ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

手作りが嫌になる瞬間・・・・

お店でレジに立っていると、色々なお客様と話が出来てとても楽しい時間が過ごせる。

そもそもが製造ばかりだったお陰で、初めてレジに立ったのがパン屋になって20年以上が経過した後の事だった。

初めは恥ずかしいやら、レジに馴れていないので手こずるやらで、楽しいと思えるようになったのは随分後になってからだったが、お客様からなぜわざわざ当店のパンを買いに来て下さるのかを伺うにつれ、こんなにありがたい、しかもやりがいのある仕事はないなと痛感するのだった。

それも、数十年前に何店舗も任されていた頃は、手作りとは言え冷凍生地も多く使用していたし、解凍するだけの様な完成品冷凍のパンや菓子も扱わなければ間に合わない状況であった為に、どことなく後ろめたい気持ちもあったような気がする。

独立して手作りの良さを伝えていこうと思うようになってからは、作るパンの一つ一つにお客様が付き、どのパンも作りがいのあるパンへと育って行った。

売れ筋だとか流行だとかイベント商品だとか、そんなことばかり考えなければならなかった時代には、けして今の様な感謝の言葉をお客様から頂く事は無かった。

手間ひまかけるからこそ出来る製法や配合と言うものがあり、それを貫く事で得られるご褒美みたいなものなのかもしれない。

ただし・・・・

そんな美学だけでは成り立たない現実というものがある。

最近特に感じているのは、結局の所お客様の喜ぶものを作ると言う事は、有難い事にお客様が増えると言う事である。

すると、手が足りなくなるから、どうしても新しいスタッフを募集する事になる。

募集だ、面接だ、研修だ・・・・使えない、クビだ、また募集だを繰り返してきた過去と、結局同じ事をまたしている自分に、これでよかったんだよな俺??? みたいに自問自答している自分。

商品にこだわればこだわるほど、スタッフへの要求も大きくなる。

すると、必ず要望にには答えられない・私には無理と言う返答が返ってくる事になる。

美味しいパン作り・・・・のはずが、気が付けば結局人事問題に一番頭を悩ませている自分がいる。

自分がもう一人いれば・・・・そう思いたくなる瞬間である。


時に多くの特注を頂く事があると、どうしても間に合わない為に夜勤をすることになり、そんな日の朝は退社後にファミレスに朝食を取りに行く事が多い。

スープとドリンクバーが付いて、しかもご飯が大盛りサービスで600円ちょっとで食べられるし、Wi-Fiがあるのでお気に入りのIpadで、少女時代ざんまい&時々調べ物で好きなだけいる事ができるからである。

いつも行くファミレスは、その時間は空いていて、調理のおばちゃんが一人と接客が一人と言う人員配置になっている。

時間が早朝の為か、ホールもお世辞にもユニフォームが似合ってはいない、これまたおばちゃんなので、良く二人はおしゃべりをしている。

しかし、そんなおしゃべりをしながらでも、注文した物はそれなりの姿をしてきちんと運ばれてくる。

経験者ならお解りだろうが、ファミレスのキッチンと言うものは、どんなに忙しい昼時でさえも3人はいない。

お客様があの広い店内に満席になっていてもである。

それなりの大変さはもちろんあるだろうが、いずれにしても野菜を洗って肉を切って・・・と言う事をやっていたのではとても間に合う話ではない。

ほとんどの物が、袋から出すだけか、温めて出すだけというシステムだからこそ、どんなに忙しい時間でもそれなりにこなせるし、おしゃべりをしながらでも、しかもおばちゃんで出来るのである。

これがすべて手作りのレストランなら、ランチ時と夜は戦争である。

そんな内情を知っている私としては、忙しい時間帯のレストランにはけして足を運ぶ事はない。

なぜなら、店員の引きつった顔が見たくないからである。

こっちの注文はまだかとか、数人で行って一人だけ料理が遅いとか、明らかに大忙しの雰囲気満々の所に行くと、どうしても手伝いたくなってしまうのと、まるで戦友が戦っているような気がして、とても落ち着かないのである。

だから、感動こそ得られないものの、自由な空間、争いの無い空間であるファミレスに足が向いてしまうのである。

さて、ファミレスでまったりした後に、夕食の買い物をとスーパーに立ち寄った時のことである。

とても買いたいとは思わないが、色々と工夫しているな~と思わせるような品揃えのパン屋さんがあった。

どこのスーパーでも、必ずどちらかの入り口にはパン屋さんがあるもので、このパン屋さんも見るからに冷凍生地専門店であった。

品揃えと工房にあるストックを考慮すると、日商は十五万円くらいかな~などと計算しながらも、どう見ても工房にはスタッフが一人しかいない事に気が付いた。

どうやら販売員は、製造も兼ねれいるようで、要するに二人体制なのである。

このパン屋はそれでも多い方かもしれない。

別のスーパーでは、製造員を見かけた事が無い。

販売員姿の女性が、レジに立たない時間は奥でパンを焼いている。

どの時間帯に言ってもそうなのだから、恐らくは概ね一人体制で、他の場所で作った物が運ばれてきたりするのであろう。

私自身、冷凍生地だけのお店も経験しているので、そこで働く人が技術力でもめているような事は見かけた事が無い。

誰しもがほぼ平等に、しかも楽しく働ける職場であり、かと言ってパン作りを経験出来る職場なので、未経験でもパンを作ってみたかったと言う人には、もってこいの仕事である。

それが、手作りになると急に技術が要求される事になり、能力が最大限に評価される戦場となる。

少しも気を抜く事が許されず、常に全力で最初から最後まで走り抜かなければならない。

それだけではない・・・・

走りながらも、新しい商品を考え、製造工程を考え、商品の安定を考え・・・・・

売れる事は有難い事・・・・とは思いながらも、昨日も今日も、そして明日も、動き出したら止められない作業の中で、お客様の美味しいの言葉を頂く為、それだけを励みに仕事を続けている自分ではあるが、時頼そう言う時間との戦いや、人と人との意見の違い、能力の違い、価値観の違いに、うんざりする自分もいる。

一体どれだけの人が、手作りパン屋さんの忙しさを知っているだろう。

本当に知っていたら、恐らく開業する人はどんどん減っていくかも知れない。

美味しいパンを作りたくて開業したいだけなのに、随分と試練が待ち構えている事になる。

私も実に多くの人に有名店の修業を紹介したが、ほぼ全滅した。


街を歩いていると、あれ?? と思うような所に小さなパン屋さんが開業している。

一通り商品を見てみると、大体の経験が解る。

さてこのお店は、これから繁盛して技術者確保に悩む事になるのか、それともやがては閉店へと進んでしまうのか、どちらにしても平和な仕事とは言い難い現実がそこにはあるのである。

そして大抵の場合、数年するとそのお店はもうない・・・・

これでは、行っても地獄、引いても地獄ではないか・・・・

そんな地獄で日々戦っている戦友の皆さん、

まことにおつかれさまです(*^_^*)


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