ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

焼き立てパンの香りは、人を幸せな気持ちにさせてくれる・・・

オーブンフレッシュベーカリーの本当の力とは何でしょう?

それは、焼き立てのパンの魅力で、お客様を感動させる事が出来るということです。

焼き立てパンの店・・・・こんなフレーズが、看板やのぼり、あるいはリーフレットや包装紙などに書かれているお店は多いですよね。

お店に入ると、パンを焼いている香りが漂っていて、それだけで幸せな気分になりますし、購買意欲をかき立てる事でしょう。

出来立て、作りたて、焼き立てと言うような表現には、いわゆる鮮度というものが表現されていますし、そこに香りが加わる事で、お客様は確実にその魅力に取りつかれることになるのです。

パンが焼ける香りというのは、お客様だけではなく、そこに働く人や通行人にまでも幸せを与えてくれます。

言うなれば、これ以上の販促ツールは無いと言えるでしょう。

しかしです・・・

今現在売上の低下に頭を悩ませているお店と言うのは、ほぼ例外なく、この焼き立てパン屋最大の武器である焼き立ての香りというものが、お店に漂っている時間が非常に短いのです。

それはなぜなのでしょう・・・・

それは、あまり焼きたくないから・・・なんていうはずはありませんよね。

焼きたくても焼けないのであり、もっと言うなら、焼きようがないのです。

なぜなら、お客様があまり来ないからですね。

逆に、人気店と言うのは、焼いても焼いても間に合わない位お客様が来ますので、一日中焼き立ての香りが漂っている訳です。

焼いても焼いても足りない位お客様が来るので、早朝から閉店ギリギリまで焼きまくる事になる。

結果として常に出来立て、焼き立てですので、お客様は最高鮮度のパンが手に入る事になり、最高の状態で食べてもらえることにもなる。

そして何より、いつお店に行っても、パンの焼かれる香りに包まれ、幸せな気分でお買い物ができる訳です。

これは、作る側の思いと、買う側の思いが、実にマッチした状態だと言えますし、まさに好循環とはこの事ですよね。

他方、お客様が少ないお店では、午前中には焼き立ての香りが途絶えてしまう事が多く、早朝に焼き上がったパンを夕刻に購入する際には、かなり鮮度は落ちている場合が多いと思うのです。

つまり、お店でも焼き立ての香りを楽しむ事が出来ず、さらには鮮度の落ちた状態のパンを提供されている事になりますから、食べた時の感動も半減してしまうでしょう。

お客様が減ってしまうという現実は、焼き立てパン屋さんから焼き回数を奪ってしまうという結果に至る事になり、ひいてはお店から焼き立ての香りまで奪ってしまう事になるのです。

作り手の思いがお客様の思いと結び付かない状態というのは、まさに悪循環を生むことになるのです。

今現在そのような状態で悩んでいらっしゃるパン屋さんのオーナーは、出来る事ならリセットしたい・・・・オープンの頃に戻って、もう一度やり直したい・・・・そう思っているのではないでしょうか。

あの時ああしておけば、きっとこのようにはならなかったはずだ・・・色々とやってきた事に対する反省もおありでしょうし、何がいけなかったのかが解らないでいるオーナーも少なくないでしょう。

すべて周辺環境の変化が原因だ・・・・自分は間違ってはいなかった・・・・そのように思われているオーナーもいるでしょう。

しかしいずれの場合も、今現在の状況が現実そのものなのであり、過去に戻る事は出来ないこの現実を、まずは受け入れるしかないのです。

残酷なようですが、この現実から復活するには、並大抵の努力ではかないません。

お金があるのであれば、別な場所でお店を出せれば、今度は成功するかもしれない・・・

しかし実際にはそうはいかないでしょう。

今以上に頑張るか、辞めるかの二択をせまられることになるはずです。

辞めようとお考えのオーナーには、本当に今までお疲れさまでしたと言わせていただきます。

どれほど悩まれ、どれほど人一倍努力と勉強をしてきたことか。

そして、なんとなく負け犬になってしまったかのような気持ちをぬぐいきれないまま、別の道を探さなくてはならないせつなさ・・・私には良~く解ります。

しかしある意味、パン屋を経験してきた人と言うのは、とても体力があり精神的に強い。

人生に負けた訳ではないのですから、大いに今後も活躍してほしいものです。

そして、頑張って継続していこうとお考えのオーナーには、正直別の道を選択する事は出来ないのかを聞きたいところです。

なぜなら、一度落ちた売上を上げていく事ほど、大変なことはないと言う事を身をもって体験してきたからです。

本当にやるのですか?もう辞めませんか?その方がどれだけ気が楽か。

これは、安易に戦いを放棄することをお勧めしているのではないのです。

そもそも商売は、戦いではありませんしね。

どれだけ今後、しんどい思いをしたとしても、お客様が戻ってくる保証がある訳ではありません。

もしかしたら、続ける事で気持ちも身体も参ってしまうかもしれません。

それほど辛く険しい道のりだと思うのです。

しかし、それでも負けずに頑張っていこうというオーナーは、その時点ですでに凄いことだと思いますし、敬意を表します。

そんな方々のきっかけになるかもしれないと思われる、集客アップの第一の方策として提案したいのが、焼き回数を3倍に増やす為の方法です。

焼き立てのパンが多くお店に並ぶ事で、お客様の満足度はかなりアップするということは、誰でもが知る所だと思います。

しかしそうは思っていても、実際には出来ないでいる。

出来ない理由には大きく二つがあって、一つはもともと一つのパンが6個とか8個しか売れないものを、何度かに分けで焼くなどと言う事は、不効率極まりない行為であり、そもそもパン棚が寂しくなってしまうから。

もう一つは、一人でやらなければならない仕事が多すぎて、オーブンの前でちまちま焼いている事など不可能に近いから・・・ではないでしょうか。

もし安易に焼き回数を増やしたりしたら、逆に欠品が多くなる場合があり、チャンスロスにもつながり、作業時間も大幅に増えることになる。

もしかしたら、閉店後に売れ残るパンも増えてしまう事になるかもしれない・・・・

やるべきなのは解るけど、実際には無理だと思ってしまう、この悪循環スパイラルから逃れられないでいると言う方は多いのではないでしょうか。

かく言う私も、そのような思いを体感して参りました。

皆さまの思いも、今までやられてきたであろう手法も、すべて理解しているつもりです。

しかしそれでも、そこを何とかしなければ、焼き立ての香りをお店に漂わせる事は確実に不可能になります。

そこが魅力だと解っているのに、やれないなんてことはあるはずがないし、あってはいけないのです。

ですから、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

自分が買う側の立場だったら、お店のパンの何に感動し、何がガッカリかを考えるのです。

私の場合は、パン屋さんで感動するのは、揚げたてのカレーパンに出合った時とか、ソーセージが好きなので、焼き立てでホカホカの焼き込み調理パンに出合った時とか、皮がパリパリで、明らかに出来立てのフランスパンや、フランス系の小物に出合えた時です。

揚げたての、特にカレーなどの甘くない具材が入ったドーナツと言うのは、揚げたての天ぷら同様、何とも言えない美味しさがあるものです。

焼き込み調理パンも、マヨネーズやチーズの表面が、まだトロトロの状態の時に食べると、これまたたまらなく美味しく感じます。

ソーセージをそのままボイルして食べても、この感動には味わえません。パンになって初めて、マヨネーズやチーズと合わさる事によって、そしてそれを香ばしいパン生地と一緒に食べることによってしか得られない美味しさだと言えると思います。

フランスパン系は、これら2種類のパンよりは時間が経っても美味しいと感じますが、それでも焼き上がってから3時間以内には食べたいですね。

これらのパンを、もし翌日の朝、または昼に食べたとしたら、その美味しさは恐らく半分では済まないでしょう。

私の場合は、よく自分の作るパンを様々な時間帯で食べまくります。

作ってすぐから、半日経過後、翌朝、翌昼、翌夕、翌々日の朝・・・・と言う具合に、どのパンがどれくらい鮮度を保てるかを試すのです。

これはなぜそうするのかと言いますと、焼き立てをせっかく買っても、それを数日後に食べたのでは、焼き立てを買った意味がなくなってしまうからです。

どのパンの食べ時がいつ頃なのか、いつ食べてもらう事が最善なのかを知っておきたいのです。

そうすることで、もしも日にちが経過してしまっても、こう食べれば美味しく食べられると言う事を、実体験からお客様に伝える事が出来るとともに、翌日には確実に味が落ちて美味しくなくなると言う事をも、はっきりとお客様に宣言できるからです。

食べるのが明日になるなら、買わないでください・・・・間違いなくガッカリしますから・・・・そのようにお伝えする商品もあるのです。

以上から解るように、私が思うには、けして全てのパンの焼き回数を増やさなければならないと言う事ではないのです。

焼き立てが特に際立って美味しいパンだけを厳選して、それを何回も焼けるように工夫するのです。

逆に言うと、冷蔵販売した方がいいようなパン、例えばチョコレートがコーティングされているデニッシュや、生クリームがサンドされているような商品は、焼き立てとは縁遠いと思いますし、フルーツなどがトッピングされたデニッシュも、焼き回数は今までと同じで構わないと思います。

その代わり、ナパージュで表面の乾燥を防いだり、フルーツの色あせを防いだり、生クリームが生地に染み込まないような工夫は必要ですよ。

改めて、今さらと思われるかもしれませんが、ご自分の作るパンの一つ一つの食べ頃と、鮮度が保てる時間がどれ位までなのかを知る為に、徹底的に食べてほしいのです。

そして、このパンは焼き立てを絶対に提供したい・・・・そう思えるパンはどれなのかをまずは決めてほしいのです。

例えば私がお勧めしたいのは、カレーパン・フランスパン・ピザパンの三種類です。

しかし、この三種類のパンの焼き回数を増やす為に、やってはならない事があります。

それは、今までそれぞれ最大でも10個程度しか売れていなかったとしたら、それを三回に分けて提供すると言う考え方では駄目なのです。

それぞれ三倍の数を焼いて欲しいのです。

でもそんなことをしたら、売れ残ってしまうのではないか・・・・

もちろん、その様な場合も絶対にないとは言いません。

しかし、今までと同じ個数を三回に分けても、今まで以上に売る事は不可能です。

今までよりも作るからこそ、今までよりも売れる可能性があるのです。

まずはその点を理解していただきたいのです。

無いものは買いようが無い・・・当たり前の事なのです。

ですので、まずはそれぞれを三倍作る事を目標にして欲しいのです。

次に、そのパン出すタイミングですが、一番お客様が多く来る時間帯にぶつけて欲しいのです。

大抵の場合、午前10時から午後1時くらいまでがピークだと思うのです。

ですので、10時に一回、11時に一回、12時に一回と言う具合に、その時間帯をめがけて三連続で提供して欲しいのです。

そうする事で、比較的多くのお客様に、今まで以上に焼き立てを提供出来る事になる訳です。

10時以前の時間帯というのは、ほぼすべての鮮度が良い状態だと思います。

この時間帯にいらっしゃるお客様と言うのは、鮮度の良さと品数の多さを求め、すでに焼き立ての魅力を充分解っているお客様達だと言えます。

問題は、その焼き立ての魅力を伝えられる時間帯を広げる事が出来るかどうかなのです。

昼時になると、もう翌日の成形などの準備を行っているパン屋さんがあります。

この状態と言うのは、お客様が一番多く来店している時間帯なのにもかかわらず、焼き立てパン屋の最大の魅力を出し切れていない状態にあると言えます。

最低でも午後1時位までは、出来たてのパンの試食をオーナー自らがお客様に配りながら、お客様と会話する時間にして欲しいものです。

レジに並んで会計を待っている時、工房から ”只今焼き上がりました~” と、オーナーがパンを運んできたら、ほとんどのお客様はそちらを見ます。

その時、オーナーがすかさず ”いかがですか (*^_^*)”と勧めた場合、確実に ”それ一つ下さい ”となると思いませんか?

そのようにして、プラスワン効果を狙う事で、三種類を三倍焼いたとしても、確実に売れてしまうと私は確信します。

ここで肝心なのは、ただ漠然と焼く回数を増やしたり、製造数を増やす事が本来の目的なのでは無いと言う所です。

焼き立てのパンを持ってお店に出る・・・・そしてお客様に焼き立てをアピールする・・・・お客様と感動を共有する・・・・この流れが重要なのです。

お客様とスムーズに会話できるようにする為の、ツールとして焼き立てパンを使うのです。

私の場合ですが、焼き立てを持ってお店に行った場合でも、お客様があまり反応しない時がありました。

”お客様、いかがですか?” と聞くと、 ”そのパン食べた事無いから・・・”との事。

そんな時は、一つ袋に入れて、”お勧めですから、是非食べてみてください ”と言って差し上げます。

そんな事をしていると、必ずそのお客様は次回来店した際にお礼と感想を言って下さいます。

たった一つのパンを差し上げた事から生まれる、作り手とお客様の会話。

この時差し上げたパンを、ロスだと言えるでしょうか?

私は、パン屋の武器はパンしかないと常日頃から思っています。

自分の思いをお客様に伝えるには、パンを通して伝えるべきであると・・・

ですので、やたらと試食を勧めますし、断られたら袋に入れて、”あとで召し上がってみてください” と言って差し上げています。

なぜ食べて欲しいのか・・・・

何を思って作っているのか・・・・

このパンの魅力は何なのか・・・・

そんな作り手の思いを、焼き立てのパンを通して、お客様に直接伝える事が出来る・・・・

それが、焼き立てパン屋の最大の武器なのだと私は思うのです。

チラシをまいたり、値引きをしたり、金券や割引券を配ることよりも、一見面倒なように思うかもしれませんが、一日に何度もお客様と会話をしたり、試食を勧める事の方が、どれだけ情報収集にもなり、商品のアピールにもなり、固定客作りが出来る事か。

大手にも、大人気店にも出来ない事だと思いませんか?

地域に根差したお店になるというのは、そういうことではないかと考えています。

さて、提供の仕方は解ったとして、どのようにして無理なく焼き回数を増やすことができるか・・・・

次回、商品別に製法などを考えていきたいと思います。


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