ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

美味しいパンを作るに為には・・・・

美味しさの定義や、良いパンの定義というものは、あって無いようなものです。

より美味しいパンを作りたい・・・・

より美しく、素晴らしいパンを完成させたい・・・・

作り手であれば、恐らく誰もがこの様に考えながら仕事をしている・・・・

・・・と、思いたいところですが、どうやらそうとばかりは言えない気がします。

これはあくまで、私個人の気持ちの問題かもしれませんが、私はどうしても一緒に仕事をしていて、つまり一緒にパンを作っている時に、許せない相手の行動と言うものがあります。

それは、生地を雑に扱う人です。

分割した生地がぐしゃぐしゃ・・・・

丸めた生地がビリビリでバラバラ・・・・

伸ばした生地の太さがめちゃくちゃ・・・・

重量がいい加減・・・・

成形が一つも揃っていない・・・・などなど、

どうしてもこれだけは、納得がいきません。

と言うよりも、黙って見過ごすことがどうしても出来ないのです。

そんな人の中には、素晴らしい人格者の方もいます。

もちろん学歴があったり、性格が良かったり、一生懸命だったり、私がどうこう言えるような人達ではない事も多々あります。

しかし、例えそれがどのような方であろうとなかろうと、パン生地を粗末に扱う人だけは、どうしても許せないのです。

この年になるまでには、それはそれは多くの方々と一緒にパン生地を分割したり、共に成形したりしてきた訳ですが、納得のいくような生地の取り扱いをしてくれた方はと言うと、皆無に等しいと言えます。

ほとんどの場合、どうしてこの人はパンを作る仕事を選んだのだろう????

そう考えたくなるような人がとても多かったと言えます。

はっきり言えば、多少の雑な生地取り扱いをしたからと言って、パンにならない訳では当然ありませんし、食べられない位まずくなる訳でもないでしょう。

それは解っています。

しかし、明らかに完成品に違いが出ます。

私が思うに、そのような方々と言うのは、まず完成品を気にしていません。

パンを食べないと言う事ではありません。

自分の作ったパンを、皆さんよく食べていたと思います。

そんな時私はいつも心の中でこう思ってしまいます。

この人達は、今食べているパンの完成度レベルが低いと言う事を認識した上で食べているのだろうか・・・????

いつもに比べてボリューム感に欠けるとか、硬い部分があるとか、クラストが厚いとか薄いとか、風味がどうだとかと、考えながら食べているのだろうか??

それともまったくそのあたりには興味がないのか???

良く私は質問したりしました。

今日の出来栄えはどう???

すると、ほとんどの場合答えはこうでした。

う~ん、やっぱりベーコンとチーズは合うね~

みたいな返答です。

そうです、具材の美味しさには好みがあるようなのですが、肝心のパン生地の善し悪しには触れてはこないのです。

数年の間は、そのうち上手くなるだろう・・・・という期待を込めてじっと待ちます。

その間には、生地の取り扱いの大切さを切々と説いている事は言うまでもありません。

しかし、まず好転は望めませんでした。

逆に、ごく少数でしたが、実に滑らかに生地を扱う人というのも存在します。

それはそうですよね(*^_^*) それが本来だと思います。

その様な人達というのは、生地が柔らかければそれなりに、過発酵気味になってしまったような場合も、自分の判断で取り扱い方を変えてしまいます。

分割する際は生地の切り方からして綺麗ですし、当然丸めはとても綺麗です。

そして大抵の場合、伸ばしたり包んだり、どのような成形をするにしても、黙っていても綺麗に作り上げてしまいます。

生地がいつもと少しでも違う場合は、必ず今日の対処法を確認してきますし、やはり何かを考えながらやっているように感じます。

果たして、これらの違いは才能の違いなのでしょうか?

それともたまたま向いていない、不得意な分野と言う事なのでしょうか?

私はとても字が下手なのですが、これはどうしても治りません。

と言うよりも、真剣に治す気が無いと言った方が正しいかもしれません。

しかしもし、私が字を書く仕事に付いたとしたら、それでもこのままなのでしょうか?

それとも一生懸命努力して、上手くなれるものなのでしょうか?

答えは、人それぞれですよね。

変わる人もいれば変わらない人も相変わらずいる・・・・

今回なぜこんな事を書いているのかと申しますと、たまたま両極端な人との出会いがあったからなのです。

一人は、とても高名で、かつ有名な有名店のオーナー。

その人の生地の取り扱いは、最悪でした。

もう一人は一般の個人店の店主。

正に神業と思わんばかりの手さばきでした。

そして過去を振り返ると、私の周りにいらっしゃったお偉い先生方というのも、当時若造であった私から見ても、見れた物では無いような成形しかできない方がたくさんいらっしゃいました。

逆に、いつでも見本とさせてもらっていたのは、あくまで一職人である先輩でした。

良いパンとは??? 偉くなるには???? 有名になるとは????

当時は随分と悩み、迷いました。

何が正しくて、誰が素晴らしいのか????

それももちろん、個人個人の考え方によるのだと思いますが、現在でも、当時教わった先輩の手さばきだけは忘れる事が出来ません。

あの生地がスルッ~と伸びていく感じ・・・・

そしてプリンと張りがある感じ・・・・

美しい並べ方と、綺麗に揃った完成品達・・・・・

そのソフト感と色つやの良さ・・・・

その先輩の完成度の高いパンに魅せられて数十年、今日の私もただただ美しいパンを作りたいと言う思いだけで仕事をしています。

色々なこだわりが皆様にもおありでしょう。

酵母にこだわる・・・小麦粉にこだわる・・・製法にこだわる・・・

原材料にこだわる・・・品数にこだわる・・・無添加にこだわる・・・

それらのこだわりを、最大限に完成品として表現するに為には、最良の生地状態を掴む事と、最良の取り扱い方をしてあげる事以外にはないのではないかと私は思います。

生地の感触で、その日の生地状態が解る。

そして、今日も最高のパンになる為の手伝いを、自らの手で行う幸せ。

そんな生地との語らいを楽しむパン作りを、忘れたくは無いですね。

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