ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

ショートニングでは美味しいパンにならない・・??

油脂に関する質問の中には、必ずと言ってよいほど、こんなフレーズが登場してきます。


それは、

ショートニングで美味しくなりますか??


というものです。


これは、レシピなどを分析したり、新しいレシピを提案する時などによく聞かれるフレーズなのですが、なぜそのように思う人が多いのでしょうか?


それは恐らく、バターやマーガリンはそのまま食べても美味しいので味としてどのようなものなのかをすぐに連想出来るのに対して、ショートニングはそのまま食べたことのある人自体少ないと思いますし、もし食べたとしても ”うぇ~っ” でしょうから、そんなものを入れて美味しくなるというイメージがわかないのだと思うのです。


では、タイトルに有るようにショートニングを使ってパンを作ったら、パンは美味しくならないのでしょうか?


あきらかにバターやマーガリンよりも味が劣るパンになってしまうのでしょうか??


答えは・・・・油脂になにを求めているかによると思います。


つまり、自分の作るパンはどのようなパンなのか、そのパン作りに必要な油脂は何なのかということなのだと思うのです。


確かに、油脂をそれぞれ単体で食した場合、バターが美味しいことは誰にでも分かると思います。


ではなぜショートニングのような無味無臭の油脂が存在しているのか・・・ということを考えますと、それは 「コストをできるだけ抑えるためにメーカーが策略したもの・・・」 「そもそも安い原料と香料でごまかすためのもの・・・」


なんて考えている人も多いかもしれませんが、そんな考えが全くないというわけではないかもしれませんが、やはり一番には食味の改善などを考えて作られたものであると考えられます。


料理を例に考えてみますと、色々なものを炒める際に、バターで炒めるとそれはそれは香り高く美味しくなりますよね。


炒め物ではないにしても、最後の仕上げにバターを入れるだけで、これまた濃厚な香りをかもしだしてくれますよね。


ただしですよ、なんでもかんでもすべてバターの濃厚な乳フレーバー・・・・で良いかといいますと、もう少しさっぱりとしたものにしたいとか、野菜は野菜それぞれの味と香りを楽しみたい・・・みたいなことになりますよね。


また、バターを使って何かを焼いた場合、ある意味舌に油っこさを感じたりしませんか??


油脂分なのですから当然といえば当然なのですが、その舌触りがいやだということもたまにはあるでしょう。


また、様々な調味料を使って味と香りに変化を出したいという人も多いと思うのですが、そんな時にはバターの乳フレーバーはちょっと邪魔になったりもするはずです。


このようにして、単体では非常に美味しいバターですが、香りという意味では個性が強く、時には素材の風味を邪魔してしまうこともある訳です。


そんな時に登場するのが、料理で言えばサラダ油でしょうし、パンで言えばショートニングだと考えていただけると解りやすいのではないでしょうか。


パン作りというものをザックリと考えた時、イーストや砂糖や塩というように、確実に使う材料として油脂が登場すると考えている人も多いと思うのですが、そもそも私個人としては油脂はパン作りの基本材料の中に入ってはいません。


つまり、パンを作る人の中には、そもそも油脂そのものをあまり多用しない人も多いのです。


パンと言えばまず食パンありきで、その次が菓子パンでという認識の方からすれば、油脂の入っていないパンと言ったらフランスパン??・・ということくらいしかパッと浮かばないかもしれませんが、そもそも食パンですら油脂が入っていないもののほうが美味しくなると個人的には思うくらい油脂に関する考え方、捉え方というものには人それぞれ違いがあるようです。


様々な小麦粉や穀物、そして塩と酵母と水、それだけで充分美味しいパンが何種類も出来上がりますし、発酵をコントロールすることで様々な香りを醸し出してくれるのがパン作りの醍醐味だと常々考えていますが、では一般的に売られているようなあのフワフワとしたパンが油脂無しで作れるかと言われますと、それは無理でしょう。


フワフワというイメージ自体も人それぞれの捉え方があるかもしれませんが、例えば大手の食パンのようなしっとりふわふわの食パンが油脂無しで出来るかといいますと、クラム自体は似たようなものが出来たとしても、クラストはどうしても硬くなってしまうでしょう。


では味の方はどうかといいますと、別に油脂が入らなくても、いや、言い方を変えれば入らないほうが美味しくなるという考え方もあると思います。


そんなふうに言ってしまうと少しややこしくなってしまいそうですが、そもそもパンに求める味や風味には好みがあり、美味しさというものをどう捉えるかによって様々な考え方が存在しているはずですので、パン作りにはどうしてもバターでなければならないという人もいれば、ショートニングではまったく美味しいパンにはならないという人がいても否定はできません。


ただ、それぞれの油脂の特徴を知った上で、より美味しくなるための油脂を選択していただければよいのではないかと考えます。


私の経験では、油脂と言えばマーガリンで、しかも全てのパンに同じマーガリンを使っていて、お店の中に入るとそのマーガリンのフレーバーが充満している・・・ということが多々ありました。


それが悪いことなのかといいますとけしてそうではないのですが、この場合なぜバターを使わないのかといいますと ”高いから” であり、なぜショートニングを使わないのかといいますと、 ”美味しくならないと思うから” という意見が多く、その考え方はあまりにも短絡的だと言えます。


それぞれの油脂を使った場合の ”油脂としての効果・効能” というものを理解せずに、油脂と言えばマーガリン一本という考え方は、少なくとも食品製造者としていかがなものでしょうか。


バターの香りというが大好きな人は多いと思います。


しかし実際にはバターの香りではなく、香料の香りであることの方が多いのが現実です。


夏の風物詩 ”かき氷” に代表されるように、いちごやメロンやレモンという代表的な香料及び着色料で作られた食べ物で育ってきた私達の世代の人間は、それが本物のイチゴやメロンではないことは解っていても美味しいと素直に感じて食べていました。


これだけ食品に対する監視が強まってきている時代にあっても、今もなおかき氷は健在ですし、ありとあらゆる食品に、 ”香料と着色料” が多用されており、人々はそれを喜んで食べています。


パンに限って見てみたとしても、”保存料は使用していません” とか、 ”イーストフード無添加” などは相変わらずよく目にしますが、着色料と香料だけは入っていないパンを探すほうが難しいくらいです。


それらの作られた ”香りと色” のパンがスーパーなどの棚にたくさん並び、そしてそんな具材を使った手作りパンを好んで食べる人は非常に多い。


作る側も買う側も、あまり気にしていないと言われると ”カチン” と来るかもしれませんが、そこまで気にしてはいられないというのが本音なのではないでしょうか。


「体に良くないとは言われているけれども、けして毒なわけでもないだろう」


くらいの認識の方が圧倒的多数なのではないでしょうか。


そして、現実問題としてそんな企業努力で作られている安価なパンがあるからこそ行きて行けているという人達もいるのです。


ショートニングというのも、なにかと極悪のように叩かれている油脂の一つですが、パンに余計なフレーバーを与えずに、油脂としての潤滑油的な役割はしっかり果たしてくれますし、特に副材料を入れたパンの場合は副材料の個性を邪魔しないという観点からも、また製パン性という観点からも、個人的にはお薦めの油脂になります。


ショートニングと言っても、高品質のものはマーガリンよりも高いものもあり、種類も豊富ですから、今まではマーガリン一本やりだった、あるいはバターしか使ったことがないというようなホームベーキングの現場でも、是非一度お試しいただけたらと思います。


パンだけでなく、クッキーとかパウンドケーキにもショートニングは大活躍しますよ。


ショートニングを選択する場合のキーワードは、



・乳フレーバーを必要としない時


・小麦粉の香りを活かしたい時


・サックリと仕上げたい時


・洋酒の香りを引き立たせたい時



逆にショートニングよりバターやマーガリンを選択するキーワードは、



・短時間製法のパンの時


・イーストやベーキングパウダーの使用量が多い時


・油脂の使用量が多い時


・好みのフレーバーを出したい時



どうぞお試しください。




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