ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

フランスパンの内層が不規則に穴が開くのは何故

こんな質問を頂きました。

何人かの師匠に教えていただいたおかげで、フランスパン全般はかなり売れ筋となっておりまして、自分でもなかなかの完成度にいつも満足しています。

そんな中先日お客様から、お宅のフランスパンは目が細かいのでバターが落ちなくて助かると言う話を伺ったのでした。

他のお店のフランスパンは、大きな穴が開いているのでバターが落ちてしまうそうなのです。

そうなのかな?と言う気持ちで改めてスライスしてみると、たしかに目が詰まった感じでした。

今まで特に内層は気にしてこなかったのですが、先日受けた製粉会社主催のフランスパン講習会でも、たしかに目の粗いフランスパンになっていましたし、都内の有名店のフランスパンは見事なまでに穴だらけの様な気がしています。

今更の様な気もしてなかなか人には聞けず、こちらなら教えていただけるのではないかと勇気を出してメールした次第です。

自分なりの考えなのですが、粗い内層になっていなくても充分美味しいと感じますし、長年その様に思って作ってきたつもりです。

ただ、色々と調べていると粗い内層でなければフランスパンとは呼べないとか、内層が白いパンは駄目だと書かれている記事を良く目にしますし、最近話題の有名店のフランスパンは確かに内層がとても黒い色をしていて大きな穴が開いている物が多いような気がします。

私は今のフランスパンの作り方しか解りませんので、逆にどうしたらあのような大きな穴が開くのかが解りません。

しずかな朝さまとは同年代の私ですが、恥を忍んで教えを請う次第です。



と言う事なのですが、これは実に良い質問をいただきました。

と言うのは、私自身も実に不思議に思いながらも、なぜかくの如く多くの内層が出来上がってしまうのか解らずにいたからなのです。

そしてそれらがすべて解ったのは、ほんの数年前なのでした。

一つには、確かにあまり気にしていなかった・・・・

しかし、有名店と呼ばれるお店のフランスパンと私のフランスパンとでは、確かに内層も表皮の具合も、色も、そして味もまったく違う事に気が付いて、なぜだろう????何が違うのだろう????そう考えるようになったのでした。

さらに、それらはあくまで製法や小麦粉の違いであり、質問者様の様に、穴が開いていれば良いと言う訳ではないという信念もありましたので、見て見ぬふりをしてきた部分があったのかもしれません。

好き好きは当然あるものの、確かに売れているフランスパンは今までの物とは全く違うパンだと言えます。

いったい何が違うのか??

まず代表的に違うのは小麦粉です。

そして、その小麦粉で今まで通りの作り方で作ったのでは本来の味が出せない、と言うよりは小麦の良さを引き出せないという観点から、製法も酵母も変化してきているのです。

つまり、数十年前まではフランスパンと言うのは、日本の製粉会社が作ったフランスパン専用粉を使って、これまでにフランスから伝えられてきた作り方で作るのがセオリーだったのですが、完成品はとてもシンプルな味と風味でした。

そしてそれは、長年にわたってあまり売れ筋に上る事は無かった。

しかし近年では、小麦粉その物を味優先で作り、その小麦の味を最大限に生かす為の製法で作る、味の濃い、風味の強いフランスパンが作られています。

そしてそれは、多くのファンを獲得しているという事実があります。

フランスパンと言うジャンルが、お飾りから売れ筋に変わってきたと言う事なのですね。

今人気のフランスパンと言うのは、とても味が濃く、独特の風味を持っています。

私個人としては、自分のフランスパンの方が好きですが、多くのお客様は個性の強いものが好きなようなのです。

さて、話をフランスパンの内層に戻しますが、不規則な、しかも大きな穴が開いている今時の有名店のフランスパンですが、私が若かりし頃のフランスパンの有名店と言えは、ドンクとポンパドウルなどがありましたが、やはり今流行りのフランスパンとは大違いで、皮は薄く色は黄金色で、内層は多少不規則な穴が開き、色は白めでソフトと言う感じでした。

しかし今流行りのフランスパンは、表皮は硬く厚く、色は中外共に黒く、大きな穴が目立ちます。

その点だけを見てしまうと、穴がしっかりと開いていないと今時ではない・・・と言うようなとらえ方になってしまいそうですが、必ずしもそうではないのです。

質問者様の師匠も、元ポンパドウル出身だとか・・・

私よりも年上のパン職人なら、皆同等の製法で作ってきたのが今までのフランスパンであり、そのシンプルさは多くの人に愛されてきました。

ですから、そこは全く否定する必要は無いと私は考えます。

では、ご質問の大きな穴はどうしてできるのか・・・・と言う事ですが、基本的にハード系のパンは、なぜ気泡が粗いのかと言う事を考えていきたいと思います。

まず一つには小麦粉の力が弱い、つまり中力粉を使うので、あまり捏ねる事が出来ないし、捏ねると逆に味が悪くなるということが上げられます。

次に、副材料をあまり含まない生地は、インスタントイーストを使用する為に、生地温度を低めに設定し、時間をかけて発酵させることがベストであると言う事が上げられます。

さて、このようにあまり捏ねない生地と言うのは、そもそもがつながりが弱い、つまり気泡が粗くなっていて、しかもその生地を丁寧に扱う事で、気泡は粗いままオーブンに到達すると言う事が言えると思うのです。

だとすると、より内層がキメ細かくなってしまうのは生地をいじり過ぎているからで、丸め過ぎない事や生地を強く扱わないなどに注意すれば、内層の穴はおおきくなるのかと言うと、半分はそうであり、半分はそうではないのです。

????????

解釈が難しいな・・・これは(--〆)

生地の取り扱いがフランスパンの善し悪しを決めると言うのはもちろんそうですし、だからこそ技術のいるパンである事は周知の通りです。

しかし、実はどんなに技術があっても、内層がキメ細かくなってしまう場合があるのです。

その代表的な原因として、ホイロの温度湿度が高い場合と焼成温度が低い場合とがあるのです。

どちらも実はインスタントイーストの特性に関係があるのですが、インスタントイーストというのは、スロースターターで、例えるなら長距離ランナーのようなものなのです。

長距離ランナーであるインスタントイーストは、オーブンに入るまではたっぷり余力を残したままの状態でいなければなりません。

しかし、ここでホイロの温度が高いと、過剰に反応してたくさんの力を使ってしまいます。

すると、オーブンに入った時にラストスパートがきかず、失速してしまうのです。

その状態がキメの細かい状態です。

所が、ホイロの温度が低めでしっかりと力を貯め込んでいたイーストの場合は、高温のオーブンに入るないなや、こりゃ大変だ、出番だ急げ~と言う感じで出力全開でガス発生を行います。

すると、もともとつながりの弱い、しかも潤滑油などの副材料を含まない生地ですから、四方八方に膨らみ方が分散し、結果大きな穴が開いてしまうのです。

つまり、解り易く言うと、全般的に低めの温度で発酵させてきた生地を、ビックリする位の高温に入れる事で、インスタントイーストが大暴れする、それが不規則な穴を実現させるコツとなるのです。

ですので、不規則な穴と言う観点だけを考えれば、生地温度は低ければ低いほど大きな穴が開きますし、生地は柔らかければ柔らかいほど大きな穴が開くのです。

さらにです。

インスタントイーストはそれでも有能な菌の集合体ですので、いかなる状況であってもそれなりの力を発揮するものです。

これが天然酵母であったり、ルバン種などを使った製法で行った場合、もっとびっくりして更に大きな穴が開く事になります。

と言うよりは、天然酵母やルバン種でキメ細かいフランスパンを作る事の方が逆に難しいとも言えますが・・・

と言う事で、使用する小麦粉や酵母によって違いはあるものの、ホイロの温度とオーブンの温度が実はカギなのだと言う事がお解りいただけたと思います。

質問者様のお店の場合、製法はそのままでホイロの温度を5℃以上低くし、オーブンの焼成温度を初めだけ50℃位上げれば、粗い気泡は完成すると思われます。

しかし、それが良いと言うお客様もいる訳ですから、それはそれとして別の商品として販売する方が良いと思いますよ。

その際は、どうせなら小麦粉その物も変えて、製法も変えてお試しいただいた方が良いと考えます。

インスタントイーストと言うのは、生イーストに比べるととても温度に敏感に反応するのです。

ですので、冷蔵法などで作った場合は、尚更オーブンでビックリして大きな穴が開く事になります。

同じくイーストの量を少なくしてみても、同じように大きな穴が開きやすくなります。

しかし結局は、穴が開けば専門的だと言う事なのではなく、その製法だから開いてしまっているのであって、むしろ今時流行のフランスパンを、キメ細かく焼く事は非常に難しいのだと言えると思うのです。

ですから、ご自分のフランスパンにもっと自信を持って、これからも大いに売れ筋にしていただきたいと思います。

有名とか高名とかいうことに踊らされて、自分の足元を見失わないようにしたいものですね。


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