ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

細かいけどあるあるQ&A 3

こんな質問をいただきました。

・・・・とにかく一度凝り始めると、どこまでも行ってしまう悪い癖があるのです。

この塩はとにかく旨味が出るので 
(相当お気に入りの塩らしいです・・・) もちろんパンにも使用しているのですが、旨味と言うよりも苦みのような後味が気になって仕方ないのです。

やはりパン用とその他の食品用とでは使い分けが必要でしょうか?

かなりのお気に入りのようですが、パン生地にとっての塩と言うのは、それなりの役割を持っておりますので、適している物を使わないと、最大限の効果を得られないと言う事はあると思うのです。

具体的に申し上げますと、〇〇さんがお使いの塩は、いわゆるにがりが多過ぎると思われます。

にがりを多く含む塩と言うのは、水分も多くベトベトとしています。

もちろんそれが魅力で、食品に旨味を与える、または旨味を引き出す力があるのだと思いますが、そのにがみが必ずしも全てのパンに旨味を与えるとは言い難いのです。

一般的な並塩と比べると、にがりの多い塩と言うのは水分も多く、その為に通常の配合では塩けを感じにくいことがあるので、今回送って頂いたレシピの塩の配合も、2.4%ととても多くなってしまっているのだと思います。

塩を感じにくいと言う事で、多めに配合してしまうと、旨味のはずのにがり成分が前面に出てきて、苦みが目立ってしまう事があるのです。

このにがりと言うものに関しては、製パン的に効果があると言う事は無く、にがりを多く入れたからと言ってパンが美味しくなるかと言えば、むしろ逆の効果が出てしまう事になりかねないのです。

ですので、あくまでパンに使用する塩というのは、少なくともにがりによってベタベタとしているようなものではなく、サラサラとしている物を選んでいただくのが良いと思います。

塩に様々なミネラルを期待して、さらに水にもミネラルの多いものを選んで、それらで作るパンはミネラルの多い栄養価の高いパンになるかと言えば、それは全くの誤解だと言わざるを得ません。

ミネラルは時に製パンの発酵を阻害し、グルテンにも影響を与えてしまうのです。

試しに、日本の硬度の低いミネラルウォーターである六甲のおいしい水などと、エビアンや、コントレックスなどの超硬度の高い水を使ってパンを作ってみると、良く解ると思いますよ。

製パンにおける水や塩の役割では、ミネラルはむしろ邪魔になってしまいますので、ごくごく一般的なものをお使いいただけば良いと思われます。


・・・・フランスパンをメインに作って10年以上は経つのですが、色々と専用の粉が出るたびに購入してはチャレンジをしています。

そんなとき、ふと目にした専門書にはビタミンCを使うレシピがあり、そう言えばとその他の本を読み返してみるとたしかにビタミンCを入れると書かれているものが多くありました。

いつのころからか入れずにそのまま作ってきていましたが、やはりビタミンCは入れないと本当の美味しさにはならないのでしょうか?


まず初めに申し上げておきますが、本当の美味しさというのは、ご自分で納得するかどうかだと思いますので、今まで美味しいと感じていたのでしたら、何の問題もないのです。

ただ、ビタミンCを入れる事で、更に美味しくなるのでは・・・・・

そのようにお考えなのですよね、きっと。

と言う事でお答えしますが、ビタミンCを例え入れたとしても、美味しさと言う部分には貢献しないと思います。

ビタミンCを入れる、あるいは生地改良剤などを入れるというのは、あくまで量産型の工房でのパン作りなのであって、製パン性の向上とか、品質の安定ということを考えた場合に、必要な場合もあると言うレベルの事なのです。

小麦粉の品質、塩の量、酵母の量、捏ね方と生地の取り扱い、発酵時間、焼き方というものが重要なのであって、それらを向上させる、あるいは安定させるという目的のものは、あれば確かに助かる部分もあるが、無くても何の遜色もないというレベルのものだと言えるのです。

確かに家庭用のレシピにも、ビタミンCを入れるように書いてあるものはあるかもしれません。

しかし実際には、とてつもなく微量しか使用しない為に、管理が大変だと思うのです。

と言う事で、結論としてはまったく気にする事はありませんし、〇〇さんのパン作りのスタイルこそ、ミスターホームベーキングだと言えると思いますよ。


某有名店で働く人からの質問です・・・・

・・・特にどうしても許せないのが、オーブンを頻繁に開けて中を確かめる事です。

その先輩はタイマーをかけるのが嫌いで、タイマーなど必要ないと言う人なのですが、そう言うわりにはオーブンを何度も何度も開けて確認するのです。

極端に聞こえるかもしれませんが、たぶん15秒くらいに一度は開けたりします。

食パンを焼いている時でも、合計10回位は開けていると思います。

あんなに開ける位なら、タイマーを使った方が良いのではと思うのですが、タイマーを頼ってはいけないとかパンの焼き具合は鼻で感じるものだとか日頃から言っているので、あの癖はなおらないと思います。

もちろん開けている時間はわずかですが、多少でも何回も何回も開けると言う行為はどうしても納得ができないでいます。

かと言って、おかしなパンが焼ける訳でもないということは、べつにオーブンを何度も何度も開ける行為は間違っているとは言えないものなのでしょうか。

いつもこんな愚痴のような質問というかただの愚痴ですよね実際・・・・・・


愚痴・・・・大いに結構ですよ(笑)

愚痴はいくら言っても構いませんので、自分なりの答えだけは見つけておいてほしいですね。

私はこのブログ内でも何度も書いてきたと思いますが、焼成中にオーブンを開ける行為は断じて許しません。

ならば、開けずにどうやって取り出すんだよ!!!!

実際に過去にこのようなやり取りを何度行ってきたことか・・・・・

職人と言うのは、プライドのかたまりみたいな人の集まりです。

ああ言えばこう言う・・・という具合に、理屈ではなく最後には感情にうったえて、屁理屈も出てしまうものです。

この先輩の言い分というか指導法も、あながち間違いではないと思うのです。

しかし、パンの焼成の香りはオーブンを開けなくても確認出来るはずですし、それぞれに入れた時間をきちんと覚えていれば、だいたいあとどれ位で焼けるはずだというのが解っているはずですから、その頃を見計らってちらっと開けて確認するということは当然誰でも行っている行為だと思うのです。

ただし、だからと言ってのべつ幕なしに開けまくるというのは、どう考えてもあり得ません。

それはもう確認の域を超えて、せっかくのオーブン内の蒸気が、まったく安定出来ない状態であり、完成品に悪影響を与える事は間違いないと言えるからです。

焼成中にオーブンを開けると言う事は、サウナの扉を何回も開けられる事と同じで、不愉快極まりないと言うような事を他の記事で書いたと思うのですが、家庭用の小さなオーブンであれば、一度開けただけで数十度も温度が下がってしまうと言う、もはやパンにとっては殺人的な行為であると言えるのです。

しかし、業務用のオーブンでは、一度や二度開けたからと言って、下がる温度は2℃程度でしょうから、すぐにまた復活してくるかもしれません。

ただし、問題はそこだけではありません。

肝心なのは、オーブンの中のパン生地と言うのは、熱だけで焼かれている訳ではないということです。

むしろ、パン生地から蒸発してくる水分によって充満している蒸気が、パン全体をしっとりと焼き上げる事に貢献していると言う部分なのです。

少しだけ専門的になりますが、食パンなどの大型のパンと言うのは、オーブンに入れた時点では生地の温度が約30℃くらいが一般的です。

その生地がオーブンに入る事により、毎分ほぼ5℃づつ温度が上昇して行きます。

そして、生地の温度が50℃を超えるあたりから、イーストの活動や酵素の活動などが最大の山場を迎え、生地は最大限膨らんでいきます。

これがいわゆるオーブンスプリングと呼ばれる現象で、ようするに窯伸びが最大限行われる温度帯なのです。

そして更に生地の温度が60℃以上になると、イーストも酵素も完全に死滅し、表面が乾燥していきます。

これがいわゆる、クラストの形成となる訳です。

ある程度表面の骨格が出来てきた時点では、まだ内部はドロドロの生地のままですが、そこから急激に内部にも火が通る事で、いよいよ内部の骨格も出来ていきます。

生地の温度が90℃を越えたあたりから、表面の色付きが始まり、クラストの香りと色付き、そして内部の水分の蒸発が始まります。

そして、生地の内部温度が97℃あたりに到達すると、完全に内部の骨格も完成し、余分な水分が出て消化の良いパンが出来上がるのです。

このように書くと、オーブンの内部では実に激しい変化が起こっているのが解ると思います。

ガスが風船を膨らます時間、骨格を作る時間、内部形成を行う時間、水分を飛ばす時間、色付きを行う時間、香りを付ける時間と、全てが連続して約30分位の時間内で行われいる事が解ります。

その状況の中、何度も開け閉めを繰り返され、オーブン内の蒸気が外へ逃げてしまうと、内部の気流が不安定となり、生地に対しての熱の伝わり方に不具合が出来てしまうのです。

パン生地が焼けていく際に放出される水分も、結局は水蒸気となり、クラストを包みます。

水蒸気に包まれながら焼かれたクラストは、コンディショナーで保護された髪のように、焼成後もパサ付きから守ってくれるのです。

しかしこのコンディショナー役の水蒸気を、何度も開け閉めして外に逃がしてしまうと、とても乾燥したクラストのパンになり、それはパンの日持ちにも大きく影響してしまうのです。

ご飯を炊いた炊飯器を、ほんの数十秒開けておいただけで、薄い膜のようなものが内側に出来ます。

デンプンを含む食品というのは、それほど温度差や空気に敏感なのです。

表面上は問題の無いパンに見えるかもしれませんが、あきらかに老化の早いパンになるはずですし、陳列が裸であれば、硬くなるのも早いパンであると言えると思います。

つまり、何一つ良い事は無いのであり、いかにオーブンを開ける回数と時間を少なくしながらも、いくつもの種類を効率良く焼いていくかがオーブン担当者の技量なのであり、その事が気になっているのであれば、是非悪いものは悪いと言える職人に育って行ってもらいたいと思います。

2 Comments

あーりん says..."初歩的な質問ですみません"
初歩的な質問ですみませんm(_ _)m
インスタントドライイーストは何度で死滅しますか?
今行ってる教室ではざっくりとしか教えてもらえず、何となく、高温では(45度以上) ダメとしか知りません。
何度で死滅するか、また、冬の温水は何度が適温でしょうか?
天然酵母とインスタントドライイーストでは、死滅する温度も違うのでしょうか?
2015.05.15 03:14 | URL | #L9ACpnHw [edit]
しずかな朝 says..."あーりんさん、こんにちは"
ざっくりでいいじゃありませんか(笑)

正確に何度かを知った所で何の役にも立ちませんよ(笑)

高温域も、低温域も、何度になったら即全てが死滅というのではなく、活動が鈍りだし、酵母が活性出来なくなるという事だと思います。

熱いお風呂、つまり書かれているように45℃以上には直接触れさせない事がベストだと思いますが、直接でなければ50℃位のお湯でも死にはしません。

ただ、その様な事を考えるよりも、水以外の全ての材料や機材、そして部屋などを温めるなどして、イーストにはなるべく温度変化を与えない事、そうお考えいただけると幸いです。

何事も極端は避ける・・・・ということでしょうか?
2015.05.18 05:49 | URL | #- [edit]

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