ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

ドーナツを綺麗に揚げるには・・・・

こんな質問をいただきました。

質問ですが、ドーナツの気泡についてです。

ドーナツがドーナツフライヤーについている乾ホイロから出すときは、以前働いていたお店では出してすぐに揚げずラックにしばらく置く様に言われました。

そうすることで、ドーナツを揚げてもドーナツが焼いたお餅のようにベコッと膨らんで潰れたような跡ができにくいとのことでした。

実際に、カレーパンが100個注文が入った時に、最初に揚げたものよりも、後半に揚げた物の方が、安定した膨らみ方をしていました。

これらはどういう理由からなのでしょうか?

乾ホイロからだして、しばらく置いた方がいい、と自分はスタッフにいい、スタッフも置いていますが、
正直な所何分位おいたらいいのか、と聞かれても、大体表面が乾燥してから、と言っています。

しかし、あまり乾燥しすぎるとふっくらならずに油っこいドーナツになる時もあります。

ですが、やはり少し置いた方がキレイに膨らむと思います。

ホイロの時間もほとんど感覚でやっていますが、ホイロの温度は33度に設定していますが、夏は30分でも十分膨らみますし、冬場は40分以上入れている事がほとんどです。

(ドーナツ生地は前日冷凍して、夜に冷凍庫から冷蔵庫に移して、朝冷蔵庫から出して、しばらくしてから乾ホイロに入れます。)
 
ドーナツの乾ホイロの適正温度は何度位が良いでしょうか?

また、膨らんで来てから、表に出して、そこから置いておくのはどのような理由で、どのような意味があるでしょうか?


今回の質問は、似たような内容のものが良く送られてきます。

そのほとんどはパン屋さんからなのですが、皆さんドーナツについては”これだ ” と言うものを掴めずにいるようです。

製パン全般として言えば、製法なり種類なりが多い焼成パンの方にどうしても気が行ってしまいがちですが、実は難しさと言う点で言えば、ドーナツの方がはるかに難しいと言えるのです。

それはなぜでしょうか?

それは、焼成するパンと言うのは、オーブンの中である程度焼き上がるまでには数十分という時間がかかるものであり、その間の生地に対する熱の伝わり方が緩やかであるからなのです。

他方ドーナツの場合は、ほんの数分で色が着いてしまうほどに、生地に対して熱の伝わり方が異常に早く、そして強いと言う事になるのです。

するとどうなるのか・・・・?

それは、ピザなどを専用窯で焼いた事がある人ならお解りだと思いますが、ピザ生地というのは専用のオーブンに入ってほんの数分で、見事に風船のように膨らんできますよね。

具材が乗っている中央部分は具材の重さで膨らみはしませんが、淵の部分が程良く膨らむのもピザの魅力だと思います。

このピザ生地がほんの数分で膨らんできてしまうのは何故かと言いますと、それはオーブンの温度が400℃以上もあるからなのです。

では、そんなピザ専用窯でバターロールや菓子パンを焼いたら、いったいどうなると思いますか?

恐らくほんの数分で、実にいびつに、あちこちが膨らんできてしまい、焼き色がとてつもなくまだらになり、見れたものではないようなパンが完成する事になるでしょう。

どうしてそうなってしまうのかと申しますと、オーブンの温度がパン生地にとっては高過ぎるからであり、パン生地のイーストがビックリしてしまう事により起こる現象なのです。

昔懐かしいビニール風船というものを皆様はご存知でしょうか?

歯磨きチューブの小さくなったようなものから、ベタベタとした半固体のセメダイン臭の物体をストローの先端に着けて、ゆっくり膨らますと、しゃぼん玉の大きくなったもののような薄い被膜の風船が出来上がると言うものです。

このビニール風船は、ゆ~くりと膨らますのがコツで、これを急いで膨らまそうと息を荒げると、途端にわれてしまうのです。

高温のオーブンに入れられたイーストは、あまりの高温に驚き、いつもよりも大急ぎでガスを発生させます。

すると、膨らみ方が不安定になり、表皮が破れてしまったり、あちらこちらにいつもよりも大きな気泡が出来上がってしまうのです。

急に勢いよく膨らまそうとしたビニール風船が割れてしまうのと、同じ現象ですね。

パン生地の中には、無数の小さな気泡がたくさん存在し、それがじっくりと膨らんでいく事で、それぞれがバランス良く膨らみ、見事な内層となる訳です。

ところが、その無数の気泡に対して、ビックリするような勢いでガスを発生させてしまうと、それぞれが時には合体し、時にはお互いを割ってしまったりする事になるのです。

200℃前後でパンを焼くと言う事が、実はパン生地にとっての必然であると言う事の証でもあるのですね。

さて、ではドーナツはどうなのかと言いますと、生地温度が30℃以下のパン生地が、温度差が150℃以上もあろうかという灼熱の油の中に、直に放り込まれる事になります。

この時の生地の表面は、いったいどうなっていると思いますか?

皆様がいつも入っているお風呂の温度が約40℃前後ですよね。

これが仮に50℃であったとすると、足を入れた途端に あっつー!!! ですよね。

その時の驚きのいったい何倍あるでしょうか・・・・

そんな灼熱の油の中に、いきなり放り込まれたパン生地の驚きは、先のピザ生地の比ではないでしょう。

イーストは大慌てでガスを発生させ・・・とかなんとか言っている間にも、大やけどになって揚がってしまうほどの短時間でドーナツは完成してしまいます。

だからこそ、ドーナツを綺麗に膨らませながら揚げる事は、焼成するパンよりもはるかに難しいのだと言えますし、そもそも無理がある事にチャレンジしているようなものなのです。

ドーナツを綺麗に揚げようと思ったら、まずはこの事をしっかりと認識しなければなりません。

焼成するパンというのは、じっくりと熱が伝わるのに対して、揚げるパンというのは、直に熱に触れる事になるのだと言う事。

ですから、理屈から言ってもまったく同じ生地では対応できないということになるのです。

つまり、揚げパンとしての専用の生地でないと、うまく綺麗に揚げる事は難しいと言う事をまずは知るべきでしょう。

これらの事を考慮すると、専用の生地というのはいったいどのあたりに注意しながら考えれば良い事になるでしょうか。

それは、色々とあろうかとは思いますが、まずはガス発生は少ない方が良いとは思います。

つまり、イーストは控え気味に配合する事です。

そして、膨らみ過ぎない生地にする事が重要でしょう。

つまり、強力粉だけで作ると膨らみ過ぎてしまいますので、薄力粉などの弱い粉をブレンドする事が望ましいと思います。

また、砂糖の量が多いと表面がすぐに焦げてしまいますので、高糖度の生地は揚げパンには不向きであると思われます。

ミキシングもやや控えめにして、グルテンを強化し過ぎないようにする事もコツのひとつとなるでしょう。

ドーナツと一言で言っても、実に色々な配合や成形があると思います。

この生地はいつも綺麗に出来るのに、この生地はいつも失敗してしまう・・・・

そんな経験は誰でもお持ちのはずです。

この、いつも綺麗に出来る生地と、そうでない生地の違いはいったい何なのか?

その違いこそが、配合のポイントとなるはずですから、自店の配合バランスをよ~く分析してみましょう。

一つの原材料が入っているか入っていないかと言う事よりも、その配合量やバランスに大きなヒントがあるものです。

いつも何気なく作っているドーナツだと思いますが、常に満足のいく完成度で仕上がっているでしょうか?

よ~く観察し、分析し、自分なりの答えを見つけて欲しいと思います。

さて、ご質問の本題に入りたいと思いますが、ホイロから出した生地をすぐに揚げずに、しばらくは室温にて乾燥させてから揚げるのはなぜか?

または、どのような意味があるのかと言うご質問ですが、このしばらく乾燥させてから・・・と言うのが、実はとても大切な、ドーナツを美しく揚げる為のコツになるのだと思うのです。

表面を乾燥させることにより、ある程度強い表皮を作りたい、そして表面の水分を減らしておく事で、油に触れた時の生地の表面温度上昇へのダメージを少しでも軽減させたいという意図があるのです。

この時のイメージとしては、乾燥した表皮がバリヤの様になって、内部に熱が過剰に伝わる事を避ける働きをすると言ったところでしょうか・・・

とは言え、過剰に乾燥させてしまうと、油の中でまったく伸びないままに揚がってしまうことになり、内層が詰まった状態の火通りの悪いドーナツになってしまいます。

ですから、もちろん限度はあるのですが、それは室温に何分放置すれば良いかと言うものではなく、適度にとしか言いようが無いのです。

だからこそ技術が必要なのであり、それがドーナツの難しさでもあるのです。

私の経験からすると、焼成パンに比べて、ドーナツ全般の方がずっと多くのコツを必要とするのだと言えると思います。

この表面の乾燥は、ホイロの中の湿度を低めにしておく事でも可能なはずですから、ホイロから出してから乾燥させなけらばならないと言う事なのではなく、どの段階でも構いませんので、揚げる直前には生地の表皮をやや乾燥気味にしておく事が重要であるという部分をしっかりとご理解いただきたいと思います。

また、ご質問の中の100個の注文が入った時には、後半で揚げた物の方が安定していたというのは、この部分も実は大きな揚げパン全般のポイントとなる部分なのです。

それは、イーストの発酵力がやや低下する頃が揚げ頃 だと言う事です。

そんなことしたら、生地が伸びないのでは・・・・と言うのは焼成パンの理論なのです。

揚げパン、つまりドーナツ全般はすべて油の中への直投入になります。

この時の瞬間的なガス発生を如何に軽減させるか・・・・

それがコツになるのです。

同じ揚げものでも、それとまったく逆の理論なのが天ぷらで、少しでもネタや天ぷら粉を冷やして油との温度差を作り、よりビックリさせることで荒々しい衣を作るのです。

ですから、一般的なパン生地のドーナツでは、低い温度でゆ~っくりとホイロを取る事がとても重要で、かつ適度な乾燥状態が有効であると言う事になるのです。

今日仕込んで今日成形し、今日揚げてしまう場合のドーナツと言うのは、とても安定しています。

それは、イーストやグルテンが温度変化に侵されない穏やかな状態であるからです。

この場合は、たいしたコツがなくても綺麗に作る事が出来るものです。

しかし現状では、質問者様のように一度は冷凍したり、その後に冷蔵したりと、作り貯めておかなくてはならないという事情がある事と思われます。

すると、途端に完成度は低下し、とてつもなく多くのコツを必要とする事になるのです。

そこで私の提案としては、生地は冷凍でも冷蔵でも構いません。

成形だけは当日の朝行うようにすれば、格段に完成度は上がるはずです。

また、全てを当日の朝に成形するのは難しいでしょうから、そんな場合は裸の成形を優先していただきたいのです。

裸の成形と言うのは、パン粉やアーモンドスライスやコーンフレイクなどのトッピングがついていない生地の事を指します。

これらのトッピングがほどこされている生地と言うのは、冷凍や冷蔵から生地を保護してくれますので、比較的安定した完成度が得られるものです。

しかし裸の生地はダイレクトに温度変化にやられてしまう為、これらの成形だけでも当日に行えれば、全般的にドーナツの完成度は向上すると思われます。

工程を優先するあまり、冷凍したり冷蔵したりする訳ですが、そうなるとそれに耐えるだけのイースト量が必要となり、それが逆に完成度を低下させる原因ともなる訳です。

それでなくても、冷凍耐性のある砂糖や油脂を多く配合させる事が難しいのがドーナツ生地ですから、それを冷凍するとその時点で完成度の低下が約束されてしまうようなものなのです。

冷凍生地と言うものが作られるようになってから随分と月日が経過しましたが、日進月歩でより美味しく、より安定的なパンが仕上がるように開発されてきています。

しかしながら、相変わらず冷凍生地の店舗へ行っても、ドーナツだけはなかなか綺麗には揚がっていないのが実情です。

それ程に難しいのです。

パン屋さんはパンを焼く事がメインで、調理パンや揚げパンもやってはいる・・・・

このやってはいると言う所がネックで、この難しい部分を意外とないがしろにしているお店が多いのではないでしょうか。

やるからにはドーナツショップには負けない、美しいドーナツを作りたいものですよね。

と言う事で、いつもながら質問に対してダイレクトに答えられてはいませんが、お店の配合や設備や工程によって、無数のコツがあるのがドーナツであり、基本的にはより低温発酵が望ましく、成形後の温度変化には注意が必要で、適度な表面乾燥がコツになるのだと言う事をご理解いただきたいと思います。

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