ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

焼き込み調理パンの意外な盲点とは・・・

このようなとてもリアルな質問を良く頂きます。

50gのロール生地に乗せられる具材の重さは、最大でどの位までが良いと思われますか?

具材があまり多いと中心部に火が通らずに生焼けになっていると言う事はあり得ますか?

作業の段取り上ホイロを終了していないうちに具材をのせ、その後にまたホイロに入れる事がありますが、それは間違っていると言えるのでしょうか?

具材(例えばホールコーンなど)だけを成形後にすぐに乗せてホイロを取り、ホイロ後にマヨネーズをかけているのですが、そうすると焼成後に中心部がねちょねちょと生っぽい感じになるのは焼きが足りないからなのか、それとも具材を初めから乗せるのは駄目なのでしょうか?

成形の際にクリームコロッケの揚げたものを生地で巻くパンがあるのですが、それを成形後に冷凍保存して、解凍してからホイロに入れるというやりかたをしています。でもそうすると、コロッケがしゃびしゃびとした感じになり、水っぽくておいしくありません。コロッケは揚げた後の冷凍はやはり駄目なのでしょうか?

自家製のポテトサラダが子供達にとても人気なので、ついついたくさん乗せてしまうのですが、焼き上がってすぐに食べた所、中の方はまだ少し冷たい感じでした。これでは完全に火が通っているとは言えないので、具材の乗せ過ぎは禁物と言う事になるのでしょうか?

どうしても子供が好きな具材を中心に使う事になりがちで、うちで一番多く登場するのがフランクとハンバーグです。食べざかりなもので、どんどん大きなハンバーグを乗せたり、太いフランクを乗せて焼く事が多いのですが、先日子供と一緒になってフランクパンを食べていたら、まだフランクが冷たい事に驚きました。チルドの商品なので火は通ると思っていたのですが、意外と中までは火が届かないのだと言う事に気がつきました。このような場合は、一度あらかじめ焼いたものを乗せれば問題ないでしょうか?

成形はピロシキを50gの食パン生地で丸く包み、ホイロ後に上にもう一枚の天板をのせておやきのように焼いているのですが、この場合は生地がオーブン内で膨らんでいく事を強制的に抑え込んでしまっていると言えますよね。と言う事は火通りの良くない生焼けの部分が出来てしまうと思うのですが、そのことを先生はどのようにお考えですか?


とまあ、とても現実的な質問が多いのですが、このあたりも意外と解っていそうで解っていない事と言うのが多い部分だと言えると思います。

単にどのようなパン生地をどう焼きあげるのが良いのか?と言う事だけではなく、そこに様々な具材を乗せたり包んで焼くと言う事は、味の相性はもとより、製パン的に向いているのかどうか、つまりパン生地とその具材は一緒に焼いても良いものなのか、それとも不向きなのかを全て理解するのは意外と大変だと思うのです。

パン生地の種類や配合もさることながら、具材の多さ、種類の豊富さを考えると、全てを理解する事は非常に難しいでしょう。

と言う事は、やはりケースバイケースで解決していくしかありませんよね。

ただし、考え方の骨格となる部分はそう難しいものではないと思うのです。

つまり、どこを抑えておけば良いのか・・・と言う事ですね。

ちょっとまとめてみましょう。


1 具材と生地の相性は良いか? つまり美味しいかどうかですね。

2 具材の良い所とパン生地の良い所が双方とも生かされているか。

3 どちらかが台無しになってはいないか。

4 食品衛生上どうであるか。

これらを上記の質問に照らし合わせて考えてみると、具材をどれだけ乗せるのが良いかと言うのは3番に該当。

具材乗せ過ぎで生焼けになったり、中心部がねちょねちょとしてしまうのは2番に該当。

コロッケがしゃびしゃびになってしまうのは3番に該当。

オーブンで膨らむ生地を強制的に抑え込んで焼く行為は3番に該当。

と言うように、大抵の場合はこのあたりに注意して考えていかなければならないと言う事が解ります。

がしかし、実は上記の3番までは大した問題ではありません。

なぜなら、相性がどうであるとか、生かされているかどうかなどと言う事は、好みの問題でしかないからです。

一番注意して考えなければならないのが、4番の食品衛生上どうであるかという点なのです。

生焼けの具材が乗ったパンを売った場合、もしそれを食べてお腹が痛くなったというお客様が保健所へ商品を持ち込むと、そのパン屋さんには保健所の検査が入る事になります。

すると、事細かにチェックされ、いつもは考えてもいなかった事をたくさん質問される事になり、ありとあらゆる指摘を受ける事になります。

へたをすると、そこで営業停止処分を受ける事になる訳です。

異物混入などにより、保健所の指導を受ける事はあると思いますが、それは不慮の事故ですので以後気を付けるような対策を提出すれば済みます。

しかし、食品衛生の観点から具材の保存や管理、そして正しい使われ方がきちんと行われていない事が判明した場合は、確実に営業停止になるでしょう。

こうなるともう相性がどうであるかとか言っている場合ではありませんよね。

人生の一大事です。

ここだけの話ですが・・・・

生焼けの具材やパン生地を平気で売っているお店は非常に多いですよ。

しかしそう簡単にはお客様は保健所へはいきません。

なぜなら、何でお腹が痛くなったのかは、なかなか解りずらいからです。

良くこんなものを平気で売っているな~・・・・と言いたくなるようなお店も、実はたくさんあるのが実情なのです。

もちろんそれはパン屋さんに限った事ではありません。

色々な食べ物屋さんでそんな商品に遭遇してきました。

今回ご紹介している質問に代表されるような、いわゆる食材に完全に火が通っていないかもしれない状態は、はたしてそれで大丈夫なのかと言いますと、この内容に限っては皆問題はありません。

なぜかというと、フランクであれポテトサラダであれ、例えそのまま生食をしたとしても、特に問題はないからです。

ピロシキやコーンというものも、生食してお腹を壊すようなものではありませんので、特に問題と言う事ではないと思います。

では、いったい何が問題で、どのあたりに気を付けながら具材を選定、または使用していけば良いのでしょうか?

それにはまず、一つには具材そのものの特性を知ってから使う事。

そしてもう一つは、パン生地と一緒に焼くと言う事はどういうことなのか、しっかり試案と試作を行う事が大切になります。

具材の特性というのは、例えばそのまま生食をしても大丈夫な食材であれば、焼き過ぎて美味しくなくなると言うような事はあったとしても、お腹を壊すようなことはおきません。

つまりこの場合は、きちんとお金を頂ける商品であると言えると思います。

問題は、生食の出来ない食材・具材を使った場合に、完成品にきちんと火が通っているのかどうか、パン生地の焼き時間内に同じようにきちんと焼けるのかと言う事を考慮せずに使ってしまった場合。

また、質問にもあるように、コロッケのように加工して一度火を通してある具材であっても、冷凍するなどしてすぐには食べない場合には、それが解凍焼成後にどのようになってしまうのかをきちんと確認せずに商品にしてしまった場合など、製パンの知識とは別に食品衛生上どうなのかと言う事を考えておかなければならないのです。

パン屋さんでは、ドウコンディショナーを使用しているお店が非常に多いと思います。

この機械は、時には冷凍庫、時には冷蔵庫、そして時には発酵室になるというすぐれものですので、ほとんどのパン屋さんで使用している事と思いますが、具材を包んだり乗せたりしたパン生地をこのドウコンディショナーで冷凍保存する場合、具材の冷解凍時に発生する水分が生地に与えるダメージや、具材そのものの食味が、冷凍していない時とどう違ってくるのかと言う事に充分注意が必要だと思うのです。

この点で言えば、大手の冷凍生地に使用されている具材や、その冷凍生地というのは非常に安全です。

なぜなら、試作に費やす時間がリテイルとは全く違うからです。

つまり、大手のパンで生焼けがあるとすれば、それは確実に焼きが足りないと言う事に問題がある訳です。

しかしリテイルベーカリーや個人店の場合、試作は通常の温度帯でしか行わず、実際にはドウコンディショナーで一晩冷凍すると言う事がしばしば起こりえます。

そうすると、お客様からクレームがあってから初めて食べて確認すると言う事になってしまう訳です。

なぜそうなってしまうのかと申しますと、日頃から生食用の食材をあまり使っていないと言う事も原因の一つだと思いますし、業者から仕入れている具材だから問題はまずないであろうと言う、他人任せの安心感も原因の一つだと思います。

私がパン屋さんで一番火通りが悪いパンに遭遇する確率が最も多いのが、なんとカレーパンです。

カレーが非常にゆるい場合や、具材がたっぷりのカレーの場合、カレーと生地の接触部分がまだ生生地である事があります。

特に気にしないで食べてしまえば解らない人も多いと思いますが、これがカレーではなく中華系の具材でも、ピロシキでも餡でも同じ事です。

具入りのドーナツは、半生状態である確率が非常に多いと言えます。

これは、敏感な人なら確実にお腹を壊すでしょう。

とは言え、少し便が柔らかくなる程度だと思いますので、日頃から何かと軟便気味の人には解らない事だとは思いますが・・・・

また、質問にもありますがコーンなどがたっぷりと乗せてある柔らかそうな生地が、とても焼き色が白い場合などは、コーンをどかしてみると生焼けの部分がはっきりと解ります。

残念ながら、この手の生焼けパンは個人店に非常に多いのが実情です。

いずれの場合も、ご家庭でのことであれば笑って済ませる事が出来る程度の問題ですが、これでお金を頂く限り、私達は食の安全というものに責任を負わなければならなくなるのです。

今一度、ご自分のお店の具入りのパンを、デザインや味を抜きにして、食品衛生の観点に立って厳しい目で見て、そして食べてみましょう。

パン作りに夢と希望を持ち、長年製パン経験を積んだとしても、少しの油断でお腹を壊すようなパンを作ってしまったとしたら、へたをすると犯罪者呼ばわりされてしまうこともありえる・・・・

そう言う仕事であると言う事を、私達は忘れてはならないのです。

めったにある事ではないだろう・・・・

その様な意見もあることでしょう。

しかし、そのめったが自分になる可能性は常にあり、家族が被害者になるということも充分にあるのです。

以下、私が日頃よく体験する事を記します。

サンドイッチのハムがヌルヌルして臭い。

ポテトサラダにツンとする酸味がある。

レタスが洗剤臭い。

生地の中に脱脂粉乳、又は手粉のダマがある。

イースト菌が生地中に残っている。

キャベツから異臭がする。

メンチカツが入ったパンのメンチがレアーで赤い。

マヨネーズが雑巾臭い。

パウンドケーキが生焼け。

餡パンの底がヌルヌル。

鳥の唐揚げが真っ赤っかで口でちぎれない。

ベーコンが酸っぱい。


ご自分の城を守るためにも、面倒でもいちいちチェックする・・・・

それでこそプロだと言えるのかもしれませんね。

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