ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

小麦全粒粉を入れたパンの製パン性は?

こんな質問をいただきました。

健康面に配慮したいと言う思いと、香ばしさをかもし出したいとの思いから、ほとんどのパン生地に全粒粉を少量加えているのですが、どうしても良い感じの生地になりません。

何となく乾燥気味な生地になり、クラストも厚くなります。

焼き色もぼけた感じになるのは何故なのでしょうか?

全粒粉は入れない方が良いパンになるのでしょうか?



全粒粉を使っていると言う方は多いですよね!

私の勝手なイメージですが、恐らく皆さんが全粒粉を使う訳は、ご飯を炊く時には玄米を少し混ぜた方が身体にいいから・・・・・

こんなイメージで、パン生地にも小麦の皮が入った栄養価の高い粉を混ぜる事で、身体に良いパンになるとお考えなのではないでしょうか?

確かに、ビタミンやミネラルが多かったり、鉄分に食物繊維が多いなどと聞くと、これは是非入れた方が体に優しいパンになるのでは・・・・・と考えたくなりますよね。

特に女性は全粒粉入りのパンを好みますので、女性客の多いベーカリーにおいては武器になると言えますね。

しかし、残念ながら栄養価を得ようとするには代償を払わなければならないのです。

それが、いわゆるソフト感ですね。

小麦の柔らかくて白い部分だけを使って、私達は日頃からソフトなパンを作っています。

そこに、硬い皮を入れるのですから、生地のグルテンがバッサバッサと切られてしまうのです。

すると、伸びたくても伸びきれない、膨らみたくても膨らみ切れないと言う事になってしまうのです。

一見硬そうには見えない全粒粉の粒々ですが、これが実に硬いのです。

そして、どんなに細かくしてあっても、やはり硬いのです。

この硬さが香ばしいクラストを作るのですが、一方では生地を切り刻んでしまうのです。

ですから、全粒粉を使用する場合には少し配合に工夫が必要になります。

とは言え、そもそも栄養価や健康をイメージして全粒粉を使う訳ですから、バターやら卵やらの副材料はあまり入れる事は出来ないでしょう。

となると、一つには切れる事を覚悟の上で最強力粉を使う事です。

一般の強力粉よりも、明らかに全粒粉の硬さに耐える事が出来ます。

更には、発酵種などのつながりの良い生地を添加することで、生地をガードしてくれるでしょう。

また、生地を出来る限り柔らかくする事で、生地の伸びを助ける事も出来ますね。

このような方法で、少しは伸びの良いパンになるはずです。

次に、生地の乾燥ですが、これも全粒粉の仕業なのです。

つまり小麦の皮がパンの水分を奪ってしまうからですね。

なので、出来るだけ生地を柔らかく仕込むことが大切になってくるのです。

また、どうしてもボリュームのある全粒粉入りパンを作りたいなら、ある程度の下処理をする事をお勧めします。

それは、全粒粉に対粉70%程の熱湯を入れて混ぜるのです。

そして冷蔵保存して翌日に使用すると、皮がふにゃふにゃになっていますのでグルテンを傷つける事なく、ソフトなパンに仕上がります。

しかし、全粒粉を使用する本題からは外れてしまうと思いますが・・・・

また、発酵種を全粒粉で作っておくと言う手もありますよ。

そうする事で、少しは粒々が柔らかくなります。

全粒粉と一口に言っても、その配合量によって全く違ってくるのですが、そもそも健康を求めているお客様は、ソフトなパン自体に健康的なイメージを持っていないと思います。

あまり膨らんでいない、噛み締めるほどに味わいのあるシンプルなパン・・・・・

そうでなければ、全粒粉を使う意味があまりなくなってしまうのではないでしょうか?

ここは、全てのパン生地に全粒粉を入れるのではなく、全粒粉を入れたソフトではないパンを数種類作られた方が、お客様にもアピールしやすいのではないかと思うのですが・・・・・

実際、少しだけ全粒粉が入っていると言う程度では、けしてミネラルを多く取ったとは言い難いと思いますし、全体的に中途半端なソフト感のパンになってしまうと思います。

結論として、小麦全粒粉は大変栄養価が高いので、お使いになるのはお勧めです。

ただし、ソフト感とは対極にあると言う事だけはご注意願います。

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