ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

原価をより深く考察してみましょう

原価計算というのは、実際には、小さなパン屋さんではあまり行われていないのではないでしょうか。

中小企業以上になると、毎月の原価率の違いによっては、儲けの分母である粗利率が変動する事により、営業利益が圧迫されたりしますので、大変な問題となります。

原材料が適正に使用されているか、あるいは値上げなどによる原価率の変動を常に監視していなければなりません。

パンの品質がどうであるかということは、はもちろん大切な要素ではありますが、原価率の変動というのは別の意味で重要であり、ここをどう管理するかが管理者の手腕となると思うのです。

しかし、小規模店舗の場合は、そもそもが少し違っています。

それは、仕入れも製造も原価管理も、そして損益計算までもが全てオーナーである自分が一括管理しているからです。

会社であれば、例えば原価率が2%も上がってしまったら、それを修正するのにはどうすれば良いのかを、会議などで話し合い、すぐさま修正するように対策をうたなければなりません。

なぜなら、たった2%の原価率といっても、金額にすれば数十万円の損失につながるからです。

これが規模の大きい会社であれば尚更で、たった2%でも数百万円の損失につながるのです。

しかし、これが小規模店舗になると、その金額は数千円から数万円となると思いますので、これは一大事だ・・・というほどのことではないのです。

一大事であるかどうか・・・・・というのは、売上の規模にも比例してくると思うのですが、原価に関しては思いきった事ができる、あるいは原価を自在に操作する事が出来ると言う意味では、これは中小や大手にはできない小規模店舗の武器であるとも言えると思うのです。

そもそも、なぜ原価計算というものを行わなくてはならないのでしょう。

それは、その商品をいくらで販売することが適正であるかを判断する為の目安となるからです。

一つ一つの商品の適正販売価格が決まることで、売上に対する材料費の比率を掴む事が出来、いくら売れたら材料費がいくらかかり、粗利はいくらになるということが計算出来る訳です。

とはいえ、商品によっては本来の適正価格で売るには ”高いな” と判断されてしまうものや、逆にもっと価格を上げても売れるだろうと言うものもあります。

計算上では、トータルで売上がどれ位であった場合には、原価率はこれくらいとなるはずなのですが、より原価がかかっている、つまり本来の適正販売価格よりも下げた価格で販売していたものが良く売れて、逆に原価率の低い商品があまり売れなかった場合、計算とはだいぶ違ってきてしまうのが原価率というものなのです。

少し解りづらいですね。

例えば、原材料に30円かかっているパンを100円ですべて売っていた場合、原価率というのは、このパンが何個売れようとも30%になります。

100個売ったら売上は100倍の一万円で、材料費も100倍の三千円になりますから、原価率は30%と言う具合です。

しかし、実際には原材料が15円程度しかかかっていないのにもかかわらず、100円で販売しても売れるであろうと判断されるものがあります。

逆に、実際は原材料が40円かかってしまったパンでも、100円でも高く見えてしまうと言う判断から、90円で売ると言うような事があります。

このようにして、原価計算はしたものの、商品の販売価格と言うものは、その他の要素も考えた上で決める事が多いと思うのです。

そうなりますと、当然ながら何がどれ位売れたかによって、トータルの原価率と言うものは計画とは大きく変わってきてしまうと言うのが実際なのです。

そのようなことを、恐らくは毎月のように実感されているであろう小規模店舗のオーナーにとっては、もはやいちいち商品別に原価計算をする事に意味などないと考えられても仕方が無いと思うのです。

皆様もすでにお解りの事と思いますが、原価率を変動させてしまう要因はほかにもたくさんありますよね。

それが、製造ロスであったり、値引き販売であったり、売れ残りであったりするわけですが、このあたりも小規模店舗のオーナーであれば、全てを自分の采配で決定して行いますので、粗方の原価率の変動も体感的に掴めることと思います。

しかしこれが数店舗を構える中小だとすると、例えば急な天候の悪化などにより、売れ残りが多数店舗で発生した場合などは、それが全体に与える影響はとても大きいものになりますから、全店舗でどのような対策を取るかを早急に判断しなければなりません。

売上は多いに越したとは無い・・・・はずなのですが、このように実際にはその売り上げに対してどれだけの材料費がかかってしまったかによっては、売上は上がったのに利益は逆に下がってしまった・・・というようなことが起こるのが商売の難しくも面白い部分なのかもしれません。

そんな、商売を行う上ではとても重要な要素をもつ原価というものを、自在に操ることによって成功を収めている方達がいます。

例えば激安で人気のお店、連日長蛇の列のお店などがよく紹介されますが、そのジャンルは違えども、手法の基本となる考え方は同じだと思うのです。

それは何かと言いますと、お客様が喜ぶ事を第一に考えるということを念頭において、出来うる限りのお値打ち感を演出するというものです。

”この商品なら通常ではこれ位の価格であろう”

お客様と言うのは、それぞれに商品に対して、ご自分の持つ適正価格を当てはめて見ています。

それが、ご自分の持つ適正価格通りなら、すんなり購入となりますが、適正よりも上なら考える事になります。

これが、自分が知りうる知識の中にインプットされている情報のどれよりもお得だ!!・・・となった場合、買わざるを得ない状況に陥るのが購買心理と言うものだと思うのです。

激安店といえども、結局は最終的に赤字であれば存続は出来ません。

ですから、単なる値下げだけで出来る戦略ではないはずなのです。

超お得だと買う側は思っているにもかかわらず、売る側もきちんと利益を上げる事が出来る・・・・

そんな仕組みを考案し、成功している人達がたくさんいる事は皆様も御存じの事と思います。

そんな手法を考案する為のキーワードとなるのが、原価率コントロールなのです。

これはどう言う事かと言いますと、適正な販売価格でなければ適正な利益は確保できないという保守的な発想を抜け出し、お客様に喜んでもらうには・・・という視点に立って、よりお値打ち感を演出することで、個々の適正価格を考えるのではなく、トータルで原価率をとらえるという考え方なのです。

つまり、小規模店舗ほど行いやすい手法となるわけです。

別なカテゴリでも紹介してきましたが、パン屋さんにおけるフランスパンを代表するハード系のパンは、非常に高額です。

そうでなくても、食べ方が今一解らないとか、単純に硬そうだからというだけで、あまり食べた事が無いというお客様が多いのです。

それに輪をかけるようにして高額である為に、お客様はなかなか手を出さない。

結果、原価率が高めの菓子パンや焼き込み調理ばかりが売れ筋となり、トータル原価を押し上げることになっていたりする。

品質をいくら見直してみても、一日に5個しか売れない・・・・なんて話は実に多いのが実情なのです。

ですので、試食販売をまめに行い、焼き回数を増やす事を提案したりしてきましたが、なかなか価格を下げての販売には同意していただけないのが実際です。

適正価格を守りたい・・・・という考え方を否定する気はありませんし、そんな操作は必要ないと言う方はそれで結構だと思うのです。

しかし、品質さえ良ければ売れるというのは、今ではやや傲慢な考え方なのかもしれません。

それほどに競争は激化していますし、市場は常に変化しているのです。

常連のお客様を飽きさせない工夫というのも、必要な事だと思いますし、何よりもいつも来店下さる事への感謝の意味も含めて、お値打ち感のある商品のラインナップを揃えるというのは、効果的であると考えます。

ただし、通常はあまり人気の無いフランスパンだけを安く販売しても、あまり効果は無いと思います。

例えば、今週の赤字覚悟、店長の一押しサービス品と銘打って、合計3品の激安品を用意します。

一つは必ずスイーツ系の中から一つ、次に食パンやブレッドなどから一つ、そしてフランスパンなどのハード系を一つ入れるのです。

おやつに、朝食に、そしてとりあえず安かったから買ってみたというハード系のパンが入る事で、この三点だけは確実に買っていただけると思うのです。

また、経験からすると、それでもいつも必ず購入しているパンに関しては、買わない訳にはいかないという心理が働くもので、トータルとしては一人当たりの購入価格が上がるのです。

このようにして、本来なら出費がかさんだ事になるはずが、得をしたと言う気持ちを持って頂ける事で、次の来店動機へとつなげていけるのではないでしょうか。

店内における様々なアクションは、お客様を飽きさせない為にはどうしても必要です。

しかし、従来から良く行われている全品98円セールとか、タイムサービス、あるいは半額セールなどは、今では新鮮味に欠けますし、結局はその時だけの賑わいで終わってしまうと言う事になりかねません。

値引き販売というのは、どうしても店格を下げてしまう印象がつきまといます。

どうしても食べて欲しい商品を、激安で用意しました・・・・

けして損はさせません・・・・・というニュアンスをお客様にお伝え出来れば成功でしょう。

この店長一押しの商品を、いったいいくらで販売するのか、またその品数を何品にするのかはオーナーのセンスになろうかと思いますし、その駆け引きによって大きな効果を得る人と、やはりたいして反響はなかったと思われる方に別れると思います。

そのあたりの微妙な判断ができてこそ、経営の神様が宿るのかもしれませんね。

細かい原価率にこだわるのではなく、一月、半年、一年という単位で原価をコントロールし、どうせかかってしまう費用であるならば、客数アップに一役買ってくれる費用にできたらいいなと思う、今日この頃でありました。

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