ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

生地冷蔵法

このカテゴリを書き始めたのは、なんと2008年だったのですね~

あれから早7年が経過し、今時の製法の主流はいったい何になっていると思われますか?

とか書きながら、実際にはパン屋さんによってそのあたりは色々な製法を組み合わせてお使いの事と思います。

とは言え、増えてきているであろう製法としては、ストレート法に旨味や風味をプラスさせる為の自家製発酵風味液を入れて、独自の味と香りを出しているお店は多いと思いますし、自家製で冷凍生地を作って、合理化を計りながらも、あくまでオリジナルを貫くというお店も多いと思います。

さて今回久しぶりにご紹介するのは、生地冷蔵法と言いまして、生地玉の冷蔵ではなく、生地そのものを分割前の状態で冷蔵するという製法のご紹介になります。

生地玉で冷蔵した場合の利点としては、分割までが済んでいる訳ですから、すぐに成形から始められるのに対して、生地で冷蔵するというこの製法では、分割をして通常通り番重などでベンチタイムを取ってから成形に入るという一手間がかかることになります。

では、単に一手間がかかるだけの製法なのかと言いますと、他の利点が実はあるのです。

それは簡単に言いますと、収納スペースが少なくて済むという事なのです。

生地玉で冷蔵する場合は、生地をそれぞれ適度な間隔をあけて並べておく必要がありますよね。

そうしないと、となり同士がくっついてしまったり、あるいは冷えが悪くて発酵過多になってしまったり、その間隔の度合いによっては、同じ天板に同じ分割重量の生地を入れたにもかかわらず、膨らみ方が違ってしまうという問題点もあり、そのあたりを常に気にしておかなければならないという難点があります。

そして更に、一枚の天板に間隔を開けて並べるという事は、当然ながら一枚に収まる生地の量と言うのは、空間が多い為に少なくなってしまいます。

その点生地冷蔵というのは、天板いっぱいに生地をまんべんなく入れる事が出来ますので、一枚あたりに入る生地の量がとても多く出来るという利点があるのです。

つまり、冷蔵庫が少ないとか、冷蔵スペースに限りがあるというようなお店の場合は、この製法にすると格段に冷蔵出来る生地の種類を増やす事が可能になる訳です。

更に利点と呼べる特徴がもう一つあります。

それは、生地玉で冷蔵された生地というのは、最大でも2日以内に使用しないと、明らかに膨らみが悪くなりますが、生地冷蔵の場合は、その約2倍の4日位はそのまま冷蔵していても過発酵になる事はありません。

つまり、極端に言えば12種類の生地を毎日捏ねていたと仮定した場合、それを3日に1度~4日に1度に分散する事が出来なくは無いということになるのです。

もちろん生地1種類当たりの仕込みキロ数が多い所はこの限りではないと思いますが、大した量でもないのにい毎日捏ねているようなお店の場合には、そうとう強力な武器になる事は間違いありません。

また、分割をすでに完了してある生地玉の冷蔵であっても、冷蔵庫から出してすぐに成形に入れる生地ばかりではないはずです。

温度をきちんと戻さないとならない生地は必ずあると思います。

だとするならば、生地冷蔵で分割と丸めの手間は確かに掛かりますが、その後のベンチタイム中に温度を戻す事が出来ますので、この二つの製法による時間的な差は特に問題にはならないと私は思っています。

では、この製法というのは実際の現場で相当活用されているのか???

ということになると、意外とそうでもないかもしれません。

なぜなら、そもそもが売れるパン屋さんでは一旦冷蔵したりということそのものが無駄な作業の一つになってしまうからでしょう。

この製法が生きて来る現場というのは、生地の種類にはこだわりたいものの、トータル売上がそこまでは大きくない規模のお店だと言えるのです。

設備の中でも冷蔵庫というのは、比較的他の設備に比べて安価です。

ですので、生地の種類は多くしたいが、毎日仕込むほどの仕込み数ではない・・・・・というようなお店にとっては、便利な製法であると言えると思うのです。

では、品質という面から言うとどのようなメリットやデメリットがあるでしょうか?

まずメリットとしては、低温長時間発酵となりますので、生地は比較的しっとりと、しかも熟成の香りがあり、生地が弱酸性になっている事から、のど通りも良く消化に良いパンが完成すると言えるでしょう。

他方デメリットとしては、冷蔵期間が長くなればなるほど、熟成臭を超えたアルコール臭が発生し、お酒臭いパンになってしまいます。

また、当然それに伴ってボリューム感のない、膨らみの悪いパンになったりしますので、あくまでもどの生地はどれくらいまでに使用するのが良いのかを掴む必要があります。

このあたりは生地玉であろうとも、生地冷蔵であろうとも理屈はあまり変わらないのですが、生地そのものを冷蔵すると、なぜ生地玉の時よりも日持ちがするのかという事に関して、少しだけ説明しておきましょう。

生地玉の場合は、発酵後分割をした後すぐに冷蔵庫に入れ、使用するまでは基本的には生地に触れる事はありません。

という事は、生地は適度に膨らんだ状態で冷え、その後はイーストの活動が緩やかになり、その状態をキープしていくことになります。

この際にどうしてもイーストの活動というのは行われてしまい、解り易く言いますと、途中まで膨らんだ状態で冷蔵されているという事になるのです。

この発酵一時休止状態で翌日を迎える事によって、適度なボリュームを残しつつも熟成の旨味も持つというのが生地玉の良い所なのですが、残念ながらそれだけにイーストのガス発生期間が短くなってしまうのです。

他方生地で冷蔵する場合は、冷蔵後数時間で生地が膨張してかなり膨らんできます。

この際に必ず生地をしっかりと潰してガスを抜いておく事が重要となるのです。

すると、その後はイーストの一時休止状態が比較的長く保たれて、生地の保存期間が伸びるのです。

つまり、生地が膨らんだ状態やガスを含んだ状態では、長く冷蔵する事が出来ないという事になる訳ですね。

このガスをしっかりと抜いておくという事にさえ注意していただければ、冷蔵期間は長く安定した物になるのです。

また、冷蔵に向いている生地と言うのは、基本的には生地玉の時と同じですが、油脂を多く含む生地、あるいは砂糖を多く含む生地程安定していると言えるのです。

とはいえ、食パンやフランスパンなどの糖を含まないか少ない生地だとしても、それほど長い期間でなければ冷蔵は可能です。

だからと言って全ての生地を冷蔵するほどの設備もないでしょうから、どれを冷蔵する事が工程上向いているのかを見極めながら取り入れて欲しいと思います。

それから、他でも説明し重複するかもしれませんが一応書いておきたいと思う注意点があります。

それは、冷蔵用イーストと言うものを使ってしまうと、冷蔵中にほぼ完全に活動が停止してしまいます。

すると、熟成という意味では旨味が添加される事が無くなりますので、意図としてはやや違ったものになるかと思われます。

ただし、冷蔵イーストの方が生地の日持ちは当然良くなりますので、ダメだという意味ではありませんよ。

また、イーストフードや改良剤などはどれを使うのが良いかと考える人もいると思いますが、この製法に関しては使用したからボリュームが出るとか、保存期間が伸びるという事はあまり期待できないと思われます。

つまり、いつも使用している方はそのまま、使用していないのであれば新たに入れる必要は無いという程度だとお考えください。

保存期間を少しでも長くしたいという場合には、当然イーストを増やす事に発想が及ぶと思いますが、その分冷蔵期間中のガス発生も増え、アルコール臭が出やすくなるという事も考慮してお試しください。

また、冷蔵する生地全般に言える事ですが、どうしても冷蔵中に水分が浸み出して生地が柔らかくなりがちです。

ですのでやや硬めに捏ねるというが理想ですし、発酵は緩やかなミキシングである事を考えると、捏ね過ぎた生地はベターっとなってしまう可能性が高まりますので、ミキシングもやや控えた方が良いでしょう。

ミキシング後の冷蔵するまでの時間というのは、生地や配合によって違いがあり、それらをここで説明する事は出来ませんが、通常よりも捏ね上げ温度は下げ、発酵時間もやや短縮された方が良いでしょう。

かと言って捏ね上げ温度が低過ぎたり、発酵時間が短すぎると、お馴染みのフィッシュアイ様のご登場となりますのでご注意くださいね。

この製法を行うのに向いているパンと言う意味では、考え方として焼き立て回数を多くしたいパンに使用してみてはいかがでしょう。

必要な数を分割して成形しては焼き、売れ行きに応じてまた分割から行う事が出来るこの製法は、多めに生地さえ備えてあれば、かなりのチャンスロスを助けてくれるものと考えております。

つまり、人気商品で欠品だけは避けたい、常に焼き立て揚げたてを提供したい、その様なパンには効果的な製法であると思います。

ミキシングと発酵時間を合理化して工程を短縮することで、お店の動向に速やかに反応する事が出来るという意味では、是非取り入れていただきたい製法であると言えるでしょう。

一日2キロしか捏ねていないような生地ならば、6キロ仕込んで三日分という考え方です。

しかし実際には、6キロ仕込んだのに二日~二日半で無くなってしまった・・・・・

というような現象が出てくる場合が多々あります。

それは、その分のチャンスロスが減り、その分売れたという事になる訳です。

売上が今一のお店にありがちなのが以外にもチャンスロスであり、それを焼き回数などを増やす事によって今までよりも少しずつ動きが良くなって来たら、また別の生地を冷蔵して焼き回数を増やす・・・・

このような地道な取り組みによって、お店に鮮度が出て来るようになると、焼き立てをアピールするべき商品と、けして焼き立てが美味しい訳ではないパンとのメリハリが出て、相乗効果を生むのだと私は考えています。

焼き立てパン屋である以上、焼き立ての魅力と言うのはお客様からすれば当然あってしかるべきものなのです。

それは、こだわりであるとか品質であるとかと言うよりもまず、焼き立てであるかどうか、HOTであるかどうかが重要な事なのであり、そこを満たされない限り、他の袋に入ったパンには興味を持っていただく事が難しくなるのです。

それくらい焼き立て出来たて作り立てというイメージは大切なのです。

いかにして焼き回数を増やすか、いかにしてアツアツのパンを手にするタイミングをお客様に提供出来るか、このことなくして現在の売り上げを伸ばす事は難しいと感じてなりません。

なればこそ、これらの製法を駆使することによって、まずはお客様の要望に答え、鮮度感に酔いしれていただく事、焼き立ての香りに幸せを感じていただく事、そうする事で初めてお店のファンになってもらえるのではないかと思うのです。

お店のファンになると、色々なパンが全て美味しそうに見えてくるはずです。

こだわりは、そうなってから出していけば良いのです。

一日に1回しか焼かないパンがあっても良いのです。

ほとんどのパンが袋に入っていても良いのです。

それでも1日に最低でも10回焼くパン、10回揚げるパンを作ってみてください。

そのパンが一日100個以上売れるようになったとしたら、恐らく多くのファンが出来て来ると思いますよ。

そう思えた時に必要な製法として、生地冷蔵法をご紹介いたしました。

そうそう、一つ書き忘れる所でした・・・・・

生地冷蔵されている生地を、空いている時間などに分割して丸めておき、それを更に生地玉冷蔵のようにして翌日すぐ使用するというような技もあります。

また、それこそ空き時間に分割丸めを行って、一旦冷蔵庫へしまっておけば、その間にベンチタイムが終了し、すぐに成形から入る事が出来ます。

このようにして、とにかく生地が冷蔵保存されているということは、何かと融通がきくという事になる訳です。

お試しあれ・・・・・


Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://sizuasa.blog44.fc2.com/tb.php/429-7780c3c0
該当の記事は見つかりませんでした。