ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

冷凍生地、冷蔵生地に、適正捏ね上げ温度はあるのか?

忙しいパン屋さんであればあるほど、恐らく自家製の冷凍生地を数種類は活用している事と思います。

家庭においては、冷凍・・・は少しばかり敷居が高いかもしれませんね。

ですので、冷蔵生地を活用していると言う話は良く耳にします。

パン生地の捏ね上げ温度は、ひじょ~~~に大切である・・・・

事あるごとにそう訴えてきたつもりですが、さすがに冷凍する生地にはそんなものはないでしょう~・・・・・

そのような質問が非常に多い。

冷蔵生地もそうですよね。

仕込んですぐに冷蔵庫ないしは冷凍庫へ入れてしまうのですから、別に何度に捏ね上げたとしても、変わらないはずだ・・・・・

そうお考えになる方がいても、別に不思議ではありません。

ただ、これがもしパン屋さんにその様な考え方の人がいるとなると、色々な意味でそのお店は大変だと思いますが・・・・

この辺は、理論よりも先に実際にどうであったか・・・・と言う部分ですでにお気付きの方も多いと思いますし、残念ながらお迷いの方もいらっしゃる・・・・・

と言う事で、今回は冷蔵生地や冷凍生地などの、すぐに冷やしてしまう生地の捏ね上げ温度について説明して行きたいと思います。

冷蔵庫へ直行する生地も、冷凍庫へ直行する生地も、それぞれ捏ね上げ温度の適正というものはあるのです。

それは、家庭やパン屋さんでは、高くても24℃位まで。

大手冷凍生地工場の生地の場合は、恐らく18℃程度だと思われます。

この違いは、パン屋さんにもご家庭にも、冷凍生地を作る為の専用ミキサーが無いであろうからです。

パン生地と言うのは、ご存知の通り捏ねれば摩擦熱が発生します。

捏ね上げ温度を18℃にしようと思って、材料の全てをいくら冷やしたとしても、それは捏ねても捏ねてもなかなか生地が完成しない・・・と言うっことはあっても、けして18℃に捏ね上げる事は出来ません。

もちろん、ただ混ぜる程度のデニッシュ生地などの場合は出来るでしょう。

しかし、きちんと最後まで滑らかな生地を完成させようと思うと、どうしても長時間かかってしまいます。

それは、捏ねると言う事は摩擦熱を出す事と大きくかかわっているからなのです。

全ての材料が冷えていると、揉んでも揉んでも摩擦熱がなかなか発生出来ませんので、結果、いつまで捏ねても生地は完成してくれないのです。

例えばの話ですが、全ての材料が30℃を超えていたとしたら、もちろん短時間で生地は完成します。

ただし、滑らかとは程遠いですが(~_~;)

大手冷凍生地専用工場ともなれば、時間をかけずに、つまり摩擦熱を発生させる事無く生地を完成させる事が出来るような高速のミキサーを持っています。

ですので、手で捏ねたり、パン屋さんにあるような通常のミキサーでは難しいような低い捏ね上げ温度で生地を完成させる事が出来る訳です。

24℃と言う温度は、ご家庭でもパン屋さんでも常に経験している温度帯だと思います。

冬場のご家庭では、この温度になってしまった食パンなどに、難儀していることでしょう。

パン屋さんにおいても、食パンの類が、このような温度に捏ね上がってしまうと、その後が大変ですよね。

では、なぜ一般的には28℃前後が適正とされている捏ね上げ温度というものがあるにもかかわらず、冷凍生地や冷蔵生地は温度を低めにしなければならないのでしょうか????

それは、いずれ冷凍される生地であると言っても、捏ね上げてすぐに冷凍される訳ではないからです。

分割する時間が必要ですよね。

その間に発酵が始まってしまうのです。

また、パン生地と言うのは実は、捏ねている最中からすでに発酵が始まっているのです。

ですので、仮に分割を必要としない生地であったとしても、発酵はすでに始まっているのです。

発酵がはじまったら?????何がいけないの?????

冷凍生地と言うのは、冷凍保存しておいて、後に通常のパン生地として使用する生地の事を指しますね。

つまり、解凍した後に発酵が始まってくれないと困る訳です。

しかし、冷凍する以前に発酵が始まってしまった生地と言うのは、イースト菌の何割かが冷凍障害で死んでしまうのです。

つまり、解凍後には全力が出せないと言う結果になるのです。

ですので、なるべく冷凍する前には発酵させないようにしたい訳ですから、イースト菌が目を覚まさないような低い温度帯で生地を完成しなければならないのです。

そうする事で、冷凍期間に生地が受けるダメージも少なくなり、解凍後に100%近くの力を発揮する事が出来るのです。

また、例えば急速冷凍庫などの設備を備えているパン屋さんもあると思いますが、いくら急速とはいえ、中心まで冷えるのにはかなりの時間を要する事になります。

周りはすぐに冷えるので良いのですが、中心部だけが発酵を開始してしまい、結果発酵力のまだらな生地になってしまう・・・・・

そうならないように、やはり生地の捏ね上げ温度そのものを低めにしておく必要がある訳ですね。

急速冷凍庫ではなく、普通の冷凍庫で冷凍生地を管理しているパン屋さんであれば尚更の事ですね。

生地の中心部も外側も、極力イースト菌が目覚めないうちに冷凍する事が、冷凍生地作りのコツとなる訳です。

さて、では冷蔵生地の場合はどうでしょう????

冷蔵生地は、そもそもが発酵はしてもらわないと困る訳で、だったら何度に捏ね上げても、結局冷蔵庫の温度に落ち着くはずではないか?????

と思ったら大間違いなのです。

ここも冷凍生地と同様、生地の全てが一斉に冷える訳ではありません。

やはり外側からゆっくりと冷えていく事になりますよね。

するとどうなるかと申しますと、外側のイースト菌は発酵が徐々に静止しはじめて、熟成モードに入って行くのですが、中心部はと言いますと、なかなか冷えてこない為にジャンジャンガスを放出してしまいます。

すると、冷凍生地よりもはるかにまだらな発酵となり、

膨らむのかよ!! 止めるのかよ!! 俺はどっちに付けばいいんだよ!!!

みたいに生地の内部で喧嘩がはじま・・・・・・るかどうかは知りませんが、とにかく不安定な生地となってしまうのです。

ですから、極力生地そのものの温度を、活動が活発に行われない低温域に捏ね上げると言う事が大切になってくる訳です。


おいおい、でもうちの店では別に普通の生地を冷蔵したり冷凍したりして使用しているけど、何の問題もないよ・・・・

そう、問題???と言えるようなものではないかもせれません。

なぜならそれは、今日冷凍して明日、あさってには使用してしまう程度の生地なら、何の心配もいらないのです。

と言うよりも、それは冷凍生地ではありませんね。

生地を短期間、しかも一時的に冷凍保存や冷蔵保存しているだけで、数か月発酵力を維持出来る冷凍生地とは、また別の考え方になるのです。

ですので、ご家庭で今日作った生地をとりあえず冷蔵庫へしまっておいて、明日成形してパンを作るというような場合には、特に捏ね上げ温度にこだわる必要はありません。

ただし、それはそれで別の理論が存在しますので、それは別の機会に説明したいと思いますが・・・・

自家製で冷凍生地を作っているお店の場合は、どのみち大量に作り貯め出来るような場所は無いはずです。

その様な場合は、特に捏ね上げ温度にこだわらなくても、数日なら問題は無いでしょう。

ただし、二日目より三日目、三日目より四日目の生地の方が、膨らみが悪いと言う事は体験済みだと思われます。

冷蔵生地となると更に発酵力は日に日に衰えていくはずです。

ですので、これらの生地を自家製で作る場合は、どれくらいの期間冷凍なり冷蔵なりをするのかを見極めてから、捏ね上げ温度を設定しなければならないのです。

また、捏ね上げ温度だけではありません。

冷凍障害にあうのは、イースト菌だけではなく、小麦粉もそうなのです。

ですので、冷凍期間が長くなるようなら、イースト菌も増量が必要でしょうし、小麦粉も最強力粉をブレンドするなりしなければならなくなるでしょう。

どんなに捏ね上げ温度を低くして、イースト菌の目覚めを止めたとしても、イースト菌と言うのは冷凍庫の中でも、少しずつですが活動しているからなのです。

この、冷凍生地や冷蔵生地というものには、実に多くの理論と手法が存在しています。

それらをうまく活用する事で、少ない営業時間に集中して商品を完成させる事が出来たりします。

普通にパンを作ると言う事も、もちろん難しいことがたくさんある訳ですが、様々な、いわゆる発酵のコントロールを身につける事で、パン作りの世界は無限に広がりを見せてくれると感じています。

ただ、それをここで触れる事は残念ながら出来ませんが・・・・


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