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ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

オーブンの性能を生かせるのはあなた・・・

こんな質問を頂きました。


食パンの場合はプルマンよりも山食のときによくケービングしてしまいます。

型で焼く蓋無しのブレッド類が全般的にうまく焼けず、上部は黒いのですが横が白くなってそこが腰折れしてしまうと言う状態です。

色々と温度は調整しているのですが、どうしてもこれ以上上火を強くしたくないので下火だけを強くしてみているのですが、結果としていつも上部だけ色が付きすぎてしまうと言った状態になります。

これはオーブンの性能の問題だと言うことなのでしょうか?

それとも私の調整の仕方に問題がありますでしょうか?


型で焼く大型パンのコシが折れてしまうという現象は、パンを焼く方でしたらほぼ全員が経験していることなのではないでしょうか。

つまり、それくらい定番の問題点なのであり、そこを制することができるかどうかが焼成のカギを握る訳ですね。

他のカテゴリでもしかしたら触れている内容かもしれませんが、とても大切なことなので改めて解説しておきたいと思います。

大変ややこしい内容になりますが、ここだけはしっかりとイメージの中に植え付けておいていただきたいと思います。

オーブンと言うものには、実に多くの種類が存在しており、一度に焼ける量などにもかなりの差があります。

それぞれのオーブンにより特性は全く違う訳ですが、今回質問されてきた方は現役のパン屋さんですので、オーブンフレッシュベーカリーで一番使われているであろう開窯、固定窯について解説していきたいと思います。

まず初めにお断りしておきますが、すべての平窯・固定窯でこれから言うことが当てはまるかどうかは断言できません。

性能上、どうしてもそうはいかないものも中にはあるかもしれませんが、経験上たいていの場合は大丈夫だと言えますので是非あきらめないでチャレンジしてみてほしいと思います。

まず初めにとても大切なことを言っておきます、

それは、焼成するということはオーブンの中に生地を入れて温度を設定して時間になったら焼けている・・・ということではありません。

細かいことですが、とても大切なことなので今一度言います。

オーブンの中に生地を入れてから温度を設定していては、間違ってもうまく焼くことは出来ません。

どういうことかと言いますと、小物のパンならいざ知らず、高さのある、しかも生地重量の多いパンに対して、適切な焼成を行おうと考えたならば、それなりのテクニックを使わないと最終的には上部は黒く、そして側面が白いパンになってしまうと言うことなのです。

ではなぜ上部だけが黒くなってしまうと思いますか??

それは、温度と言うのは上の方に集まるからで、オーブン庫内の温度と言うのは上部に行けば行くほど高くなるからなのです。

このあたりは何となく皆様もお分かりかとは思うのですが、「だからどうした」「それは性能上のこのなのだから仕方がないことでは」と思っている人には、これらのパンをうまく焼くことはまずできないでしょう。

実は私個人はこのことに大変早くから気づくことができていて、自分が初めてオーブンの担当を任された若き時期に色々とテストしてみて、その効果の絶大さを身をもって体験してきた経緯があります。

いつもいつも先輩が焼く大型パンが、陳列されるや否や横がしぼんで潰れていく様を見ていて、どうしてあんなに黒白ハッキリとした焼き色になってしまうのだろうと成形しながら考えていました。

オーブンには上火と下火というものがあり、それぞれ別々に設定することができることが多いと思います。

しかし、現実問題として上ばかり真っ黒で下と横は白いパンなのに上火も下火も同じような温度設定になっているのを見て、「どうして下火を強くして上火を弱くしないのか」と質問してみたことがあります。

すると先輩は、「下火を強くしたら下が焦げてしまうから・・・」

そう言われたのですが、実際には焦げているのは上だし・・・???

また時には、焼きあがった白黒パンを出しているときの温度を見るととても低かったので、もう少し高い温度で焼いてみたらどうなのかと思い、自分が焼くときにすぐに試してみたのですが、さらに上だけが黒くなり、下と横はさらに白くなり、「だから言ったろ!!」と言われて捨てられてしまいました。

これは一筋縄ではいかないなと感じながらも、絶対に解決策はあるはずだという信念だけはなぜか捨てきれずに、毎日毎日先輩が焼くのを見ながら考えていました。

そしてある時にとうとう答えを見つけたのです。

そのきっかけとなったのが、その大型パンを焼く前に何を焼いていたかによって、焼け方に違いがあることを発見した時なのでした。

ある時には白黒はっきりとして潰れてしまうのですが、たまに横にもしっかりと色が付いていて潰れない時もあったのです。

それを発見してひらめきました・・・

そうか、生地を入れる前の温度設定が重要なんだと・・・

比較的弱い温度で焼くようなパンの次に焼くブレッドは必ずケービングしてしまうが、フランスパンなどの比較的高い温度で焼くパンの次に焼くブレッドはしっかり焼けていました。

つまり、生地を入れる前のオーブン庫内の状態によって、焼き上がり方が変わるんだと言う確信をつかんだのでした。

だとすると、ブレッドを焼く時の最適な庫内温度の状態というのはどのような状態なのかを考えた時に、全体としては高めの温度でありながらも、上部に熱がたまりすぎていないような状態だということがわかりました。

こうしてブレッドを入れる前にオーブンの温度をやや上げて置き、いざオーブンへ生地を入れる直前に上火をゼロにして、かつ下火を最大にして焼いてみました。

すると、見事にすべてが同じ色に焼け、しかも腰折れなど一切ないパンに焼きあがったのでした。

この時の私にはまだ焼減率などの知識はありませんでしたので、その後に色々と理論の肉付けを行いながらも、考え方としては一つの核心を得たのでした。

それは、”パンは焼く前の庫内温度管理ですべてが決まる” というものでした。

つまり、当たり前だと思われている方も多いと思いますが、パンは生地をオーブンの中に入れてからあれこれしてももう遅いということなのです。

まずはここをしっかりと理解していただく必要があります。

ではもう少し細かく説明していきます。

高めの温度で待機しているオーブンの中に生地を入れたら、すぐに上火をゼロにします。

焼く数にもよりますが、できれば入れる前にはゼロにしておいた方がより良いでしょう。

すると、オーブン庫内では下火だけが一生懸命に働き、下と横に火が入っていきます。

この時に上がゼロだと上部が焼けないのではないかと考えがちですが、結局は下火も最後には上の方に行きますので、全体的に色が満遍なく付くことになるのです。

しかし、もしも全体的に弱い温度で待機していたとすると、長い時間上火を消していると全体的に温度が下がってしまい、時間内に奇麗に焼くことができません。

ですので、高めの温度設定にしておいてから生地を入れて、生地を入れてから、あるいは直前に上火を下げることが重要なのです。

もっと言うと、生地を入れてから上火をゼロにする際に、下火を利かせてほしいのです。

今どきのオーブンは皆デジタル設定だと思いますので、仮に230℃位で待機しておいた場合、生地を入れてから250℃にあげてほしいのです。

なぜ初めから250℃にしておかないのかと言いますと、生地が入れられてから温度を上げた方が火がしっかりと入るからなのです。

イメージとしては、オーブンに生地が入った瞬間に上火は切られて、下火がオンになることで常に下部から上部に向かって火が入ることになります。

この、下部から上部に向かってというのが実はとても重要で、それが下火が止まってしまって、上部から火が入ってしまうことによって質問者様のような上だけが黒く、横に火が入らない状態になってしまう原因だからなのです。

おさらいしておきますと、ケービングしてしまうパンというのは、側面がしっかりと焼けていないことによって、自分の身体を支えきれないで潰れてしまうわけですから、しっかりと横に火が入る焼き方でないとなりません。

オーブン庫内では、上部は上火で調整できますが、下と横というのは下火が担当しています。

ですので、大型のパンを焼く場合には、しっかりと側面に火が入るように下火を常に利かせておく必要があると言うことになります。

だからと言って、生地を入れる前から下火を最大にしておいたとすると、生地を入れた際には下火はオンにならずに待機状態になってしまいます。

これでは下と横に火が入りませんから、生地を入れてから下火を上げてやる必要があるのです。

この際の生地を入れてからの下火と上火がオンなのかオフなのか、待機しているのか火が出ているのかがとても重要だと言うことなのです。

作業中と言うのはほぼ連続で色々なパンが焼かれていきますよね。

それは私自身も十分すぎるほどよくわかるつもりです。

しかしそんな中でも、今何を焼いているから次にはこれを焼こう・・・と言うような連続技でそれぞれのパンの最適温度で焼けるように段取りを組むことこそが、オーブン担当者の最高技術なのだと言えると思います。

焼く・・・というのは、どんな食材においても技が光るものですね。

どうかあなたも、潰れたパンなんて許せない実行委員長になってほしいと思います。


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