ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

ミキシング・・・を理解しましょう

今回は、メールでいただいた質問と、コメントで頂いた質問の二つをご紹介します。

まずはこちらから・・・・

【ミキサーについて教えてください】

こんにちは またお世話になります

私の働いてる店には縦型ミキサーしかなくスパイラルミキサーと言うものを恥ずかしながら見た事も使った事もありません

そして本で得た知識なのですがミキサーの回転数を変える事で縦型でもハード系のパンに対応できるみたいな事を知りました

しかし調べてみた所スパイラルミキサーといってもメーカーや大きさによって回転数はバラバラです

回転数とはなにを基準に決められているのですか?

例えばとてもいい生地を捏ねられるスパイラルミキサーがあったとして、そのミキサーの回転数と同じにしたらいいのですか?

やはり捏ねる構造自体が違う訳だからそういう訳ではないのですか?


正直私はあまり設備については詳しくはありません。

色々なお店や工房に伺った際にも、ほとんどが違った設備を使用していらっしゃるので、あくまで完成品や生地の状態を見て、配合と製法と設備が合っているかどうかを見る事からはじまります。

ですので、どの設備が良いか悪いかという判断は、通常はあまり行わないのです。

ミキサーについても、手で捏ねるよりも明らかに楽であり、これがなければ量をさばく事は不可能であると考えると、どのミキサーであれ毎日手を合わせたくなるような気持ちになるのです。

ご質問にあるように、大きく分けると縦型のミキサーとスパイラルミキサーが多く使用されていると思います。

その両方をお持ちのパン屋さんも多いと思います。

しかし残念ながら、それはフランスパンはスパイラルミキサーが良い・・・・と聞いている??

あるいは、その様に教わった・・・・

あるいは、機械屋さんからそう勧められた・・・・

と言うような場合がほとんどで、なぜこの生地はスパイラルを使用するのですか?と聞くと、答えられる方はほとんどいませんでした。

と言う事は、使っている方々にもその特性と言うものを実感している人は少ないのではないでしょうか?

もっと言うなら、フランスパンのミキシングはどのように行うべきか・・・・

と言う事自体を知らずにミキシングを行っている人も実に多い。

それなのに、その生地の為に設備をわざわざ揃えるのですから、?????と言う気持ちになったりします。

そして、肝心なのはどのミキサーで捏ねるかと言う事なのではなく、生地の状態はどのミキサーでどの位捏ねた時が最善なのか??と言う事なのです。

そしてそれは、小麦粉や製法や職人の好みによって大きく違うと言う事でもあり、良いか悪いかではなく、どれが好みかという判断になるのです。

だからこそ難しいのですね。

何が本当だかは実態がある様で無い・・・・職人の好みでしかないのです。

ですので、正直言ってミキサーはどのようなものを使っても、別に大差はありません。

どちらのミキサーでどのような生地を捏ねても構いませんし、すべてを縦型で捏ねる事も、あるいはすべてをスパイラルで捏ねる事もまったく問題は無いのです。

その程度の違いであると言う事をまずはご理解下さいね。

次に、誤解の無いようにそれぞれの特徴だけは書いておきますので、後はご自分で体感していただきたいと思います。

まずは一般的な縦型ミキサーですが、このミキサーを使用していないパン屋さんはほとんどないと言える程、どのパン屋さんでも使われているミキサーですよね。

ただし、メーカーによって回転数などが違うのはもちろん、捏ね方もだいぶ違うのです。

縦型ミキサーというのは、生地をボールの中で叩きつけたり巻き込んだり擦り込んだりという動きを、一連の動作の中で行っています。

それはまるで、プロレスラーが小麦粉100g位の生地を手で捏ねているようなもので、十分な力を持って生地を作り上げる事ができるのです。

ボールの材質や大きさ、あるいはフックの材質や形状などによって、同じミキサーであっても生地の捏ね上がり状態が違うと言う事はパン屋さんなら皆さん経験済みですよね。

そして捏ねる量によっても、温度の上がり方やミキシング時間が違ってくる事もご存じのはずです。

このタイプのミキサーと言うのは、とにかく充分にミキシングを行いたい時、つまりしっかりと捏ねたい生地に向いたミキサーであると言えます。

その分、生地の摩擦も激しいので、ハード系全般には出来るだけスパイラルを・・・となるのだと思われます。

次にスパイラルミキサーですが、このミキサーはフックが回転するだけではなく、ボールも同時に回転するのです。

そうする事で、摩擦を抑えて短時間でミキシングを完了する事が出来ると言うのが特徴になります。

生地の摩擦上昇温度を上げたくないパンとしては、ハード系のパンがその代表ではありますが、それ以外にも冷凍生地を作る際にも摩擦は出来るだけ避けなければならない為に、このミキサーが使われています。

と言う事で結論としては、回転数によって善し悪しや向き不向きが決まるのではなく、それぞれにある程度の特徴を持ったミキサーですので、自分の作りたいパンがどのようなミキシングを望んでいるのかによって使い分ければ良いと言う事になります。

お解りいただけましたでしょうか(*^_^*)


次にこちら・・・・


ミキシングについてなのですが、低速で3分とか中速で5分とかの場合例えば低速を4分にして中速をその分減らして4分にすると、どうなると考えればよろしいでしょうか。

または、急いでいる時は低速は1分程度にして後の中速を長くすると言う考え方は間違っていますでしょうか。

そもそもなぜこのようなミキシング時間になっているのかも知りたい所なのですが、

バカバカしい質問かもしれませんが、はっきりと答えてくれる人が周りにおりません。

何卒お暇な時で構いませんのでよろしくお願い申し上げます。


ちっともバカバカしくはありませんよ。

なかなか核心をついた質問でビックリしました(笑)

そもそも、ミキシングというパン作りにおいての最初のステージには、様々な製パン理論が存在しています。

それは、その後の成形や焼成というステージでは、経験や技術力が多いに役立つのに対して、ミキシングと言うのは機械が全てを行いますので、それをコントロールする理論が必要になる訳ですね。

そして、ミキシングの時間、つまり低速で何分とか中速で何分と言うのは、先人の知恵として語り継がれてきている物であり、それを基本として職人それぞれが設備や配合などに合わせてアレンジしているものなのです。

最終的な生地の完成度は、経験が物を言うと言えますし、目で見て、触れてみての判断になろうかと思いますが、その段階までを行ってくれるのがミキサーと言う事になる訳です。

さてご質問にあるように、低速の時間を変更したり、中速の時間を変更したりは可能なのかと言う事についてですが、それは捏ね上がった生地状態をご自分で判断出来るのであれば変更していただいても差し支えありません。

判断できないのであれば、教わった通りの時間配分にしておいた方が無難だと思います。

なぜなら、その時間配分によっては、生地の完成度が大きく違ってきてしまうからなのです。

ですので、例え急いでいるからと言って、早く回せば良いと言うものではないのです。

ここは、製パン理論にのっとって解り易く説明しておきましょう。

まず、ミキシングと言うのは、様々な原材料を混ぜて一つの生地にしていかなければなりません。

水ものもあれば粉ものもあり、ベタベタしたものもあれば、ダマになり易いものもありますよね。

それらをまずは充分に混ぜなければなりません。

これがしっかりと混ざっていないのに早く回してしまうと、生地の中で材料がまばらに散らばる事になるからです。

このステージの事を、製パン用語ではピックアップステージ(つかみどり段階)と呼びます。

この段階はとても大事で、配合する材料が多ければ多いほど、充分に時間をかけなければならないのです。

それが、低速で3分から5分となるのです。

次に、生地が十分混ざったら、今度はしっかりと生地を作っていかなくてはなりません。

その為には中速でしっかりと生地をつなげていく必要があります。

このステージの事を、製パン用語ではクリーンアップステージ(水切れ段階)と呼びます。

この段階では、しっかりとそれぞれの材料が混ざった生地が、いよいよ滑らかなパン生地になるように捏ねられていく段階で、やはり中速で3分から5分といったところが一般的でしょうか。

油脂が入る生地の場合は、このステージを終えてから投入し、低速で混ぜていきます。

次に、油脂も含めて全てが良く混り、ある程度生地が捏ねられた状態から、いよいよ完成までしっかりと中速で捏ねていきます。

このステージの事を、製パン用語ではディベロップメントステージ(結合段階)と呼びます。

油脂がしっかり混ざった後、中速でやはり3分から5分というのが一般的だと思います。

そして、最後が生地の完成であるファイナルステージ(最終段階)の見極めとなるのです。

つまり、低速でしっかりと材料を混ぜ、生地をある程度作り、油脂を投入して混ぜ、最終段階まで捏ねる、それが低速何分中速何分と言う意味なのですね。

最初の材料をしっかり混ぜる時間を、もしも中速にした場合、材料は飛び散り、逆に混ざりの悪い生地になってしまいます。

また、だらだらと低速で捏ねたりすると、グルテンはダレてしまうことになり、伸びの悪いパンになってしまうのです。

ですからこの部分だけは安易に変更するのではなく、基本にのっとり、行わなければならないと共に、捏ね上がった生地の状態を早く掴めるようになる事が、良いパンを作る上で大切な事なのだと言う事を知って頂きたいと思います。

3 Comments

パン職人見習い says..."ありがとうございます"
お忙しい中いつも分かりやすく丁寧に答えていただきありがとうございます。
私の中でスパイラルは手ごねでいうとこの揉みこみ、縦型は叩きつけという解釈できっと叩きつけ動作の縦型よりスパイラルの方がより良いフランスパンが出来るのだろうという勝手な思い込みがありました。
明日からまたよりいっそう注意してこね上がった生地の状態、焼き上がった商品を観察していこうと思います。
まだまだお世話になると思いますがこれからもよろしくお願いします。
2013.10.21 16:54 | URL | #F9ckFCGU [edit]
素人パン says..."焼成後生地の空気"
こんにちは。初めて投稿させて頂きます。私は毎日3000個のパンを焼成する現場で勤務しております。悩みが、パンを焼成後に空気が生地に出来てしまいます。冷凍→解凍して販売する為、空気が入っていると解凍後に空気の部分がつぶれて不良商品となります。
原因と解決策を教えて頂けますでしょうか?
生地は、前日に仕込み生地玉冷蔵保管し、成形当日に生地を14度くらいの温度に戻し使用しております。成形時にガス抜きがあまいのかまたは、ガスを抜き過ぎなのか。試行錯誤しております。
2016.08.31 18:12 | URL | #ElJgphU6 [edit]
しずかな朝 says..."素人パンさん、コメントありがとうございます。"
焼成後の空気??というのは、要するに火ぶくれが出来てしまうということですよね。

実に実によくある例ですよ。 

ただ、お構いなしに作っている人もいますねどね(笑)

パン屋さんにお勤めのようですので、誰が悪いのか、どの工程が悪いのか、配合は適正かなどなどお勤め先の状況によって判断の難しいところです。

一般的に言えるのは、発酵不十分の生地である可能性が高いと言えるでしょう。

捏上温度が低すぎる、フロアータイムが短い等の場合ですね。

ミキシングが適正でない場合もあります。

生地の状態を見ただけで解る人がいれば、それなりの処置を行えば改善されますので、成形を行う人の技量が大きく関わってくるといえるでしょう。

仕込担当者、成形担当者の技量によって、この現象が出てしまうということだけは間違いないと思います。

もちろんオーブン担当者にも出来ることが無いわけではありませんが、この手の生地はすでにホイロでベターッとしていることが多いと思いますので、ホイロの温湿度を低くするくらいしか手がありません。

しかしそうすると焼き上がりに時間がかかることになるでしょうから、やはり生地段階から修正していくしか無いといえますね。

勤め先ということはチームでのパン作りになりますよね。

もしあなたにそれらを正す技量があるとしても、それを指導する立場に無ければ難しいのが職場というものでしょう。

それでもきちんと改善策を知りたいと思われるのでしたら、詳しい工程や配合・設備や商品の画像なども送っていただく必要があります。

その場合はメールフォームよりご連絡下さいね。
2016.09.01 08:32 | URL | #- [edit]

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