ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

細かいけどあるあるQ&A ④

某有名チェーン店で働く職人さんからの質問。

Q 当店の場合はオーブン設備は6枚差しが3段のデッキとボンガード4段とコンベクション2台です。

 ピーク時間になるとどうしてもデッキがいっぱいになり、逆にコンベクションの方は空いている状態ですので、できることならブレッド類をコンベクションで焼けないものかといつも悩んでおります。

チーフにも相談はしたのですが、コンベクションではしっとりしたパンにならないからあきらめるようにと言われています。

講習会でも質問しましたが、やはり辞めた方が良いと言う事でした。

それぞれに向き不向きがあるのは当然だとは思うのですが、しずかな朝さんとしてはどう思われますか?

機械の特性としてどうしても無理なものなのか、何か工夫する事があるようでしたら是非ともアドバイスを頂きたいと思うのですが・・・・・・



A 結論から申しますと、不可能ではないと思います。

お使いのコンベクションにスチーム機能が備わっていれば、ハード系も焼く事は出来ると思いますよ。

ただし、最近発売されているコンベクションでは、全てのパンや菓子も焼けるように色々と工夫された優れモノが登場してきていますが、少し古いものになると、あくまでもでクロワッサンやパイ焼成用という用途でしか使われてきませんでしたので、古いタイプの物であるとやや焼ける物に制約はあるかとは思います。

私個人の体験では、蓋つきの食パンなどは比較的普通に焼けると思いますし、いわゆる蓋なしのブレッドも問題なく焼けると思いますよ。

ただ、チーフや他の皆様が言われるように、食パンやブレッド類というのはソフト感とかしっとり感が売りですから、理屈から言えばコンベクションで焼いたものは、少しだけクラストが厚くなったりしますので、工夫は必要かもしれません。

コンベクションと言うのは、もの凄い熱風が庫内を回っていますよね。

あの熱風により、デッキオーブンなどよりも早い時間でパンの外側から乾燥が始まってしまいます。

デッキオーブンは、じんわりと庫内全体から来る熱と遠赤外線などによって、パンの内側にも熱が届くのですが、コンベクションの場合はほぼ外側からの熱になりますので、まずはパン全体の骨格が出来上がってしまい、その後に中心部に向かって熱が伝わる事になるのです。

ですので、同じパンを焼いた場合には、コンベクションではクラストが早めに焼けてしまう為に、やや膨らみが抑えられてしまい、ボリュームのないパンになる事があります。

しかしこれらは、配合の中の油脂量などが多いリッチなタイプのブレッドではそれほど気にするような事ではありません。

また、食パンに関しては蓋つきであればほぼ問題なく焼き上がると思います。

私もコンベクション焼成においては多くは経験しておりませんので、具体的には申し上げる事が出来なくて申し訳ありませんが、柔らかい生地で高配合であればあるほど、コンベクションには向いていると思いますし、小型から中型にかけてはむしろコンベクションの方が短時間で綺麗に焼けると思います。

コンベクションでハード系やブレッドなどを焼く場合、どうしてもクープが上手くひらかない時や、伸びが今一の時があると思います。

それは熱風によって表皮が早く乾燥するからですから、途中で数分間ファンを止めてみると言う手法も行ってみてください。

コンベクションの良い所は、すぐに温度を復活させる事が出来ると言う点もありますので、焼成の途中で無風状態を作ってあげる事が出来れば、クープが綺麗に開いたり、いつもよりもオーブンスプリングが望めると思います。

それが何分位なのかは、申し訳ありませんがご自分で掴んでいただくしかありませんが・・・・・


ホームベーキングの主婦の方からの質問。

Q 書店に行った時には必ずと言って良いほどパンに関する本を探し、これは解りやすいかなと思った時のみ購入する事にしています (なにぶんパン関係の専門書はお高いですから・・笑)

すでに20冊以上は常備してあり、何かにつけては見るようにはしているのですが、そこでよく見かけるのがレシピの分量が一ケタ違わないこれ???と言いたくなる場面が意外と多いことに驚いています。

本だから出版されてしまえばもう修正しようがないのは解りますが、どう考えても普通ならクレームものですよね。

ど素人が何を言っているんだと思われても仕方ないと思いますが、そのど素人は何の疑いもなくそのレシピ通りに作りますから恐らく大失敗になりますよね。

料理の本ではあまり見かけない間違いだな~などと思いながらも、単なる誤字脱字では済まされない気がするのですが、もしかしたら本当にその分量で合っていたりしてなんて考えてしまい、クレームを言った事などはないのですが、それにしても恐らく間違っているだろうなと思える点がたくさんあり過ぎて、いつも疑って見てしまう自分が悲しいです。

しずかな朝さん的にはお勧めの本とか、逆にこの本は信用するな的なものがありますか・・・・・・・


A いや~実によく解りますそれ。

こりゃたいへんだよな~と思う事、実はとても多いです。

それがイーストや塩であったら尚更ですが、実際にはイーストと塩が一番多く間違っている事が多いと思います。

ベーカーズパーセントというものは、パン屋さん以外ではあまりしっくりとこない数字なのかもしれませんよね。

誤字脱字は私もそうですが(^_^;) 配合の間違いはきついですよね。

しかし現実にはかなり多く発見します。

一般に販売されている書籍にも多く存在する間違いですが、業界を飛び交う業界紙や、はたまた講習会のレシピなどでも実に多くの配合間違いを発見します。

悲しい事ですが、私もそのあたりはすでにまずは疑う所から入ります。

悲しい習性です。

小数点が入る事で恐らく入力する際にミスをするのだと思いますが、確かにおっしゃるように料理本ではあまり見かけない気がしますね。

たぶんそれは、ニンニク一かけらとか、醤油小さじ2杯とか、打ち込む時にも間違いようのない言葉が多く、更に普段から何気なく熟知している食材の分量ですから、ミスってもすぐに発見出来るのが料理本なのかもしれません。

それに比べてベーカーズパーセントは作った事がある人でなければなんのこっちゃでしょうから、無理もないのかもしれません。

私が個人的にムカつくのは、そこそこ高額の専門書でありながら間違えている場合です。

逆に、専門書ではない雑誌などに掲載されている配合は、むしろ信じる方がおかしいいと言える程間違っていますので、大変申し上げにくいのですが、配合や発酵時間や工程などで使われている数字は、他の物と良く見比べていただくことをお勧めしたいと思います。

良く見かけるのが 「塩が12%」とか 「インスタントイースト0.002%」とかで、塩が2%を超える事はめったにないと言う事と、1%以下だと味がしないと言う点、そしてインスタントイーストは製法によりやや開きがありますが、それにしても3%を超えるものはないと言う事と、0.01以下になると計量不能ですから、その範囲以内であれば間違いではないと思っていただきたいと思います。

聞いた事もない材料名が平気で書かれていたり、ルバンリキッドが00%などと書いていても、それが何なのかの説明が無い、または自家製酵母00%と書いてありながら、その自家製酵母の説明が 「リンゴに砂糖水を加えて三日間熟成させたもの」 とだけしか書かれていないようなものは信用しないでください。

使用材料がどのようなものなのか、どこで手に入るのか、何の為に入れるのか、一般の家庭でも入手できて尚且つ賞味期限はどの位なのか、代用できる材料があるのか無いのか、なぜこの工程なのか等々、本来作るにはどうしても必要な情報が書かれているレシピ掲載本の方が少ないと感じています。

とは言え、高額な専門書ではご家庭では難し過ぎますし、ホームベーキング専門の書籍を選ばれるべきだとは思いますが、まずは上記の内容が丁寧に紹介されているかどうかに着目すべきだと思います。

ん~????何の事だ~???? と感じたら、辞めておきましょう。

私自身がレシピをこのブログでほとんど紹介していないのも、パンは配合や製法だけでなく、作り手の扱い方や考え方によって全く別の物になる可能性があるのがパンと言うものだからと言う考え方があるからです。

もっと言うなら、設備も重要ですよね。

どんな型を使うのかとか、言い始めたらキリが無い・・・・・

それらをすべてお伝えするのが難し過ぎて、レシピは紹介する事が出来ていないのです。

何となく出来上がるパンもパンですが、つきつめれば、追求すればするほど答えてくれるのもパンであると私は思っています。

あまり多くを見ないこと・・・・・・それがイライラしなくて済む意外なコツかもしれませんよ。


パン教室を主宰されている方からの質問。

Q ベーコンエピやハードトーストなどのハード系のパンの表面ですが、焼きあがった時に「パリパリ」という音をたてながらヒビが入り、カッコ良くて美味しそうに出来上がる時と、ひび割れしない時があります。

味が悪いとかそれ程感じないのですが、若干クラストの歯ごたえが違う様に思います(思い込みかもしれませんが)。

何故ひび割れするのか、味や食感に影響があるのかな、と疑問に思いました。

パン作りの参考にしたいので、お時間がございましたら、是非教えていただきたいと思います。よろしくお願い致します。



A そう言われてみると、確かにあまり説明されているサイトもなければ書籍もないかもしれませんね。

自分も書いた覚えもあるようなないような・・・・・・

バゲットなどがパリパリとしているのは当たり前・・・・と言った感じでとらえれれているのかもしれませんね。

でも、パン屋さんであっても答えられない人も多いと思いますよ。

このあたりは興味のある人とそうでない人で別れますね。

何事にも興味を持って取り組む人と、特に気にしていない人・・・・・・でもこの差は実はとてつもない差なのですけどね。

質問にベーコンエピやハードトーストと具体的にありますので、特にこの二つに付いて考えていきたいと思います。

そもそもこの二つのパンは、焼き上がった時になぜパリパリと音を立てながらヒビが入っていくのでしょうか。

それは、そのほとんどの要因は配合に砂糖と油脂が入っていないか、あるいは少ないからなのです。

菓子パンがパリパリしないのは、その逆だからと言う事ですね。

ベーコンエピとあんぱんを常温で丸一日放置したとします。

ベーコンエピはポキポキと折れる位乾燥していると思いますが、あんぱんはポソポソになる位だと思います。

つまり、油脂と砂糖の少ないパンと言うのは、乾燥が早いということになりますよね。

乾燥の早いパンであるベーコンエピは、なぜ乾燥が早いのかと言いますと、そもそもがうるおい成分である油脂がありませんので、オーブンの中でもろに熱を浴びてしまい、副材料が無い分火通りも早く、水分が良く飛んだ状態で焼き上がります。

しかも内部にも油分を含みませんから、焼き上がった時に表皮を守る役割もおこなえません。

オーブンの中で200℃以上の高温で焼かれた表皮が、室温にさらされると言う事は、とんでもない温度差に置かれると言う事になります。

オーブンの中のパンの表皮は湿気のある熱によって潤っていますが、それが室温に出されると、温度変化で一気に表面の水分が奪われてしまいます。

すると今度は内部にある水分が表皮に向かって蒸発を始めます。

この内と外の水分移動や強烈な温度変化により、滑らかだった薄い表皮がちじこまることにより、ヒビガ入ってそれぞれが外に向かって反ろうとしてしまいます。

薄いベニヤ板ほど反りやすいですよね。

この際、焼成温度の高さと室温に差があればある程、よりバリバリと裂けていくのです。

では、ご質問にあるように、時にはあまりパリパリと言わない、そしてひび割れてもこない時があるとしたら、それはいったいなぜなのでしょうか。

それは、焼成中の蒸気が多い場合や、焼き時間が長い場合にその様な現象が現れるのです。

思い出してみてください。

パリパリと言わない時のベーコンエピやハードトーストというのは、やたらと艶々輝いていませんでしたか。

艶がいつもよりも出てしまうのは嬉しい事ですが、それは蒸気が多かった、あるいは蒸気が長い時間発生していたことによって、パンの表皮がうどんのようにツルツルシコシコしてしまっているのです。

こうなると、油脂とは別の意味でツルツルに潤ってしまっていて、表皮自体がとても強い結着状態で焼き上がりますので、常温に置いたとしても、外気の侵入も内部からの水分の移動も一定の時間跳ね返してしまうのです。

焼き上がった時にまるで餃子の皮が表面を覆っているかのような状態だと思って下さい。

ですので、食べ口はとてもクラストにもっちりと弾力があり、歯切れが悪いでしょう。

逆に、まったくスチームを与えずに焼いた、まったく艶のないベーコンエピだとすると、それはそれで表皮の結着が悪いバサバサな表皮ですので、そこに室温の湿度が加わったとしても、吸い込むだけ吸いこんでしまい、パリパリと言い音はしないばかりか、そもそもが荒れた表皮になっていますので割れてもこないと言う事なのです。

つまり、適度な蒸気の量と適度な蒸気の存在する時間によって作られた、滑らかで薄い表皮の場合のみに、あのパリパリとしたひび割れが現れるのです。

しかし、ただ一概にひび割れしている事が正しいとは言えません。

それは、小麦粉の質や捏ね方によっても大きく違いがあり、それによって大きなひび割れになったり、小さく細かいひび割れになったりもするからです。

また、あまり伸びない配合や製法、そして小麦粉を選択した場合などは、どうしても表皮が厚いパンになりますので、ひび割れはあまり出ないかもしれませんが、だからといって美味しくない訳ではもちろんありませんよね。

適度に強い粉で適度に良く捏ね、そして適度な温度と湿度で焼かれたハード系のパンはとてもパリパリと音を出しますし、ひび割れも表れます。

その反面、例えばハードトーストなどがあまりにもひび割れがあり過ぎると、スライスした際に表面が剥がれてしまうような事もありますよね。

このひび割れの薄さや細かさによって、はがれやすかったり、はがれにくかったりを調整したいところですよね。

そんな時には小麦粉を選定してみるとかブレンドを行ってみるとか、ほんの少量油脂を入れてみるとか、蒸気の量を変えてみるとか、焼成温度を変えてみるとかというような工夫をしてみて欲しいと思います。

あのパリパリが歯の弱い方からすれば邪魔だと思われる事もあると思います。

そんな時には、少量の油脂と多めのスチームで短時間焼成すれば、比較的表皮の硬くないハード系となるでしょう。

弱い粉で作る事で、ひきの弱いサクミのあるハード系を作ると言う手もあります。

ライ麦粉などのグルテンの弱い粉をブレンドしても歯切れがよくなりますよね。

色々お試しいただけたらと思います。

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://sizuasa.blog44.fc2.com/tb.php/451-25f6ece8
該当の記事は見つかりませんでした。