ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

最高鮮度実現のための製法とは・・・・

焼き立て回数を増やして、いつでも店内にパンの香りを・・・


そんな理想的な陳列を実現させるには、まずはどのパンの焼き回数を増やすべきかを決めることから始めます。

全てのパンを小刻みに焼いていこうとすると、仕込の効率が極端に悪くなったり、発酵を管理するだけで大慌てになってしまい、結果長続きはしないものです。

お店によって人気のあるパンと、それほどでもないパンというのがあります。

まずは、人気のあるパンに集中して焼き回数を増やすことを提案したいと思います。

ここで気をつけたいのが、人気のないパンをもっとアピールするべきではないか、そんなパンこそ焼き回数にこだわるべきではないかと考えてしまう点です。

オーナーのお気に入りであったり、あるいはお薦めであったり、あるいは自信作であったりしたとしても、現実問題としてそのパンにあまり人気がないようでしたら、焼き回数を増やす効果は期待できないかもしれません。

なぜこのパンが売れないで、こっちのどこにでもあるようなパンの方が売れるのだろう・・・

そんな思いはどなたにも経験があるはずです。

どんなにこだわっていても、どんなに自信作であったとしても、いちいち説明しないと買っていただけないようなパンというのは、残念ながらあまり人気はでないものです。

人気が出ないなら止めたほうが良いのかと言いますと、けしてそう言うことではなく、こだわりはこだわりとして継続するべきだと思いますし、その際には少し形を変えてみたり、大きさを変えてみたりするだけで急に売れていくということもあるでしょう。

売れる売れない、人気が出る出ないという点においては、ある一定の法則のようなものが存在していることも確かですし、ごく一般的に知れ渡っているパンに関してはそこそこ人気が出るという点から考えますと、よく知らないパンには手を出しにくいという購買心理がはたらくのではないかということも大いに言えると思います。

他のお店にないような独創的な商品構成で・・・という考え方はとても大切なのですが、よく知るパンがまったくないお店として運営するというのは少しばかりハードルが高いと言えるでしょう。

お店独自のオリジナルももちろんあるけれども、よくあるパンもある。

さらに、よくあるパンなんだけども、ひと味違う。

そのひと味に貢献するのが焼き回数を増やすことなのです。

ですので、人気のあるパン、お客様にとって認知度の高いパンこそ鮮度にこだわり、まずはひと味もふた味も違うという点をアピールしながら客数増加を目指すことで、こだわりのオリジナルパンを食べて戴く機会が増えるのだと考えることが大切だと思います。

という事で、ここからは焼き回数を増やすための製法について考えていきたいと思います。

すでに色々な製法を駆使して焼き回数アップを実現されているお店にとっては、とっくに知れたやり方だと言えるものもおありでしょうが、あくまで基礎的な作り方しか習わないでお店を運営されている方や、中には ”それではちょっと???・・” と言いたくなるような間違った解釈をされている方もいらっしゃるという現実を考慮して、ここでは解りきったようなことでもあえて基本に立ち返って説明していきますのでご了承くださいませ。

まず基本的に焼き立てのパンを何度かに分けて焼成しようと考えた場合、仕込キロ数を極力減らして、何度も何度も同じ生地を回数を多く捏ねるということになりますので、それでは当然時間がいくらあっても足りないことになり、特に少人数で行っている現場の場合は、それこそいつになったら帰れるやらと頭を悩ませる事になろうかと思います。

パンは、一度捏ねたら発酵時間をとり、その後に成形してまた発酵させて焼くという段取りが基本な訳ですが、その一連の流れを何処かで止めることは出来ないか、時に短縮したり延長させたりすることは出来ないかということで、現在までに実に様々な、いわゆる製法というものが研究されてきました。

それを大きく分けますと次の三パターンになろうかと思います。
 (尚、一般的な天然酵母製法や長時間発酵製法などはここでは触れません)


1 生地を冷凍することで発酵を一旦止める。

2 冷蔵庫に入れることで発酵時間をコントロールする。

3 焼きあがったパンを急速冷凍保存する。


そして、それぞれをもう少し細かく分けていきますと


1 生地を冷凍することで発酵を一旦止める製法では

  ①生地を分割後に玉の状態で冷凍して、解凍後に成形・発酵・焼成を行う。

  ②生地を成形後に冷凍して、解凍後に発酵・焼成を行う。

  ③成形後の発酵が終了した段階で冷凍して、そのまま焼成する。


2 冷蔵庫に入れることで発酵時間をコントロールする製法では

  ①捏ね上げた生地を冷蔵保存して、分割・復温・成形・焼成を行う。

  ②生地を分割後に冷蔵保存して、復温・成形・焼成を行う。

  ③生地を成形後に冷蔵保存して、発酵・焼成を行う。


3 焼きあがったパンを急速冷凍保存する。

  ①八割ほど焼いた状態で急速冷凍して、解凍後に再び焼成を行う。

  ②焼成完成品を急速冷凍して、解凍のみ行う。


以上のようなパターンになろうかと思います。

作るパンによって上記を使い分けたり、同じ生地であっても、上記のいずれかの製法を混合してお使いの方もいることでしょう。

そう書くとややこしくなってしまいそうですが、現実としてはこの製法一本でというやり方よりも、様々組み合わせて取り組んでいるのが実情だと思われます。

製法としてはこんな感じではありますが、ではその製法ははたして理にかなっているか、と言うか各配合に適しているか、パンの美味しさは活かされているかというのがとても重要になります。

どういう事かといいますと、例えば成形後に冷凍する製法の場合を見てみますと、成形する前の段階で充分に発酵をとってしまうと、冷凍できる期間が非常に短くなってしまいますので、おのずと発酵時間を短縮、あるいはまったく発酵を行わないで成形することがあります。

どのくらい違うかといいますと、しっかりといつも通りに発酵を行った生地を成形後に冷凍した場合、配合にもよりますが大体3日が限界でしょう。

個人のパン屋さんが行っている製法としては最もポピュラーなのがこの製法だと思われます。

それ以上冷凍すると、最終発酵の際に生地がベタベタとしてあまり膨らまず、焼いてもボリュームのないペシャンコなパンになってしまいます。

しかし、全く発酵を行わずに、それなりの冷凍用改良材などを配合した生地を成形したものであれば、約三ヶ月は日持ちします。(これが一般的に出回っている冷凍生地になります)

全く発酵を行わずに・・・ってどういうこと???

まさか捏ねた生地をいきなり成形するというのですか???

膨らんでもいないのに???

知らない人からすればそんなバカなと言いたくなるでしょうが、製法としてはそれが正しいですし、その製法で作られたパンをかなり多くの人が焼きたてパン屋さんで購入していることになるのです。

この超短時間製法とも呼べるような作り方で行わないと、パン生地は冷凍の最中に冷凍障害を起こしてしまい、結果良いパンにはならなくなってしまうのでした。

がしかし、全く発酵を行わないでいきなり成形したパンがはたして美味しいものになるのかどうか・・・。

そのあたりは好みの問題もありますし、実際に多く出回っているのが現実ですから、少しでも美味しくしようと開発努力をされて、美味しいと言えるパンも多いと思います。

ただし、その旨味は発酵がかもし出す旨味とは違い、配合された原材料の旨味、例えば卵やバターなどの旨味が中心であり、さらには具材の旨味であることは間違いありませんよね。

という事は、あまりバターなどが入らないシンプルなパンの場合には、この製法は向いていないという事も言えますよね。

また、例えば同じ配合のパンであったとしても、それを何処かの段階で冷凍した場合、あるいは冷蔵した場合、そして通常通り常温で作業をした場合とでは、明らかに味も香りも食感も違うものになってしまいます。

ですので、様々な製法を使い分ける場合に気をつけなければならないのは、同じパンなのに今日は味がいつもと違うということにならないようにしなければならないという点です。

配合と製法をその時々でバラバラに行うことだけは避けないと、カリッとするはずのパンがシンナリしてしまったり、ふんわりとするはずがしっかりとしてしまったりと言う、いわゆる食感がぶれてしまうことになりますので、作り方を変える場合には必ず試食をして判断しないといけません。

個人のパン屋さんの場合、と言うよりもほぼすべての焼き立てパン屋さんの場合、ドウコンディショナーという自動で冷凍から冷蔵、そして発酵室になって生地が焼ける状態になるという設備を使い、そこに前日成形を終えた生地、あるいは冷凍保存していた生地などを入れ、翌日朝に焼成を行うというのが一般的であろうと思われます。

この際に同じパンを一度に多く入れないようにして、残りを当日に何回かに分けて焼くというのが最も多く行われている手法だと思いますが、一日に約50個以上も売れるパンなら何回かに分けて焼くことは何の問題も無いでしょう。

しかし、一日に10個しか売れないパンであった場合にも何回かに分けるべきかどうかで悩むことがあるのではないでしょうか。

最も現実的な問題として、売上の非常に少ないお店ではどのようにして焼き回数を増やせというのか・・・

製法もそうだが、そもそも平均売れ個数が10個しかないのに焼き回数を増やしたとしたら、常にパン棚はスカスカではないか・・・

そのような意見もおありでしょう。

もちろん、あらゆるお店がただ焼き回数を増やせば売上が上がるぞと申し上げている訳ではございません。

焼き上げてすぐに袋に入れて卸す・・・なんていう商売もある訳ですから、ただただ焼き回数を増やすことだけを推奨しているわけではなく、パンそれぞれの個性を最大限に活かす、最高に美味しい状態で提供するにはどうすればよいかということを考えることが一番大切なのであり、それは時には焼き回数を増やして香り高いうちに提供することであったり、鮮度がながもちするような製法や配合に変更することであったり、包装する袋にこだわってしっとり感を少しでも長く継続させることであったりと、それぞれのおかれた立場において鮮度を見直すことを重視して頂きたいのです。

一生懸命に作っている、そして最高の接客で販売しているつもりだ・・・・と言うところでおしまいなのではなく、実際にお客様が食べてどう感じるかが最終目的であり、それが普通よりもやや感動に傾いた時、来店客数に反映するのではないかと私は考えます。

ですので、どのような製法で作ればより鮮度が長持ちするかを考え続けることはもはや私達の使命であり、個人店だからこその特権であるとも感じています。

製法に関してはちんぷんかんぷんの方もいらっしゃるでしょう。

次回もう少し詳しく説明していきたいと思います。



Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://sizuasa.blog44.fc2.com/tb.php/516-08e30040
該当の記事は見つかりませんでした。