多い方が少ない方から水分を奪ってしまうからです。

ですので、イーストに砂糖が付いたからと言って、すぐにどうなるものではなく、あくまでそのまま放置しないで欲しいと言う事なのです。

それから先生が提示した砂糖の一部をイーストと混ぜると書かれているのは、インスタントイーストと似ていますが、正確には”活性ドライイースト”と言うもので、一度お湯と一つまみの砂糖を入れて15分ほど活性させてからでないと活動する事ができないイーストの事を指すのです。

現在では一般的にはあまり使われていません。

なぜなら、この15分の活性をいい加減にやると、すぐに商品に影響が出てしまう為で、特に家庭では使われる事はほとんど無いと思われます。

しかし、いくら活性が必要なドライイーストだからと言って、沢山の砂糖を入れればやはりイーストは餓死してしまいます。

イーストは水分を沢山含んでいる物でも少ない物でも、菌を有している事に変わりはありません。

菌は水分を介して増殖して行く生き物なのですが、砂糖の成分には菌が生きていけるような水分はまったくありません。

ですから、砂糖と接触していると、やがてはすべての水分を奪われてミイラになってしまうのです。

とりわけ砂糖との接触を絶対に回避しなければならないのが、パン屋さんで使用している生イーストです。

このイーストは70%が水分ですので、砂糖が触れた瞬間から水分の移動が始まり、自家発酵がスタートしてしまいます。

生イーストの場合、生地を捏ねている間にはもうすでに活動が始まっています。

水分が多いということはそれ位反応が早いのですね。

捏ねている間に砂糖の糖分を見つけるや否や、はい行動開始・・・となる訳です。

この生イーストに砂糖や塩を直接くっつけると、表面がデロデロに解けてきて、そのまま放置するとその部分は死んでしまいます。

ナメクジに塩みたいなものです。

以上のようにイーストにもいくつかの種類があり、水分が多いほど直接砂糖や塩に触れさせてはならないと言う事がお解かりいただけたと思います。

水分が他の物質との道案内になると言うのはパン生地に限った事ではなく、あらゆる食品に言える事ですね。

お互いの表面が乾燥していれば交わる事のない物質も、そこに水分が触れることによって、すぐに交わってしまう。

インスタントイーストと砂糖は、互いが表面は乾燥していますのですぐにどうなる訳ではありませんが、そこに例え一滴でも水分が付着した場合、すぐに交わりは始まってしまうでしょう。

ですから、いずれのイーストにおいても、一緒に計量すると言うのは百害あって一利なしと言わざるを得ません。

それから、売られているパンは薬品がいっぱいですか~

いかにも怪しげな表現ですね~

しかしそんな程度ではないでしょうか、一般の方の認識は。

ただし、まったく間違った解釈をしているのは、家庭であれパン屋さんであれ、全く同じ品質のパンを作る事が出来ると言う事実は、多くの方が体験済みだと思いますよ。

ただ一般論として、家庭で特に手で捏ねた場合は、機械で捏ねた生地よりも捏ね方が不十分になり、その分皮が厚くなりやすいと言う事と、生地の取り扱い方によって、つまり技術によって完成品の品質は大きく違ってくると言う事実はあると思います。

何回も何回もパンを作り、何度もブログを読み返してみてください。

経験を重ねるたびに、書いてある内容の理解度が違ってくると思うからです。

また、パン教室にそれ以上のものを望むのは難しい気がします。

そんな事を言うと先生に叱られそうですが、やはりすべては経験のなせる業だと思うからです。

私を初め、忙しいパン屋さんで働いている職人さんが一日に作るパンの量はどれくらいだと思われますか?

生地の仕込み、つまり生地作りですが、捏ねるのはほとんど機械ですが、捏ねられた生地の重量は大抵の場合10Kgから20Kgもあります。

それを50g程度に分割して丸めて、一つ一つ成形していくのです。

仮に総重量が中間的な量で15Kgだったとすると、一つ50gの生地が300個出来る事になりますね。

それに餡を包んだり、カレーを包んだりするのです。

300個包むのにどれ位の時間とスピードが必要か考えてみて下さい。

そして、商品のアイテムは60種類とか80種類とかありますよね。

忙しいパン屋さんでは、総重量が15Kgにもなる生地を何十回もミキサーで捏ねています。

生地の上げ下げだけで、腰がやられない方がおかしいと思う位です(~_~;)

朝から夕方まで生地作りの担当は生地を捏ね続け、成形担当は生地を分割しては何千個もの成形を時間までに終わらせなければなりません。

焼成担当は、朝から閉店間際までノンストップで焼きっ放しです。

天板一枚に、12個位のパンが乗っていますので、結構重いのですこれが・・・

それをいったい一日に何回オーブンから出し入れする事か?????

しかも全てを絶妙の焼き色で焼いて当たり前ですよ。

食パンなどは一本の重さが約1.2Kgもある物を、一度に5本位持ってオーブンから出し入れしますので、それはそれは腰にきますよ。

しかも常に200℃以上あるオーブンの前に一日中いて、焼きながら次の発酵状態を見て、今焼いているパンが焼けるまでの数分の間に、次に焼くパンに具を乗せたり、焼く温度帯がパンによって違いますから、それらをうまくコントロールしながら、オーブンを空かす事無くスピーディーにこなし、常に次のパンがどんどん膨らんできますので、段取りを考えながら発酵状態も焼き加減もベストにする為に・・・・

と言っても到底理解する事は困難でしょうが、とにかく一日中ある意味戦場にいるようなものなのです。

皆様がよく訪れるベーカリーに、見事に並んでいるたくさんのパン達。

あれを焼いているのは、ほとんど一人なのですよ。

パン屋さんと言うのは、それ位の量のパンと毎日を共にしているのです。

パン教室で10個位のパンを毎回作っていたとしても、それが仮に今日は30個作ってみましょうとなったら、オーブンには一回で入らないから大きさの違ったパンが出来てしまうし、30個も成形していたら膨らみ過ぎてしまい、とにかくパニックになると思います。

数をたくさん作ると言う事は、それ位大変な事なのです。

少し作ろうが、たくさん作ろうが、すべてを同じ品質に仕上げる事が出来る技術と理論だったり、段取りとスピードだったり、そのような日常をこなしていかない事には身に着かないものが製造の世界にはあるような気がしています。

そんな生活を私はもう32年以上続けています。

他の職人さんは知りませんが、私には趣味などを持つ時間はありませんでした。

休みは不安定ですしね。収入も・・・・

常にパンを作り続け、常にパンの事を考えながら過ごしていく人生です。

いくら勉強しても、いくら高名な先生に教わっても、このように日々をパン生地と共に過ごしている職人のようにはいかないのではないでしょうか。

そんな中にあっても、私のように理屈が好きな職人もいれば、技術まっしぐらの職人もいる・・・・・

十人いれば十色のパンが出来るのだと考えれば、今教わっている事もその中の一つであり、けして無駄ではないと思うのですが・・・・・

ホームベーキングは、あまり堅苦しく考えるとつまらなくなりますよ。

失敗して当たり前なのですから、楽しんじゃってほしいと思いますが、そうはいきませんかね~(^0_0^)

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