ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

焼成中何度もオーブンを開ける人は・・・×

焼成中にパンの位置を動かして、焼き色の調整をしたい・・・

何種類かのパンを一緒に焼いているので、何度も開け閉めすることになる・・・・

パン屋さんからも主婦の方からも質問が多いのが、この手のオーブンの開け閉めについてです。

この他にも、例えば焼き加減を確認する為にオーブンを開け、パンに直接触れてみて確認する場合や、ハード系のパンの場合などはパンの底を叩いて音で焼き加減を判断すると言うような場面もあろうかと思います。

さまざまな理由があって、致し方なくオーブンを開けるのですが、何となくこれで良いのだろうか??という違和感をお持ちの方も多いようですね。

それは、焼き上がったパンが何となく潰れたような感じになってしまったり、表面が乾燥した感じになってしまったり、艶がなくなってしまったりと、いずれにしても何となく気に入らない・・・・

もしかしたら、焼成中にオーブンを開けると言う行為そのものが悪なのではないだろうか??

そのように思うからこその質問なのだと思うのです。

そして、私が思うに、そんな質問をしてくる方々と言うのは、実に観察力に優れていると思うのです。

なぜなら、驚くほどの違いが出る訳でないのですが、でもどうしても何かが納得できない・・・

そこに明確な答えを見出すまでは、悩んで悩んで悩みまくる・・・

そのような疑問を一つ一つ解決していく事が、つまりは技術の向上につながるからなのです。

パン屋さんにとってオーブンを誰が担当するかという事は、実は非常に重要な事なのですが、実際には新米の方が担当すると言う事も少なくはないのです。

それは、一見成形の方が難しいからであり、全ての段取りから考えると、ただひたすら焼き続けるというオーブン担当は、仕事に慣れると言う意味からも新米の方に向いていると言えるからかもしれません。

しかし問題は、誰が焼くか・・・ではないのです。

焼き方をしっかりと指導出来るのであれば、焼くのは子供でも出来ると思います。

生地の取り扱い方、発酵の加減、焼成温度と時間、段取り、これらをしっかりと教え込み、尚且つ最終焼き色を見ていてさえあげれば、オーブンは誰にでも担当する事が出来ます。

とは言え現実には、すべてのセクションが忙しく、いちいち全ての焼き色や焼き方までをチェックするというのはとても面倒ですし、結局はある程度お任せになってしまうと思うのです。

このあたりは、ホームベーキングの方には理解できない事かも知れませんが・・・

前置きが長くなりましたが、焼成中のオーブンの開け閉めはパンの品質と関係があるのかないのか????

と言う事になると、大ありですと言わざるを得ません。

ではここで過去に私が経験してきた、最悪の焼き方をするオーブン担当者の焼き方を紹介しておきましょう。

パン屋さんの平均的なオーブンの大きさは、一段にバターロールを12個のせる事が出来る天板が4枚入る大きさであるとイメージして下さい。

食パンだと、三斤型で10本位でしょうか。

いずれにしても、ホームベーキングの方から見れば、とても巨大なオーブンと言う事になりますよね。

一段に4枚の天板が入れられる訳ですが、この中に同じような大きさのパン、あるいは同じような配合のパンが一緒に入れられているのであれば、ほぼ4枚同時に焼き上がりますので何の問題もないのですが、まったく別々の大きさのパンであったり、または配合が全く違う場合は、当然全て一緒に焼ける訳ではありませんよね。

これが4枚全て違う場合などは、最低でも4回は開け閉めを行い、それでも初めに取り出されたパンは良いとしても、最後に取り出されるパンは、開け閉めを3度経験させられる事になる訳です。

それだけではありません。

パン屋さんでは、次々にパンを焼かなくてはなりませんから、4枚焼いていてその内の1枚が焼けた場合、すぐに新しい1枚を入れてオーブンを満タンにしなければなりません。

そのように処理していかないと、どんどん発酵室が渋滞してしまうからです。

ですので、いかにオーブンの中を常に満タンにしながら、効率良く段取るかというのが担当者の裁量にかかってくる訳です。

しかし、そんなことはおかまいなしの人・・・というか、まったく気にしない人がオーブンを担当した場合、とても悲惨な事になってしまいます。

それはどんな焼き方なのか???

早く焼きたい時は温度をとにかく上げる。

天板から数個だけ焼けたパンを取り出し、残りをもう少し焼く。

10秒ごとにオーブンを開けては焼き色を確認する。

オーブンの中には常に天板1枚程度しか入っていない。

8割がた焼けたパンを一度取り出し、別の物を焼いてから再度オーブンに入れる。

同じ天板にまったく違う大きさのパンを入れて焼く。

一度取り出した食パンを、再度型に戻して焼く。

食パンと食パンの型の間に小さいパンを入れて焼く。

3段あるオーブンの中を、何度も移動させる。

長時間開けっぱなしにする。

ソフトなパンを焼いているオーブンの中にハード系を入れてスチームをかける。

焼成半ばでスチームを入れ忘れた事に気が付き、その場で入れる。


などなど、実際にはこんなものでは済まない実例は山ほどあります。

パンを美味しく焼こう・・・・という思いは同じはずなのに、どうしてそのような行動に走ってしまうのでしょうか?

それは、恐らくは忙しさに付いて行けていない事、つまり仕事が渋滞してしまって精神的に追い詰められてしまうからだと思うのです。

そして、明確な理論を持っていない事も原因かもしれません。

パン屋さんに伺った時にいつも感じる事なのですが、ミキサー担当者・分割成形担当者・オーブン担当者の三つのセクションに大まかには別れてはいるものの、その方々の製パンに対する考え方、向き合い方がバラバラであると場合が多いのです。

つまり、それぞれが自分なりに判断し行っているという場面に良く遭遇します。

なぜそうなってしまうのかと言いますと、オーナーなり店長なり工場長なりに、しっかりとした製パン理論・指導力・方針などが無いからなのです。

全てが整っていなくても、店長を任されてしまうと言うのも、これもまた現実ではあるのですが・・・

しかしその反面、何度指導しても身の毛もよだつような行動を取る人というのも必ずいます。

理論や理念がいくらあったとしても、人と人が解り合って信頼し合って共に同じ方向に向かって進むというのは、実に難しい事なのかもしれませんね。

オーブンの開け閉めというのは、当然しない訳にはいかない訳ですが、どうすれば最小限に抑える事が出来るのかという事を常に考えなければなりません。

それはなぜか????

上記で紹介したパン屋さんの平均的なオーブンで、例えばパンを満タンで焼いた場合は、12個入りが4枚で48個のパンが焼き上がります。

そこに、天板一枚に1個のパンをのせて焼いたとしましょう。

それでも、ほぼ同じ温度で同じ時間で焼き上がる事になります。

これは、オーブンの特性がとても優れていると言う証でもあるのです。

しかし、大きく違う所が実はあるのです。

それは、48個焼いた時には48個のパンから放出される水分がオーブンの中に充満しているのに対して、一個の場合はほぼ無いに等しいという部分なのです。

どう言う事かと申しますと、48個のパンを焼いている場合は、焼成中にかなりの蒸気がオーブン庫内に存在しています。

つまりそれは、蒸し焼き状態になっていると言う事なのです。

この蒸し焼き状態というのは、じつは表皮の乾燥を防止し、表皮を薄く完成させる事に貢献してくれているのです。

と言う事は、当然両者の完成度は違っていますし、蒸し焼き状態の場合はパンはしっとりと水分保持していきますし、皮が薄い分食べ口もソフトになります。

他方蒸し焼き状態ではなかったパンは、やや表皮が厚くなり、水分も良く飛んでしまいますから、パサ付きが早くなります。

しかし、香ばしさの観点から言えば、後者の方が香ばしいパンになると言えると思います。

そのように考えると、ソフト感を出したいのか、香ばしさを出したいのかによって、ある程度の工夫が必要であるということがお解りいただけると思うのです。

天板にのせたパンであってもそうなのですから、食パンなどは型に入って蓋がされている訳ですから、尚更蒸し焼き状態になっている訳です。

では、開け閉めが頻繁に行われると、パン生地はどのようになってしまうのでしょうか??

それは例えば、広いサウナに一人で入っているとしましょう。

汗は当然出る訳ですが、安定した高温の中で出る汗は、恐らくすぐに蒸発して消えてしまうでしょう。

しかし、同じサウナに30人が入ったらどうなると思いますか?

それぞれの汗が蒸発しきれずに、湿気で熱さが倍増されてしまうかもしれませんね。

その30人入りのサウナで、1分おきに誰かが出て誰かが入ってきたらどうでしょう?

入口近辺に座った人は、何度も何度も開け閉めされる扉から入ってくる冷たい空気と、サウナの中の熱風が混ぜこぜになり、熱いのやら寒いのやらでとても落ち着かないと思います。

まったく扉が開かなかった10分と、何度も開け閉めされたあげくの10分では、いったい身体の暖まり方はどうだったのでしょうか?

パン生地の場合は、人間のように臨機応変と言う訳にはいきません。

頭にきたから、後ですいた頃にまた入ろう・・・人間ならそういう事も出来ますが、パン生地は何度も開け閉めされた事で表皮が乾燥したり、温度変化によってしぼんでしまったりしたら、二度ともとへは戻れないのです。

焼いている最中に衝撃を与えるなどと言う事はもってのほかだと言う事は誰にでも解りますよね。

しかし、この扉の開け閉めも、パン生地にとっては充分に衝撃なのです。

だからこそ、最小限にとどめなければならないのです。

また、特にハード系のパンの場合、途中でダンパーを引いて蒸気を逃がすと言う焼成法が取られる事があると思います。

また、ライ麦パンなどでは、あえて扉を開けて温度と湿度を同時に逃がすという焼き方もあります。

配合と完成品のイメージから、全てが何が何でも開け閉めはNoだと言う事ではありませんが、ご質問にあるソフトなパンや食パンなどの場合は、開け閉めの回数は品質に大きく影響を与えるのだと言う事を知って頂きたいと思います。

それから、家庭用のオーブンについて少しだけ触れておきます。

冬場の寒い部屋の中で暖房にヌクヌクしている時、隙間風が入ってくるような場所に座っていると腹が経ちますよね。

今時の部屋は隙間風なんて無いかもしれませんが、この隙間風が多いのが残念ながら家庭用のオーブンなのです。

パン屋さんのオーブンは、扉の厚みが10センチ以上あります。

家庭用と比べると、まるで大銀行の金庫の扉くらいのイメージでしょうか(^0_0^)

そして何より奥行きがあります。

しかし、家庭用のオーブンは庫内よりも扉の方が大きいはずです。

と言うことは、一回の開け閉めによる温度変化と蒸気の逃げ方は、半端ではないと言う事になります。

尚更気を付けなければならないと言う事をご理解下さいね。

2 Comments

むらさき says..."とても勉強になります"
はじめまして。
一年前にホームベーカリーを買ってからパン作りにハマり、最近手捏ねで毎日のようにパンを焼いている主婦です。
少し前にベーグルにハマり、多少上達したかな?と思いましたが、最近は食パンに苦戦中です。食パンはシンプルに見えて奥深く、なかなかうまく焼けない理由がこちらを読んで幾つか判明しました!!
なるべくオーブンの特性を掴んで(我が家は普通の電子レンジなので)、小さめの食パンを美味しく焼きたいと思います。
更新、楽しみにしております。
2013.05.17 18:43 | URL | #JalddpaA [edit]
しずかな朝 says..."むらさきさん、コメントありがとうございます。"
裸で焼く良さと型で焼く良さ、大きく焼く良さと小さく焼く良さなどなど、家庭では色々な楽しみ方が味わえると思います。

どうぞ楽しんで下さいね。

気が向いたらまたコメントしてください。
2013.05.19 13:12 | URL | #- [edit]

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