ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

冷蔵用?冷凍用?イーストとは????

イーストの種類に関しては、生があったりインスタントがあったりしますよ~的に説明をした覚えがあるのですが、生イーストというものには、実はいくつかの種類があるのでした。

最近になって初めてその質問を頂き、そう言えばその件には触れていなかったかな??と思い、今回はそのあたりに付いて説明をしていきたいと思います。

とは言え、ホームベーキングの方にはなんのこっちゃでしょうから、そのあたりはお許しを頂きたいと思います。

また、ご家庭においてそれらのイーストをお使いになったからと言って、何か専門的なものが仕上がるという訳でもなく、特に味や品質が良くなるという訳でもないと思いますので、はは~ん、そうなんだ~程度にお付き合いいただければと思います。

今回ご質問にあったのは、今まではなぜか冷蔵用イーストと言うものを何気なくお使いであったのに、それをいわゆる通常製パン用に変更した所、過発酵気味のパンが出来上がってしまい、困っているという内容でした。

パン屋さんにお勤めの方なら、生イーストにはいくつかの種類があるんだと言う事は概ねご存知であろうと思いますが、いったいどう違うのかと言う事に関しては、実はあまり良く解っていないのが実態なのではないでしょうか?

それは何故かと申しますと、その辺の説明はあまり細かくはされていない実情があるからなのです。

イーストメーカーの営業の方に聞けば、ある程度は教えてはくれますが、結局の所配合や製法はパン屋さんによって違いますので、一度使ってお試しいただく以外にないと言われてしまうのがおちなのでした。

それはそうですよね、そこで菌数がどうの、温度がどうのと言った所で、パン屋さんにも理解不能でしょうし、営業の方もそれ以上は説明しようもない訳です。

ですので、いくつかの種類がある生イーストに興味がある職人は色々と試して自分のお気に入りを選ぶ事になりますし、特に興味のない職人は、通常のもので全てをこなすことになるのです。

ただ、まったく解っていない人がいきなりこのイーストを手にした場合、それは大いに困ることになるでしょう。

ですので、特に指定をされなければ、生イーストと言われれば一般的な生イ-ストを用意してくれるのが、製パン問屋さんと言う訳ですね。

さてここで、いったい生イーストの種類にはどのようなものがあるのかですが、一応イースト大手のオリエンタルではこのような種類を取り扱っているようです ↓

オリエンタル工業株式会社

簡単に説明していきますが、まずは一番多く使われているであろうものが、いわゆる一般用生イーストと言うものになります。

何が一般なのかと言いますと、通常の温度帯、つまり特別冷蔵したり冷凍したりすることなく、ストレート法や中種法などの通常温度帯の中で作られる製法用の事を指して、一般用と言われているのだと思います。

もちろんこのイーストで、全ての製法を行う事は出来る訳ですが、やはりどうしても様々な工夫が必要となる事は当然で、ならば専用の物があるのであれば、そちらの方が良いということで、それぞれの製法別に専用イーストが用意されているという事になるのです。

それが冷蔵用とか冷凍用と呼ばれる物にあたります。

また、オリエンタルのHPで紹介されている種類の中に、多機能用と言うものがあります。

これは、風邪薬で言えばそ綜合感冒薬的なもので、すべてにオールマイティーで対応できますよと言うものにあたります。

風邪薬では、明らかに熱だけあるというような場合には、解熱に特化したものを選ぶと思いますし、咳ばかりが出るようであれば、咳を鎮める効果のある薬を選びますよね。

しかし、熱もありそうだし咳もそこそこ出る、さらに喉も痛いし、鼻も詰まる・・・・なんて時には、どうしてもそれぞれ別には買いませんよね。

そこで登場するのが綜合感冒薬で、全てをまんべんなく診ましょうというものになる訳です。

イーストの場合も同じ理屈で、専門的なものほど効果は無いかもしれませんが、そこそこすべてに対応できますというイーストなのです。

では、冷蔵用とか冷凍用というのは、いったい一般用とは何が違うのでしょうか?

冷蔵庫に生地を一旦しまうなどして、ある一定時間発酵を抑えようということは、どのパン屋さんでも行っている事だと思います。

しかし、例え冷蔵庫に生地を入れたとしても、そう簡単には冷えてきませんので、ところどころ膨らみ過ぎてしまったり、内側と外側でふくらみが違ってしまったりと、入れ物や入れ数などによっても、生地は様々な発酵状態をとりますので、そのあたりの生地管理はとても重要であり、大いにコツのいる部分だと思うのです。

冷蔵庫に生地を入れるといっても、どの程度膨らんだ生地を入れたか、何度の生地を入れたか、捏ね上げ後に入れるのか分割後に入れるのか、はたまた成形後に入れるのかによっても、冷え方や膨らんでき方が違い、とても難しいものです。

それは、一度活動を始めたイーストというのは、そう簡単に活動を止められないからであり、その活動を止める必要性というのも本来であればいらない機能であったと思うのです。

しかし、たくさん仕込んで少しずつ発酵させて、少量ずつ何度も焼き立てを出したいとか、全てを朝から始めたのでは間に合わないので、一部前日に捏ねておき、それを冷蔵庫でゆっくり発酵させるなどの製法が多く行われるようになり、それに伴いイーストの方もその製法を助けるかのごとく開発されてきたといういきさつがあるのです。

では、例えば冷蔵用のイーストと一般用のイーストとではいったい何が違うのかと言う事になりますが、一般用イーストの場合は、一度走り出したら止まれないという酵母の活動なのに対して、冷蔵用では冷蔵温度帯に入ると、比較的速やかに発酵が休止するという機能を持っているという事なのです。

この機能はある意味画期的で、一般用イーストであれば、例えば冷凍をしたとしても少しずつイーストは活動していますので、冷凍日数に応じて発酵力は著しく低下していしまいます。

ところが冷蔵用のイーストというのは、冷蔵温度帯ですでに発酵活動を休止してしまいますので、長く冷蔵庫に入れておいても、丸で冷凍しているかのようにイーストの発酵力が保持され続けるのです。

冷蔵された生地を常温に戻したとたんに、また活動を始めるという不思議なイーストなのです。

冷凍用イーストに関して言えば、いわゆる冷凍障害と言って、冷凍環境でのイーストの死滅を助けてくれる機能があります。

先に書いたように、一般用のイーストでは、例え冷凍したとしてもまったく活動を行わないという訳にはいかず、少しずつ発酵してしまいます。

すると、そこで使ってしまった発酵活動の分だけ余力が無くなってしまい、いざ解凍して発酵させようとしても、もうあまりパワーが残っていないという事になりかねないのです。

冷凍用イーストを使う事で、冷凍期間での活動を休止させる事が出来ますので、ある程度長期冷凍保存を行ったとしても、冷凍する前のイーストのパワーは温存できるという優れものなのです。

また、イーストには冷蔵や冷凍などの、一旦冷やすという目的を助ける機能の他に、配合による違いにも対応する物があります。

それが高糖度用というもので、砂糖の配合が多い、油脂が多いなどの発酵を阻害する要素のある配合環境にあっても、しっかりと活動してくれるという、これまた優れものなのです。

私個人としては、オリエンタルのHPにあるオーバーナイト用とか、ハードロール食パン用というのは使用した事がありませんので、詳しい事は解りませんが、考え方としては皆同じようなものであると考えられます。

つまり、ある一定の温度、あるいは配合量になると、活動を制御したり復活したり温存したりする機能を持つという事です。

これらを上手く利用して、製パンを助ける事は効果的であると思いますが、種類をたくさん仕入れるのも面倒ですし間違いやすいですよね。

そう言う方は多機能用ということになるのではないでしょうか。

またここで、少しだけ注意してもらいたい事を書いておきましょう。

それは、例えば冷蔵用イーストを使って冷蔵庫へ生地を入れたとします。

すると、その間は発酵活動を行ってはいない事になりますから、いわゆる長時間発酵とか低温発酵の旨味のようなものは得る事が出来ないという部分です。

冷蔵最中に膨らんでこない、あるいは冷蔵後も発酵力が衰えないという意味では非常に画期的なイーストではありますが、その間は活動していない、つまり発酵していない訳ですから、発酵の旨味を得る目的で冷蔵する場合はこのイーストは逆に何の効果も持たない事になります。

ある意味便利な機能だと思って使ったら、パンの風味が変わってしまったというような事が無いようにだけ、注意していただきたいものです。

本来はいかなる温度帯であっても生き続けるイースト菌を、冷蔵したり冷凍したりさせることで、美味しさを更に高めたいという目的からお使いになる場合、けしてお勧めは出来ないのがこのイーストです。

様々な温度帯を駆使して、イーストの発酵活動を制御したり管理したりする事によって、そのパンの特徴を生かそうと考えるのが私達の本来の仕事だと思いますし、そこまで生地の温度や配合に寄り添っていくからこそ、似たような原料・そして配合であるにもかかわらず、そこに味わいをプラスすることが出来るのではないかと私は考えています。

冷蔵庫の中でも、冷凍庫の中でも生地は常に生き、活動をしているからこそそこに思いがいき、生地に元気があるとかないとか、乾燥を防ぐためにどう対応しようとか、少し冷蔵期間が長くなった生地にはどう対処しようとか、その様な考えが製パンの基本なのであり、発酵や活動と言う事だけではなく、生地のコシとかボリューム感を確認しながら配合を変更したりする為にも、発酵の休止というのは不必要であると私には思えてなりません。

ただ、これはあくまでリテイルの考え方であって、規模に応じて当然必要であろう事は言うまでもありません。

また、全てのパンに冷蔵用を使用している、あるいは冷凍用と使用しているというパン屋さんもいます。

この場合の考え方としては、冷蔵用でも冷凍用でも一般の温度帯では一般用と同じように発酵しますので、通常はそのようにして使用しておいて、いざ冷蔵しましょうとか冷凍しましょうという時に、その機能が最大限生かされるように、使用しているようです。

このような使い方もありかもしれませんね。

そもそも質問者様もそのようないきさつで使用していたものと推測されます。

た・だ・しですよ~

この休止するということがパンの味にどう影響を与えるのかと言う事だけは、充分に見極めていただきたいと思います。

間違いなく管理は楽になります。

しかし、休止も停止も同じ理屈ですから、途中まで発酵を行っていたものが途中で辞めたとなると、それまでの発酵熟成はどうなっているのか、それはそのままイーストの活動と同じように”休止してくれている”という発想で果たして良いものなのか?

いささか疑問ですよね~

その点、冷凍生地であればそもそも発酵を行わないで冷凍する訳ですから、イーストの死滅を防御する意味でも必要性は大きいようには思えますね。

大手冷凍生地会社では当然使われている事でしょう。

しかしこれも、リテイルでは果たして必要でしょうか??

大いに考察しながら製パンを楽しみたいものです。

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