ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

技術力を磨く為の具体的手法とは?

誠に個人的な事ですが、まもなく新しいお店の立ち上げが始まります。

いつもの事ではあるのですが、始めるにあたっては上層部の方々や役員の方々などの、いわゆるお偉いさん方との壮絶なやり取りを経て、結局どちらの言い分が正しいのか間違っているのかは、その内容がお客様にとってどうなのか、お店の将来にとってどうなのかで判断されなければならない所を、パンの作られる現状も店舗での接客もまったく知らない方々が何故か持っている権限により、結局は大変な思いをするのはいつも現場になってしまうという実情に、とてもむなしさを憶えてしまいます。

何度会議をしても、埋まらない溝は埋まらないですね。

そこには、正論だけでは通らない、そしてまた感情やら各人の人格や物の考え方が入る事によって、尚更一つの目標に向かって共に進む・・・・というような理想には程遠い現状が待っている。

じ~つ~に~難しい・・・・解り合っていくと言う事は・・・・・

と言う事で、夏が終わるころまでは大忙しの毎日となる為、更新もとぎれとぎれになろうかと思われます。

なので、せめて今のうちに書けるだけ書いておこうなどと考えておりますが・・・・


パン作りにおいて、何が何でも身に付けなければならない技術というものはたくさんあります。

人それぞれに得意分野もあるでしょうし、自分に合った製法のパンや、このパンとは相性が良いと感じると言う場合もある事でしょう。

逆に、いつもこれだけは上手く行かないと言う事も経験済みの事だと思います。

さて、そんな技術という製パンで最も大切な手法・技法を習得するために、どのような事を日々考えながら実践していけば良いのかと言う事について、具体的に書いてみたいと思います。

まずは、皆様の興味が集中している所のレシピについてお話ししましょう。

レシピを見ながら材料を計量し、いざミキシングとなると思いますが、この時の計量は皆様どうされていますでしょうか?

パン屋さんであれば、小麦粉が2kg仕込みから3kg4kgと、キログラム単位で配合表を表にしている所が多いと思います。

家庭であれば、50gのパンが何個だから、レシピの総重量から割り出して・・・・と言う事であったり、そもそもが何個分と言うような表記の家庭用レシピが多いと思いますので、そのまま行うか、半分にしてみたり三分の一にしてみたりと言ったところでしょうか?

いずれにしても、このレシピを見ながら・・・・と言うのは、いつ卒業しようと考えていますか?

家庭ならいざ知らず、パン屋さんでレシピを見ながら生地をミキシングしているようでは、他の仕事が手に付きません。

しかし、実際には何十年経ってもレシピを見ないと計量出来ないパン屋さんはとても多いと思います。

質問すると、間違えるといけないから・・・・・と言う答えが必ず帰ってきます。

または、誰にでも解り易くする為です・・・・と言う答えも多い。

間違いだとは言いません。

ただ、とっても大きなお世話になってしまっていて、とても残念に思うだけです。

私の友人にも多いです、そんなタイプは・・・・

で、あるパンの配合を教えて欲しいと頼むと、必ずレシピファイルを見せてくれます。

つまり、頭に入ってはいないのですね。

何十年もやっているのに、どうして憶えられないのでしょうか?

それは、憶えようとしていないからに他ならないのです。

配合を表にする事を教えられた職人というのは、概ねそのまま何でもかんでも表にしてしまいます。

すると、電卓を叩かなくても一目見れば一目瞭然ですし、何より計算ミスがありません。

早くて安心・・・・みたいに思ってしまってもおかしくはありませんよね。

しかし、ここがまず間違っているのだと私は思うのです。

配合を頭で憶えている人と言うのは、原材料の配分をバランスでとらえる事が出来るのです。

捏ねている時も、分割の時も成形の時も、そして焼いている時でも、この配合バランスは頭に入っています。

すると、焼いていて何か甘い香りが強いな・・・・と感じた時には、菓子パンを焼いている時であり、なるほど、これが砂糖何%の時の香りか・・・・と言うように頭で感じる事が出来ます。

配合が頭に入っていない人は、甘い香りは菓子パンだと言う事は解ったとしても、それが砂糖何%の香りなのかは知る事が出来ませんし、作業中に配合表を確認しに行く事は、なかなか難しいと思うのです。

生地に触れている時でも、配合が頭に入っていると、この滑らかさはバターの量の違いか??

このパンとさっきのパンの油脂量は何%違うから、するとこう感触が違ってくるのか!!

と言う事に気がつく事もあれば、

このパンはさっきのパンよりコシが弱い感じがするのは、薄力粉が何%入っているからか???

と言うように、生地の感触から配合を確認する事が出来るようになるのです。

その事が生み出す効果とはいったい何でしょう??

それは、感性が育つということなのです。

計量中も、ただ書いてある通りに計量していると、感性は育ちません。

こんなに塩が入るんだ~ とか、どうしてここにスキムミルクなんだろう???

というように、いちいち考えると言う事がとても大切な事なのであり、その疑問が後々自分の技術の扉を開くカギになるのです。

とは言っても、その程度の違いだけ?・・・・だと思いますか?

だとしたらとんでもありません!!


今から数十年前の、まだ私が若造だった頃、生地を仕込んでいる先輩に良く聞いたものでした。

この配合では砂糖がこんなに入るのに、どうしてこっちはこんなに少ないんですか???

さあ~なあ~ 決まりなんじゃない??

別にもっと入れても良いんだよ!!

???????????????????????????

先輩、このフランスパンはどうして砂糖が入らないんですか??

入れても良いけど、なくても良いんだよ!!

塩だけだから味があまりないのかもしれないな~

もっと増やしてみるか~・・・・・・

そう言って確か3%位まで一時入れていましたね。

当然のことながら、ほとんど膨らんでいない麺棒のようなパンになっていましたが、先輩は味がしっかりしてきたな~とご満悦の様子でした。

その時の私は、何かとても足場の悪い場所を歩いているような、何かにつかまりたくても掴む物がないような、はたしてこらから何をどうしていけば良いのかまったく解らなくなってしまったと言う経験を持っています。

こんな人はそうはいないと思いますが、もしいたらすぐに逃げてください(笑)

真逆の話では、私が師匠に出逢ってすぐの頃、ミキサー担当のスタッフが、イーストフードを切らしてしまってどうしたら良いかを師匠に聞いていた時の事です。

別に大丈夫だから、捏ね上げ温度を2℃上げておけ、それから砂糖を1%加えろ、水もほんの少し控えろよ、後は俺が見るから・・・ちゃんと注文しておけ、アホ・・・・

かっこいい~~~~~

この人につかまっていこう・・・・・そう決心した瞬間でした。

足場がしっかりしていると、踏ん張れますよね。

つかむものがあると、それがどんなに急な坂でも、全身で登る事が出来ますよね。

それからの私は、自分でも不思議な位なんでも頭に入るようになったのです。

配合が決まっていなければパンは作れません。

それは誰でも解る事ですが、では、何故その材料をその量入れるのかを理解していますか?

または、疑問に思い調べたり質問してみたりした事がありますか?

製パン理論というのは、確かに難解な部分もあります。

しかし、それぞれの原材料がパンに与える影響を憶える事は、そう難しい事ではありません。

それでいて、そこを知っているのと知らないでいるのとでは、雲泥の差なのです。

なぜ砂糖が増えると塩を減らすのか??

イーストの量が違うのは何故なのか??

牛乳とスキムミルクは違うのか??

バターは何故途中で入れるのか??

誰でもが知りたいであろうこれらの疑問を解くカギは、レシピを頭に入れて、尚且つレシピ通しのバランスを掴むことから始まるのだと言う事を、知って頂きたいと思います。

すべて頭に入れる事で、作業がとてもスムースになりますよ。

そして、自分が華麗に動いている事を想像してみてください。

しかし、他人から見れば加齢な動きだったりして (笑)

おあとがよろしいようで・・・・

3 Comments

あひる says..."いつも読ませていただいて感謝しています"
パン屋さんを見つけると、一番自信を持って売っていらっしゃるものを一つ買って味見をするのですが、食べながら思う事が色々あります。
もう少し発酵時間を取ったら良かったのでは?とか、スチームが不足してる、とか、焼き上げの温度が低いのでは?とか、です。
上から目線で知ったかぶりをするなと叱られそうな事ばかり考えているので、口に出すと夫は変な顔をするのですが、ちらりと覗いた作業場の設備などを頭の中で思い出しながらパンを食べると、仕事の様子が目に見えるような気がするのです。
もうあと少しの工夫で格段に美味しくなりそうなパンが余りにも多い気がするのです。
でも、なんだか分かった気がしました。(思い込みかもしれませんが)
格段に美味しくなる可能性よりも、作業効率や時間の配分の方が大切なのですね。大きなパン屋さんでガッカリする事が多い原因がわかったような。
でも、人と話していて気づくのは、買う方もいい加減なのかもしれないということです。どうやってパンが焼けてるかなんて気にせず、甘くてふわふわしていて何か目新しい名前やトッピングを見ると「美味しそう!」と飛びつき、すぐに飽きて買わなくなるのではないでしょうか。
私が3日に一度同じ配合で山食を焼き続けていると言うと、「飽きない?」と聞かれることが多いです。
本当に美味しいから飽きないし、同じ配合でも気温や湿度、焼き上げのちょっとした手順で出来上がりが変わるので焼いていても飽きないと言うと、ふーんという反応です。
おそらく、普通の人がパンに求めている事が流行や味の目新しさだとするとレシピにこだわるのもわかるような気がします。
配合ではなく、レシピです。某レシピサイトでもレシピばかりが注目されるのです。恐ろしい手順でも、目新しい材料を使っていて、けれど簡単、時間短縮が最優先なものが評判です。
私は少量しか作る設備を持たないホームベーカーなので、レシピは配合(%)で覚えています。その方が作りやすいです。レシピの1gの増減は、捏ね上がりの生地の感触や食べてみてからの自分の好みに合わせたり、粉に合わせています。
パン屋さんに質問をしても、きちんと答えられない事が多いのは手順しか考えていない事が多いからだとやっとわかりました。デパートの中のベーカリーで質問したら、次から次に人が変わって、最後に出てこられた親方のような年配の職人さんがきちんと返事をされた事があります。
20人ほど働いていても、答えられる方は1人だったのは当然なのですね。ようやく色々な事が納得出来ました。
以前はパン屋さんにアルバイトかパートで入って仕事をして勉強しようかと思っていたのですが、今はそう思っていません。もう少し、色々と考えながら自分のパン作りをして行こうと思っています。
これからも悩みながら手順の一つ一つを確認してパンを作っていく支えに読ませて頂きます。
お仕事は大変だと推察致しますが、頑張ってください。
2013.04.02 11:08 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."あひるさん、コメントありがとうございます。"
なかなかつわものの様ですね。

どんなパン屋さんへ行っても、どんなサイトのレシピを見ても、もの凄く立派に見えてしまうと言う事は良くありますね。

そんな中、あひるさんのうようなお客様が来たら、店はビビるでしょうね~きっと(笑)

しかし、とても立派なパン屋さんや、とても尊敬できる技術者の方というのもたくさんいるのですよ。

どうかその事だけは誤解のないように・・・・
2013.04.02 16:22 | URL | #- [edit]
あひる says..."もちろん!"
とても素敵なパン屋さんが沢山ある事は十分承知しています。遠い山の中にも見つけて時々通っています。でも悲しい事に以前はとても美味しかった山の上のホテルのベーカリー部やデパートの中にあるベーカリーが、大手のパン工場の経営に変わってからすっかり工場のパンになってしまったりしています。
押し寄せて来る石釜パンチェーンも気がつけば店舗が増えています。
半分は消費者の責任でもあると思っています。
味の上にコスパという評価を振りかざして、グルメサイトに容易く「この味でこのお値段は少し高く感じる」などと書かれてしまったり。
1人で頑張って独立された美味しいパンのお店で買い物する時、必ず話す事は、値段をどうこう言われたら「プラスα」で闘うしかないのでは?という事です。
美味しい食べ方や温め方をアドバイスしたり、一人暮らしのサイズを提供するなど。
美味しいと思ったお店と長くつき合うために消費者も出来ることがあるのでは?とも考えたりします。
実は私の質問した事はそんなに大した事ではありませんでした。焼きたての食パンしか棚になかったので、何時間後くらいに切るのが一番美味しいでしょうか?という、それだけの事でした。
親方のような技術者の方は、「蒸気が納まり触って人肌くらいになったら袋の口を閉めて、明日の朝切って食べて頂けば美味しいです」と教えて下さいました。
今でもそのアドバイス通り、焼きたてのパンを切って食べる事はせずに前日午後に焼き上げて朝食べる前に切って食べています。その理由などもきちんと説明してくださったので嬉しかったのを覚えています。
まだ時々興味本位でパンを焼いたりしていた頃でした。
2013.04.02 18:49 | URL | #- [edit]

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