ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

チャンスロスと廃棄・・・どちらが罪なのだろうか・・・・

某大手ベーカリーの日常を少しだけ覗き見し、改めて本当のロスとは何なのかを考えてみたい。

売上が50万円を超えた・・・・相変わらず忙しい一日だった・・・・・

一日の売上が50万円を超えるというのは、いまでは超優良店と言えると思うが、皆様のお店はどうだろうか。

うらやましい~  ありえな~い 家賃はいくらなんだろう~ 何人で回しているの~ と、色々と知りたくなるほど、誰もが憧れる売上であろう。

路面店ではなかなかこの売上は難しいと思うが、もちろんこの倍売れている超々優良店というのもあるにはある。

しかし一般的にこのような売上を取れるのは、駅前や駅中であるか、あるいは観光施設やデパ地下、モールなどでの出店が多いだろう。

つまり、人が多く集まっていなければ、この売上はとても難しいということになるのだ。

ここ数十年の間に、道の駅とモールというのはどんどん増え続けている。

さぞかし儲かっているのだろうな・・・・・と一般人としては思うであろうが、実際にはなかなかそうはいかないようだ。

道の駅に関して言えば、お客様は一見多いが、なかなか単価の高いものは売れずに利益とまではいかないところが多いようだ。

モールも、そこに出店するというのは一見華やかに見えるが、家賃やらロイヤリティーをたんまり取られるので、儲かるという業態はそう多くはないと思われる。

ここで一つ整理しておこう。

儲かるというのは何を指してそう呼ぶのだろうか。

売り上げのことか、それとも利益のことか・・・・・

沢山お客様がお店に入ってくる事をよく繁盛していると表現するが、見ているだけで実際にはあまり売上には繋がらない・・・・なんてことがよくある。

雑貨や衣料などのお店はまさにそんな感じだと思うが、パン屋の場合は全く逆で見ているだけの人というのはむしろ少数派だと思う。

だとすると、やはり雑貨屋さんや洋品店よりもパン屋は儲かるというイメージに繋がるはずだが、残念ながら実際にはそうではない。

儲けという言葉を売上だと考えた場合、やはり単価の高い洋服の方が儲かるだろうし、もっと言うなら貴金属店の方が儲かるかもしれない。

儲けという言葉を利益だと考えた場合、製造から販売をすべて自店で行っている、あるいは自社で行っているであろうパン屋さんの方が、色々と差し引いた後の利益は良いのではないかと一般的な解釈で考えればそうなるだろう。

儲かっているか儲かっていないかというのは、もちろん本来なら最終利益のことを指すわけだが、かと言って利益さえ出ていれば売上高はどうでもよいかといえばまったくそうではなく、どれだけ売り上げているかという売上規模の方が、実際にはお店や企業にとっての信用なのであり、その年商の大きさは個人で言えば年収の多さと同じで、多ければ多いほど金融機関から信頼され、より大きな家を建てられたり、高級な車を買えたりするわけで、いわゆるステータスが上がるのだ。

儲かっているという事の本来の意味である利益高や利益率というのは、あくまで個人や会社内部の問題であって、外に向かってアピールすべきは、何と言っても売上高がいくらであるかということに尽きるのである。

だからこそ企業では確実に売上目標を高めに設定し、一円でも多く、更に昨年よりも多く売り上げを取るということが絶対とされているのだ。

一日に50万円も売り上げるなんて凄い・・・・・そう思っている売上20万円のお店のほうが、利益率が高い場合が意外とある。

利益率だけではなく、利益高そのものまで高い場合すらあるのだ。

50万円を売り上げるには、それ相応の人が必要だということは誰にでも解る。

しかしそれは20万円の場合だって同じように人が必要なはずなので、人件費率的にはほぼ同じでなければおかしいはずだ。

ではなぜ、50万円を売り上げている方が最終的に利益が取れないことがあるのかといえば、50万円を売り上げなければならない為のムダムラムリがそこに現れてしまうことが原因の場合が多い。

具体的に言うと、50万円売り上げるためにはそれ相応の売り場スペースが必要だということで、どうしても家賃は高くなる。

製造にかかる設備費や水道光熱費ももちろん高額になる。

・・・・・と、ここまでは概ね察しがつくが、本当に利益の足を引っ張ってしまうのが、実は廃棄なのである。

売上が20万円のお店で、理想とされている廃棄率の2%というと4千円である。

ところが、50万円を製造する際には意外と多くの製造ロスが発生し、チャンスロスを恐れるあまりに廃棄率は最大で10%をゆうに超える日が出てくるのである。

50万円の10%強といえば5万円を超えるわけだが、この毎日の5万円の廃棄が利益率悪化の最大の原因となるのである。

しかもである。

一日に5万円もパンを捨てているということは、実際には売上がそれでも50万円あるわけなので、製造した金額が55万円であったということになる。

すると、一月にして最低でも150万円分のパンを捨てていることになり、年間ではなんと1800万円も捨てているのである。

なぜこの捨てているパンの金額が利益を圧迫するのかお解りだろうか?

それは、原材料を使い、人件費をかけて、そしてもちろん設備費や光熱費なども掛けて作ったパンをただ捨てるのだから、仕入れたものを捨てているのとはワケが違うのだ。

また、先ほどの貴金属店や洋品店などでは、その日のうちに売れなければ捨てるなどということはまず無いのに対して、焼きたてパン屋は一日勝負の為、このような結果になってしまうのだ。

もし昨日50万円売れたのだとしたら、今日は55万円ではなく5万円マイナスの50万円分のパンを製造すれば捨てずに済むのではないかと考える人もいいると思う。

しかし、実際には50万円しか作らなかった場合、売上は45~47万円止まりで、やはり3~5万円は廃棄となるのが現実なのである。

この現象は、つまりは沢山のパンがパン棚にあれば、人は一つでも多くのパンを購入したいという衝動にかられ、パン棚がスカスカだとあまり買う気がわかないというもので、それをチャンスロスというのだ。

つまり、お客様に一つでも多くのパンを買っていただくためには、常に棚をパンで埋め尽くしておくことが求められるのである。

そうすることで、一人あたりの客単価も上がり、同じ客数であっても売上が上がるという考え方なのだが、だからと言って年間1800万円ものパンを廃棄することは何がしかの罪とはいえないだろうか。

大企業ゆえに売上高至上主義は致し方無いのかもしれないが、グループ全体としたら年間数十億円のパンを捨てていることになるのである。

これで製造に関わる人達のモチベーションが保てるとは到底理解できない。

廃棄に直接関わる販売員が、パンの一つ一つを丁寧に取り扱う気持ちになるとはとても思えない。

しかし話はこれだけでは終わらない・・・・・

売上を上げるために今一番行われているのは安売りである。

ということは、製造員、販売員ともに製造個数も販売個数もどんどん増えていく割には、売上はその忙しさと比例しては伸びていかず、これもまた働く人のモチベーションを奪う最大要因となるだろう。

さらにさらに、毎月大量の新商品でお客様を飽きさせないとでも言いたいのか、一月単位で商品がコロコロ変わってくるので、製造員は丁度慣れた頃にその商品は消えてまた新しい商品になるので、使いかけの原材料が大量に廃棄され、発注に至っては何をどれくらい使うものなのかが理解できないうちに発注するために、年がら年中欠品商品が出てしまう。

製造効率に至っては、慣れるひまもなく毎月商品が変更になるので、年がら年中本社から送られてくるレシピを見ながらの製造となるために、いつまでたっても不効率なままが続くのである。

安売りに至っては一個70円位までは行くと思うと以前予測したが、現実には一個60円のパンが出ている。

もともと安売りというものを行ってきた大手製パンメーカーの袋入りのパンは、ほとんど人の手を必要としない製造法となっている。

一日に何個製造できるかはおのずと計算され、そこから割り出される売上予測や値引きによる利益率まで即計算される。

つまり、いくらまでなら値引きしても利益が出るか、値引きすることでどのくらい客単価が上がるのかなどはデータで全て把握でき、その製造は機械が行うのでそこに人件費率が絡むということは実際にはない。

ところが、焼きたてパン屋の場合には、一つ200円のパンを作るのにも、一つ60円のパンを作るのにも、かかる手間はそうは変わらない。

ということは、販売価格が下がれば下がるほど労働はきつくなるのである。

何度も言うが、そのようなやり方で人が育つわけはないのだ。

そのような企業はやがては淘汰されて異業種へと転換していくのだと思うが、少なくとも数千人もの人が今もその会社で働いているのである。

出来ることなら働く喜びを得られるような職場環境を目指して方向転換してほしいものである。

私とて多くの企業を知り尽くしているわけではないが、経験上言えることがある。

それは、社長以下幹部の方々が現場に訪れる回数と社員のモチベーションは比例するということだ。

そしてただ行くだけではあまり意味は無い。

視察として店舗に行き、指摘だけして帰るようでは全く逆効果だろう。

一緒に作業を行ったり、販売をしたりして、従業員の気持ちの100分の一でも理解しようとする姿勢を見せれば、必ず血の通った会社となるはずだと私は思う。

焼きたてパン屋として展開している以上、売り切れゴメンは理想に過ぎず、むしろ多くのチャンスロスを生むことの方が企業にとってはマイナスである・・・・・何度となくそのような説明を受けた。

ならば廃棄は垂れ流しで良いのかを問うと、廃棄は限りなくゼロを目指す指示を出しているという。

そんな指示で廃棄が少なくなるとでも本気で考えているのだろうか。

あらゆる食べ物業界で廃棄は今後の最重要課題だと言える。

と同時に、解ってはいるけれどもどうしようもないという矛盾をも含んだ大問題なのではないだろうか。

チャンスを逃し売上に繋げられないことがロスなのか、せっかく作ったパンを捨てることになるのがロスなのか、はたまたそんな売上をいかにして上げなければならないかということばかりを考えさせられながら、来る日も来る日も手間ばかりかかるが売上に繋がらないようなパンを作らされて嫌気が差している従業員を増やしていくことがロスなのか・・・・・

果たしてこの問題に突破口は見つかるのか・・・・・

買う側である私たちに出来ることがあるとすれば一体何なのか・・・・

改めて考えさせられるが、けして諦めてはならない問題である。

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