ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

パンに出来る ”シワ” を無くすには・・・・

こんな質問をいただいています。


Question1 特に当日解凍した時にしわができるような気がしています・・・・(パン屋さん男性)

これは、成形した後冷凍しておいた生地(アンパン)を、いつもは一晩冷蔵庫で解凍して翌日焼成するところを、当日に冷凍庫から出して自然解凍した場合にしわができやすいというお悩みです。

Question2 コロネを焼いて、いざ中身を詰めようかというときになると必ずと言っていいほど表面がしわしわになっています。 焼き時間は12分ほどですので、十分火は通っていると思うのですが、やはり焼き時間が足りていないのでしょうか? それとも何か発酵状態に問題があるということなのでしょうか・・・(パン屋さん女性)

Question3 アンパンもそうですが、クリームパンのときにはなおひどく、さらにジャムパンのときにはもっとしわしわになってしまいます。これって中身が柔らかいから??と自分なりには分析しているのですが、特に生徒さん達からの指摘はありませんのであくまで私個人が納得できないだけなのですが・・・(パン教室主催女性)

Question4 山形食パンの上部がしわになってしまうのはどうしてなのでしょうか??焼き色は充分だと思いますので焼きが足りないということはないと思うのですが・・・(主婦)


と言うような、パンにシワが出来てしまうことを悩まれている方がとても沢山います。

これもみな、パンに美しさを求めるゆえであると思われますし、非常に繊細な目で自分のパンを見ている証であるとも言えると思うのです。

表面がシワシワのパンというのは、実はよく見るとどこのパン屋さんでも普通に沢山陳列されています。
ですので、気にならない人にはどうということはないという程度の問題なのですが、やはりそこを黙ってスルーすることなど出来ないという方々が存在するのです。

そもそも、パンの表面にシワが出来てしまう原因というのは何なのでしょうか?

一般的に固いパンの代表であるフランスパンの表面を想像していただくと、シワシワと言うよりは、むしろパリパリ割れている感じがしますよね。

質問にも多く出てくるパンというのは、相反して柔らかそうなパンです。

という事は、どうやらシワができやすいパンというのは、柔らかくてしっとりとしているパンであるということは想像がつくはずです。

上記の質問のすべての解決方法は、当然それぞれちがいます。

しかし、その原因に関しては概ね同じであると思われます。

それは、焼成直後は乾燥していた上部の表皮に、生地の中にある具、あるいは生地の内部に残された水分が浸透してくることによって、柔らかくなり骨格を保てなくなったということになろうかと思うのです。

ですので、言い方を変えれば、それはとてもしっとりとしたパンであるとも言えますし、柔らかいパンを目指していたとすれば、至極当然の結果であるとも言えるのです。

そうか、ならこれで良しなのか・・・・・という訳には行きませんよね。

ということで、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

Question1の場合は、普段は冷蔵庫で生地を解凍していて、翌朝に発酵室へ入れて焼成しています。

冷蔵庫でじっくりと解凍された生地というのは、低温で少しずつ発酵が進んでいきます。

この、ゆっくりと時間を掛けて発酵させるという行為は、例えば風船をゆっくりとゆっくりと膨らませていくことに似ています。

例えば一万個の風船を一万人の人がゆっくりと膨らませば、ほぼ割れることなく膨らむと思うのですが、よーいどんで早く早くと膨らましてもらうことになると、かなり多くの風船が割れてしまうでしょう。

ゆっくりと発酵を行うという事は、生地の中にたくさんの風船が細かく分散された力のある生地になると同時に、長い時間ガス発生を行うことで、イーストはある程度力を使い果たしているとも言えるのです。

それに比べて当日に解凍した生地というのは、眠りから覚めて意気揚々としているところに来て、最高にガス発生を促すための高温多湿の発酵室へといくことにより、全員が全力疾走しているかのようにパンを膨らませていくのです。

結果、どちらがオーブンでよく膨らむのかはもうお解りですよね。

イーストの全員全速力の力により、極限までよく窯伸びした生地というのは、当然骨格も弱く、おまけに表皮も非常に薄くなっています。

ですので、どうしても水分の移動によりシワが出来てしまうということになるのです。

という事で、この段階ではシワを防ぐには、余り元気すぎる生地ではシワになりやすいのだということが解りますよね。

Question3の場合も同じで、総合的にソフトで元気のあるしっとりとした生地を作られています。

ですので、中身の水分が多ければ多いほど、シワができてしまうということになるのです。

では、Question2とQuestion4のような具材のないパンの場合はどうなのかといいますと、これも理屈はほぼ同じで、自らの水分移動に耐えられないほど、柔らかくソフトな、そして薄い表皮であるということになるのです。

この具材のないパンの場合は、解りやすく言えば生地がオーブンで伸びすぎる元気な生地であることが原因ですので、イーストの配合を減らすとか、小麦粉を少し弱いものに変える、あるいは弱い小麦粉をブレンドして伸び過ぎを解消する、捏ね時間を短くするなどの工夫が必要となります。

一つ一つの配合と、その工程によっては、無限に生地が強すぎてしまう原因や、逆に弱くなってしまう原因が存在します。

ただ、全般的に言えることは、オーブンで伸びすぎた生地は戻りたがる習性がある訳ですから、どこかの段階でイーストの活動を全力疾走からマラソン位の走りにしてあげる工夫をするということと、そもそもグルテンがバリバリ強すぎて、つまりいくら急いで膨らませたからと言ってけっして割れることのないようなとても頑丈な風船ばかりの生地だと、どうしても過剰に伸びすぎてしまうのだということを憶えておいてほしいと思います。

では、テクニックとしてこれらの問題をクリアーする方法はあるでしょうか。

もちろんありますよ。

パンの骨格をある程度強いものにする為の生地の取り扱い方と、配合や工程などをどのようにしたら良いのかという考え方について見ていきましょう。

まず、骨格が強くなりシワが出来なくなることは非常に有り難いのですが、そのお陰でパンが固くなったり、パサついてしまうようでは本末転倒ですので、ある程度骨格をしっかりさせつつ、しっとりとした食感は残すようにするための考え方として、小麦粉は必ず薄力粉ないしは中力粉を2割程度ブレンドすることをお勧めします。

一般的な手作りパンの現場や家庭でのパン作りにおいては、ミキシングの過剰と不足が両極端な場合がほとんどです。

すべて捏ねすぎているか、あるいは全てにおいて足りていない事が非常に多い。

この場合、ミキサーを使っているパン屋さんの場合は、その殆どはオーバーミキシングになっており、ご家庭では何かしらのコネ機を使われている方はほぼ捏ねすぎ、手捏ねやポリ袋でのコネであればほぼ不足というのが実情です。

不足かな??と実感されている方は、発酵時間を長くしたり、途中で丸め直しやパンチを行うことでベストな状態へと導けると思いますし、機械で捏ねている方は数分減らしてみるだけで随分違うと思います。

どうしても、ソフトなよく膨らむパンを作ろうと思うときには、しっかり捏ねることが正論であり義務であるかのごとくしっかり捏ねるものですが、確かに一般的な強力粉というのはどこまでもグルテンに伸展性があり、それに答えてくれるものになっています。

しかし、だからこその伸びすぎにつながりますし、パンはよく膨らむほど良い・・・というわけではけしてないのです。

グルテンというのは、発酵という工程でも作られていきますし、分割丸めや成形でもグルテン形成は行われています。

そのグルテン形成を、ミキシングの段階で全て作り上げるのではなく、その後の発酵によって作り、尚且つ成型の段階でピークに来るようにすることが、実はとても重要なのです。

もう少しまとめましょう。

ミキシングの段階では、うす~い膜が出来るまで捏ねるのではなく、ツヤツヤになる数歩手前の段階で終了します。 この時ミキシングとしては7~8割行えていれば良いのです。

それを意識出来るようにするためにも、薄力粉・中力粉・国内産の強力粉や中力粉をどんなパンにも2割程度ブレンドすることで、生地の仕上がりがとても早くなるように感じますし、いつもどおり捏ねているとベターッとしてきますので、早めにやめる癖がつくと思います。

いかなるときも、生地の捏上温度は低めにし、イーストの配合は今よりも減らして、ある程度常温発酵を行った後に冷蔵庫でゆっくり発酵させる、あるいは分割の後に冷蔵庫で生地を休ませるというように、時間を掛けてグルテンを形成させながら、ゆっくりと風船を膨らませていくという製法をお勧めします。

ソフトな生地というのは、ほぼ全てに油脂が配合されているはずです。

油脂の入った生地というのは、冷蔵することで油脂分がかたまり、手粉がなくても成形を行いやすかったり、もっとも重要なのが、成形によるダメージをたくさんの風船と固まった油脂が守ってくれます。

普段は120%以上グルテン形成された生地を常温で成形していた場合、成形によって風船を割り、グルテンを大いに傷つけていた為に骨格が弱くなっていた・・・・ということがよくあります。

ミキシングですでにピーク以上のグルテンを形成していた場合、成形はとても行いにくいものになっており、成形後の発酵によって更に破壊の一途をたどり、パンとして最大の武器である旨味はほぼなくなってしまうでしょう。

これに対して、成形時にようやくピークを向かえる生地というのは、成形によってボリューム感が増すばかりか、しっかりとした骨格を持ったしなやかな表皮を作ることが出来、丁度良いボリュームの丁度良い風味を残したパンに仕上がるのです。

この時、強力粉のみのパンの時よりも、弱い粉をブレンドしたことによって、しっかりとした骨格の表皮であるにも関わらず、口溶けの良い、ひきの弱いパンになるのです。

一つ一つ具体的に説明していくには膨大すぎて、とてもここに書ききれませんが、おそらく皆さんが大手の菓子パンを食べた時に感じることはこんなことではないでしょうか。

具はそこそこ美味しいが、パン生地ってこんなにも味気なかったかな???

そして、焼きたてパン屋さんのパン、あるいはご自分で作ったパンに対しては、

生地が美味しい・・・・

そう思えることが何度もあると思うのです。

それこそが機械化ならではの捏ねすぎた生地のパンと、旨味のピークをコントロール出来ている手作りパンとの違いなのではないかと私は感じています。

もちろん、残念ながら大手機械生産の方が勝っているパンもありますし、手作りでも全く駄目なパンもあることは確かです。

しかし、手作りには成形の仕方や発酵を事細かく変更したり改善したり出来るという利点があります。

なぜこうなってしまうのかを理解した上で、手作りならではの解決法で、見た目だけではなく、心から味わいを感じることの出来るパン作りを行ってほしいと思います。

次回は、成形の確信に迫っていきたいと思います。


Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://sizuasa.blog44.fc2.com/tb.php/496-754c0a6e
該当の記事は見つかりませんでした。