ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

フランスパンの穴の大きさで味は変わるのか?

前回いただいたフランスパンの穴についての質問への解答で、ならばこのお店のフランスパンはどうなのかという画像が多く届きました。

皆さん何でそんなにフランスパンに興味があるの???

今、時はフランスパンなの?

確かにフランスパンの記事になると、とたんに反応が多くなるような気がする・・・

時がフランスパンであるとまでは思いませんが、要するに専門的なパンだけに興味があるのだと思うのですがいかがでしょうか?

シンプルなはずなのに、なぜあのように美しく、かつ美味しく作る事が出来るのだろうか?

そしてなぜあんなに穴が開いているのだろうか?

それはまさに、美味しさに関係しているのだろうか?

等々、フランスパン好きな一般の方から、パン屋さんに至るまで、謎が多いパンである事は確かかもしれませんね。

と言う事で今回は、もう少し掘り下げてフランスパンの穴の魅力にせまりたいと思います。

まずは何と言ってもメインである小麦粉から見ていきましょう。

製粉会社各社が持っているフランスパン専用粉と言う粉があります。

この粉は、他のパン用粉と何がどう違うのかと言いますと、力がやや弱いと言う事と、味が良いと言う事、さらに引きが弱いと言う事が言えると思います。

力とか引きという表現は、実践的には伸びがどうかと言う点であったり、噛んだ時の歯触りや食べ口の事を指し、科学的にはグルテンの量や質の事を指しています。

つまり、例えば通常の強力粉でフランスパンを作った場合、膨らみ過ぎてしまう、表皮が非常に薄くなる、内層がとても細かくソフトになる、そして味が淡泊になると言えます。

フランスパンの美味しさと言うのは、そこそこの表皮の厚さがなければまず風味が出ません。

そして内層がソフトな事はさして問題ではないのですが、細かい気泡が生み出す風味と言うのは、どうしても淡泊に感じてしまうのです。

そして何よりもそもそもが持つ味があまり濃くない事。

それではフランスパンとしてはよろしくないと言う事で、専用の粉が作られてきたのです。

つまり、フランスパン専用粉でパンを作ると、ソフト過ぎない、伸び過ぎない、表皮の香りが良い、内層の味の良い、サクサクとした歯触りを楽しめるパンが作れると言う事になるのです。

その代わり、意外と高価ではあります。

ただし、それらは過去のフランスパン専用粉であって、いわゆる今時のフランスパン専用粉は、より味の面で個性を出すことに特化していると考えられます。

どう言う事かと言いますと、日本におけるフランスパンと言うのは、ある程度の皮の薄さと、ある程度のキメの細かさと、ある程度のボリュームが無いといけないとされてきました。

あまり専門的過ぎると日本人の舌に合わないのではないかと言う考え方です。

日本人というのは、ソフトだとかしっとりだとかが大好きな人種ですよね。

フランスパンと言うのは、まったく正反対の食べ物でしょう。

ですから、ある程度はソフトでなければならないし、あまり表皮が厚くてもまずいだろうし・・・と言うような考え方になってもおかしくはないのです。

しかも、作り手としてもあまりオーブンで伸びない粉だと使ってもらえないし、そもそも扱いが難し過ぎるとそれだけで敬遠されてしまう。

と言う事で、専用粉とは言え強力粉寄りの使いやすい小麦粉であったと言えるのです。

しかし現在出回っている専用粉には、まったく違うものが存在します。

何が違うのかと言いますと、まったく力がありません。

ですから、専門技術が無い人がこの粉でパンを作っても、まったく膨らんできません。

それ位グルテンが少なく弱いのです。

ただし特出すべきはその味です。

強烈な甘みと風味が、焼かれる事で一層広がるようになっています。

つまり、作り易さを補う為に色々と考えてきた事を捨てて、味優先で作った粉であると言う事なのです。

随分と色々な事を考えながら小麦粉と言うのは作られるものなのですね~

パンを作る人なら、誰でも小麦粉と言うものを使ってはいるはずですが、その正体までは知る由もありません。

小麦を製粉すれば、それがすなわち小麦粉なのだと私も思っていたのですが、実は皆様が使っている小麦粉のほとんどは、米で言うとブレンド米、つまり色々と配合されて作り出された粉なのでした。

さらに、一般の方向けのスーパーなどで売られている小麦粉と、パン屋さんが使う業務用の小麦粉で名前の同じ物でも、内容は実は違うのだと言う事も以前までは私も知りませんでした。

いつでも、どんな時でも、適度に扱いやすさを約束しなければならない小麦粉は、その時期その時期の収穫状況の善し悪しによって、時には膨らみの悪いものを出すと言うような訳にはいかないものなのです。

話がそれましたが、要するに扱いやすさではなく味勝負の小麦粉が出てきて、それを扱えるパン屋さんだけが、その味を物に出来るということなのです。

それだけではありません。

価格はというと、とてつもなく高価です。

ですから、今までのような販売価格ではとても売る事が出来ないでしょう。

前回の質問者様同様、私も今までのフランスパン愛好家ですので、あえて高価な小麦粉を使って味を濃くしようとは思いませんし、シンプルイズベストが長く食べ続けてもらう条件だと考えています。

さて、小麦粉の話が長くなりましたが、テーマが穴ですので、もう少し穴について考えてみましょう。

いかなる製法であっても、いかなるイーストであっても、生地その物をあまり捏ねずに、しかも成形をせずに焼くと、かなり大きな穴が開く事になります。

この場合の条件は、前回もお話しした低温のホイロである事と、高温のオーブンである事が上げれれますが、その他にも実は重要な要素があります。

それがスチーム(蒸気)です。

スチームに関する生地は こちら

パン生地と言うのは、いじればいじるほどキメが細かくなります。

と言う事は、穴が細かくなると言う事ですが、それはミキシングだけの事ではありません。

捏ねた後の分割や丸めや成形などにより、どんどんキメは細かくなっていきますし、それは焼成後のボリュームアップにも影響を及ぼします。

つまり、極力捏ねずに、さらにいじらずに焼成まで言った生地と言うのは、とてもつながりが弱い状態になっていると言う事になります。

これを高温のオーブンで、たっぷりのスチームで焼成すると、表皮の部分は一気に膨らんでいきますが、内層はつながりが充分ではありませんから、その伸びについて行けずにそこに穴が開く事になるのです。

これを仮にまったく同じ配合で行った場合、あまりいじらずに最後まで行ったパンは穴だらけで表皮が厚く、いつも通りしっかり成形をしたパンは、適度に伸びて内層はある程度均一になり、表皮は薄くなります。

ではこの二つは味の面ではどうなのかと言いますと、いじられていない方は全般的にボリュームが無い分表皮が香ばしく焼け、内層の味は濃いものになるでしょう。

どちらが美味しいかと言う事は好みの問題ですが、まったく同じ配合でも、どのようにして焼きまで持っていくかによって大きく違う味と香りを出す事が出来ると言う事が言えるのです。

さらに、フランスパンの平均的な吸水が65%程度だとしたら、100%位まで水分を入れた、とても扱いずらい生地を作ったとした場合、完成品は表皮は厚く香ばしく、内層はモチモチキラキラしていて、それはそれでとても美味しいパンだと言えるでしょう。

小麦粉を選ぶ・捏ね方を選ぶ・扱いを選ぶ・生地温度、ホイロ温度、焼成温度それぞれを選ぶ事によって、まったく違う顔を見せてくれるのがパンの面白い所だと言えます。

質問の中の画像に、天然酵母のフランスパンの画像がありました。

このパンの内層は、むしろ穴の方が全体に占める割合が多いパンでした。

まさにこれはパン発祥の頃を思い出させるようなパンだと言えますが、おおむね天然酵母のフランスパンと言うのは、穴が非常に大きくなってしまいます。

それは、イーストと比べて菌の数が圧倒的に足りないからで、オーブンの中で表皮が伸びていく際に、菌そのものに全体を持ち上げる力が弱い為、内層はまったく表皮について行けずに、結果穴だらけになってしまうのです。

ですから、穴の数やその大きさが、そのまま味にどう影響があるかと言う事なのではなく、一つの焼成現象として内部に穴が開くのであって、むしろ味と言うよりは食べ口への影響が大きいのではないかと言えると思います。

大きな穴と言うのは、その穴の内側のデンプンがアルファー化して固化した状態になっており、とてもキラキラしています。

そんな穴が多いパンと言うのは、いわゆるモチモチしたパンというように言われたりしますよね。

その様な食感が良いのか、それとも適度な均一感を持った内層の方が食べやすいという発想を持つのか、それはあくまで作り手が考える事です。

フランスパンの不規則な内層の穴を、戦略的に作る事が出来る技術があるのであれば、様々な内層の、様々な食感や風味を持つパンを作り上げる事が出来るようになると思います。

どうかそんなパンの内なる部分にも目を向けて、それをも楽しんでいかれますようにと願っています。


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