ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

細かいことが気になる??パン教室主催者の方々 (*^^*)

Q 食パンとかブレッドを焼くときに使用する型についての質問なのですが、うちの教室では型にバターを塗って、その上から少量の小麦粉を振って使用するようにしているのですが、先日生徒さんからその型は毎回洗うべきなのか、それとも拭き取り位で良いのかとの質問をされ、「うちでは4~5回使用したら洗ったりしますが、毎回は洗わずに拭き取る程度です」とお応えしたのですが、実際は毎回洗うのが本来あるべき事なのか、それとも特に気にするほどではないのか、今更ながら気になってしまってパン屋さんではどうされているのかと思い質問させていただきました・・・・・・ちなみに、バターを塗っているのはその方がクラストが美味しくなるからだと教わったからで、離型油などの酸化防止剤入りのものはできるだけ使いたくないからという理由なのですが、この考え方は間違っていたりするものなのでしょうか・・・・・・

A 食パンの型の管理はパン屋さんによって違うとは思いますが、毎回洗うということだけは行ってはいないと言えるでしょう。

その理由としては、適度に型に油分が付着していることによって、生地の剥がれが良くなりますので、その油分を毎回洗って取り除いてしまうと、再び油分を型に浸透させることは極めて困難ですので、焼成後は油分の染みこんだ布や型拭きと呼ばれている持ち手が付いている大きな刷毛で十分汚れを取りつつ油分を型に浸透させて保管するということを行っています。

実際の作業として毎回洗うというのには、いささか無理があるとは思いますが、それでもそうしているパン屋さんも当然おられます。

油分の浸透よりも衛生重視という考え方だとそうなるとは思います。

さて、質問者様のご質問で気になる点は、塗っている油脂がバターである・・・・という点になります。

どういうことかと申しますと、確かにバターを塗った方がパンのクラストは美味しくはなるでしょう・・・・が、問題はそこではありません。

型に付着して残っているバター分が、次回に使用するまでに酸化してしまうということが問題になってしまうのです。

なるべく使いたくはないとおっしゃる酸化防止剤ですが、離型油や離型スプレーには確実に酸化防止剤が使用されており、そのお陰で油分が酸化することなく保管することが出来るわけですが、残念ながらバターにはその酸化防止効果がございませんので、油分は間違いなく酸化していき、その酸化というのは実はとても怖い、とても体に良くないものになってしまうのです。

ですので、もしもバターを使用するのであれば、残念ながら毎回洗い落として保管していただかないといけないということになってしまうのです。

型というのは当然ながら常温保管になりますよね。

ということは、常温で放置しても酸化することがない油分しか使用することは出来ないということになってしまうのです。

酸化防止剤というと、” 剤 ” ですから何かと敵視されがちですが、そのことよりもむしろ酸化してしまった食品を体内に入れることのほうがよっぽど危ないのだということだけは知っておいて頂きたいと思います。


Q 滋賀県でパン教室○○を主催している〇〇と申します。

毎回楽しみに勉強させていただいております、有難うございます。

初めての質問なのですが、果たしてこんな質問に答えていただけるものなのか正直迷ったのですがお叱りを覚悟して質問させて頂きたいと思います。

実は先日友人の紹介でとあるパン屋さんにお手伝いに行かせて頂く機会がありまして、その際に感じた事なのですが、食パンの型を掃除する大きなハケ(パレット??)のような物でショートニングをつけながら掃除されていたのですが、そのハケが真っ黒でベタベタしていてとても気分が悪くなってしまったのです。

あれだけ大量の型を掃除されるのですから、すぐに真っ黒になってしまうのは当然だとは感じたのですが、問題はそれを洗うというのは月に一度程度だとお聞きしてびっくりしてしまいました。

なんとも言えない異臭さえしていました。

あれで拭いた型の中にパン生地を入れるのかと考えただけで、なんとも言えない気分になってしまいました。

びっくりしたのはそれだけではありません、そのベタベタのハケで焼き天板にもショートニングを塗っていましたので、全てのパンの底にあの汚い油が付着しているのかと思うと、何とも言えない気分になってしまいました。

厨房に入らせて頂いたのは勿論今回初めての事なのですが、人気のあるお店なのでちょくちょく利用させて頂いておりましたので、凄くショックを受けてしまったのですが、他のパン屋さんでもそういうものなのでしょうか?

もしかしたらこれは聞いてはいけないことなのかも、そんな思いもありましたが、気にするほうがおかしいのでしょうか?

私の教室では型は毎回キチンと洗って乾燥させてから保管するようにしているのですが、あの戦場のような忙しさの中で型を洗うなんてことは出来るはずないですよね。

かと言ってあの異臭を思い出すと、あれで本当に良いのかと感じてしまい、このモヤモヤをどこに相談したら良いのか悩んでおりました。

おかしな質問で大変恐縮ですが、あれ以来油恐怖症のような状態が続いております・・・・・・


A それは嫌な経験をされてしまいましたね ^^;

たこ焼き屋さんなどでも、小さな型拭きのようなものでよく油を塗っているのを見たことはあると思いますが、そんなに真っ黒ではありませんよね。

でも、たこ焼きのお焦げが付着していけば、徐々に黒くなっていくでしょうから、どこかの段階で洗うなどしなければ、やはり同じように真っ黒でベタベタになってしまうでしょう。

ハケを使って食パンの型を掃除するというのは、恐らくどのパン屋さんでも行っていることだとは思いますが、真っ黒ベタベタというのはあまり見かることはありません。

やはり数日に一度程度は洗って煮沸消毒などを行っているのが一般的であろうと思われます。

酸化防止剤を含む専用の型拭き用ショートニングを使っているパン屋さんが多いと思いますが、それでも数日経てばさすがに酸化してきますので、数本のハケを洗いながら交互に使用しているというのが一般的であろうと思いますので、今回の質問者様は相当嫌な思いをされてしまったことになります。

異臭はまさに油の酸化臭でしょう。

早く忘れてそのパン屋さんにはいかないことです。

正直その辺りは保健所の管轄外ともいえる細かい部分ですので、各パン屋さんの衛生観念に任せているというのが実情だといえます。

それでも事故が起きないのは、いつも言っていることですが、パンは焼かれて消毒されているからであり、それでもそのようなパン屋さんのパンの底には、キチンと酸化した油がこびりついていることだけは間違いありませんので、近づかないほうが良いと言えるでしょう。

食品の多くが時間の経過とともに腐っていく訳ですが、具体的には雑菌が繁殖して菌数が増えることによって食べ物を腐らせるという現象と、油脂分が酸化して成分が劣化していくという現象とに別れると思います。

油脂分を含んでいるかいないかによってこの比率は大きく違うとは思いますが、油脂分の酸化のスピードというのは、食品の腐敗に比べればかなり遅く感じられ、それだけについつい見過ごされがちなのですが、どちらかと言えば腐敗したものを口にするよりも、酸化した物を口にする方が怖いという印象をもたざるを得ません。

腐敗したものを食べてしまった場合、下痢を引き起こしてしまったり、時には嘔吐することもあるかもしれませんが、わりと短時間で回復できます。

しかし、酸化した食品というのはじっくりじっくりと体内を蝕んでいきますので、最終的にはもっと大きな病気を引き起こす事になり兼ねないのです。

非常に舌の敏感な人ならば、口にした瞬間にすぐに酸化を見抜くことが出来ます。

正直なところ、パンのクラストが苦い、異臭がする、そんなパンを何度も食べてきた経験が私にもあります。

それらの多くは、今回ご指摘のような酸化しきった油を使っている不衛生なパン屋さんであるといえるでしょう。

誤解のないように付け加えますが、天板油などの専用ショートニングというのは、それ自体は数ヶ月は酸化することはありません。

しかし、それが毎日の掃除の中でパンカスや焦げなどが付着することによって酸化していきますので、やはり数日に一度は洗って消毒を行わなければならないことになる訳です。

また、もう少し衛生にこだわるパン屋さんでは、毎回洗いはしませんが、紙布巾で型を拭いて、その後に離型スプレーをし、布巾はその都度廃棄しているお店もあります。

布の布巾は毛が付着するので使用不可という徹底ぶりです。

質問者様のように、毎回洗って乾燥というのが最も理想的であるといえますが、さすがにパン屋さんが毎日型を洗うことは不可能に近いと思われます。

しかしそれだけに、コマメな交換や消毒を行って、少なくとも酸化した油を塗りこむようなことだけはないように、今後も注意していきたいと思います。

貴重なご指摘に感謝いたします。

尚、このように書いてしまうと、そのパン屋さんのパンを食べ続けているととても危ないというような印象を持たれてしまうかもしれませんが、あくまで食品衛生上の問題とまでは行かないレベルであるとお考えください。

解りにくいかもしれませんが、食品衛生上では焼成することでパンが殺菌され、そのパンがどのくらいの時間その菌数を増やさずにいられるかという指標でしか判断されません。

つまり、原材料が腐敗していないことは勿論の条件ですが、焼成後どのくらいの時間の消費期限となるのか、それ以降は菌の繁殖が増加するので品質保持は難しいですよという所まではきちんと決められてはいるのですが、油脂分の酸化であるとか、陳列中にホコリ等が付着していないかというような部分まではいわゆる管轄外とされているのです。

スーパーやモールなどの人通りの非常に多い場所で、しかもドアの開閉と同時に風が入ってくるような入口付近で、裸でパンを陳列販売されているお店は多いと思うのですが、時間の経過とともにかなりの数の砂やホコリが付着していることは間違いありません。

しかしそれは数値として表すことが出来ないために、見る人が見れば相当汚いことは間違いないと思うのですが、法的には問題ないということになってしまうのです。

陳列してあるパンを素手で触るお客様もいますよね。

そしてそれを元に戻したりする方も残念ながらいらっしゃる・・・・・・

そう考えると、焼き立てパンの裸陳列そのものが本当に衛生的といえるのかといえば?????となりますよね。

腐敗や酸化は、製造過程だけで起こる問題ではなく、購入後の保管温度や時間の経過によっても腐敗も酸化もどんどん進んで行きます。

知らずのうちに私たちは、結構な酸化した食べ物を食べているかもしれませんが、だからと言ってどうなるものでも、どうすべき問題でもありませんよね。

今回の質問者様の体験は、とても憂鬱になるような現実であったかもしれませんが、感情的には最悪と言えても、人体に影響をおよぼす程の危険とはいえず、食品衛生上も消毒済みなので問題ないレベルだと言えるかもしれません。

しかし、食品製造者の心得として、いつでも衛生的な発想をもって望むことが、唯一の責任でありお客様との約束であると思いたいですね。

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