ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

食パンの穴開き、あなたは解決出来ますか?

驚く事に、前回記事を書いてから今日まで約一週間、

何とその間に、見事に食パンに穴が開きました・・・・

油断していました・・・・正直な所・・・

確かに、なんとなく焼成後の肌の感じがいつもとは違うとは思っていたのです。

しかし、生地状態や温度管理にまったく問題はなかった為に、単に季節特有の乾燥が原因なんだろう・・・・程度に考えていました。

全て解っているつもりでいる・・・油断が生んだ結果に、久しぶりに緊張感が走りました。

師匠にピンタをもらった時のような、あのすがすがしい緊張感が・・・・


今回は、様々なシーンで考えられる食パンの穴開きの原因はどこにあるのか・・・について述べていきたいと思います。

まずはレシピとミキシングの段階を考えてみましょう。

食パンに穴が開くということは、その多くは焼成中に起こるもので、生地が素直に伸びていかない状態であり、一部が全部と行動を共にしない状態であり、いずれにしても焼成中の膨らみ方に原因があります。

と言う事を考えると、やはり一番レシピで関係してくるのがイーストの量と小麦粉の質と言う事になります。

イーストの量が比較的多く、発酵時間が短い簡便法でパンを作る場合、穴はとても開きやすくなります。

捏ね上げから分割までが40分以内の製法がこれにあたります。

当然ながら、改良剤などの配合が多いのもそれにあたります。

そもそも、捏ね上げから40分程度で生地が充分膨らんでいるような状態の配合は、ほぼイーストの量が多過ぎると言えます。

それが良いか悪いかではなく、穴はとても開きやすくなると言う意味です。

さらに、小麦粉の質と言うのは、そもそも食パンのようなキメの細かい気泡を作るのに適しているか、また適したミキシングが出来ているかに関係があります。

一般的に、強力粉ないしは最強力粉などの力の強い小麦粉を使用した場合、ミキシングは充分に行わないと、その時点で穴開きの大きな原因になりますし、逆に国内産小麦などのやや力の弱い小麦粉を充分にミキシングし過ぎると、それも穴開きの原因となるのです。

ただ単に、ミキシングを時間で終えているような場合、もう少し捏ねてみる、あるいは少し早めに終了してみるなど、生地の状態を良く把握しながら作業する事で、思わぬ良い結果が出る事があります。

また、配合中の水の量というのも、実は大いに関係があります。

ミキシングの際の摩擦も、分割成形時などの生地へのダメージも、生地が柔らかければ柔らかいほど軽減する事が出来ます。

ミキシング時の過度な温度上昇は、それだけで即穴開きの直接原因となりうるからです。

その他、常に申し上げているのが捏ね上げ温度や保管場所の温度ですが、これが高いというだけで、それも直に穴開きの原因となります。

通常配合の食パンでは、捏ね上げ温度が30℃を超えると、穴開きの可能性は極端に上がります。

逆に、24℃以下になっても同じ事が言えます。

高配合の場合は、それぞれにもう少しだけゆとりが生まれるものの、フランス系の食パンの場合は、ほんの少しの温度の違いで、明らかに穴開きの可能性は高くなります。

ここまでにご紹介した事例によってパンに穴が開いた場合、それは単に穴が開いてしまった~ では済みません。

どう済まないのかと言いますと、そもそも品質的に問題があると言う事になるからです。

つまり、美味しいパンでは無いということです。

パンに穴が開くということは、生地が発する悲鳴のようなものです。

最終的に見える形で、悲痛の叫びを伝えているに過ぎないのです。

そうでなくても、ミキサーで痛めつけられて、成形で痛めつけられ、おまけに乾燥と高温でお肌カサカサ・・・

もういや・・・こんな生活・・・・の結果が穴開きという訴えに出てしまうのです。

ですから、様々なシーンで生地の本音を聞かなければなりません。

この捏ね方で良いのか、この温度で良いのか、この成形で満足なのか、本当はもっとゆっくり膨らみたいのではないか、そんな気持ちで一から生地と向き合う事でしか、穴開きの原因はつかめないのです。

本日の生地の捏ね上がり状態は、いつもよりやや硬い感じになり、温度も2℃いつもより高くなってしまった・・・・

と言う事は、保管場所の温度はいつもよりもやや低くし、発酵時間もやや短縮し、作業は生地を傷めつけないよう丁寧に行おう。

そして、捏ね上げ温度が高いと言う事は、発酵が過度に進む事になるのだから、終始乾燥には充分注意しよう・・・・

と言うように、生地状態が見極められれば、修正は可能なのです。

問題は、今のレシピとミキシングが本当にあっているのか、生地の捏ね上がり状態をしっかりと見極めようという気持ちがあるかどうかが、とても大切なのだとお考えください。


次に、分割・成形での注意点を述べておきます。

ここで一番穴開きの原因を作ってしまう可能性があるのが、乾燥と手粉です。

取り扱う生地の量が多ければ多いほど、生地の表面は乾燥してきます。

この乾燥した生地が内側に入るなどして丸められた場合、その部分の生地同士の結着が上手くいかずに穴開きの原因となることがあります。

また、異常なまでに手粉を多く使う人というのがいます。

この際は、乾燥と理屈はまったく同じで、生地で手粉を折り込んでいるようなものですから、非常に生地の結着が悪くなり、どんなに良い生地状態であっても、穴開きはまぬがれないでしょう。

また、分割成形のスピードと仕込み量があっていない場合も、乾燥及び過発酵を生む原因となります。

独りで作業しなければならないのに、仕込む量が多く、分割に30分もかかってしまうとか、成形にも更に時間がかかると言う事が実際にはあると思われます。

そのように、様々な都合により生地に無理をさせると言う事は、多かれ少なかれどの職場でもある事だと思います。

パン作りは綺麗事ではできないんだよ!!!!

そんな意見も、過去に何度も聞かされましたしね(~_~;)

しかし最終的には、綺麗事で済まないと言う考え方で綺麗に作る事は間違いなく出来ないですけど・・・

生地が乾燥して表面がカサカサになる・・・・

これほど身の毛もよだつ現象はないと私は思うのですが、そんなことはお構いなしの方々が多いのも事実です。

ですが、その様なお店からも、どうして穴が開くのかという質問は絶えません。

むしろ、そのようなお店からの方が多いかもしれません。

それはそうですよね、自分達で原因を作っておきながら、解決は人に任せようと言うのですから。

このような場合は、いくら原因が解っても、けして作業を見直そうとはしてくれません。

それ以外の原因は無いと解ると、だったらいい・・・そんなスタンスなのです。

自分達の気に入るアドバイスは受けるが、それが自らへの指摘になると、とたんに態度を変えるパターンですね。

アドバイスが無駄になるとても嫌なケースです。

いかなる場合も、自らに全ての原因があるのだという謙虚な気持ちが無い場合、アドバイスは何の効果も生まないと私は思います。

全ての原因究明は、どこかからやってくるものではなく、自らの考え方の中にあるのだと言う事を理解している人にのみ、アドバイスは生きるのだと思うのです。

手粉についてもう少し・・・・

手粉という小麦粉があるわけではありませんよ、分割成形時に生地がくっつかないように使用する粉の事を手粉と呼んでいるだけです。

この手粉には、必ず強力粉かそれ以上に強い粉を使って下さい。

言い方を変えると、粒度が粗い小麦粉を使って欲しいのです。

一見、粒が粗いのはどうかと考えがちですが、粒度が細かい、例えば中力粉や更に細かい薄力粉と言うのは、すぐに粉同士が固まってしまいます。

特に湿度を加えると、すぐに塊が出来てしまうという特性があります。

だから、お菓子を作る際には、必ず薄力粉はふるってから使うのです。

ふるわなくても、または多少湿度があっても、いつでもサラサラとしているのが粒度の粗い強力粉ですので、生地の取り扱いの際には、必ず強力粉以上を使って下さい。

また、生地保管用の番重などにショートニングやサラダ油を塗っている方も多いと思いますが、あまり多く塗るとその部分が生地の中に入り込み、最後まで残ってしまって穴開きの原因を作ると言う事もありますので、塗り過ぎには充分注意してほしいと思います。


では最後に、オーブンで注意する事を述べておきましょう。

食パンと言うのは、一般的に型に蓋をする角食パンと、蓋をしない山形食パンというのがあります。

穴が開きやすいのは、圧倒的に山形食パンの方になるのですが、それは蓋をしている角食パンと言うのは、型の中で生地が四方から押し合いへし合いしますので、適度に締め付けられて穴は開きにくくなるのに対し、山型の場合は上部へはフリーとなりますので、伸び過ぎる事で穴が出来てしまうと言う事があるのです。

したがいまして、生地重量に合わせた大きさになるようにホイロを調整して焼かないと、大きくなり過ぎることにより穴が開くと言う事になります。

穴が開かない場合でも、全体的に気泡が粗くなる事になりますから、注意しなければなりません。

ならば、生地重量を増やせば問題ないのかと言いますと、その場合は更にオーブンで伸びてしまい、余計に穴が開きやすくなるのです。

ですので、山型の食パンの場合は、生地重量は増やすことなく、ホイロを早めに焼成することが大切なのです。

また、全般的にオーブンの温度が低めの方が穴は開きやすくなります。

40分以上焼いても、蓋がとれないような状態の場合は、温度が低いと考えられます。

また、30分以内で焼けてしまう場合は、逆に少し高過ぎるかもしれません。

生地重量やご使用の型の大きさにもよりますので、穴が開くようなら今一度生地重量や焼成時間を見直してみる事も必要でしょう。

それから、食パンに限りませんが、ホイロの高温多湿によって表面がベトベトしているような温度設定では、とても穴が開きやすくなります。

温度は最高でも38℃まで、湿度は75%までとし、生地がベトベトしないように心掛けてください。

もしも、上記の温度湿度なのに、生地の表面がベタベタと光っている、あるいは小さな気泡が出来てしまっていると言うような場合は、生地の温度が低過ぎることによる現象となります。

これは、単に捏ね上げ温度が低かっただけということに限らず、分割成形やベンチタイムで生地が冷えてしまった場合もあるでしょうし、イースト菌が少ない、あるいは古い場合でも同じような現象が起こります。

このような場合は、出来る事ならホイロの温度湿度はいつもより低くし、いつもより長めに発酵をとり、焼成温度もやや低めにして下さい。

逆に、上記の温度設定なのに生地がカサカサと乾いている、あるいはブリブリとした感じで山が盛り上がっているような場合は、いずれかの段階で過発酵となった事が原因だと考えられます。

このような場合は、湿度のみ多くする、あるいは生地表面に霧吹きを噴霧しながら、早めのホイロで高温焼成を心がけてください。

ただし、どちらの場合も、間違って穴が開く事はなくとも、品質的には最低のパンとなります。

大切なのは、ホイロでその様な現象になった事を共有して、翌日には良い状態に持って行けるように工夫する事です。

食パンの穴開きに関しては、オーブンで出来る事というのはあまりありません。

つまり、ホイロに入った瞬間にほぼ善し悪しは決着が付いているということになるのです。

ですので、ホイロでの状態を見極める事で、生地の善し悪しを判断出来ると言う事になる訳です。

ホイロを出す際に、しっとりとした生地になっていることが最良となります。


また、生地を型に入れる際の、入れ方のバランスにも大きな原因がある場合があります。

特に山形のパンの場合、中央だけが大きくなるような場合はバランスが悪く、その場合中央付近に穴が開くと思います。

また、型に対して生地重量が少ない場合も穴開きが発生しやすくなります。

その他、型と蓋の間に隙間がある場合や、型が変形している場合もそうです。

その場合は、そろそろ買い換えましょう。

焼成中にオーブンを開けるのは厳禁です。

特に食パンの場合は、いかなる場合でも一度開けたら最後です。

温度設定を途中で変えるような焼き方も、穴開きの原因となる事があります。

本当に必要なのかどうか、今一度お考えください。


と言う事で、色々と簡単に説明してきましたが、あくまで一般的な事であり、ご自分のパン作りに当てはまるかどうかは解りません。

ただ、その様にして一度作業を見直す、そして自分では良かれと思ってやっていることが、実はパン生地にとってはマイナスだったのだ、だからこそ穴を開けて知らせてくれているのだと言う事に気がつくだけでも、何歩も前進した事になるのではないでしょうか。

そう思って頂けたら幸いです。

5 Comments

ナヤミング says..."難しいですね"
いつも楽しく拝見しております。今回前回はまさに日々悩んでいる穴あきだったので余計に見入ってしまいました。自分は30からパン屋に入りまだ日も浅いのですが周りの経験者のみんなはそれほど気にしてる風でもなく「そんなもんやろう」「これぐらいなら大丈夫」程度で「食べても違いわからんやろうし」とのこと。確かに自分自身食べてもその違いはわからないので言い返せないところがむなしい限りですがみなで一つ一つ気をつけて作業しない限り改善なんてできないんですね。それでもこうやって日々穴あきに真摯に?向き合ってる人もいるんだと知れただけでもやってやろうと思えます。ありがとうございます
2013.03.06 10:31 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."ナヤミングさん、コメントありがとうございます。"
やってやろうと思ってください(笑)

必ずやれますから(^_-)-☆

やろうと言う気持ちを持った時点で、すでにあなたは勝者なのだと思います。

わからんちんなんか放っておいて、自分だけ成長すれば良いのです。

周りは皆、あなたの為の足場なのです。

そこをゆうゆうと渡って、どうか皆を導ける人になって下さい。

陰ながら応援しています。


2013.03.10 16:51 | URL | #- [edit]
riu says..."へこみます"
仕事で成型をやっていますが夏場は特にパンに穴があいてしまいます。
スライスした時に穴があいていて商品にならないとよく怒られていて成型の時のガス抜きもしているし乾燥させないようにしているのに悩んでいました。

手粉の使いすぎも穴あきの原因とあったので自分ではそんなに使っていないと思いますがそれ位しか思い当たる事がないので次に成型する時に試してみようと思います。
2014.06.06 08:38 | URL | #2qaJ23q. [edit]
fa3611 says...""
最終発酵が大きいと穴あきやすいかな
2014.07.02 19:19 | URL | #- [edit]
ちーパン says..."パン穴開き"
私はパン屋8年目です。今まではそうでもなかったのですが…今年の初夏くらいから穴開きが目立ち始め…毎日悩んでいます。生地温度にも気をつけているつもりなのですが…他の人の成形時にはそんなに穴開きがなく、私の時だけ多いようです 穴開きで避けられたスライスを見ると泣きたくなります。
2014.08.10 07:35 | URL | #gKKs5mD6 [edit]

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