ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

ハースブレッドを美しく焼くにはホイロに細心の注意を

誠に残念なクープの画像が良く届きます。

ハースブレッドと一言で言っても、様々な種類とレシピが存在する訳ですが、その他のソフトなパンと大きく違う点と言えば、やはりクープが鮮やかに映える、パリッとした表皮が特徴であると言えると思います。

生地を天板に乗せずに直接焼けば、そのすべてが直焼きパンであると言えなくはないのですが、基本的には直焼きされるハースブレッドと言うものの配合は、砂糖や油脂が控えめで、よりフランスパンに近いものが多いと思われます。

つまり、菓子パンなどのソフトなパンに比べると、ハースブレッドというのはとてもシンプルな配合の物が多いと言う事になります。

そして、直焼きする意味は???と言いますと、やはり香ばしさを強調したいと言う事であり、副材料の美味しさではなく小麦粉の風味を前面に出したいパンだからこそ直に焼いて香りを出したい訳ですね。

そんなシンプルな配合のハースブレッドというのは、シンプルであるがゆえの難しさがあります。

ミキシングしかり、成形しかり、生地の取り扱い全般において、リッチな配合のパンに比べてかなり気を使わなければならないでしょう。

その中で特に気を付けなければならないのがホイロ、つまり温度湿度の管理と言う事になろうかと思います。

ちょっとこれをご覧ください。

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生地重量500グラムのハースブレッドです。

これをクープしていきます。

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そして焼き上がりがこちらです。

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ハースブレッドをよく作ると言う方ならご存知だと思いますが、生地重量が多くなればなるほど、生地はとてもつぶれやすくなります。

つまり、自らの体重を支えきれなくなってしまう訳ですね。

それはなぜかと言いますと、そもそもパン生地と言うのはとても柔らかいものですよね。

いくら張りのある成形をしたからと言って、焼いたパンとは違い、生地の状態ではとてもダメージに弱いことは誰にでも解る事ですよね。

ちょっと指で押したら、そのままへこんでしまうほどの敏感な表皮になっているはずです。

ですから、最終発酵の後にクープを入れ、さらにそれをオーブンの中に入れるまでの間、けしてダメージを与えてはならない訳です。

色々なパンを同じ設備で作っているパン屋さんが、ハースブレッドだけがどうしても綺麗に焼けないという相談を良く受けますが、それはすべて同じホイロで発酵させているからにほかなりません。

これも確実にどなたにもお話ししている事ですが、パン屋さんのホイロは全般的に温度湿度が高過ぎるのです。

少しでも早く発酵させたいと言う気持ちはもちろん理解出来ます。

そして、それでも菓子パン類ならば高温多湿でも特に問題は無いと言えます。

しかしながら、ハースブレッドだけはそうはいかないのです。

高温多湿な環境で発酵させられた生地は、生地温そのものは26℃前後のはずなのですが、表面だけは35℃以上の温度にさらされている事になります。

その温度差は約10℃にもなります。

すると、中心部と表皮のあたりでは、生地の膨らみ方が大幅に違ってきます。

中心部は余力を残したままオーブンに入りますが、表皮部はかなり発酵力を使い果たした状態でオーブンに入る事になります。

するとどうなるか????

完全にアンバランスな窯伸びになりますよね。

しかも、クープは表皮に入れるものなので、最大限に膨らんでしまった気泡だらけの表皮に、ナイフを入れた途端にしぼんでしまう事になります。

クープを入れる際に、ナイフに生地がまとわりつくようでは、それは温度湿度が高いと言う事になるのです。

もちろん全体的に発酵オーバーになってしまった場合も同じ事が言えると思います。

ですから、クープを美しくしたいのであれば、クープの技術よりもまずホイロの温度湿度を抑えなけらばなりません。

そして、やや発酵状態が若いうちにクープを入れるのがコツになると思います。

上部の画像を見ても解るように、クープを入れた後も生地が潰れてはいませんね。

ハースブレッドで一番失敗が多いのは、高温多湿で表皮がベトベトになった状態でクープを入れ、すっかり全体をつぶしまくってからオーブンに入れているという点なのです。

ハースブレッドのホイロ温度は、高くても30℃前後にしなければなりません。

生地の温度そのものと、あまり違わない温度にすることが最大のコツとなるのです。

ではこれが仮に、低過ぎた場合はどうなるでしょう?

と言っても、誰も低くする人はいないと思いますが、連続した製造段階ではどうしても様々なパンの発酵が同時に完成してしまうという状況が発生したりします。

そんな時は、極端な話では一時的に冷蔵庫へ入れるなどという場合もあるでしょう。

このような状況では、当然生地は乾いてしまい、表皮はガサガサになってしまうわけですが、その後に表面を少し濡らし、ビニールをかけておけば、また程良い表皮に戻ります。

つまり、高温多湿では完全に上手くいかないのに比べて、温度が低い場合の方が比較的融通がきくと言う事になります。

ハースブレッドのホイロは、とにかく低めに設定し、状況に合わせて焼く直前に温度を上げるなどの工夫をすることで、クープの鮮やかさは約束されるでしょう。

いずれにしても、温度湿度の管理が全てのカギを握っていると言っても過言ではないと思います。

しかし、実際にはそんな悠長な事はしていられない・・・・・的な話を良く聞きます。

結論から言えば、ならば作らなければ良い・・・と言いたいところですが、簡単にあきらめないでほしいのです。

ハースブレッドは、生地の持つ自らの温度で発酵して行くのが最もベストな発酵なのです。

と言う事は、ホイロでなくても、風をシャットアウトできる入れ物さえあれば大丈夫なのです。

家庭であれば食器棚などでも大丈夫ですし、パン屋さんならアウトレットで洋服ダンスでも買ってきて代用すればいいのです。

全面がビニールで出来ている洋服掛けがありますよね。

あの中に靴の下足棚などを入れて代用している方もいらっしゃいます。

夏はほぼそのままホイロとして使えますが、冬場はさすがにお湯を入れたボールを置いておく位の気は使わないといけませんが、とにかく工夫次第でどうにでもなります。

この場合は、温度は自らの温度と外気温によって決まってきますので、気を使うのは湿度ですね。

生地が乾かないように工夫する事。

ただその一点に注意して下さい。

それが面倒だと言う方は、残念ですがあきらめて下さい。

フランスパンをたくさん作る有名店では、よく木製のホイロを使っています。

洋服ダンスを引っ張ると、バゲットがずら~っと並んでいる・・・と言うような感じです。

スチームをガンガン使うパン屋さんの工房は、常に湿度が保たれています。

そんな工房では、木製の箱でも立派なホイロになるのですが、昔と違って現代ではエアコンの性能がとても進化していますので、その様な工房ではやはり生地が乾いてしまうと言う事もあると思います。

これから木箱を準備するのであれば、是非お湯を入れられるスペースを下部に作っておく事をお勧めします。

冬場は大変重宝しますよ(^_-)-☆

木の材質はどうか?

ビニールと木製ではどちらが良いのか??

と言うような事は、あまり気にする必要はありません。

生地が乾かず濡れずにいれる環境さえ作れれば良いのです。

ハースブレッドが売れ筋になると、客単価が上がり、お店の陳列風景が専門的になります。

そして何より原価率が下がりますよね。

パン屋はパン生地を売る工夫をした方が、絶対に儲かります。

具材にばかりお金をかけるのはやめて・・・・・・

おっと、問屋さんに怒られるのでそれには触れないでおこう(ー_ー)!!

3 Comments

ニモ says..."パウンドケーキにつきまして"
しずかな朝さま

はじめまして。

記事と関連のないコメントで大変申し訳ありませんが、
パウンドケーキにつきまして、質問させていただきたく、
よろしくお願いいたします。

パウンドケーキを、シュガーバッター法、フラワーバッター法と、
パウンドケーキとはいえないかも知れませんが、バターの替わりにオイルを使って、
スポンジケーキの工程でつくることもあるのですが、
同じ資材を同じ量使ったものであれば、どの製法でつくっても、
日持ちは同じと考えてよいのでしょうか?
また、風味が落ちる時間も同じでしょうか?

どうぞよろしくお願いいたします。


2012.08.14 10:34 | URL | #SVUff9GE [edit]
しずかな朝 says..."ニモさん、コメントありがとうございます。"
そうですね、風味の観点から言うと、一番風味を損ないやすいのがバターだと思います。

なぜなら、酸化しやすく香料があまり使われていないからです。

マーガリンは必ず香料が使われていますから、風味は比較的持つと思われます。

そしてオイルですが、これはオリーブオイルやサラダ油だと判断してお話しすると、バターやマーガリンなどの固形油脂に比べると、そもそもが酸化しにくい液状油であり、常温保存品なので温度にも鈍感ですよね。

と言う事は、オイルで作ったパウンドケーキは、味や品質はともかくとして、日持ちや風味の劣化に対しては、一定の効果が期待できると考えられます。

ただし、だからと言って凄く日持ちする訳ではありませんよね(ー_ー)!!

その違いは良い所で二日程度の物でしょう。

つまり、何で作っても、そう大きくは変わらないと言う事です。

パウンドケーキのような水分の少ない菓子は、作ったらすぐに冷凍保存がお勧めです。

一年位は平気で持ちますし、まず味は落ちません。

日持ちを考えずに味を第一に考えて原材料を選定し、作ったらすぐに冷凍。

どうぞお試しくださいね(^0_0^)
2012.08.15 03:40 | URL | #- [edit]
ニモ says..."ご教示くださいましてありがとうございます!"
しずかな朝さま

ご教示くださいまして大変ありがとうございました!

>マーガリンは必ず香料が使われていますから、風味は比較的持つと思われます。

マーガリンにはそういう長所や利点があるのですね。
これからは状況に応じて、例えば人さまに差し上げる場合いつ食べるか把握できませんし
(次回から「食べきれない分は冷凍しておいてね」と一言添えます!)、
最近はバターが高いので、マーガリンでもつくってみようと思います。

>オイルで作ったパウンドケーキは、味や品質はともかくとして、日持ちや風味の劣化に対しては、一定の効果が期待できると考えられます。

オイルはオリーブオイルを使っています。
説明不足ですみませんでした。夫の中性脂肪値が高いため、
バターを使わずにつくりたくて。私はバターが大好きなのですが。。。

パウンドケーキというよりはカステラのニセモノ(苦笑)みたいでちとビミョーですが、
配合を見直しつつ工程の技術を上げて、会心のオリーブオイルのパウンドケーキが焼けるように
頑張りたいと思います!

大変厚かましいのですが。。。またどうぞよろしくお願いいたします。
2012.08.15 09:37 | URL | #SVUff9GE [edit]

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