ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

自分にとってこの商売は何が喜びなのか??

このブログの中では、あまり営業染みた事は控えてきたつもりですし、読んで下さる方に対して、一方的な誘導となるような内容にならないよう努めてきたつもりです。

しかし、反響は日増しに増え、嬉しいかな多くの方と意見交換をする機会を得て、ならば少しは道しるべとなるような内容も記しておくべきか・・・と言うような思いもあり、今回まったくの主観的立場で、これからのパン屋の経営のあり方について、自分の考え方を述べておこうと思い立ちました。

様々なオーナー様の苦しい現状を見るにつけ、また、自分自身のパン屋生活を振り返った時に思う事があるのです。

それは、いったい何のために私はこの仕事をしているのだろうか????

そう思いたくなるような瞬間が何度となく訪れた時の事でした。

まるでただ機械のように数多くのパンを生産し続けている毎日。

買って下さるお客様の喜びも、食べる感動も、一切伝わってこないような職場環境になると、私はそのような気持ちになったものでした。

パンを焼きながら、お客様の出入りが確認でき、レジで精算している姿や、パンを選んでいる姿を見るにつけ、とても充実感を味わう事ができました。

要するに私のようなタイプの人間は、誰かの為に頑張ると言うようなタイプで、それが見える形で表れないとフラストレーションが溜まってくるようなのです。

同じように、今まで接してきた多くのオーナー様も、皆さん初めはそのような気持ちを大切にしていたと言っていました。

しかし、環境が変化し、移動販売や卸しを行う事になると、今まで経験しなかったような新しい問題点に遭遇する事になるのでした。

そもそも、なぜ卸などをしなくてはならなくなったのか?

それは、お店の業績不振の場合もあれば、さらに収益を倍増させる為の戦略としての決断であったりと、動機は様々のようですが、いずれにしても開店当初のいわゆる初心からははずれてしまう行動をとる事になるのです。

卸しをすれば、納品先にマージンを取られる事になり、お客様の行動はまったく見えず、廃棄にも頭を悩ませる事になる。

移動販売を行えば、運転手の人間性にすべてを託す事になり、出かけてから帰ってくるまでの行動はまるで別世界の事のようであり、その行動を管理することは不可能で、販売時間や優先度、コースや値引きに至るまでのすべてを任せざるを得ない状況となる。

どちらもざっくりとしか書きませんが、それなりの問題点は必ず抱える事になるのです。

業績不振が原因で手を出したのであれば、致し方ないと思いたい所ですし、さらなる売上を求めてという戦略的発想なのであれば、未経験ならばそう思ってしまうであろう事は想像がつきます。

しかし例えば、どちらの業態にもそれなりのプロの方々、つまりその道のエキスパートと言えるような会社が存在し、問題点を充分に改善する力をもっているのに対して、安易な発想でそれらを始めてしまったオーナーと言うのは、必ず長続きは出来ないで終了してしまうのです。

卸すと言う事は、卸した先に全てを任せると言う事であり、お客様がどう行動し、どう商品を扱い、どれが人気があり、商品説明をどうするかなどなど、すべてをシステム化しなければ管理出来ません。

これが例えばヤマザキパンであったとした場合、商品に異物が入る心配はまず無いような衛生的生産ライン、製造数から販売数まで完全管理、売れ筋などは地域別にデーター化、キャンペーンや新商品などは限りなく解り易く、品質管理と商品開発は毎日専門的に行われ・・・といった具合で、問題などおきようもないような徹底した管理のもとに卸されていますので、発注するお店の方もまったく心配はいらないというのが現実でしょう。

移動販売にも、言わずと知れたその道のプロと言えるような会社がありますよね。

お店を開店し、長らく愛されるにはいったいどうしたらいいのでしょうか・・・・

そんな漠然とした嘆きを何度言ったり聞いたりしたことか・・・・

そして今思う事は、どうしてもお店は必要か?と言う事なのです。

お店は、お客様と作り手がお互いを確認する為には当然必要だと考えていました。

商品を披露する場としては、作り手が見える、作っている事が確認出来るような場所での販売だろうと・・・・

しかし、市場はと言うと、実はもうとっくに違う世界へ行ってしまっていると言えるのではないでしょうか。

作り手が見えるとか、安心安全と言うのは、今ではパソコンの画面を通してでも確認が出来ますし、まさに今はそれが主流でしょう。

充分確認した上でクリックするだけで、ピンポ~ンと翌日届く事になる。

わざわざ出かける事もなく、お店よりもはるかに多くの情報を、しかも細かく確認してから注文できる。

むしろお店の方が色々とは聞きずらいものですよね。

更にです、最近ではコンビニの駐車場から右を見れば、コンビニの看板が見え、左を見ても違うコンビニの看板が見える、そんな時代です。

お客様が自店に来るまでに、いったいどれだけの障害物をクリヤーしなければならない事か。

それでもお店を開く事には何となく夢がある。

そして、初めのうちは必ずと言っていいほど予想以上の集客がある。

しかし良く考えてみてください。

それは、ある意味物珍しさからの行動であり、他のお店からその期間だけはお裾分けをしてもらっているにすぎないのかもしれないのです。

その後もずっと通ってもらう為には、かなりの努力が必要なのは当然の事になりますよね。

売上が徐々に上がっていくと言うお店は、そんな努力がお客様に伝わっている証拠ですし、是非継続して頑張って頂きたいものです。

しかし、徐々に下がっているお店と言うのは、これはお客様は元の場所へ戻られてしまった状態、つまり魅力が伝わらなかったと言う事になるのです。

残念ながら、ほとんどの方がそれを経験し、やがてはと言うか、致し方なく卸しを行ったり、移動販売を行ったりする事になるのです。

そんな現実を見るにつけ、やはりつけ焼き場での店舗展開は無理があると思うのです。

店舗を構える=ある程度の品数を揃える=商品知識と経験が物を言う

例えそれをクリヤー出来ても、あまたあるお店とその商品達と闘い続ける事など出来るのであろうか??

そんな事を考えながら、かと言って売れ過ぎても必ず行き詰るのが手作りである・・・などなど様々な思いが交差する中で、色々と細かく計算してみたのです。

すると、お店を作ったり借りたりしなければ、かなり家賃は抑えられると言う思案。

そして、工房だけならば場所は問わない事から、更に家賃は抑えられるという事実。

お店が無ければ商品構成は少なくて済むのではないか?

と言うよりも、そもそも品数で勝負と言う考え方にあこがれていただけなのではないか?

買う側からすれば、興味のないものは興味が無いはずで、いったいどこに的を絞っていた事になるのか?

商品知識の披露の場・・・であったのかもしれない。

売れ筋を良く見てみると、必ずそこにはこだわりがあった。

そしてその商品だけが群を抜いて人気がある事が解る。

だとするならば、本来の来店動機はこのパンにあるのではないだろうか?

ならば、そもそも店舗の意味はあるのだろうか・・・・

そんな観点から見直すと、ならば工房で午前中にパンを焼いて午後に自分でお得意様にお届けすると言うのはどうだろうと言う思いがよぎりました。

例えば一個500円位の大きなパンなら、一日100個作って売上は5万円になります。

100個は、作った事のない方にはビックリの数だと思いますが、パン屋さんに勤めていればどうという事は無い数なのです。

これが例えば品数が5種類だとそれぞれ20個ずつになります。

そう書くと、なんとなく楽に見えてきたりして(笑)

週に一度はお休みして営業は一月25日で、月収は125万円となります。

大きなパンで、つまり食パンをメインとした商品構成で、具材をほとんど使わないパンを作ると、驚くほど材料費はかからない事が解ります。

月収125万円のうち、多くても原材料費は25万円で済みます。

すると、残りの100万円から、安い工房の家賃と、水道光熱費などの経費、設備の支払いなどを差し引いても充分貯金が出来ると思いませんか。

自分の手持ちのお金と、車を持っているかどうか、現在お住まいの敷地に工房が立てられるか、ガレージが改装できるかなどなど、状況によって当然かかる経費は違うはずですが、店舗をそこそこの場所へ建てたり借りたりするよりは、かなりの削減となるはずです。

また、100個のパンを100件に届けるのは至難の業です。

しかし、現実としては経験上、1件が1個ということはまずありませんし、これも経験上企業や施設などではまとめて注文していただけますので、多い所では1件で5万円分の注文を頂く事も別に特殊な事ではありません。

要するに、そのパンを気に入って頂けるかどうかの問題、その1点に全てがかかっているのです。

自分が作ったパンを自分で届けて、お客様と直に触れあい、美味しいという感想をもらう・・・

その為には、自分が作って届ける事が出来る限界を決めて、ただ売ろうとするのは辞める事が大切です。

時には断る・・・・それが希少価値へとつながるのも、現代の特色であると実感しています。

工房を作り、自分の納得のいくパンをまずは作る。

そのパンを持って営業活動からスタートするのです。

次回伺うと、前回置いてきたパンがそのままになっているなんてことはざらです。

門前払いや、あれこれイヤミを言われる事もあり、心が折れそうになる事もあるでしょう。

だからこそ根性が必要なのです。

これもあくまで経験上の事ですが、商品さえ気に入って頂ければ、あとは面白いように口コミで広がります。

営業で心を折られていた事なんて吹っ飛ぶ時が必ず来ると私は実感しています。

ざっとですが、ここまでに書いてきた事はあくまで私個人の思案です。

ですから、すでに宅配のような形態を実行している方もいらっしゃるでしょうし、やってみて上手くいかなかったという方も当然いるはずです。

ですので、何事も万能ではないと言う事と、美味しい話はころがってはいないと言う事をどうか認識しておいてほしいと思います。

そして、この展開には大切な二つのキーワードがあります。

一つは、いつまでも作る喜びを感じられるような心の余裕を持てる状態にすることです。

つまり、売れるからと言って作り過ぎない事が大切で、空いた時間に次の商品を開発するのです。

二つ目は、どこにもないパンを作る事です。

つまり、完全オリジナルであり、週に一度は絶対に食べたいと言っていただけるようなパンを開発する事です。

作り手にとって、商品力は自分自身の魅力です。

この魅力なくして、激戦区で注文を取れるはずは無いのです。

そう考えると、これから必要なのは経験だけではなく、発想やあきらめない気持ち、そして根性なのかもしれませんね。

多くの種類のパンが作れなくても、有名なパンを作った経験が無くても、有名店で修業をしなくても、これなら自分流で低経費で始められるというのは魅力ではあります。

しかし、そんな商品がはたして作れるものか・・・・

そんな時はどうか一緒に考えさせて下さい。

それだけが唯一、私の得意分野なのですから (*^_^*)

9 Comments

山 says..."とても参考になりました"
はじめまして
こちらのブログをいつも参考にさせていただいてます
手捏ねのド素人一年生です

こちらの記事を読んだ時、鳥肌が立ちました
有難うございます

暑い日が続いてますが体調にお気をつけてください


2013.08.14 07:05 | URL | #ojBJu5Sc [edit]
かーたん says..."スッキリ"
漠然と自分が思っていたようなことを、文章ではっきり書いて下さっているのを読んで霧が晴れるようにすっきりしました。
一般にパン屋さんを新規開業しようとすると設備や店舗をつくるだけでウン千万円もかかります。頑張って開業してもコンビニやスーパーとのお客さんの奪い合いが待っています。品数多く、大量に焼こうと思えば従業員も必要になります。かといって一人でやれることには限界があります。
あーだ、こーだと考えていると、「やっぱりパン屋を新規開業するのはやーめた」となります。
朝さんが書かれているように、自分が納得するパンだけを焼くということであれば、コンビニ等と競合しないタイプのパンで勝負できる可能性が出てきますね。
2013.08.14 11:02 | URL | #JalddpaA [edit]
しずかな朝 says..."かーたんさん、山さん、コメントありがとうございます。"
かーたんさんはお久しぶりで、山さんは以前の山さんとは違う方ですよね・・・たぶん。

しかし、こんなに食べ物が沢山販売されている時代に、そもそも食べ物を売ると言う必要があるのですかね?

どう見ても押し売り状態、叩き売り状態にしか見えず、出来る事なら参戦したくない心境です正直。

求められている・・・という実感が欲しいのは私だけなのでしょうか?
2013.08.15 05:19 | URL | #- [edit]
SAIKA says...""
はじめまして。
私もいつも拝見し、勉強させていただいています。

いつかはベーカリーカフェをオープンさせたいと夢見て、現在は製パン修行中です。
夢と現実は違う・・。
そう思うから納得のいくパンがコンスタントに焼ける技術を習得したい。
パンを選ぶのはお客様です、そこに自分の技術の全てが詰まっていて、他に引けをとらない美味しいパンと、そのパンを販売する環境(お店の雰囲気)、お客様の味覚が合致したとき、初めて自分の存在価値があるものではないでしょうか?
・・・と若輩者が偉そうに言ってすみません。
でも私はいろんな方の指導と、こちらのブログを見てそういう道を歩みたいと思いましたよ。
2013.08.15 23:45 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."SAIKAさん、コメントありがとうございます。"
ベーカリーカフェなんて、素敵ではないですか?

自分の道をしっかりと見つめ、その為の努力をすでに始められている・・・・

何と素晴らしい人生でしょう(*^_^*)

誰が何と言おうと、自分の思うようにやる、それが大切だと思いますよ。

人には色々な道がある、迷いもある、決断が必要な時もある・・・

希望を持っている人、これからの人、懲りてしまった人、悩んでいる人・・・・

人は様々なタイミングで、時に天国のような気持ちになったり、地獄を見たりして生きていくものなのだと思います。

ただ言える事は、あきらめたら終わりと言う事、負けだと言う事、その事だけ解っていれば良いのだと私は思います。

これからも自分を磨き、素晴らしい夢をかなえてくださいね。
2013.08.16 13:09 | URL | #- [edit]
あひる says..."ようやく"
水分9%アップの山食が普通に焼けるようになりました。
若干手法は変えましたが、本当にふわふわでしっとりできめ細かく、発酵時間を長く取る分イースト臭さもなく、小麦の香ばしさが発揮できるようになりました。
ありがとうございました。
アドバイスを頂いた事で、つまり、出来る事だと確信を持って毎回少しずつ工夫して・・なのに何故か手数は減った気がします。無駄が無くなりました。
2個同時に作れる日も遠くない気がします。
同じ材料で作るものが、これほど違う事をこの一年で本当に思い知りました。
また、次のご報告が出来るまで精進します。
(山食だけはそこらのお店には負けない味だと思います。笑)
2013.08.16 17:08 | URL | #- [edit]
山 says..."返信有難うございます"
お忙しい中わざわざ返信くださいまして有難うございます
はい初コメントですので別人になります
同じ名前の人がいたのですね
確かに押し売り状態、
スーパー、コンビニなどの野菜、惣菜、弁当など捨てる物が多すぎます
農家の方も形が悪いと売れない
魚もしかり
そのような物を使って何かできるのでは?と日々悶々としております

贅沢はしてはいけないなと染み染み感じます

2013.08.17 20:22 | URL | #JqQD0nC2 [edit]
ニモ says..."山食(ワンローフ)につきまして"
静かな朝さま

いつもいつも記事と関連のないコメントで申し訳ありませんが、山食(ワンローフ)の出来につきまして、教えてください(泣)
先週木曜日から今日と4日連続でつくったのですが、うち3日は下記のようになりました。

①焼き上がりのボリューム(かたち)が少し小さいかな?という感じで、伸びも不均一でクラストも荒れている感じ

②クラムはやわらかいけれど、“ふわふわ”“しっとり”とは形容しがたく、湿っているというかお餅みたいな感じで、きめが粗く、色が白くなくて、くすんでいるというか、半透明というか、黄色っぽい

です。

原因は何になりますでしょうか?
暑いから過発酵?それともこね不足?でしょうか?

強力粉280g(イーグル)
水190g(冷蔵庫から出したて)
砂糖20g(製菓用特細目グラニュー糖)
バター20g(食塩不使用)
塩4g(一般的な食塩)
スキムミルク6g
インスタントドライイースト2.4g

お忙しいところ申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
2013.08.18 16:25 | URL | #SVUff9GE [edit]
しずかな朝 says..."ニモさん、お久しぶり??ですね。"
残念ながら、この説明ではまったく解りません。

一度メールフォームからメールを頂ければ、こちらから返信しますので、その際画像を色々と撮ってもらって送って下さいますか?

その時は、配合はベーカーズパーセント表記で、捏ね上げ温度や発酵時間なども細かく教えてください。

2013.08.21 15:19 | URL | #- [edit]

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