ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

衛生管理の本当の意味とは・・・

こんな質問をいただきました。

主人と市内のあるパン屋にて、あんパンやクリームパンを購入しました。

家でパンを食べていると、主人が一言、このあんパンの生地、オニオンとマヨネーズの匂いがする、せっかくの菓子パンが台無し・・・とつぶやきました。


私は型に入れて焼く食パンとテーブルロール位しか焼かないのでよく分かりませんが、パン屋さんでは、大量のパンを作るため、同じオーブンの鉄板でいろいろなパンを焼くので、別のパンの香りとかがついてしまうことはよくある事なのでしょうか?

いちいちオーブンシートとかを敷いて焼いたりしないでしょうから、前に焼いたパンの匂いとかがついても仕方ないのでしょうか?

次回、そこのパン屋さんに行ったら、言ってあげた方がいいのでは?と主人に言われたのですが、言ったら、クレーマーみたいに思われてしまうかもと思ってしまいます。

しずかな朝様は、どのように思われますか?


どうやら嫌な気持ちになられたようですね。

お察しします・・・・そして私もその件は良く感じている一人です。

買われたパンに、他の食材の臭いが付いていたと言うのは、まぎれもなくご指摘のような同じ天板で複数のパンを焼くからであり、だからこそ本来は次のパンを焼く前に天板を掃除しないといけない訳なのですが、実際には忙しい???・・・・あるいは気にしていないのか、掃除無しで連続使用しているお店があります。

パン屋では、最終的にはこの ”焼く” という工程のお陰で、いわゆる除菌は行われています。

だからこそ、多少不衛生であったとしても、特にトラブルは発生しないのです。

そしてそして、だからこそ無頓着になってしまうのだとも言えるのです。

売れるパン屋さんと言うのは、オーブンが空く暇がありません。

ず~~~~っと焼きっぱなしです。

そんなお店のオーブンは大抵3段以上ありますから、常にオーブンの前の作業台には次に焼く為のパン生地が待機しています。

ですので、天板を清掃する場所もなければ、そんな暇?すらないのです。

かと言って、相当数の天板を揃えておくと言うのにも限界がありますし、何よりコストがかかりますよね。

ですから、どうしても何度かは連続使用する事になる訳です。

それでも、衛生観念をお持ちの方がオーブン、または天板に生地を乗せる成形担当をしていた場合は、例えばマヨネーズがこぼれていたり、具材が付着していたりすれば、それを取り省く位の事は当たり前に行っていると思います。

サッとひと吹きダスターで拭くだけでも済む場合もあるでしょうから、ひどい汚れの天板だけをよけて、比較的綺麗な天板を選んで連続使用すれば済む話だからです。

しかし問題は、そのあたりをまったく気にしていない職人?・・・なのか、パートさん?なのか、そんな方が担当していると、出来る事なら掃除は最後の一回にしたいでしょうから、特に途中で掃除する事もなく、連続使用している事が実情だと思います。

マヨネーズがこぼれている天板でも、同じマヨネーズを使用するパンであるならば、ごまかしがきくと思うのです。

しかし、そこに甘い菓子パンを成形して乗せるその神経・・・・

それこそが大問題なのだと思うのです。

まさに今、新進気鋭のベーカリーが大人気になっていますよね。

あの街にも、この街にも、こんなに素敵なお店があります・・・・と言う具合に、ベーカリーの特集や紹介記事が非常に多くなり、業界人としては嬉しい限りです。

しかし、その全てのお店が、果たして衛生的なのか???と言う事を考えると、とても不安な気持ちになります。

と言うのは、もちろん初めのうちは何事に対しても真摯に向き合っていますので、品質管理から衛生管理に至るまで、真面目に取り組んでいる事でしょうし、ある程度そのあたりを考える余裕があると思うのです。

それが、マスコミや雑誌に取り上げられ、ひとたび人気が出てしまうと、そんな暇がなくなってきてしまうのです。
誰も初めからおろそかにしようとしている訳ではありません。

ただ、優先順位からすると、とにかくパンを大量に作らなければならない訳ですから、だんだんと工房内も乱雑になってしまうのです。

だとすると、忙しいパン屋さん、つまり人気店は皆不衛生なのか???と言いますと、もちろんそんな事はありません。

掃除に特別時間をかけて、一見無駄なようでも、清掃をする意味合いをしっかりと認識しているオーナーあるいは会社というのは実に多いと思います。

餃子の大将の社長が、毎日誰よりも早く出勤し、本社の玄関を清掃している姿が報道され、それを気に一気に売上を伸ばした事は皆様も記憶に新しいと思います。

オーナー自らが率先して掃除をするという風習を持つお店や会社は、実は非常に多いのです。

特に食品関係の会社にその風習は多く、食べ物を作って提供する職業においては、清掃は欠かす事の出来ないお客様との約束であると言われています。

だからと言って、言うは易く行うは難しですよ。

実際に何年もの長きにわたって実行し続けていける人には、本当に頭が下がりますし、まさに商売の神様のように見えてきます。

では逆に、個人店ならば掃除は行き届いているかと言いますと、そんなに忙しくないであろうお店でも、不衛生なお店はたくさんあります。

掃除と言うのは、暇なら出来るというものではないのですね。

私自身も、けして掃除が好きな方の人間ではありません。

それでも、自分が作ったパンでお金を頂く訳ですから、そこだけは最善を尽くして望まなくてはならないと常々考えています。

しかしながら、衛生管理に対してあまりにも無関心過ぎる人・そしてお店が沢山ある事を私は多く体感してきました。

別のカテゴリ度々紹介してきましたが、私はどうしても個人店よりも大手チェーン店の方が安心して食べられるという印象を持っています。

そんな事を言うと、真面目に取り組まれている個人店の方には大変失礼だとは思うのですが、実体験として多くの不衛生な個人店を目の当たりにしてきた私にとっては、人間性が確認できないオーナーのお店よりも、システムに守られている安全重視の大手チェーン店の方に、どうしても安心感を憶えてしまうのです。

何をそんなに目の当たりにしてきたのか・・・ほんの一部だけ紹介しておきますと、

例えばあんパンを作っている最中に、餡を足元に落としてしまったとします。

誰かがそばにいれば、当然捨てると思うのですが、それを拾って何食わぬ顔で餡パンを完成させて住まう人がいるのです。

そんな人、あるいは職場と言うのは、人がいてもそうなのですから、誰もいなかったら何をしているのか解ったものではありません。

パン屋では、様々なフィリング(餡・クリーム・カレーなど)を使いますので、それをタッパーなどに入れて使用するのですが、少量になって来て、新しい具材を入れる際に、そのタッパーを洗わずに付け足す人がいます。

すると、タッパー上部側面に日にちの経過した具材が、カピカピになって付着しているのですが、それを新しいものと混ぜて使用するのです。

おまけに前回までカレーが入っていたタッパーと言うのは、やや黄色く着色してしまっていますし、臭いも付いています。

なのにそこにクリームを入れたりする職場があります。

また、全てのタッパーに蓋が無い状態で、使用後すぐに冷蔵庫に入れずに、地べたにおくお店がありました。

そのお店では、スタッフがその蓋なしタッパーの上をまたいで移動するのです。

この光景を見た時には、正直吐き気すら憶えました。

落とした材料を拾って使用するというのは、大なり小なり誰でもが経験する事だと思います。

もったいない・・・・少しくらいなら解らないだろう・・・・

それが人間の心理ではないでしょうか?

しかしそれは、大手のシステムでは完全否定です。

もったいないとか、原価に響くとかと言う事なのではなく、安全が第一であり、それが信用につながるからなのです。

そもそも、それをもったいないからと言って拾って使ってしまいたくなるのが人間というものなのではないでしょうか。

そして、例えば工房で一人きりで作業をする様なパン屋さんであるならば、その方がいったいどれ位の衛生観念をお持ちなのかと言う事に、すべてを委ねる事になる訳です。

しかし、パンならまだ焼きますから、例え一度地べたへ落とした具材を食べたとしても、お腹を壊すような事はありませんが、これが焼いた後のパンであったらと考えると、とても気持ちが悪くなりますよね。

職業柄、ケーキ工房やレストランの厨房にお邪魔する機会も多いのですが、そこで多いのは完成品を落としてしまった場合の対処法でした。

ピザを落としてしまった場合は、表面のチーズが汚れていますので、その上に更にチーズをかけて今一度焼けば大丈夫であるとか、同じピザの場合は皿はいちいち洗わずに使うとか、サラミが古くなって少し臭くベタベタしていた時は、洗って使っていたりとか、ピザソースの表面にカビが発生していた時は、表面だけだからと言って大きいものは取り省き、残りは混ぜてしまったりとか、このような厨房の冷蔵庫と言うのは、まったく掃除されていませんのでとにかく臭います。

至る所にカビが発生していますし、様々な食材がこぼれ落ちては乾燥しているのです。

なぜそんなお店が、営業を続けていけるのでしょうか?

保健所の検査はどうなっているのでしょうか?

私の経験から言いますと、保健所の検査というのは多くても年間で2回程度で、保健所の検査員が直接来る事のない場合もあります。

と言うのは、やはり人員には限界があるからだと思うのですが、代わりに来るのが地元の商店会などの業界関係者が代理で来る事が多く、そうなると世間話で終わってしまい、検査は実際には行われないと言う事が多いのです。

また、検査日数日前には関係者との飲み会があり、その会に出席しているお店の検査はゆるいと言う時もありました。

保健所と言っても、悪く言えばお役所仕事ですので、要は問題が起きた時には対処すれば良い、問題が起きていない場合は配布物を配る事と、自主管理表なる清掃チェック表さえ付けていれば、後はそんなに厳しい検査をする必要は無いとお考えなのではないでしょうか。

そもそも、職員の数と店舗数が合っていない訳ですから、すべてをチェックなんてしようがないのが実態でしょう。

安心安全なパンを作る為に、当店では無添加で天然酵母を使用しています・・・・

そんなパン屋さんが非常に増えました。

天然酵母も様々な果実から作り、全部で5種類ある・・・とか、国内産の小麦で安心安全とか、無添加低温発酵だから安心して召し上がってください・・・・というような取り組みは、お客様の側からすると選択肢が増えて非常に有難いと言えますよね。

しかし今回のような衛生面、つまりは製造の実態というのはなかなか表面には出て来る事がありません。

また、購入する側がそれをチェックする事もほぼ不可能でしょう。

そうなると、本当の安全とは何なのか?

何がお客様との本当の約束なのか?

物作りの心構えと姿勢というものを、改めて自らに問いかけ、どこまでも謙虚に、どこまでも基本に忠実にいかねばならないと考えさせられました。

この質問が自分への戒めでもあると強く反省し、心強きパン職人であり続けたたいと思います。

質問、そしてご指摘ありがとうございました。

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