ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

ご自分のパンに最適な油脂とは・・・・

たま~にいただく質問の中に、どんな油脂を選択するべきかという内容の物がありました。

私としては、その様な基本的なものは、すでに書いてきたつもり・・・だったのですが、よ~く見てみるとどこにも書いていないではありませんか?

考えてみれば、質問を下さる方と言うのは、ほぼ全てを確認した後、書かれていないので質問をして下さる訳で、書いたつもりでいた・・・と言うのは、わたくしのアルチューハイマーの成せる技であったようです。

と言う事で、遅ればせながらではありますが、実際にパン生地に油脂を選択する場合において、考慮すべき点、あるいは向き不向きのようなものをご紹介しておきたいと思います。

・・・・とは言うものの、実際には相当数の種類が存在しておりますゆえ、最終的にはやはり好みの物を使っていただく事になると思いますが、ざっくりとそれぞれの油脂の持つ特徴を書いていきますので、参考にしていただければと思います。

まず、油脂には大きく分けて、バター・マーガリン・ショートニングというものがあるのはご存知ですよね。

この三つのどれかを、または生地に応じてこれらの全てを、使い分けているのがパン屋さんだと思います。

しかしご家庭では、この他にもオリーブオイルやサラダオイルなども使われているでしょう。

出来る事なら、家庭の食卓に常備しているのもが使えたほうが便利ですしね。

パン屋でも、オリーブオイルなどは良く使われたりしますが、それはあくまで特殊なパンに使うのにすぎません。

一般的には、バターかマーガリンかショートニングのどれかを使うのが当たり前のようになっています。

それは何故でしょうか?

他のカテゴリとの重複になる部分もあると思いますが、今一度説明しておきたいと思います。

まず、パン屋さんで多く使われているこれらの油脂というのは、常温または冷蔵保存の状態では固体です。

つまり、塊になっていて液体ではありませんよね。

これらの事を ”油脂 ” と呼んでいるのです。

それに対して、家庭に常備されているオリーブオイルやサラダオイルというのは、常温でも液状になっていますよね。

というよりも、冷蔵庫に入れても固まる事はありませんね。

これらの液体状の油の事を ”油 ”と呼んでいるのです。

この油というのは、綿実油・コーン油・大豆油・サフラワー油などの、いわゆる植物から取った油のことですが、ご存知のようにマーガリンという油脂も、これらと同じ植物油脂で作られているのです。

では、同じ植物油脂であるマーガリンと、綿実油やコーン油などで作られたサラダ油とでは、いったい何が違うと言うのでしょうか?

それはつまり、用途によって作られ方が大きく違うということなのです。

油脂のパン生地における役割を簡単に説明しますと、生地の伸展性が良くなり、生地が傷つきにくくなります。

すると、総合的に作業が行いやすくなりますし、パンの完成度も増す訳です。

さらに、オーブンでは良く伸びて火の通りも良く、出来上がったパンは水分が飛びにくく、老化の遅いパンになるのです。

では、どうしてそうなるのでしょう・・・・

それは、パン生地の中の風船一つ一つに、上手い具合に油分がまとわりついてくれているからであり、そのお陰で風船はお互いが滑り合う事で余計な摩擦を起こすことなく、オーブンの中でも、それぞれの風船が良く滑る事によって、お互いがくっついてしまう事を防ぎ、割れてしまう事も防ぎ、結果、キメ細かい伸びのあるパンになるのです。

また、焼き上がったパンの内層に油脂分がうまく入り込んでいるお陰で、その油脂膜が水分の蒸発を防いでくれているのです。

それがつまり、パンのしっとり感が長持ちする事につながるのであり、パン生地内部では、油脂膜がラップのような役割をしてくれているということになるのです。

このように、風船の一つ一つに上手い具合に油分がまとわりつく為には、ある程度の粘着力のような力が必要になります。

そんな粘着力を持たせた植物油脂が、マーガリンだということになるのです。

そして、その粘着力と言うのは、常温で液体化している油にはない能力であり、まさに製パンを大いに助けてくれるのが、固体であるマーガリンになるのです。

ところが、例えばこのマーガリンを熱を加えて溶かしたとします。

するとどうなるかと言いますと、せっかく持ち合わせた粘着力を失ってしまう事になるのです。

ですので、マーガリンに関わらず、個体の油脂はけして溶かして使ってはいけないと言われているのはこの為なのです。

この事をもう少し具体的に説明しておきましょう。

実際のパン屋さんの現場では、冬場にはマーガリンを溶かして使っている所もあるはずです。

常温に置いておくのを忘れてしまった場合や、ある程度柔らかくなるのを待てない状況の時などは、溶かして使っている現場を何度も見てきました。

だからと言って、その生地がパンにならないかと言えば、別に普通通りにパンになっていました。

家庭でも、レシピにマーガリンとかバターとか書いてあっても、それを冷蔵庫から出して溶かして使っている人は多いと思いますし、それをサラダ油に変えて作っている人もいる事でしょう。

であるならば、別に構わないのではないか???

そう思いたくもなりますよね。

しかしそれは、多くの場合油脂の配合量が少ない場合に限るのです。

つまり、一般的な食パン程度の油脂配合量であるならば、確かにそう大きな違いは見られないでしょう。

問題は、配合量が15%を超えるような場合には、油脂の状態がどうなっているかによって大きく違ったものになってしまうと言う事なのです。

パン屋さんならお解りだと思いますが、ミキシングの途中で液状になった油脂を混ぜていくと、途中から水を加えたかのようにミキサーボールの中がビショビショになりますよね。

これが、仕込み量が少ない場合ならまだしも、10kg近い生地を捏ねている最中に液状の油脂を投入すると言う事は、間違いなく分離を招きます。

それでもそれ以降捏ねていく事で、ある程度普段通りの生地になったかのように見えますが、明らかにコシが無く、油分がにじみ出ているのが解るはずです。

こうなると、最終的にはパンにボリュームは無く、しっとり感に欠けたパンになってしまいます。

つまり、油脂の配合量の多い少ないで、見分けはつきにくいかもしれませんが、溶けてしまったマーガリンをミキシングの途中から加えると言う行為は、確実にパンにダメージを与えているのだと言う事を知って頂きたいのです。

そもそもサラダ油ではなく、マーガリンを使う事の意味と言うものを、パン屋さんはしっかりと解っておかなくてはなりません。

細かく言えば、家庭レベルでも理屈は同じです。

しかし、家庭用のレシピでは、よく油が配合されたものをみかけます。

ですので、最終的には好みの問題なのであり、ご家庭において製パンを難しく考える必要は無いと思います。

また、パン屋さんでどうしても溶けてしまった油脂を使わざるを得ない状況になってしまった場合は、ミキシングの初めから投入して下さい。

そうする事で、分離やコシ抜けには対処出来るはずです。

と言う事で、パンに使う油脂には、味以外にも目的があると言う事がお解りいただけたと思います。

この油脂によるパンへの効果というものを考慮しながら、バター・マーガリン・ショートニングのいずれを選択してゆけば良いのかを考える訳ですが、次に考慮すべき点はフレーバーではないでしょうか。

パンの善し悪しを大きく左右する要素の中で、このフレーバーというのは実に重要でしょう。

パンが焼き上がった時の香りで、幸せを感じる人というのは実に多いと思います。

パンの香りというものは、香りだけではなく、食べた時の味にも影響を与えます。

パンの美味しさを味わうと言う行為は、香りも同時に味わっている事になるのです。

ですから、どの油脂の香りを選ぶのか、どの油脂がこのパンに合っているのかということは、とても大切な要素となるのです。

では、一般的にはどのようにその違いを考えていけば良いのでしょうか?

それぞれの油脂の特徴を見ながら考えていきたいと思います。

・・・・が、最近長くなりがちなので、次回に回します。

スミマセン(~_~;)

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