ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

食パン作りに欠かせないコツとは・・・・

前回は、食パンを綺麗に作るには、とにかく生地をしっかりと捏ねる事が大切であると書きました。

とは言え、手捏ねの場合は捏ね方が不足している人が多く、ミキサーをお使いの方は逆に、捏ね過ぎている人が多いと言う事も紹介しました。

捏ね方を変えてチャレンジした後、その後の生地の状態を興味深く観察していくと、きっといつもとは違う生地の表情にめぐり会う事が出来るはずです。

生地表面の滑らかさであったり、弾力であったり、艶であったりと、目で見て、そして手の平で感じてほしいのです。

この、生地の状態を見極める手の平の感覚や、時間の経過と共に、発酵して行く生地の状態を見逃さない感性が、パン作りにはとても重要な事なのだと私は思っています。

この部分をないがしろにして、単に作業として終わらせてしまうようなタイプの人というのは、いつまでたっても生地の状態を掴む事が出来ずに、その後も生地を粗末に扱い続けていきます。

いくら最良の状態まで生地を捏ねられたとしても、その後に風船を割りまくるような扱いをしていたのでは、美しい食パンには到底巡り合う事は出来ません。

小麦粉をやたらと変更する人や、配合をやたらと変える人がいます。

気に入らないものが完成すると、すぐに材料や配合に責任を押し付け、自らが招いた事には気がつきもしない。

もちろん悪気があって、材料や配合のせいにしている訳ではないはずです。

誰しもが、そちらをまずは疑ってしまうのも無理はありません。

しかし、知っておいてほしいのは、通常出回っている小麦粉を使い、ごく一般的な配合で食パンを作る場合に、美しく出来上がらない理由というのは、残念ながらすべて技術と理論が噛み合っていないことが原因です。

質問をくださる方の中にも、やたらと砂糖や塩の量を変えたり、小麦粉がいけないのではないか・・・・というような内容の事を相談される方が非常に多くいらっしゃいます。

でも、いずれに場合も、その原因は作り方の方にありました。

それ位、食パンと言うのは製パンの基本が詰まった、ある意味難しいパンなのだと言えると思うのです。

ですので是非、この食パンに関しては、確実にマスターしてほしいものだと願います。

食パンが上手に作れるようになったならば、もう十分プロ級の腕前になったと自負していいと思います。

さて、前回申し上げた、充分に捏ね上げられた生地を作れたら、8割は成功が約束されるという事でしたが、今回は残りの2割を説明して行きたいと思います。

その前に一つだけ言っておきます。

8割方完成した生地ならば、ほぼ80点と言う事なのだから、あとの工程はさほど重要ではないはずだ・・・・

ならば、生地さえ上手に捏ねられていれば、その後の生地の取り扱いは、別にどのように扱おうとも80点のパンは約束されるんだな・・・・

と言うような考え方をしてしまう人がいたとしたら、それは間違いですよ  (--〆)

いくら生地が上手に捏ねられたとしても、その時点で80点であったものが、その後の扱い方一つで30点にも10点にもなってしまうのがパン作りなのです。

しかし逆に言えば、捏ね方が今一であったとしても、その後の扱い方一つで、いかようにも点数を上げる事が出来ると言うのも、パン作りの面白い所なのです。

パン作りは、初めから終わりまで、トータル的にどう作るかという事がとても重要です。

どの部分であっても、気を抜いたり、適当に行っていたのでは、良いパンは出来上がりません。

それ位、集中力の必要な食べ物であるとお考えくださいね。

では本題に入ります。

充分に捏ね上げられた生地のその後と言うのは、けして温度変化を与えない事が重要となります。

ここで注意していただきたいのは、発酵室の温度と、そして作業を行う室温になります。

一般的に多い間違いが、発酵室の温度は高く、室温が低過ぎる事です。

生地をせっかく28℃で捏ね上げても、その後に35℃以上もあるような発酵室に入れたり、いざ分割を行おうとする時の室温が20℃以下であったりというような状況が、非常に多いと思うのです。

ご存知のように、パンと言うものは酵母菌の活動によって、膨らんでくる食べものですよね。

あらゆる食品の保存に対して、私達は常日頃から冷蔵を選んだり冷凍を選んだり、又は常温で大丈夫なものは常温でと、物が腐る事が無いように、それぞれの食品に適した温度帯で管理を行っていると思うのです。

それは何故かと言えば、そのようにしないと、即座に腐ってしまうからですよね。

その腐る・・・と言う働きをする菌と、パン作りに欠かせない菌・・・・

どちらも温度に非常に敏感な菌なのです。

今夜はお刺身にしようと思い、更に盛り付けたとします。

夕食まであと1時間あるから、テレビでも見よう・・・・となった時に、皆さんは刺身を常温に置いておくでしょうか。

いいえ、必ず冷蔵庫へ入れますよね。

それ位、温度によって物が腐る事を心配していると思うのです。

しかし、パンを作る際に、この菌のことをあまり考えている人は少ないと思うのです。

焼いてしまうからでしょうか・・・・

それとも、焼かれたパンからは、あまり鮮度とか保存温度とかをイメージしづらいからでしょうか・・・

いずれにしても、パンと言う食べ物は、焼成と言う最終段階に進むまでは、常に菌によって発酵を続けているのです。

解りきった事のようですが、パン生地と向き合う時に、この温度というものをあまり気にしない人が多いのです。

もっと言うと、温度と湿度ですよね。

人間にとっても、風に触れただけで、幸せを感じるようなここちよい温度や湿度の日がありますよね。

逆に、震えるような寒さや、サウナのような真夏のアスファルトの上と言うのは、どう考えても長居したいとは思えませんよね。

菌と言うのは、もっともっと温度や湿度に敏感なのです。

この部分だけは、製パンの技術と言うものを飛び越えて、科学的に考えなければなりません。

あくまで、その事をふまえて、製パンと言うものと取り組む姿勢が必要になるのです。

生地の取り扱いの上手い下手というのは、文面には出来ません。

この生地の取り扱い方によって、パンの出来栄えは大きく違ってくる事は間違いないと思います。

しかしそれは、この温度変化を与えない環境下の中にあってこそ発揮されるものであり、温度変化を与えてしまった生地に対しては、技術力と言うのは無力であると言えると思います。

それ位重要なことだということを、どうか認識していただきたいのです。

28℃前後で捏ね上がった生地を、同じく28℃前後の、しかも生地が乾燥しない程度の湿度で発酵させる事。

そして、作業を行う室温も、同じような環境を作り上げる事がベストとなるのです。

第一発酵・第二発酵・ベンチタイムなどのいずれもそうです。

ここで冷えてしまったから、今度は温めるというような発想も現実にはあると思いますが、この場合はすでに温度に変化が生じてしまったと言う事になります。

そのようにして、冬だから仕方ないとか、夏だから仕方ないと言う意見は散々聞いてきました。

しかし、人間なら我慢する事ができたとしても、菌はそのような忍耐を持ち合わせてはいません。

なるようにしかならないのです。

温度変化を与えてしまっても、もちろんパンが完成しない訳ではありません。

しかしそれは、確実に何かしらの現象が現れるパンなのであり、綺麗な食パンが出来ないとお嘆きの方々の作るパンが、まさにそうなのです。

パンを作ると言う事は、まずは環境を整えるということがとても重要となります。

環境が整っていない場所では、プロもアマも違いはありません。

パンと言う食べ物が、菌が無ければ作れないものであるとしたら、そこには温度管理という考え方がどうしても必要になります。

技術というのは、その次なのです。

技術は習得に時間がかかります。

しかし、温度管理だけは、その大切ささえ知っておけば、誰にでも行う事が出来るのです。

生地の温度をきちんと計って下さい・・・・

発酵室やホイロの温度は守って下さい・・・・

作業を行う場所の温度や湿度に注意して下さい・・・・

この点は、嫌というほど書いてきたと思うのですが、質問を下さる方の疑問のメインは、そのことから大きく外れている事が多かったと記憶しています。

次回から、具体的な例を上げて紹介して行きたいと思いますが、前回紹介した生地を充分に捏ねる事、そして温度管理が重要である事、この二つを意識しながら、いつも通りのパン作りを行ってみて欲しいと思います。

何か特別な技術やコツが存在するのでは・・・・

材料や配合がいけないのでは・・・・

オーブンの温度が適切でないのでは・・・・

その様な質問は多いのですが、もちろんそれらがまったく関係していない訳ではありません。

しかしもっとも間違っている部分は、そこではない場合が多いと言えます。

捏ね方と温度と湿度・・・・

どうか納得のいくまで、向き合って欲しいと思います。


6 Comments

ニモ says..."仕込み水の温度の方程式"
しずかな朝さま

私もせっせと食パン焼いています。(ニップンの粉で!!)
そんなことも知らないで焼いているのか……と思われそうなのですが、
仕込み水の温度はどのように決めるものなのでしょうか?
暑いときは低めの、寒いときは高めの、ぬるま湯で、
くらいの認識しかないのですが、夫に訊いたら、確か方程式があるよねと。

お手すきの際で構いませんので、ご教示いただけましたらうれしいです。
過去記事にてご紹介なさっていらっしゃいましたら
ページを教えてくださいませ。

どうぞよろしくお願いいたします。
2014.04.20 20:05 | URL | #SVUff9GE [edit]
conagon says..."はじめまして"
はじめまして。

一週間ほど前にこちらのブログを知り、過去記事を読ませていただいております。

味に惚れ込んだ粉がありまして、なんとか上手に使えるようになりたいのですが、理想とはかけはなれた山食を続けて焼いてしまっておりまして…
そんな時に前回・今回の記事を拝見し、まるで個人レッスンでも受けているのかと思う程、私に当てはまることが書かれていて、本当に勉強させていただいています。

差し支えなければ、ブログのリンクをいただいてもよろしいでしょうか?
小さなブログですが自分がどこでどんな知識を得て、どんなものを焼いたか、記録を残そうと思っております。

更新、楽しみにお待ちしています。
2014.04.21 10:54 | URL | #t50BOgd. [edit]
ユウ says..."室温について"
はじめまして。
温度管理についてブログにありましたので、コメントさせていただきました。
私、大手ベーカリーの直売店とあと数店で働いておりました。
その直売店の職場は全てスクラッチで、ストレート法で作っておりました。
一部は冷凍、バケットは冷蔵、食パンに関しては当日仕込でした。
しかしながら、捏ね上げ後の生地は室温で60分のフロア、後は普通に分割、ベンチ15分、ホイロ60分くらい。
その時の室温はというと、暑くもなく寒くもなく、スタッフにとって快適な環境でした。
しかしながら、出来上がりの食パンは、ホワイトラインが綺麗に出て、のどごしが良く美味しく食べれる食パンでした。
風味付けにルバンを配合してはいました。
静かな朝さんの提唱される温度管理を確実に実行しなくても、綺麗で美味しいパンが出来上がるのは何故なのでしょうか?
ちなみに数店のお店で働きましたが、フロアで温度管理をしている店舗には巡り会えませんでした…

2014.04.21 19:41 | URL | #61NhiLvk [edit]
しずかな朝 says..."仕込み水の温度の方程式とは"
ニモさん、お久しぶりです。

水温の求め方は、方程式と言うほどのものではありませんよ。

今回の食パン関連の記事にて、そのあたりも詳しく書くつもりです。

ただ、所詮計算してどうなるものではありません。

昨日、また一昨日、そしてまた数日前にはどうであったか?

結局は過去の温度を見ながら、冷やしたり温めたりすることになるので、計算は不要と言えると思います。

ならば、たまに作る人はどうすればいいのか・・・・

と言う事もありますよね。

そんな時は、ある程度捏ねたら温度を計り、その後温めながら捏ねるか、冷やしながら捏ねるかを決めれば良いのです。

結局この部分は、経験しかないと言う事になりますかね。

ご質問は、次回のブログの内容の参考にさせていただきます。

コメントありがとうございました。


2014.04.22 05:04 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."conagonさん、 はじめまして"
リンクはご自由にどうぞ。

家庭ならではのコツや、いつも気を付けていらっしゃることなど、逆に教えていただけると助かります。

このブログには、あえてレシピや配合の類は掲載しておりませんので、本当の意味で知りたい部分が欠けている・・・・

そう思われる方も多いと思います。

しかし私は、パンの美味しさを作りだすのは、配合や原材料の素晴らしさよりも、作る人の、食べる人への思いだと考えています。

そう言う意味では、conagonさんのようなパン作りが、きっと一番思いのこもったパンなのだろうと思っています。

コメントありがとうございました。

また、遊びに来て下さいね。
2014.04.22 05:18 | URL | #- [edit]
しずかな朝 says..."ユウさん、はじめまして。"
ユウさんのようなお考えのパン屋さんは、とても多いと思います。

なぜならそれは、量産するパン屋さんだからです。

設備も環境もある程度整っていれば、それはすでに温度管理されていると言う事なのです。

温度管理というのは、なにもしょっちゅう温度を計測し、常に一定の温度で管理しなければパンが出来ないと言うようなものではないのです。

生地にも、そして部屋の温度や湿度にも、パン作りに必要な理論が多く含まれている事に気が付かない人や、気付く事が出来ないような環境でパンを作られている方々が、その事以外にばかり目を向けてしまうことが問題だということなのです。

配合を間違えてしまった・・・分割時間が経過してしまった・・・・重量を間違えてしまった・・・ホイロを取り過ぎてしまった・・・・焼き過ぎてしまった・・・・

パン屋さんに多いのは、大体このようなトラブルだと思います。

しかしそれは、設備が整っているパン屋さんでのトラブルにすぎません。

家庭や、1日1万円分もパンを作らないような環境では、考え方のスタートラインがそもそも違うのです。

パン作りは、その環境によって大きく理屈が違ってくるのだと言う事を、私はお伝えしたいだけです。

それだけ、設備の整った環境でのパン作りは、とても有難い事なのだと思いますし、だからこそお客様は、安心して買い求める事が出来るのだと思います。

貴重なご意見、ありがとうございました。
2014.04.22 05:42 | URL | #- [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://sizuasa.blog44.fc2.com/tb.php/394-da297987
該当の記事は見つかりませんでした。