ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

レシピの数は星の数????

こんな質問をいただきました。

・・・・特に最近参加した講習会のレシピなどでは、小数点以下の数字がたくさん並んでいて非常に憶えにくい印象を持ちました。

考えてみると今までも様々な講習会に参加してきましたが、やはりこの手のレシピが多かったような気がしています。 
レシピのパーセントが細かいほど、専門的な感じがするのは私だけでしょうか?

お気に入りのレシピも実に細かいパーセント表記のものが多く、もちろんきちんと計量して作ってはいますが、時々こんなに細かいのにはどのような訳があるのだろうかと考えてしまう事があります。

しかしそれは素人考えというものなのでしょうね。

プロの域に到達しなければ解らない世界があるのだろうなと・・・・・



なるほどなるほど・・・・・プロの域か~

この質問の内容はこうです。

つまり、強力粉が83.5%とか、バターが6.2%というような小数点以下まで表示された細かいレシピに対して、その意図を理解したいということなのでしょう。

そうですね、確かに実に細かいレシピが存在しますし、その数は作る人の数だけ・・・そしてまさに星の数ほどあるようにも見えます。

その細かさに違いはあるのか???

そしてその意図は、果たして本当に完成品に表れるものなのか???

これは案外すごい質問なのかもしれませんね~

私もいわゆる修業時代ととらえていたあの頃、知りたくて知りたくて、ようやく知り得た有名店のレシピに胸を踊らされていた事を懐かしく思いだします。

門外不出のレシピを、ようやく見せていただいた時のあの感動は、何にも例え難い崇高な時間でありました。

もちろんそのレシピも、相当細かかったような気がしますが、当時はそんな事よりも、そのレシピにたどり着くまでの自分の頑張りに自ら賞賛していましたね。

お店のレシピを見せていただけるようになるまでには、いったい何回通いつめて、さらに人間関係を深め、確実に信用されるまではひたすら働き、そしてようやく見せていただける時が来る・・・・

講習会でお金を払って習うのとは違う、自分が求めて求めてどうしても知りたいあのパンのレシピ・・・・

人それぞれレシピに対する考え方は違うと思いますが、最終的にはそのレシピに対する ”思い ”なのではないでしょうか。

そして、その細かさに本当に意味があるのかどうかも、きっと作り手の思いによるのだと思うのです。

人が何と言おうと、自分はこの微妙なバランスを貫きたいのだ・・・・

そんな気質の方は多いと思いますよ、この世界では特に・・・・

しかしここで、少しだけ冷静になって考えてみましょうか。

例えば小麦粉ですが、数種類をブレンドして使っている人がたくさんいます。

問題はその内容ですが、よくこんなレシピを目にします。


ハーベスト   72.3% (たぶん強力粉)

スワッソン   15.2% (たぶん中力粉)

リスドオル   12.5% (たぶん準強力粉)


この場合、全てを足すと100%になることだけは、どの職人でも同じ事だと思うのですが、いったい小数点以下の細かい配分が必要なのかどうかと言う事になると、もうこれは本人にしか理解する事が出来ないこだわりなのだとしか思えません。

意地悪で言うとしたら、ハーベストを73%にして、後の二つの小数点以下を無くしたら、その違いが本人に果たして解るのか??

それは本人にしか解らない事で、違いが解る人もきっといるのだと思います。

私は底意地が悪いので、当時よく嫌いな先輩の言いつけにそむいて、勝手に配合を変えてクリームを作ったりソースを作ったりしていましたが、先輩はそれを知らずにいつも自慢げにレシピを語っていましたね。

では、おまえはどうなのだと言われれば、私には到底そのような微妙な違いは見抜けませんし、だいたい微妙なレシピも作りません。

何にこだわるかは職人によって違いますから、このような表記のレシピがあっても全く問題はありませんし、それを本人が本当に理解しているのかどうかも、そもそも論外でしょう。

一方、塩などは逆に小数点以下というのはあまり御見受けしません。

本来なら、味に影響のある塩こそもっと細かいこだわりがあっても良さそうなものだと思うのですが、塩の場合はどうやら量というよりも、どのような塩を使うかの方にこだわっている方が多いのではないでしょうか。

また、油脂や卵なども非常に細かい表記にしているレシピがあります。

しかし、さすがにこれにはあまり意味があるとは思えません。

中華料理のシェフが、油をほんの数滴増減させることにこだわるとはとても思えませんし、卵かけごはんの卵を、ほんの少しだけスプーンで取ってから食べたとしても、卵かけごはんの美味しさに変わりは無いと思うからです。

また、水の表記も実に細かいものがありますが、これは何の意味も持たないと思います。

それは、水は小麦粉の特性により、また地域により、季節により、設備により、技術力により、大きく変化するものだからです。

小麦粉、塩、油脂、卵、水、それぞれにパンの骨格をになうもの、味をつけるもの、旨味を増す為のもの、食感に影響を与えるもの等々、皆それぞれに役割を持っています。

そしてその総合力が結集して、パンが完成するのだと私は思います。

ちなみに、確かに星の数ほどのレシピを今までに見てきましたが、それらは現在手元にはありません。

すべて捨ててしまいました。

なぜなら、有名店のレシピを田舎で作っても売れませんし、その逆もまたしかりだからです。

結局は今現在の地域特性やら、地元の素材やら、設備や技術などを総合的にとらえて、その中でベストであろうと思われるレシピを作ることになりますから、過去のレシピはあまり参考にはならないというのが私の判断なのです。

あれだけ苦労して手に入れてきたレシピ、あの頃の思い出が詰まったレシピ、私を育ててくれたレシピを私は全て捨てました。

しかし、それは思い出を捨てた訳ではありません。

経験もそうです。

レシピの書かれた紙は捨てましたが、その中身は現在の私の骨格となって、これからもおおいにお世話になる事でしょう。

レシピの数だけ、それを作った人の思いと言うものがある・・・・

その思いに育てられて現在の自分があるのだと、先人に手を合わせたい気持ちでいっぱいです。

これからもおごらずに、たくさんのレシピを作っていきたい・・・・

先人達がそうであったように・・・・・


7 Comments

チョコメロン says...""
今まで悶々としていた事に見事にすっきりした答えを頂きました。
ありがとうございました。

パン作りって全く同じ材料、レシピを使っても作り手によって全く別物になりますよね。
本当に奥が深いと思います。
2013.01.15 00:50 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."チョコメロンさん、コメントありがとうございます。"
ということは、ヘルプより役に立ったということでしょうか(*^_^*)

なにより質問された方に感謝ですね(^_-)-☆

そして、作り手によって全く別のものになるというのは、まさにその通りだと思います。

どうか美しいパンを、これからも作って下さいね。
2013.01.16 17:10 | URL | #- [edit]
hiro says...""
始めまして。なんとなくのぞいて読んでいて、おお~~きくうなずいでしまいました。

日本のパン屋さんで少し働き、イタリアではイタリア料理日本食など、料理で生計を立てていました。

日本ではお菓子作りなどは本当に細かくて、間違ったら出来ないような印象を受けるのですが、イタリアではかなり大雑把。
イタリア人の作業を横目で眺めて、あーあ、こりゃ失敗すると日本人精神で思っていた最初の頃。ビックリなのはいい加減でも大丈夫なんですね、ちゃんとお菓子やらパンやら出来てしまう。
それこそ、経験により素材の状態なんかもちゃんと把握でき、それを補える技術があるので、いい加減でも良いみたいです。

重要なのは素材たちに声を掛けて、ご機嫌伺いながらやるってことですよねきっと。

尊敬する若いシェフにどうしたら料理が出来るようになるか何か良い本が無いかと聞いたところ、素材の勉強をする為に植物や動物の図鑑を買えと言われました。未だにその事を忘れないようにしています。

食いしん坊の私ゆえ、おいしい物食べるのって楽しいですね。また寄らせて頂きま~~す。
2013.01.16 21:51 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."hiroさん、コメントありがとうございます。"
かく言うわたくしも、料理は超テキトーです。

要は、お金をもらうのかどうか・・・・にもよるのかもしれませんね(^_-)-☆

ちなみに、ドイツからの質問者様もアメリカからの質問者様もスイスからの質問者様も、皆様地元のいい加減さには相当まいっていると言われていました。

お国柄というのは、実に面白いですね。

でもやはり、パンは日本に限るとつくづく思う次第です。


2013.01.17 17:57 | URL | #- [edit]
yooochann says..."角食について"
はじめまして。
独学でパン作りを楽しんでいます。

最近こちらにたどり着いて勉強させてもらっています。

私は食パンのホワイトラインで悩んでいます。
全然ラインが出来ません。
それにいつも角に空洞が出来ます。
悪い時は生地と生地の間の角にも・・・

生地が悪い?成形の仕方?2次発酵上げすぎ?焼成温度?・・・
といろいろ悩んで迷路から出られなくなっています。

綺麗なラインの食パンに憧れてがんばってはいるのですが・・・

粉はスーパーカメリヤです。
ニーダーで捏ねています。
パン型はフッ素加工のものを使っています。

アドバイスをよろしくお願いします。
2013.01.28 11:00 | URL | #dUDmRd1I [edit]
しずかな朝 says..."yooochannさん、コメントありがとうございます。"
これだけの情報では確実な事は言えませんが、部屋つながりで、解る範囲でお答えしましょう。

ホワイトラインが出ないのは、生地に力が無いからです。

捏ねが足りないか、あるいはオーバーの可能性もあります。

そして、イースト量と捏ね上げ温度のバランスも悪いと思います。

しかし一番問題なのは、恐らく分割あるいはベンチタイムで生地が冷えている事が原因でしょう。

部屋は暖かくなっていますか?

最終発酵を終えた生地が、やや表面が乾燥していて、プリプリしていないと、ホワイトラインはでません。

焼成前の段階で生地が濡れていたり、ベターっとしていたり、山がこんもりとしていない場合は、生地が冷えていると考えられます。

室温を上げる・イーストを若干増やしてみる・捏ね上げ温度を少し上げてみる

そんな所でしょうか。
2013.01.28 17:07 | URL | #- [edit]
yooochann says...""
アドバイスありがとうございます。
思い当たることばかり・・・
ひとつひとつ改良して原因を見つけます。

これからもよろしくお願いします。
2013.01.29 09:05 | URL | #dUDmRd1I [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://sizuasa.blog44.fc2.com/tb.php/320-6e73a869
該当の記事は見つかりませんでした。