ベーカリーアドバイザーの部屋

難解な製パン理論を、楽しく解説。 どうして??と思ったらのぞいてみて下さい

日持ちと消費期限の判断が出来ていないお店達

今回ご紹介するのは、約2年前のお話です。

一つは焼き菓子とチーズケーキの専門店のお話。

もう一つは、天然酵母パンのお店のお話。

残念ながら、どちらも本年中に閉店してしまわれました。

どちらも女性オーナーの、とても可愛いこじんまりとしたお店でした。

いったい何があったというのでしょうか???

そもそも商売と言うのは水ものです。

繁盛するかどうかは、やってみなければ誰にも解りません。

いくら商品が魅力的でも、お店が素敵でも、つぶれるものはつぶれてしまうのですね・・・・

新しいお店が続々とオープンしていく中、そうやっていつしか過去の事になってしまう人達もいる・・・・

現状維持の難しさを改めて痛感します。

で・す・が、今回紹介するお店達は、少しばかり事情が違っていました。

一言で言うと、経験が足りなかったのかな~

そんな残念なお店だったのです。


けして大きくは無いですが、それはそれは可愛い作りの焼き菓子とチーズケーキ工房。

卸しやイベントでの販売を専門としていて、店舗は構えていませんでした。

とあるイベントへの参加でショッピングモールでパンを販売していた時のことでした。

お隣では、籠に美しく盛り付けられたクッキーやパウンドケーキが並んでいて、女性ならではの感性を感じさせる商品陳列。

値段もお手頃で、実に良く売れていました。

スタッフへのお土産にと、数品の個包装されたパウンドケーキを買った時でした。

何気に裏の表示シールを見ると、賞味期限が一ヶ月先まであるではないですか!!

別にパウンドケーキが一ヶ月日持ちしたからと言って、珍しい事ではないと言われそうですが、それはあくまで脱酸素剤、あるいはその類の保存の為の何かが入っていればの話です。

しかしそのパウンドケーキには、どうみても何も入っていません。

さらに、日持ちさせるにはビニール袋も一般のビニール袋では日持ちはしません。

なぜなら、普通のビニール袋というのは、肉眼では見えませんが小さな穴が開いているからです。

ですので日持ちをさせるには、それ専用の袋を使用しないと、たとえいくら脱酸素剤を入れたからと言っても、やはり完全には日持ちはしないのです。

そこで私は、これはちょっとまずいのではないでしょうか・・・・

そのように店員さんに申し上げましたが、いつもこうして売っていて、何の問題もクレームももらった事が無いと言われてしまったのです。

あくまで私の推測ですが、恐らくクレームが無かったのは、個包装されたパウンドケーキならばほとんどの場合すぐに食べてしまうからではないかと思いました。

工房にも在庫がたくさんあるが、カビなどは生えた事が無いとも言っていました。

私はそのケーキを7つほど購入し、常温で保存しながら毎日一つを食べました。

常温で保存したのは、保存方法が要冷蔵では無かったからです。

予想通り三日目位からパサつき始め、6日目でカビが発生しました。

もしかしたら・・・・何か私の知りえない特別な製法あるいは秘密の材料でもあるのではないか・・・・・

そんなあわい期待も、カビと言う厳しい現実の前に消し飛んでしまいました。

だ~よ~ね~・・・やっぱり・・・

と言う事で、シールに書いてある連絡先へ電話をし、事情を説明いたしましたが、責任者に伝えますと言って電話を切られ、その後に一度電話はありましたが、特にこちらの言っている事に理解は示していませんでした。

要するに、カビはたまたま発生したに過ぎない・・・程度の認識なのです。

差し支えなければ、日持ちについて説明しますが・・・・ともお話ししたのですが、また連絡させていただきますと言って、それ以降は何の応答もありませんでした。

この工房では、クッキーやサブレなどのドライ物(やや乾燥したお菓子)の品数が多く、パウンドケーキはたまにしか作らないとの事でした。

ですので、日頃から普通のビニール袋での販売で何の問題もなかった訳ですね。

さらに、たまに作るパウンドケーキも、大きな袋が無いと言う事が幸いして、すべて小さくカットして販売していた為に、恐らくはクレームを免れていたのではないかと想像出来るのです。

電話の際に、このオーナーの方は賞味期限と消費期限の意味がちんぷんかんぷんのようでした。

日持ちとか消費期限については、皆様もざっくりとはご存知だと思われますが、ここでそのあたりについて説明しておきたいと思います。

皆様が日頃一番気にされているのは、恐らく食品の消費期限でしょう。

肉や魚や豆腐などの、日々食卓に登場する物に関しては、購入の時に少しでも新しいものを選んでいると思います。

消費期限が短くなると、半額で販売されていたりして、期限が例えば明日だとしても今夜食べれば問題ないなと言う感じで購入される方は多いはずですよね。

その様にしていつも目にしている、あるいは気にしているのはそもそもあまり日持ちのしないもので、二三日程度の日持ちが約束された食品に付いている表示が消費期限となりますね。

これは、その位までに消費、つまり食べてしまって下さいねと言う事になる訳ですね。

同じ食品でも、もう少しだけ日持ちするものがたくさんあります。

例えば納豆や餃子や魚肉製品や漬物などのように、一週間前後かあるいはそれ以上に日持ちが約束されている食品に付いている表示が、賞味期限と呼ばれるものになる訳です。

この賞味期限と言うのは、二三日以内に必ず食べてしまって下さいと言う消費期限に比べ、この位までは美味しさを約束しますよ、味が落ちないですよという保証期限になっている訳です。

と言う事は、当然のことながら味が落ちない期限なのですから、カビなどは生えていていいはずがありませんよね。

食品によっては、賞味期限がとっくに過ぎてもまったくカビが発生しないものがたくさんあります。

ですので賞味期限というのは、作り手がお勧めする食べて美味しい期限・・・と言う意味合いなのであって、その日を過ぎたら徐々に味が落ちますよという、ゆるい表現になるのです。

パンや菓子を販売する者としては、自分達が作る品物がどの程度美味しさを約束出来るものなのかを、しっかりと見極めたうえで、これらの表示をしなければならないと言う事になる訳です。

更に、製法などによって、より日持ちを継続させたパンや菓子もありますが、その場合の日持ちの判断を何を目安に行うかと言う事がとても重要になってきます。

それは大まかに言うと、カビが生えるまでの事なのか、あるいはしっとり感が失われるまでの事なのかというような事です。

一般的な焼き立てパンは、裸で売られていたりします。

しかしそんな焼き立てパン屋さんでも、食パンなどの大きなパンは袋に入っている事が多いと思います。

それは、一度に食べられないであろうから、少しでも日持ちするようにとの店側の配慮でもあるでしょうし、食パンなどの場合はスライス面が乾燥しないように袋に入っているのです。

このような販売方法の場合は、袋に入っていたとしてもそれはあくまでもほんの少しの乾燥防止程度の役割を期待しての袋入れですから、期限表示は必要がありません。

しかし、同じパンでも大手メーカーのパンには、必ず消費期限あるいは賞味期限が付いています。

これは、明らかに作りたてを販売する事が不可能であることや、明らかに数日は美味しく召し上がってほしいと言うメーカーの商品戦略ですので、製法によりしっとり感を長持ちさせたり、袋の中に日持ちに貢献するような何かを入れての販売となる訳です。

もちろん袋も日持ち専用の袋を使用しているのです。

現在袋売りのパンの中に入っている日持ちに貢献する何か・・・・と言うのは、大まかに言ってこのような種類があります。

アルコールをパンの表面に噴霧して、雑菌の繁殖防止と水分保持を行う方法。

アルコールが少しずつ放出されるシート状の物を入れて上記と同じ効果を狙う方法。

袋の中から酸素を抜いてしまう脱酸素剤を入れて、カビの発生を送らせる方法。

皆様がいつも購入しているであろう大手のパンは、このいずれかの方法によりパンを日持ちさせているのです。

また、忘れてはならないのは、美味しいパンの開発を行う一方、美味しさはどこまで伸ばす事が出来るのか、どこまでを美味しさ保持期限と定めるのかということを、製法や原材料も含めて、各商品ごとにしっかりと認識しておかなけらばならないと言う事です。

なぜクッキーやラスクはそのままでも日持ちするのか??

なぜパウンドケーキは今回のように数日でカビが生えるのか??

しっとり感が長持ちするパンとそうでないパンとの違いはどこにあるのか??

そのあたりをしっかりと学ばないうちに、商売を始めてしまう方も多かろうと思います。

パンの日持ちと一言で言っても、材料や作り方、はたまた焼き加減でも違いは出てくるものです。

そして商品に合った日持ち用の包材の選定を誤ると、思わぬ落とし穴が待っている事になります。

自分の作り上げた商品は、最後の最後まで責任を持ってお客様に提供できるよう、自信が無かった人も今からでもしっかりと学んでおく事をお勧めいたします。

と言う事で、長くなりましたので続きは次回に・・・・・


このカテゴリーに該当する記事はありません。