ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

粗利率を上げるには原価を下げるしかないのか・・・・

大企業でも中小でも、そして個人のお店であっても、粗利率が高い、又は安定しているということはとても大切な健全経営のバロメーターであることでしょう。

しかし昨今ではどうしても価格競争をしいられることとなり、粗利率は低下する一方だというのが現実ではないでしょうか?

パン屋を経営という面からのみ考えた場合、とにかく一番重要なのはもちろん売上そのものなのですが、その売上というのは実際には材料を使わずには生み出すことが出来ませんので、原価というものが売上には必ずつきまといます。

そんなことを言ったら、人なしでは経営はできないので人件費だってつきまとうはずですし、その他の経費だって当然つきまといます。

ただし、原材料以外の費用というのは、工程であったり機械化であったりをどう組むかによっても大きく変わってきますし、人件費にしても職人が多く必要な場合と、オートメーション化された製造ラインならパートや外国人労働者だけで十分なことがあったりと、必ずしも売上に直結して上がり下がりするものとは言い切れないところがありますよね。

そう考えますと、やはり売上にもろに直結してくる原材料費、及びそれが売上に占める原材料費率というものを如何に低く抑えることが出来るのかによって、同じ売上であっても生きた売り上げなのか、それとも死んだ売上なのかに分かれてしまうとも言えますね。

しかしです、どんなに原材料を安くしてもらうようにメーカーに交渉しようとも、限界というものがありますよね。

これが限界に達すると、次に考えることといえばやはり品質をある程度は落とさざるをえないということであろうし、使用する量を減らしたり、パンそのものを小さくするなどになってくるでしょうし、そもそもパンの大きさというのは重量で見られない部分がありますから、生地そのものはたとえ小さくなったと言っても、やや発酵オーバーで焼成すれば見た目にはあまり変わらないものが完成します。

そんな苦肉の策ともいうべき対策を取らざるをえない状況でも、低価格路線だけは辞められないというお店や会社が多いのが実情でしょう。

手作りパン屋、あるいは焼きたてパン屋として行う以上、どうしてもこれ以上は設備には頼れないという部分が当然あります。

つまり、人件費を格段に下げるということにはそもそも無理があるわけですね。

経費の削減というのも、忘れた頃に必ず登場するスローガンですが、これもほぼ慢性的に行われているはずですから、大きな削減は見込めないでしょう。

するとおのずと出来ることが限られてきますね。

大きく見えて、美味しそうに見えて、誰でもが知っている食材を使った、見栄えの斬新なパンの開発。

お得感丸出しのセット販売による客単価アップ戦略。

新商品と季節限定品のこれでもか攻撃。

タイムサービス等の集客アクションの連発。

この他にもとにかく試食にこだわったり、焼き立て時間を細かく掲示したりと、限られた戦略とはいえ何かを行わない訳にはいかないというのが特に企業ベーカリーの ”今” だといえるでしょう。

安定した利益を確保するために、どうしても粗利率を上げる必要はあるものの、試食にしても限定品にしてもセット販売にしても、どれもとどのつまりは原価を押し上げてしまうことに繋がります。

ある程度お客様を自店に囲い込んでおくためには、どうしても原価を掛けたアクションを行わざるをえない状況の中、それでも少しでも原価率を抑える策として考えたくなってしまうのがこれでしょう・・・・

原価率の低い商品構成を厚くする

商品一つ一つの原価というものは意外と違いますよね。

リッチな生地を使って、フィリングやトッピングを多く使用した商品というのはどうしても高原価率商品となりますが、リーンな商品で、しかもあまり副材料を必要としない商品、つまりフランスパンなどのハード系の生地というのは低原価率商品ですので、この生地を使った商品構成を厚くすることにより、見た目も大きくすることが出来、お得感を出すことができるようになる・・・・・そのように考えることが出来ると思うのです。

そうして考えられたハード系の生地を使った大きめのパンというのは、全体の原価率を下げることに効果を発揮するとともに、お値打ち感を打ち出せる武器になるのです。

全アイテムの中で、フランスパン等のハード系の生地を使った商品の割合というのは通常であればとても少ないと思います。

しかし、思い切ってフランスパンを低価格で販売し、その生地を使った商品アイテムを増やすことで、新たなヒット商品、人気商品の提案にも繋がり、客層も広げることが出来るのではないか・・・・・そんな動きもあちらこちらで見受けるようになりました。

フランスパンという今まではどちらかと言うとくすぶっていた、大ヒットとまではいかなかった商品を思い切って展開することによって、新たな販売戦略に繋がり、トータル原価も安定する・・・・・これはよい戦略ではないか・・・・・そんな経営側の思惑がここ最近の商品構成に現れているように感じます。

ここ最近のフランスパンの品質というものを考えると、様々な専用小麦粉の登場により、また製法やルバンなどの登場により、以前とは比べ物にならないくらい多くの品質が出回っており、買う立場からすれば選択肢が増えてとてもありがたいと感じています。

各個人店ではそれぞれ個性の違うフランスパンが並んでいますし、大手の袋入りのフランスパンですらかなり美味しくなってきたと私は思っています。

しかし、まったく品質管理が出来ていないチェーン店も多いという印象も同じくらい多く感じます。

チェーン店や大手が展開する焼き立てパンチェーンなどでは、今慢性的な人手不足に陥っています。

そんな中で会社が考えることといえば、いかにして作業を簡素化出来るかということになるわけですが、そこにフランスパンなどの比較的技術を要するアイテムが工程に入ることによって、店舗によって品質の全く違うパンが出来上がってしまうという現実があるのです。

全く発酵状態が理解できていないのではないか・・・・というお店。

過発酵を通り越してしまっているようなパンが並んでいるお店。

フランスパンがスチーム焼成されずにガサガサで並んでいるお店。

クープの本数は全く無視、割れていても割れていなくてもお構いなしのお店。

日によって長さや太さが全く違うお店。

フランスパンなのに上部が真っ黒で横が真っ白な菓子パンのようなお店。

更に厨房を覗きますと・・・・・

オーブンの清掃が行われていなく、パンの底が焦げた粉だらけのお店。

キャンパスシートがカビだらけのお店。

パンをオーブンから出すスコップが生地でカピカピのお店。

フランスパンも菓子パンも同じホイロを使っているお店。

・・・・・と、これがフランスパン????  

というかこれが売り物のパン???

そう思えるような商品が堂々と並んでいる光景をよく見かけます。

ただし、それでも低価格で販売していればそこそこ売れていたりしますので、恐らくは大した改善もされずに今後もこの路線を続けていくことでしょう。

それでも買う側が納得してお金を払うわけですから、私などが専門家ぶって意見すべきではないのかもしれません。

全ては買う側の判断ですので・・・・・・

ただし、品質は度外視したとしても、フランスパン類を充実させることによって、もう一つの目的である粗利率を上げることができているのかという点に着目してみましょう。

フランスパンをたくさん作るというのは、以外にも技術と手間と時間がかかってしまうということは、製造者ならば理解できると思うのです。

また、もう少し掘り下げてみてみると、例えば6取り天板にあんぱんを10個のせて焼いたとして、そのあんぱんが一個120円であったとしたら、天板一枚で1200円分の商品を作れることになりますよね。

それが仮に同じく10個のデニッシュで一個250円だとしたら、天板一枚で2500円の商品を作れることになります。

成形一つ一つの手間や、焼成後の仕上げがあるかないかも工程としては重要ですが、天板がオーブンに一度に入る枚数というのは限られています。

限られた設備の中で、いかに一枚の天板で製造金額を上げるかということは実はとても重要な事になるのです。

しかし、例えば一個100円の大きなフランスパン生地の商品が、天板一枚に4個しか乗らなかった場合、400円しか製造できないことになります。

高額なデニッシュとあんぱん、そしてこの大きなフランス生地の場合とでは、あまりにも天板一枚で作れる金額に差がありすぎますよね。

するとどうなるかといいますと、焼けども焼けども製造金額は上がらない、つまり焼きっぱなし焼いていても、ちっとも売上に貢献できないという状況が生まれてしまい、その事が生む状況と言うのがつまりは、

人手不足なのに仕事が回らない・・・・

ということになるのです。

そして結局は残業などが増えてしまい、せっかく材料費は抑えられているようでも、もっと高額な人件費が上がってしまうということになる訳です。

なぜこうしたことに気が付かないのかといいますと、どこの世界もそうだとは思うのですが、考える人が机上でのみ、パソコンでのみ考え判断しているからに他なりません。

一つひとつの商品がどのように作られていくのかを現場に入ってしっかり確認しないと、このような無知な机上の計画ができあがってしまうのでないかと思えてなりません。

どのような仕組みを考えようとも、全く技術を要せずにパンを作るということは不可能だと思います。

しかるに、技術者の養成というのはどこの企業でも重要視はしているはずなのですが、そこに着目しているゆとりがないほど、今企業というのは売上確保が難しく、合わせて利益率の悪化は歯止めの聞かない状況であります。

思い切って低価格路線を脱却すること、自転車操業的経営ではけして人材育成は行えないこと、そして一番に思うのは何よりも廃棄を正当化する温床であってはならないということ。

売上規模の大きい企業こそ、そのことに気がついてほしいものだと感じる今日このごろです。



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