ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

100円ベーカリーの展望はいかに・・・

100円均一の焼きたてパン屋さんが繁盛しているようですね。

相反するように、どの街にも人気のベーカリーがあり、そこでは100円均一のパンよりも遥かに小さなパンが200円とか300円などという恐るべきプライスであるにもかかわらず売れているという実態がある。

街の個人店に行くといつも感じていることなのですが、このパンがどうしてこんなに高いの???みたいな商品って必ずありますよね。

商品を見ればおおよその原価は解ってしまいますから、これはぼったくりだなといつも思いながら、やはりきちんとした原価計算というのは行われてはいないのだろうなと感じることはしばしばあります。

それでも繁盛しているお店というのは、お客さまにとってプライス以上の何かが提供できているということになるのでしょう。

またそれこそが個人店の強みでもあると思います。

売上が今一つのパン屋さんがあり、更に近所に100円均一のパン屋がオープンしてしまったということで、これはもう対抗するしか手はないということで全て100円というプライスに強引に変更したことによって、売上が3倍に伸びたというお店があります。

こんなに簡単に売上が上がるのなら、もっと早く100円均一にすれば良かった・・・・そう申しておりました。

しかし本当に万々歳なのでしょうか?

ちなみのそのお店では今、人手不足でてんてこ舞いのようです。

個人レベルのお店の100均、中小の100均、そして大手のパン屋さんが仕掛ける100均とにタイプ分けされると思いますが、それぞれの違いについて少し考えてみたいと思います。

買う側にとってはとても魅力的に見えるこの ”100円均一” というプライスは、ダイソーを筆頭としたいわゆる100均が繁盛し続けている事と関係が深いことは言うまでもありませんね。

こんなものまで100円???・・・から、なぜこれが100円??・・・便乗????みたいなものもたまにはある100均ですが、その魅力は圧倒的な品揃えでしょう。

こだわりさえ捨てれば、大抵のものは揃ってしまう・・・・と言うよりも、この商品でこの価格なら十分満足と言えるような魅力的な商品も多いのが最近の100均ですよね。

もう我々の日常には100均という言葉は完全に定着しており、それがパン屋に及んでいると思うのです。

そう考えると、これが100円じゃあたりまえでしょ・・・・みたいなパンや、やっぱり100円じゃこの程度か・・・・では駄目だということになります。

これが100円なの~!!!という感動があるかないかで、同じ100円均一でも相当差が付いてくることは言うまでもないことなのです。

ではそれを実現するためには何が必要でしょう?

それは商品の企画・開発というものがとても重要なのであり、ボリューム感も重要でしょう。

高品質の原材料を使ったとしても、小さなパンではまず売れません。

具が少ないなどもダメですし、クリームがまずいなどというのも勿論駄目ですよね。

ということは、まずは原材料はそこそこのものを使わないといけないということになります。

そしてボリュームという点では、生地重量も大きめに設定する必要が出てきます。

具材よりもパン生地の方が原価が安いということで、フランスパンのように生地だけのパンを全面にだして・・・・なんてことをしているとまず売れません。

むしろ具材をたっぷり入れて、更にボリュームを出していかないと、魅力的な100円均一にはならないからです。

となると・・・・・・どうやら原材料はケチれないばかりか、定価の時よりも気を使わなければならないような事態になってしまいます。

そんな、作る側がこれでどうだ~みたいなパンだからこそ、これが100円なのー!!という感動を与えられるのだとも言えると思います。

さて、そんな感動にお客様が浸っているなか、売上は順調に伸びていくとは思うのですが、ここで幾つかの現実にぶち当たることになります。

原材料の質を下げられたわけでもなく、小さなパンばかりを作っているわけでもないということは、原価率は相当上がってきてしまうということになります。

かつ、売上が上がってきて毎日てんてこ舞いですから、個人店や中小であればサービス残業が増え、大手であれば残業制限が発令され、もっと効率よく動くようにと指摘を受けることになります。

100円均一にすることによって売上が飛躍的に伸びるというのは、昨今の時代背景と大きく関わっていることは間違いありません。

いわゆる100均流行りとも言えるでしょう。

つまり、流行りが終われば淘汰されていくことになるのです。

一度100均を行ってしまったパン屋さんが、いくら品質を上げたからと言っても、もう定価販売にもどすことはまず無理でしょう。

そして100円均一を継続していくためには、圧倒的に原材料の仕入れ値を抑え続けなければなりません。

また、製造にかかるコストと言うのは、100円のパンを1000個作るのも、200円のパンを1000個作るのもほぼ同じですから、簡単にいえば倍のコストが掛かってしまうということになる訳です。

30万円分のパンの製造をしたつもりが、現実には売上は15万円しかないということになりますから、”報われない製造” になる可能性が高く、退職者は後を絶たないでしょう。

先程も言いましたが、個人店や中小レベルであれば、単に作業時間が長くなる、つまりサービス残業として従業員が犠牲になるという構図が出来上がると思うのですが、大手の場合は残業事態に制限がありますから、「終わっていないので帰れないのに帰れと言われる」 なので 「一度退店したことにして再び作業を続けなければならない」というような矛盾が生じて、退職者が続出することになるでしょう。

定時にタイムカードを押して、その後また現場に戻る・・・・・私にも経験がありますし、恐らく経験者は多いはずです。

そのような ”無理” が必ず発生してしまうということを認識した上で、早めにそのことに対して対策を講じておかないと、せっかく売上が上がっているにも関わらず閉店と言うことにもなり兼ねないのです。

同じ原材料であれば、やはり大手の店舗数の多い会社の方が安く仕入れることが出来るのは当たり前でしょう。

更に、冷凍生地を使っての製造の方が効率よく行えることも大手に軍配があがるでしょう。

個人店や中小企業の場合は、どうしても手作りの部分が多いはずですから、仕入れコストが大手よりも高くなることに加えて、社員は作業時間が長くなり、それはほぼサービス残業となるでしょう。

100円均一のパンと、街のパン屋さんとの商品を比較してみると、あることが見えてきます。

それは、100円均一のパン屋さんは色々あっても、そのほとんどで商品構成が似ているということです。

これは、100円では生地重量に限界がありますから、どうしても同じような大きさのパンばかりになると言うこともそうでしょうし、そもそも使える具材に限りが出てしまうということもその理由の一つだと思います。

つまり、高額の原材料はそもそも使用できませんし、比較的安価で人気のある具材というのは決まりきっているからです。

また当然生地そのものには原価はかけられませんから、生地の美味しいパンというのは望めないでしょう。

どこの100円均一でも圧倒的に人気なのが

フランク・ベーコン・コロッケ・明太子・チョコレート・ピザチーズ・サイコロチーズ・焼きそば・ハンバーグ・マヨネーズ・・・・・


と、これらの具材を駆使して様々な形にアレンジしているのが実情でしょう。

しかしこれって、実は大手の袋入りパンと全く同じなのですよね。

具材も同じでボリューム感も同じ、そしてそこに焼き立てをプラスしてお届けしているのですから、売れないはずはない。

こうなるともう、食の提案とか製パンの未来とか言うことなのではなく、よく知られた売れ筋の食材を使って、焼きたてパン屋の武器である焼き立てを駆使し、大手の市場を荒らしているに過ぎない気がしてなりません。

そもそも大手機械生産のパンは、機械だから安く出来る、そして大手だから安く原材料を仕入れることが出来るのですから、それを人の手で実現しようとする、特に個人と中小による行為には、必ずどこかで無理が生ずるであろうと心配してしまいます。

もう一つ心配なことがあります。

それは、ただでさえも衛生的とはいえないパン屋さんがある中で、これほどまでに忙しくなってしまうともう清掃などには全く手が回らないはずなのです。

華やかな繁盛する売り場・・・・・の裏では不衛生極まりない製造実態なんてことにならないことを願ってやみません。

大手各社がみな揃って一斤100円以下の食パンを並べています。

そこまで安くしてくれなくても買いますから~

どうか無理が生じるようなことを大手がこぞって推進するようなことは、して欲しくないと切に願うものです。

3 Comments

ニモ says..."小麦粉にパウダーを入れるとき"
しずかな朝さま

記事と関連がないコメントで恐縮なのですが、パンや菓子にココアや抹茶といったパウダー類を入れる際、
その分、小麦粉の分量は減らすものなのでしょうか?
夫は、ココアや抹茶等にグルテンはないから、小麦粉を減らさなくてもよい、と言います。

それから、イーストや塩はともかく、1g単位で計量するレシピがありますが、仕上がりの味や食感や見た目が、あきらかに違いがわかるほど影響があるのでしょうか?

お手すきの折にご教示いただけましたらうれしいです。
2016.02.14 11:28 | URL | #SVUff9GE [edit]
しずかな朝 says..."ニモさんこんにちは"
パウダー類を入れる場合の考え方はパンと菓子では少し違います。

菓子の場合は例えばココアなどはチョコ味を濃くしたい場合などには多めに入ることになりますよね。

その分小麦粉を減らしてしまうと伸びが悪くなったりしますから、ご主人のおっしゃる通りになります。

がしかし、そもそも菓子には薄力粉を使いますから、それほどの伸びを必要としないものもありますよね。

伸びが必要でないならグルテンは邪魔なだけで、しかも小麦粉が多いほどチョコ味にが薄くなるわけですから、この場合はココアの分小麦粉を減らしたほうが良いとも言えるでしょう。

要するに、パウンドケーキのように商品に膨らみを求めるものは小麦粉は減らさずに、クッキーのように膨らまなくても良い物は小麦粉を減らすという考え方でいかがでしょうか。

それとパンの場合ですが、パウダー類はたくさん入れてしまうとグルテンが破壊されてしまいますので、そもそもたくさんは入れられませんので、小麦粉をその分減らすというのはナンセンスだと思います。

最後に非常に細かい単位のレシピですが、作った人がそこにこだわりを持ち、それを感じることが出来ると思い込んでいる以上誰にも邪魔は出来ないということです。

生地に音楽をきかせると発酵がスムースに行われてパンが美味しくなるという人もいますよね。

私は凡人ですからそのような感性は持っていませんし、強力粉81.7% 薄力粉18.3%などというようなレシピを作る人とは一緒に仕事をしたいとは思いません・・・・というかどうぞご自由にという感じです。

その程度のことだとお考えください。

もしかしてまた敵を作ったか???・・・
2016.02.15 04:21 | URL | #- [edit]
ニモ says..."よく理解できました"
しずかな朝さま

お忙しいところ、早々にご教示くださいましてありがとうございます。よく理解できました。

手づくりするからにはこだわりもありますし、1g単位のレシピにすごいなーとは思いますが、1粒も、1滴も残さずにボールや型に移すことは無理なのに、どれほどの意味があるのかと。ですので、主材料の小麦粉は減らさずに、パウダー類はスプーンで計量して加えています。

粉をこねてパンを焼く、粉を混ぜてケーキを焼く、は、お米を研いでごはんを炊く、と、私にとっては同じことでもあり、家庭で主婦が日常につくるものなので、ムダなく合理的につくりたいというのもあります。





2016.02.15 22:27 | URL | #SVUff9GE [edit]

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